854 / 1,955
温度や土以外にも植物には必要
しおりを挟むエルフの集落はヘルサルから離れているため、こちらから連絡をするだけでも結構日数がかかる。
けど、フィリーナからの手紙を受け取った集落のエルフ達……おそらくエヴァルトさんが、すぐにスイカを作っている村に連絡を取り合い、興味を持った村の人たちがヘルサルまで来てくれたのか。
ゆっくり連絡を取り合っていたら、まだ種を植えるまでにもなっていないだろうから、その点は良かった……スイカはできるだけ早く食べたいからね。
その後も、スイカの話や農園内の事を話したし、時折作業をしている人達に挨拶をしながら、ガラスが保管されている小屋を回った――。
「ふぅ……さすがに、走ったり運動したわけじゃないけど、動いていると結界内は暑かったね」
「日中はそうなるんだろう」
「夜間になると、日中の外と変わらないくらいになりますな」
小屋を全て回り、再び出入り口を見張ってくれている衛兵さんに挨拶をしつつ、結界というか、ヘルサル農園の外に出ると、風が涼しく感じた。
結界内は無風状態だから、熱がこもって少し蒸し暑く感じるくらいで、歩き回って汗ばんでしまっていた……夏場に暑い外から空調が効いて、涼しい室内に入った時のような解放感だ……内外が逆だし、気温差はそこまで大きくないけど。
暑すぎて倒れる程じゃないけど、あの中で作業するのは少し大変だな……元ギルドマスターさんは別だし、大変じゃない作業や仕事というのも、ほとんどないだろうけど。
汗が引くのを感じながら街へと戻り、予想以上に時間を使ってしまったクラウスさんはトニさんに連れていかれて、俺達は獅子亭へと向かった――。
「……温度管理以外にも、風を吹かせる魔法具も必要そうだな」
「そうなの? でも、風がなくてもなんとか作業できていたみたいだけど……」
「いや、暑さの問題とは別だ。植物には、風に乗って種子を飛ばす物もあるからな。管理する場所なので、風に全て任せるわけにはいかないが、風で循環させるのも必要だろう」
「そんなもんなのかな?」
アルネに言われて、思い浮かんだのはタンポポの綿毛だ。
道端や川辺とかで生えていたタンポポが、風に揺られて綿毛を飛ばす光景……あれを見ると、夏の到来を感じたりする。
タンポポは栽培していないはずだけど、似たような事が必要な植物もあるから、確か風を発生させるのも重要なのかもしれないね。
それに、無風状態よりも風があった方が、結界内も少しは過ごしやすくなって作業もしやすくなるだろうし。
「まぁ、風を発生させるのは難しい事じゃない。魔法具に頼らなくとも、魔法で発生させられるからな。もしかしたら、必要な植物には既にやっている者もいるんじゃないか?」
「発生させるだけなら、簡単そうだね。農業の知識がある人や、今まで農家だった人も参加しているみたいだし、やっているか時期を見てやるのか、考えていると思うよ」
俺はまだしも、アルネのように知識があればわかる事だろうから、農業を経験した事のあるもいるようだから農園でも実際に考えられてるだろう。
魔法具をとアルネが言ったのは、人間主体の農園で魔法が使える人が限られているし、魔法具なら誰でも使えて管理がやりやすいからと考えたんだろうね。
温度管理の魔法具に組み込んで、とかまでアルネなら考えていそうだけど……できるかどうかはともかく。
「それにしても、元ギルドマスターだったか? あんな提案をするとは思わなかった」
「あぁ、あれね。まぁ、ルギネさん達が受け入れるか次第なのと、獅子亭に人手が増えたらって前提だけどね」
そろそろ獅子亭に近いと言ったくらいで、アルネが思い出したように話題に出す元ギルドマスター。
話しかける前に思いついた事を、エルサのドロップキックが決まった後に提案だけしておいた……あまり長話するとまたエルサがうるさそうだったので、軽く提案しただけだけどね。
元ギルドマスターさんは了承してくれたし、俺からルギネさんやマックスさん達に話しておいて、あとは本人達の話し合い次第だろう。
ルギネさん達の許可もそうだけど、獅子亭に人手が増えて余裕ができたらっていうのが前提だけどね。
「暑苦しい話は嫌いなのだわ……」
「まぁまぁエルサ。本人が目の前にいるわけじゃないんだから、話すくらいはね?」
「ふん、だわ」
「拗ねちゃったか……」
元ギルドマスターの話になって、嫌そうに呟くエルサ。
手を頭の上に持ち上げて、がま口リュックごとポンポンと背中を叩いて宥めようとしたけど、よっぽどさっきの筋肉アピールが嫌だったらしく、拗ねてしなった様子。
まぁ、仕方ないか。
「とにかく、ルギネさん達は元ギルドマスターで元冒険者から、色々教えてもらえる。元ギルドマスターは体を鍛える事ができると、お互いいい事ばかりだからね。……獅子亭で働いてばかりで、冒険者だった事を忘れそうになっているから……」
「そういった事を、呟いていたらしいな。まぁ、冒険者としての勘を取り戻したり、上を目指すのならそれで良し。今のまま獅子亭で働いて、暮らしていくのも良し、と言ったところだな」
「……そこまで重く考えてはいなかったんだけどね」
冒険者を続けるかどうか、というところまでアルネは考えているようだけど、俺としては昨日冒険者だって事を忘れそう、と聞いたからであって、どちらかの選択を迫るわけじゃない。
獅子亭で働き詰めで鍛錬もできず、依頼も受けていないらしいから、勘を取り戻すとか訓練代わりにと考えたくらいだったんだけど……ルギネさん達が、そこまで重く受け止めないといいなぁ。
……思い詰めがちなルギネさんより、ほんわか系のアンリさんへ先に話を通した方がいいかもしれないね。
そんな事を考えながら、アルネと雑談しつつ獅子亭へと向かった――。
「戻って来たけど……これ、中に入ってもゆっくりできそうにないかな?」
「……そのようだな。リクが昨日のように手伝うのなら、多少は助かるだろう。俺は勝手がわからなさ過ぎて何もできないが……どうする? どこか他へ行ってしばらく過ごすか?」
獅子亭へ到着したのはいいんだけど、アルネと一緒に外から眺めるだけでまだ中には入っていない。
なぜかというと、入り口にまだ人が並んでいて絶賛混雑中という様子だったから。
……昼の仕込みを手伝って終わらせてから獅子亭を出たし、農園を見て回るのにもそれなりに時間がかかったから、そろそろ夜営業の準備中とかだと思ったんだけどなぁ。
昨日の状況から考えて、昼から続いて夜まで休まず営業しないと、お客さんが捌けない状況になっているのかもしれない。
夜営業の準備を手伝いながらでも、ゆっくり元ギルドマスターや農園の事を話そうと思っていたんだけど……それは無理そうだ。
「元々、戻ったら手伝うつもりだったから、別にいいんだけど……ゆっくり話せそうにないから、細かい話は夜になるね」
「そうか。それじゃ、俺はエルサ様を預かって奥に引っ込んでおこう。これだけ忙しいと、フィネも同じく手伝えてないだろうから話し相手くらいにはなれるだろう」
0
あなたにおすすめの小説
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
異世界に降り立った刀匠の孫─真打─
リゥル
ファンタジー
異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!
主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。
亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。
召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。
そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。
それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。
過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。
――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。
カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる