1,547 / 1,955
マルクスさん達も把握していた
しおりを挟む「ヴェンツェル様は、兵士を鍛えるためとしていますが……このままいたずらに遅らせるのもまずいですね」
「そうだな。物資輸送に関してはリク殿のおかげでワイバーンが活躍してくれているが、やはり色々滞ってしまっている。東側は順調に進むようになっているから、村々との行き来が回復するのは近いだろうが……まぁ、その前に街道の整備などもあって、こちらは頭が痛いのだがな」
「ははは……」
本当に痛みがあるのかはわからないけど、頭を押さえているシュットラウルさんには苦笑でしか答えられない。
現状、凍らせてセンテを孤立させているのは俺がやった事だからね。
ちなみに、センテが孤立した事で交流というか人や物が行き交っていたはずの村は、ヘルサルから大きく迂回して援助しているらしい。
大量の魔物が近くを通ったりと、怯える村の人達はかなり多かったらしいけど、被害らしい被害はなかったとか。
せいぜいが、通り道になった畑の一部が魔物に踏みつぶされていたくらいか……それでも、心を込めて作物を作っていた人達にとっては大きな被害と言えるかもしれないけど、人的な被害がほぼないのは安心していい事だろう。
人が無事なら、また作るという選択ができるんだから。
ほぼというのは、一部の村で勇敢どころか無茶をした人が幾人かいたらしく、魔物に立ち向かおうとして飲み込まれたりもしたらしい。
とはいえ、ワイバーンで運んだ魔物もいるとはいえ、センテを取り囲む程の大量の魔物やヒュドラーなど強力な魔物が、一切村などに目もくれずセンテに来たというのは、それだけ統率が取れていたという事でもある。
そもそもが核から復元する際に、ある程度簡単な命令に従うようにはされていたみたいだけど、それを差し引いてもレッタさんの魔力誘導、という能力による先導は凄いと言わざるを得ない。
レッタさんが参加していなかった、魔物による王城襲撃は、王都内でも結構な被害を出したからね。
まぁそれはともかく、今は西側のヘルサル方面の解氷作業に関してだ
「訓練、という事でしたけどできるだけ早く森の魔物を一掃して、解氷作業に当たる人を増やした方がいいかなって思うんです」
「そうだな。ちょうど、私もマルクス殿もその事を話していた」
「そうなんですか?」
「はい。ヴェンツェル様の言うような、兵士たちの訓練というのもこれから先起こり得る事を考えれば、無駄ではないとは思うのですが……これ以上作業が遅れてしまうと、損失が無視できない程になってしまいます。国内随一の街であるヘルサルと、王国東の作物を集積する役目を持つセンテは、繋がっていて初めて機能しますから」
シュットラウルさんとマルクスさんも、西側の解氷作業が遅れている事を気にして、話し合っていたのか。
そりゃそうか、二人は当然ながらセンテの全体の事が報告されているから、現状は把握しているだろうし、俺なんかがちょっと見て考えただけの事くらい、わかっているよね。
「それでなんだが、ヴェンツェル殿にはそろそろ訓練を引き上げてもらおうと考えている。だが、そのための説得材料がな……」
「提案などを持ち掛ける事はできますが、ヴェンツェル様は王軍での最高権限を持っていますし、ヘルサルで事に当たっている兵士はヴェンツェル様指揮下の軍。働きかける事はできても、命令はできません」
「成る程……」
命令系統が違うとかそれに近いか。
それに、マルクスさんはヴェンツェルさんの部下だし、あちらの王軍はヴェンツェルさんの指揮下だから、まずヴェンツェルさんを説得しなければいけない。
「まぁ、作業が遅れる事での損失などを示せば、ヴェンツェル殿も納得はしてくれるだろうがな」
シュットラウルさんの言う通り、ヴェンツェルさんだっていたずらに復興を遅らせたいわけでもないんだから、嫌がったりはしないと思う。
「ただあのヴェンツェル様ですから……訓練が満足できる程できないとなれば、今後の王軍が心配で」
「心配、ですか?」
「王都に戻ってから、となるとは思いますが……厳しい訓練を課せられるのではないかと。今回の事で、我々もそうですが、兵達の訓練不足も実感されたでしょうから」
「だから、納得して、もっと訓練をとならないような説得材料がないか、とマルクスと話していたのだよ」
「成る程、そういう事ですか」
まぁ、ヴェンツェルさんって訓練好きそうだからなぁ。
情報部隊のトップで、副官でもあるハーロルトさんに書類仕事をしろと、訓練場から連れていかれるくらいだし……。
見た目から、確かに体を動かすのが好きなのは間違いないとはわかるんだけど……筋肉好きだし。
そんな人が、部下達の訓練不足を感じたら、かなり厳しい訓練を課そうとするのは想像に難くない。
「でだ、どうせなら冒険者を使うのはどうかと、リク殿が来る直前に話していたんだ」
「冒険者ですか?」
「うむ。冒険者はヘルサルにいた者も含めて、大半がセンテに来ている。ヘルサルの方にも残ってはいるし、他から来てもいるようだがな」
「そうですね。ヘルサルの方では、やっぱり冒険者の数が少ないようで……ヴェンツェルさん達、王軍んの第二陣が到着するまでは、森から街に来る魔物をなんとか迎撃できていた、というくらいみたいです」
今は結構余裕ができているらしいけど、やっぱりセンテに出張って来ている冒険者さん達が多くて、ヘルサルの冒険者は現状数が少ない。
センテの事や、近くの森の魔物の事などがあるけど、もちろんそれ以外では通常通りの依頼が発生しているようだし……多分向こうにはあまり余裕がないだろう。
ヒュドラーが来襲した際に、逃げ出した冒険者は知らないけど、センテで戦ってくれた冒険者さん達は現状外に出られず、当然ヘルサルにも戻れないでいるし。
まぁ暇を持て余しているという程ではなく、ほとんどが復興の手助けを自主的にだったり依頼だったりで、しているんだけどね。
トレジウスさんに対して、マックスさんがやり方次第で俺の作るクランに口利きをするかも、と言ったのが他の冒険者さん達にも広まっているかららしい。
「そこでだ、センテにいて燻っているというと言い方は悪いかもしれんが、それらの冒険者をヘルサルに向かわせられないかとな。そして、森の魔物の一掃を依頼として出す。そうすれば、王軍も氷を融かす作業に集中できるはずだ」
「冒険者は少数精鋭であり、局地的な戦闘にも慣れています。森での戦いに慣れている者も多いので適任でしょう。ただ、センテの冒険者をヘルサルに移送する必要があるのですが……」
「あぁ、そこで俺に話が行くってのにつながるんですね。ワイバーンでヘルサルに運べばと」
「そういう事だ。そこまで話したところで、リク殿が来たのだな」
センテにいる冒険者をヘルサルに運んで向こうの数を増やし、一気に森の魔物を一掃しようという考えってわけだね。
現状解氷作業は、侯爵軍と王軍が担当していて冒険者さん達が活躍する場がないし、復興の手助けをしているとはいっても、外とのつながりがほぼなくなっている以外、センテ内の混乱は収まって来ているようだし、そろそろ冒険者さん達を移動させてもいいって判断したのかもしれない――。
0
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる
暁刀魚
ファンタジー
社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。
なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。
食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。
そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」
コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。
かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。
もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。
なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。
カクヨム様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる