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スピリット達の突撃
しおりを挟む「犠牲になるって事、なの?」
「そうじゃないのだわ。スピリット達は元々実体のない存在。リクの魔力を与えられて召喚する事で、今見ている姿になっているのだわ。だから力を使い果たしても、体を特攻に使っても、犠牲になるとか消えてなくなる事はないのだわ」
「そ、そうなのね……良かったわ……」
目の前で、リクさんの結界を破るために誰かが犠牲になるのは嫌。
私もそうだけど、リクさんも気にしそうだから。
でもエルサちゃんに否定されて、ホッとしたわ……成る程、スピリットはそれらが自然にある力。
依然たゆたう力がどうとか言っていたから、今はただ人に似ている姿を見せているだけで、本体じゃないとかそういう事なんだろうと思うわ。
とにかく、もしフレイちゃん達が消えても、またリクさんが魔力を別けて召喚すれば姿を見せてくれるって事よね。
さっき私を助けてくれた事や協力してくれる事。
それから西門付近で魔物が出た時、避難しようとしていた人達を助けてくれたみたいだし……いつかちゃんとお礼をしたいわね。
「それじゃ行きますよっ!」
「チチ―!」
「一番槍は私に任せろ!」
「応! いつでも来い……じゃないわ、いつでも来なさい!」
私とエルサちゃんが話している間に、纏わせた力に体を溶かし、純粋な魔力の風、水、炎になったウィンドさんとウォーさん、それからフレイちゃん。
緑色の力と青色の力と赤色の力、人の形すらなくけど声を発し、結界の修復を抑えるアースさんに向かった。
そして……。
「きゃっ!」
「……残り少ない力、と言っていたのにだわ。少なくてもスピリットはそれなりに力を持っているのだわー」
思わず上げた悲鳴、頭にくっ付いているエルサちゃんは暢気な声を出しているけど、私にはそれに答える余裕がないわ。
結界に入り込み、手を上げて修復を抑えていたアースさん……そこ目掛けて青い力となったウォーさんが激突。
水の槍、いいえ穂先となって結果にぶつかる。
周囲に激しい水飛沫をまき散らしながら、水の穂先は甲高い音を立てながら結界を破壊していく。
さらにウォーさんに続いて飛び込んだウィンドさん。
恐ろし程の暴風となり、そして竜巻と化した緑色の力は、アースさんを巻き込んで石のつぶてを内包しつつ、ウォーさんの青色の力すら取り込む。
周囲に暴風が吹き荒れ、小さな欠片となったアースさんだった石と水をまき散らし、結界を抉って行く。
……私が槍の刺突をした時より、結界は大きな空間を開け、外へと着実に近づいているわ。
最後にフレイちゃん。
赤い力となったフレイちゃん……この作戦が始まる前に見た、負の感情に支配されたリクさんのものと思われる、赤い光とは違い、どこか優しさや温かさを感じる赤い力。
それは結界を抉って渦巻く、先に結界へとぶつかった各スピリット達の力を包み、爆発した。
「水で貫き、風と土で抉り、炎で破壊……なのだわ、多分だけどだわ」
「……っ!」
辺りに吹き荒れる暴風と土の破片、そして熱。
それらが近くにいた私達を巻き込み、まともに言葉を発せられない……油断すると、吹き飛ばされそうな程の威力があったわ。
こんな状況でも、暢気に声を出せるのはエルサちゃんくらいね、私の頭に掴まっているからかもしれないけれど。
「……モニカ、もうすぐなのだわ。準備はいいのだわ?」
「な、なんとか……かしら」
少しだけ私達へ吹き荒れていた力が弱まり、かろうじてエルサちゃんに答える。
視線を素早く巡らせてみると、ソフィーとフィネさんは武器を地面に突き刺して耐え、他の人達の多くは吹き飛ばされてしまったみたいね。
魔法鎧の重量のおかげか、父さん達も耐えているけれど……シュットラウルさん達を庇っているみたい。
「しっかりするのだわ! 今あそこはスピリット達のおかげでかなりの力が集中しているのだわ。元はリクの魔力だけれど、スピリットとなった時点で変質しているから、魔力を集める事はないけどだわ。でも、結界も抉って使われていた魔力が霧散している今なら……だわ!」
「……かなり多くの魔力が集められる、そういう事ね。んっ……!」
エルサちゃんの声に、槍を持ち足を踏みしめて力が吹き荒れる発生源……スピリット達が突撃した場所を見据えて立つ。
それでも、前に進もうとする私の気力を削ぐような力が吹き荒れているけれど。
でも! 一瞬前より弱まっているし、こうして立つ事も、多少声を出す事もできるわ!
「ちゃんと、クォンツァイタの使い方は考えていたのだわ?」
「もちろんよ。正直、スピリット達の衝撃が凄まじくて頭から飛んじゃいそうだったけれど……」
クォンツァイタを壊す、霧散した魔力が周囲の魔力集め、それらを回収。
自分と籠手の魔力で放つ次善の一手に加えて、結界へ渾身の一撃を放って突破……それらの流れは頭の中でちゃんとできている。
スピリット達の衝撃が凄まじくて、考えが思わずどこかへ行っちゃいそうだったけれど、大丈夫。
あとは、その考えに従って動くだけ……!
「……今だわ、モニカ! 全力でぶち当たるのだわ!!」
「っ!!」
頃合いを見計らってくれるエルサちゃんの合図、というか言葉に、全力で吹き荒れる力に逆らって結界へと動き出す。
槍は背中に飛ばされないように……まずは攻撃を加える目標へ全力で突進。
突進する速度は、何もない時に駆ける速度には負けるけれど、全身にみなぎる力はこれまで以上……ここまでおぜん立てされたんだから、全力を尽くしてリクさんの所へ辿り着かないと!
そのためにもまずは、確実に結界を破って見せるわ!!
「ソフィー、フィネさん!!」
「っ!?」
「なっ!?」
吹き荒れる力を突き進む中、目標の左右で吹き飛ばされないように立つソフィーとフィネさんを呼び、そちらにクォンツァイタを投げて渡す。
二人は驚きながらも、なんとかキャッチ……先に話しておく余裕がなかったから、ちゃんと受け取ってくれて良かったわ。
ただ、武器から片手を離したせいで、二人共少しだけ飛ばされそうになって距離が離れてしまったけれど。
「それを、合図したら私の前の結界に投げて!!」
「成る程、そうするのだわ。――合図は私が出すのだわ!」
「なんだかわからないが、とにかくわかった!」
「承知しました!」
叫んで、二人の間を通って結界へとさらに近付く。
納得した様子のエルサちゃんがソフィー達に叫び、了承してくれる声が聞こえたわ。
目標近くでは、さらに力が吹き荒れていたけれど、段々と力を失って弱まっていっている……これなら!
「んっ! エルサちゃん、いつでも!」
一旦突進を止め、足を踏みしめて背中にある槍を手に持ち、構える。
エルサちゃんに声を掛けながら、自分と籠手のクォンツァイタの魔力を槍に這わせ、穂先に纏わせていく……もっと、もっと魔力を……。
自分の中から絞り出すように、クォンツァイタからも絞り出すように……。
「わかったのだわ! 全力を出せるように少しだけサポートするのだわ!」
エルサちゃんの声と共に、周囲に吹き荒れていた力が止む……いいえ、遮られたようね――。
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