神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

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エルフの集落の意思

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「陛下……エルフの集落、その総意としてこちらを……」
「総意……?」
「正直な事を申しますと、反対しているエルフもいるかもしれませんが……集落としての意思は固まっています」
「わかったわ。集落からの親書、確かに受け取ったわ」
「はい……」
「……ねぇアルネ。私、集落の総意とか聞いていないんだけど?」
「エヴァルトが集落内のエルフ達と話しての事だ。俺も渡された時に知らされたのだが……まぁ、フィリーナが反対するような事じゃない」

 懐から一通の封筒を取り出し、片膝をつきながら両手で姉さんに恭しく差し出すアルネ。
 姉さんが受け取ったのを確認すると、立ち上がって後ろに下がる……ソファーに座らない所を見ると、姉さんが確認するまで立って様子を見守るようだ。
 そんなアルネに、フィリーナが小声で聞く……部屋にいる皆に聞こえているようだから、小声で話す必要があるのかは疑問だけど。
 ともあれ、アルネが言うには本人も知らなかった事ではあるけど、フィリーナが親書とやらに書かれている内容に文句を言う事はないらしい。
 どんな内容が書かれているんだろう。

「……ふむ。成る程な。これがエルフの集落……いや、我が国にいるエルフ達の総意とするのであれば、歓迎するべき事だ」
「はい。陛下への親書なので読んではいませんが、内容は聞いております。俺……いえ、私も反対する事はありません」
「了承した。これに対する返答は……そうだな、我から集落へ送っておこう」
「感謝致します」

 女王様モードになった姉さんが、封筒の中身を読み、何度か頷く。
 恭しく礼をするアルネに、どんな内容が書かれていたのか、一連の流れを見ていた皆の疑問が表情に出ていたんだろう。
 すぐに女王様モードを解いて通常になった姉さんが、封筒から取り出した中身……手紙をテーブルに起きながら話してくれた。

 エルフの集落代表として、エヴァルトさんや数名のエルフの署名。
 中には長老達の一部も含まれているらしい。
 さらに、アテトリア王国にいるエルフ達は、国に帰属し国に住んでいる人達……つまり、人間交流を持ち、人間と協力する事を約束する、という内容だった。
 これまでも国内に集落があり、一部魔法関連で協力もしていたので、アテトリア王国の住民であり国民である……と国は認めていたんだけど、一部のエルフ達……主に長老達からの反発で表立って交流する事はなかったらしい。

「……確かに、私が反対する内容じゃないわね。集落を離れて、この場にいる時点で反対する事じゃないわ」
「要は、これまでと違って積極的に交流するし、エルフ以外も集落で歓迎する。エルフや人間、獣人をお互いに行き来させる、という事だからな。反対するようなら、最初から集落を離れてここにはいないだろう」

 反対するようなら、人を寄せ付けずに最初から集落の奥にこもっていただろうからね。
 人間や獣人だらけの王都に来ようとは思わないだろうし、俺達と親しくなっていないだろう。

「フィリーナもアルネも同意見ね。それなら……そうね、ここで決める事ではないんだけど……」

 通常……リラックスモードのまま、姉さんが少し考える。
 そもそも、こういった親書を受けたり、重要な事を決めたりするのはここでやる事じゃないんだけど……ここ、俺が寝泊まりするために用意された部屋だし。
 ただ、内容を知らなかったとはいえ、俺が呼んで姉さんに話を持ち掛けたから、こうなっている。
 渡す物とか、話す事があるよー……なんて、俺は姉さん相手だから気楽に言っても、アルネからしたら一国の女王陛下相手だからね、また後にして下さいなんて言えなかったとか。

 後で、いきなりは止めてくれ……なんてアルネに言われた。
 冷静に対応していたように見えるけど、内心は焦っていたし、冷や汗が止まらなかったらしい。
 もう少し、王城での作法みたいなのも考えたり、教えてもらった方がいいかもなぁ……と思ってヒルダさんに聞いたら、「リク様は今のままでよろしいのです。だからこそ陛下も、リク様の前で寛ぐ事ができるのだと考えます」なんて言われてしまった。
 いいんだろうか……? あと、姉さんは俺がとか関係なく、人の目がない所で寛いでそうだけど……。

「うん、これからはエルフの集落ではなく、エルフの村としましょう」
「え!?」
「へ、陛下、よろしいのでしょうか……?」

 考えていた姉さんが集落を村とする事を決定し伝え、フィリーナとアルネは驚く。
 集落と村って、何が違うかって素朴な疑問は……口に出さない方が良さそうだ。
 言える雰囲気でもないからね。

「規模としては、そもそも村と認めていいはずだったのよね。ただ、これまでは表立って人間というか、国との拘わりを絶っていたから、とりあえず集落と言っていただけだし。そこで集まって暮らしているのに、集団とも呼べないからね」
「まぁ、我々も間借りしてるような感覚ではありましたが……」
「表立ってではなくとも、魔法関係で技術を供与されている部分もあるし、不法に滞在していると追い出すわけにもいかなかったからね。そもそも、土地が余っているのだからそこに集まって住んでいるだけで、追い出すなんてねぇ……?」
「国の土地は王の物。陛下であれば、気に食わないという理由だけで追い出す事は可能かと。ただ……そうした際に他の者達からの反発、国民から向けられる感情については、わかりかねますが」

 今までは表立って国に所属している……と言える関係じゃなかったから、便宜上集落と呼んで、エルフ達もなんとか受け入れていた状態だったって事か。
 姉さんが追い出すなんてできるわけない……と言うようにヒルダさんに視線をやれば、あちらからはむしろ逆の意見。
 王の所有物として国の領土……土地全てがあるのなら、確かに適当な理由で追い出す事も可能なのか。
 まぁ、感情だけでそこに住んでいる人を追い出す王様なんて、国民から良く思われないのは当然だし、評判は悪くなる一方だろうね。

「わかりかねます、なんて言って避けているけど、結局無能な王の烙印を押されるだけよ。土地が余っているのに住む人を追い払うなんて、必要もなければやる気もないわ。まぁ、エルフは好んで森に住んでいたから、魔物が多く発生する森を管理してくれて、むしろ助かったくらいだわ」
「森でなければ、という事はないのですが……アルセイス様の教えもあり、エルフは森に住む事が多いですね。今は住んでいるエルフも増え、森の外でも暮らしていますが」

 姉さんの言葉に、アルネが答える。
 以前多くの魔物に襲われたのはともかく、森は魔物が好んで棲みつく事が多いので、そこを管理してくれるというのは国としてもありがたいんだろう。
 森にいる魔物が増えれば、いずれ森を離れて別の場所……最悪の場合は人が住む村や街などに来る。

 そうでなくとも、周辺の魔物が増えれば人が近くを通る際にも、魔物との遭遇する可能性が上がり、危険にもなるからね。
 エルフが森に住んでいる事で、これまでも国としての利点はあったって事だろう――。


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