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すごろくで言うふりだしに戻る
しおりを挟むレムレースによる音での魔力吸収が、このままずっと吸収され続ければ、一方的に魔力がなくなって危険かもしれないし、なんとか動いて止めさせるべきかと考える。
音によってか、抜き取られているからか、自分の体内にある魔力そのものを動かすのは少し難しくなっている感覚だけど、それでも何もできないわけじゃない。
レムレースが吸収しているだけならば、このままゆっくりでも近付いて攻撃すれば……。
足や靴に魔力を流して、耳をふさいだままでも蹴って攻撃すれば、この不快な音を止められるはず。
そう思っていたら。
「KIKIKIKIKIKIKI……」
「……と、止まった?」
レムレースから発せられる音が、ゆっくりと潮が引くように小さくなっていき、やがて止まる。
それと一緒に、染み込んで魔力を抜き取られていた感覚もなくなった。
ずっと吸収だけを続ける事は、レムレースにできないのかもしれない。
「あのまま一方的にじゃないのは助かったかもしれないけど……でも、振り出しかぁ」
そう、吸収を終えたレムレースはあろう事か、最初に同じく魔力を吸収した直後と同じく、数本の腕と足、そして大きな体という、これまでの俺の攻撃がなんだったのかと疑問に思うのも当然な姿に戻っていた。
さすがに元に戻っても、魔力自体は消費してレムレースが瀕死なんて事はないだろう。
つまり、再び連続攻撃なりなんなりでレムレースその物を削っていかないといけなくなったわけだ。
「冗談じゃない、これじゃふりだしに戻る、じゃないか。……はぁ、これは中々大変だぁ」
大変で済まされる事じゃないかもしれないけど。
とにかくどうしよう……魔力量も上がって、まだまだ俺自身には余裕はある。
ルジナウムの時やロジーナと戦った後みたいに、消費し過ぎで倒れるなんて事はまだまだなさそうだ。
とはいえ、このままじゃレムレースではなくこちらがジリ貧。
どれだけ攻撃を加えても、吸収されればまた復活するし、その度に戦闘も含めて俺の魔力は消費される。
俺の体力自体も無限なんて事はないし、ずっと戦い続けていたから疲れも感じている。
いつまでこうしてレムレースと戦っていられるのかも、正直怪しい。
まぁ、魔力を吸収されずに無理を通せば、明日の朝くらいまでは戦えるとは思うけどね。
「とはいえさすがにそれは遠慮したい。ならどうするか……」
魔力を流した剣などで、なまじダメージが入る事がわかったため逃げ時を逃した感もある。
とはいえ、このままレムレースを野放しちゃいけないと思うし、結局逃げる選択肢ないわけで。
戦闘中に音による魔力吸収が使われなかったので、一定以下の魔力になるまでとか何らかの条件があるのかもしれないが……俺以外の誰かが対処しようとすると、かなりの危険が伴うだろうし。
連続で放たれる強力な魔法は言わずもがな、ある程度次善の一手や魔法などでレムレースを弱らせても、魔力を吸収され始めたらひとたまりもない。
感覚的に、俺が一度に吸収された魔力はエルフ数人分とかそれくらいだ。
そんなの魔力の少ない人間で構成されている兵士さん達や、冒険者さん達がされたら、一瞬で魔力枯渇による死が待っている。
もしかすると、これもあってレムレースは討伐不可とされているのかもしれない……話では、大きい相手であり一度に全てを燃やすなりで消滅させなければいけないから、とは聞いたけど。
攻撃その物は、魔法主体で威力は凄まじいけどまさしく蹂躙という言葉が似合いそうな、ヒュドラーの方が威力は高いんだけどね。
ヒュドラーもレムレースも、広い範囲に攻撃はできるようだけど、狭い範囲に対する攻撃力はもとより、広範囲の攻撃となると威力や魔法が小さめの物になるレムレースと比べると、圧倒的にヒュドラーに軍配が上がる。
連続使用で補っているようだけど、やっぱり広範囲となると魔力を薄く引き伸ばしているイメージになるからだろうね。
まぁ、結局のところ、どちらも厄介なのは間違いないけど。
「ほんと、あの剣を持ってこなかったのが悔やまれるね……」
いっそのこと、リーバーに乗って一度離脱。
急いでセンテに戻って白い剣を取ってきた後、レムレースを探して決着をつける方がいいのかもしれない。
白い剣にも魔力を吸収する限界があるけど、ヒュドラーやレムレースの魔力を吸収しつくした、あの戦いと比べれば、一体相手の魔力を吸収し尽くすのは苦労しないだろうから。
「エルサも連れてくれば、探知魔法なりでレムレースの位置がわからなくなる、というのはなさそうだし……いや待てよ……って、考えている途中なんだから、もう少しおとなしくしてほしかったなぁ!」
「KI、KIKIKIKI!」
対処法なんかを考えていると、三本の巨大な氷の槍がレムレースの前に出現、俺に向かって射出された。
これまでは、魔力が復活した事での準備とかで猶予があって、俺が考える時間になっていたのかもしれないけど、それも終わったようだ。
叫びながら、氷の槍を飛んで避けた先には地面から土の槍が飛び出してくる。
魔力を流していた剣と鞘でそれを砕きつつ、着地する俺に対し、頭上から炎の矢が無数に降り注ぐ。
「あつ、あつ! 熱いって……!」
咄嗟に空へ向かって剣を振り、鞘でガードするけど、全ては防げない。
服の焼ける匂いと共に、肌に小さな火傷の痛みを感じつつ、なんとかその場を離脱。
……した先に、足元を狙って風の刃が残っていた木々の株を薙ぎ払いつつ迫った。
「先読みとかズルくない!?」
命を懸けた戦闘なのだからズルも何もないけど、とにかく叫びながら鞘を地面に突き刺し、剣魔空斬である程度相殺する。
剣魔空斬はほぼ抵抗がないように、風の刃を斬り裂いたけど、残った物が俺の足下……鞘にぶつかって甲高い音を発する。
「魔力を流しているのに、鞘に傷が……」
それだけ、レムレースが魔力を込めていたんだろう。
もしかしたら渾身の一撃として放ったのかもしれないが、とにかく魔力を纏ってかなりの丈夫さになっていた鞘の表面に薄く切れ込みが入った。
俺の足は無事だし、特にそちらには痛みはなかったけど……魔力すら通して鞘を傷付けるとは。
連続した魔法や威力はともかく、俺が避ける先を予測して魔法を使うなんて……。
「戦いの中で成長している……!?」
なんて、どこぞの台詞のように冗談めかして叫んだけど、内面では本当に驚いている。
さっきまでは、ただそこにいる俺に向かってか、自分に近付かれないよう罠の穴を作る、という程度だったのに避ける先すら予測して見せた。
偶然……とたかをくくって油断してしまうわけにはいかないだろう。
「これ、離脱も難しいんじゃ……っとぉ!?」
空をちらりと見上げると、かなりの高さで飛んでいるリーバーが見えるから、呼べば来てくれるだろう。
ただ、俺が乗る時に隙ができるので、単純に離脱するのも危険が伴う。
動きを予測して魔法を放っているなら尚更だ……と考えている俺に対し、今度は水の魔法。
鉄砲水が生易しく見える程の勢いで、水が数本の線になって矢のように、そして四方八方から飛来――。
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