887 / 1,955
正確な情報を伝える相手は慎重に
しおりを挟むユノへの接し方については、アルネにもそうだったし、事情を知ったからって態度が変わるのはユノがかわいそうだ。
そもそも、本当に敬うような接し方をされたいのであれば、最初から神様だって伝えて信じてもらうようにしてただろうからね。
これまで通り、子供……のような扱いは嫌がるかもしれないけど、人間の女の子のように接した方がユノ自身も喜んでくれると思う。
だいぶ慣れたけど俺も様を付けられたり、妙に畏まって接される事もあるから、気持ちはよくわかる。
「ともあれ、帝国の企みも少しは見えてきたと言えるのかもしれないが……」
ユノに対してはできるだけ今まで通りにすると決まって、ソフィーが改めてアルセイス様から聞いた情報の整理をする。
そのうえで、どこにどういった伝え方をするかという話になった。
俺やアルネが見聞きした事をそのまま伝えても、相手によっては信じてくれないだろうし、最悪の場合は神様を騙る不届き者と思われてもいけないから、誰にでも全て伝えるわけにもいかないだろうから。
「さすがに、集落にいるエルフ達全員に伝える事はできんな。アルセイス様が創造とは違う性格だった事も含めて……まぁ、フィリーナには伝えておこうと思う」
「そうだね、フィリーナは仲間だし、俺達の事もよく知っているから信用してくれると思うから、話しておかないとね。あとは……姉さんは大丈夫だと思うけど、他に……」
「ヴェンツェル様達にはどうする?」
「フランク子爵様には、ある程度伝えようと思いますが、全てを伝えるのはさすがに……」
皆と話し合って、全てを伝える人、断片的に伝える人、何も伝えない人、と分けて行く。
姉さんやフィリーナ、それに今エルフの集落をまとめているエヴァルトさんにはすべてを伝える事にした……エヴァルトさんは、アテトリア王国にいるエルフの代表的な扱いになるだろうからだ。
アルセイス様の事もあるし、この先も協力してもらう事を考えたらというのもある。
ヴェンツェルさんやフランク子爵、エフライムやハーロルトさんを含めた、国の偉い人達には断片的に伝えて、それ以外の事は伝え方を姉さんに任せるのがいいだろうとの結論。
こちらは、信用はしてくれるだろうけど、どこまで話しておけばいいのかわからないためだ……姉さんへ丸投げとも言える。
帝国に対する準備を進めている現状で、追加の情報で混乱しないための配慮と、俺達が考えるよりも姉さんに考えてもらった方が適任だろうから。
さらに、エヴァルトさん以外のエルフ達や、王都にいるアメリさんなど、一般的と言える人達には特に伝えずこれまで通りに、と決まった。
帝国が、とか神様が……と言っても、伝わらない事の方が多いだろうし、情報が広まる事で帝国に漏れるのを防ぐ考えもある。
あと、広く伝えようとすればするほど、変にねじ曲がって伝わる可能性も考えたから……さっきのモニカさんやソフィーのように、俺もまとめて神様にされてしまいそうだからね。
「それじゃ、私達はエヴァルトさんに伝える事にするわね」
「俺は、集落全体の研究を確認だな……帝国と違って、人間との交流は始まったばかりだが、それでも何か協力するべき事もあるはずだ。それと、本来の目的である温度管理に関する魔法具研究に関してもだな」
「うん。それじゃ、俺はエルサやユノと一緒に休んで……」
「リクさんは、アルネと一緒に行かなきゃダメでしょ。エヴァルトさんへの説明は私達だけでもなんとかなるけど」
「……やっぱり、そうだよね」
既に夢の世界へと旅立っているエルサやユノを見る事を理由に、睡眠時間の確保をしようとしたけどダメだった……。
結局、俺はアルネと一緒に魔法具研究の方へ、モニカさんとソフィーはエヴァルトさんを探すか呼んで来てもらい、アルセイス様の事も含めての説明。
エルフの集落に慣れていないフィネさんは、寝ているエルサとユノの事を見ているとなった。
ちなみに、説明自体はこの石造りの家でするので、その際にユノもしくはエルサに起きてもらって、一緒に説明するとの事……素直に起きてくれたらいいけど。
俺とアルネの方が時間がかかるだろうから、説明が終わった後はフィネさんも一緒に、道に迷わないよう案内を頼んでエルフの集落を見て回るらしい。
……俺も、そっちの方が良かったなぁ……まぁ、魔法具の研究関連でエルフの集落内を移動するから、ある程度は見て回れるだろうけど。
