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協力して魔物を打ち倒すモニカ達
しおりを挟む全力でこちらに向かっているキマイラは、もはや正気すら窺えない……大事な尻尾を焼いちゃったんだから、怒って当然よね。
一応フィネさんは斧の投擲という離れて戦う術を会得しているけど、それは今回使えない……投げるための斧や武器は、エルサちゃんの方で使われるし、そもそも斧を投げるくらいでキマイラのようなAランクの魔物がどうこうできたりはしない。
支給された、ワイバーン素材の武器ならなんとか……だけど、それも数を量産できていないから無理な話ね。
だから陣形は、魔物達に向かってソフィーとフィネさんが並んで前に出て、私と母さんは後ろから魔法を使う。
私は槍だからリーチも長く、後ろから二人の死角をカバーしなくちゃね……母さんはリーチの短いレイピアだけど、剣よりは長く槍より小回りが利くため、魔法を使いながら色々立ち回ってくれるんだろう。
それにしても……。
「ちょっと、予想外? 母さん」
「確実に一体ずつと行きたいところだけど、それが難しいのはわかっていたわ。まだ予想の範囲内よ」
キマイラの焼けた尻尾、そして私の炎の槍の余波が他の魔物にも当たった。
当然それらの魔物はこちらに注意を向け、感情のままに、本能のままに私達へと迫る動きを見せる。
怒っているキマイラ程じゃないけど、私達全員を食い殺そう……という気迫すら感じるくらいね。
迫る魔物は、キマイラ以外にオルトスが一体とガルグイユが二体ね……オルトスはキマイラと同じく早い動きでこちらに来ているけれど、ガルグイユは石の体のせいで動きが鈍く遅れているわ。
でも、石の魔物なんだからちょっとくらい炎が当たって熱くても、絶対火傷なんかしそうにないし、こちらに注意を向ける程じゃないんじゃない? と思わなくもないわね。
まぁ結局、こちらに注意を向けさせてしまったんだから、なんとかしないと行けなくて、頭の中で文句を言っても始まらないんだけど。
「なら良かった……!」
不敵に答える母さんに、私も不敵に答えながら、支給された槍を構えて魔法の準備も整える。
これまで使っていた槍じゃないのはちょっとだけ慣れないけど、でも握る手にしっくりくる感覚があるのは、これがワイバーンの素材を使った特別性だからかしら?
魔法具じゃないから、魔力を込めても魔法は使えないのだけど……でも、話しではユノちゃんから教えられた次善の一手のために、魔力を這わせるのに適しているとか。
確か、魔力を這わせやすく、それでいて少ない魔力でさらにこれまで以上の威力を出せるとか……詳しいフィリーナがそう言っていたと、持って来てくれた兵士の人が言っていたわね。
穂先は青く、リクさんがパレードに来ていた鎧などのワイバーン素材の物である証明になっている。
母さんのレイピア、ソフィーの長剣、フィネさんの斧も、同じく剣身や刃の部分が青い。
ワイバーンの青い皮膚……皮を使っているわけではなく、牙を使っているのに鎧と同じく青くなるのは不思議だ……柄なども青みがかっている。
ワイバーンの牙って、私達の歯と同じで白かったわよね……? リクさんが連れて帰ったワイバーン達が、そうだったはず。
「RYUAAAA!」
「フィネ、わかっているな!?」
「はい、任せて下さい! ソフィーさんこそ、遅れをとりませんように!」
「もちろんだ!」
「来るわ……! 魔力よ集まれ、集まれ。貫き通す一筋の魔力、収束した魔力は青の魔力となりて、我が敵を穿つ! アイススタビング!」
迫るキマイラに向けて構えるソフィーとフィネさんは、二人で声を掛け合いながら備える。
私の隣で、短く叫んだ母さんは覚えたてと思われる魔法を、呪文付きで唱えた……魔法屋で完全に覚えきれなかったり、使い慣れない魔法は集中して呪文を唱えながら魔力を集めないといけないのよね。
魔力を多く使う強力な魔法である程、集めるのにも変換するのにも慣れるまで大変だし。
それだけ、強力な魔法って事ね。
「私も負けていられないわ……フレイムランス!!」
母さんの魔法に合わせるように、私も魔法を放つ。
狙うわ、ものすごい勢いで迫って来るキマイラの……足!!
「RYUAA! RYUU!?」
駆けるキマイラの右前足に母さんの魔法、左前足には私の魔法が狙い通り突き刺さる。
怒りでほぼ正気じゃないから、避けるという動作を忘れてしまったかのように、綺麗に当たったわ。
母さんの魔法は氷で作られた針のような魔法……持っているレイピアのように右前脚に突き刺さったそれは、そのまま貫通して後ろ足の半ばまで突き刺さった。
私の魔法は、キマイラが油断していた時の尻尾とは違って全身に力がみなぎっていたからか、左前足を焼いただけね……それでも、足としての機能はほぼ失われているけれど。
「よし、ソフィー、フィネ!」
「「はいっ!」」
「RYAAA!!」
さすがAランクというところかしら……後ろ足だけでソフィー達に向かって、飛びかかるキマイラ。
でも、母さんの鋭い声に反応した二人は、構えていた剣と斧を迫るキマイラの足に向かって振るう。
私達の魔法で、前足が使えず動いていなかったから狙いやすかったんでしょうね。
「せいやぁっ!」
「はぁっ!!」
気の入った声と共に振られた剣と斧は、それぞれ右前足をソフィーの剣、左前足をフィネさんの斧が斬り取った。
「ワイバーンの武器はさすがね。そこらの武器だったら、モニカが焼いた足はともかく、私が貫いた方は折れていてもおかしくないね。っと、モニカ!」
「えぇ!」
足を斬り取られても、飛び掛かる姿勢のままこちらへと向かって来るキマイラ……高くはないけど浮いているんだから、当然よね。
母さんの声に頷いて、離れるように二人で横に飛び、私達の間にキマイラが落ちる。
キマイラの生命力が高いからか、痛みなどもあるはずなのにまだまだ動こうとしているけど、両前足がないから上手くいっていない。
「せいっ!」
「おとなしくしなさい!」
そんなキマイラの胴体に私が槍を突き刺し、母さんはレイピアを片目から深々と突き刺した。
「RYU!? RYA……AA……」
一度だけ、全身をビクンッ! と跳ねさせたキマイラが動かなくなる。
完全に意識を……いや、生命を失ったんでしょうね、なんとか立ち上がろうとしていた巨体の力が抜けた。
「次!」
「く……ぬ……!」
「Bランクとはいえ、これは中々……!」
「ソフィー、フィネさん!」
キマイラの絶命を確認する私に母さんの声……ハッとなって顔を上げると、そちらではソフィーとフィネさんがオルトスの二つある顔、それぞれの牙に自分達の武器を噛ませて抑えていた。
唯一、キマイラの勢いについて来られていたから、すぐ後ろまで来ていたのね!
「危ない! せっ! フレイムブロウ!」
「GYAGYA!!」
向かって左側、ソフィーが抑えていた顔の下からおもむろに上げられる、オルトスの右前足。
それを見て危険と判断した母さんが、素早く動いて右前足にレイピアを突き刺し、さらに魔法を使って勢いを殺す。
魔法の威力はさほど強くはなかったようだけど、オルトスが振り下ろす足の勢いを突き刺さったレイピアと共に削ぐ事ができた。
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