「リク様、腕によりをかけて作らせて頂きました!」
「ははは……ありがとうございます」
「ふわぁ……お腹、空いたのだわ。キューを食べる、のだわー」
「むにゃむにゃ、美味しいの……」
「エルサはともかく、ユノはちゃんと起きような? まだ食べてないぞー?」
寝不足ながら、今日の行動予定がそれぞれ決まって少しした頃、エヴァルトさんが手配してくれていたんだろう、エルフさん達が朝食を作って持って来てくれた。
頑張って作った事を誇らし気にしているエルフさんを見れば、食事は自分達で用意するとも言えず、苦笑しながらお礼を伝える。
エルサとユノは料理の匂いに釣られたか、眠そうにしながらも寝ていた体を起こしたけど……ユノはまだ食べ始めていないにも拘らず、料理の感想を言っている。
半分くらい寝ている雰囲気だから、夢の中ででも食べているのかもしれないけど、中途半端に食べている途中で寝たり、こぼしたりしてもいけないのでちゃんと起きるように声をかけた。
食い意地が張っているというかなんというか……起こす手間が省けたかなと一瞬考えたけど、この様子じゃ食べた後またすぐに寝そうだから、フィネさんの手間は変わらなさそうだな――。
「それじゃまずは……」
「エヴァルトはモニカ達からの事情説明を受けるから、また後だな。まずは、冷やす魔法具を研究しているエルフの所へ行こう」
「わかった。暖める方じゃないのは、込み入った話になりそうだから、だね?」
「あぁ。早めに終わりそうな方から行った方が、さっさと用事を済ませられるだろうからな」
朝食後、アルネと一緒に石造りの家を出て、まずはクーラーとも言える魔法具を研究しているエルフの所へと向かう。
集落全体での研究を把握するには、エヴァルトさんとも話す必要があるので、そちらはまずモニカさん達と話す事になっているし、とりあえず済ませられる用事を済ませておいた方が良さそうだからね。
暖める方、暖房魔法具を後に回したのは、研究内容を提供してもらうための交渉などがそれなりに時間がかかってしまいそうだから。
「うん、そうだね……はぁ……」
「……気持ちはなんとなくわかる気もするが、気にしない方がいいだろう。俺も、あれが本当にあの長老達かと、疑いたいのだからな」
行き先を決めてアルネの案内で移動しながら、遠目に見えたり聞こえてしまった声で思わずため息を吐いてしまった。
アルネも似たような感想だったようで、苦い表情をしている。
俺達が見たのは、集落の出入り口の方へジョギングするくらいの速度で駆けて行く長老達……若く見えるエルフでも、それなりの年月を生きているから見た目はエアラハールさんやベルンタさんのように、見るからに老人なんだけど……。
そんな人達が、元気よく走りながら叫び、集団で外へ向かうのは中々驚きの光景と言えるだろう。
初めて見た俺やアルネ以外のエルフさん達や、集落に来た人間達はもう慣れた光景なのか、特に期した様子はなかったけど。
それはともかく、元気に走るだけならまだしも、叫んでいる内容がなぁ……。
0
あなたにおすすめの小説
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
異世界に降り立った刀匠の孫─真打─
リゥル
ファンタジー
異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!
主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。
亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。
召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。
そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。
それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。
過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。
――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。
カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる