1,780 / 1,955
ゲオル……ララさんの威圧
しおりを挟む「ふしゃー! ふしゅー!」
まだ興奮している様子のアマリーラさん、ここに来るまでの一応理性的な様子は見られず、猫科の本王が剥き出しになっているような感じだ。
ララさんが悪い事をしたわけじゃないのになぁ……。
とりあえず、落ち着いてもらわないと話もできない。
アマリーラさんを連れて来るべきじゃなかった、と少し後悔しながらもリネルトさんと押さえ続ける。
「ふぅん、成る程ね。時折、獣人の子には同じように見られる事があるけど……なんだか好かれない体質みたいなのよねぇ。特に、男女で一緒にいる女の獣人からは、ね。多分、私が魅力的で取られるって思うからかしら……?」
いえ、単純に見た目と香水か何かの香りのせいだと思います。
と、声には出さず内心で呟く。
「確かに、ご主人様を守りたい気持ちはわかるわぁ。健気に吠えて、威嚇して近づけさせたくないんでしょうけどでもね……」
そう言って、目を細めるララさん。
その瞬間、一気に周囲の温度が下がった。
いや……実際に気温が下がったなんて事はなく、寒気、悪寒が通り抜けただけだ。
これは、殺気というやつだろうか……。
「躾のなっていない子猫は、ご主人様も困らせるわよぉ? なんなら、その背中の大層な剣ごと、この場で叩き伏せてもいいんだぞ、あぁ!?」
野太いララさんの声が、さらに低く、ドスの聞いたような声。
それと共に周囲を凍り付かせるような鋭い殺気と眼光。
もしかしたら、声にも何かが含まれていたのかもしれない。
「ふしゅ!? きしゃ……にゃっ!!」
「え、ア、アマリーラさん!?」
途端、今まで抑えていたはずのアマリーラさんが俺やリネルトさんの後ろに隠れ、体を縮こまらせる。
「えーっと……」
「あらぁ、すっかり怯えちゃったわねぇ。まだまだかわいい子猫ちゃんだこと」
剣呑な雰囲気を醸していたのはいずこかへ、ハートマークを飛ばしそうなウィンクを決めるララさん。
あのアマリーラさんを、ヒュドラーだろうと気後れせずに立ち向かい、森では木々をなぎ倒して駆けるアマリーラさんを、ひと睨みで怯えさせるなんて……。
「ララさんは一体……何者なんですか?」
なんて、直球な質問をしてしまうくらい、驚いている。
ちなみにリネルトさんは、俺と一緒にアマリーラさんを抑えていたため、ララさんの殺気をまともに受けて、尻尾を挟んで体をかすかに震わせていた。
寒さに震えているわけではない……ただ、ララさんに怯えているんだ。
アマリーラさんのように、混乱して本能で動いていなかったおかげなのか、後ろに隠れるまではなっておらず、なんとか耐えてはいるんだろうけど。
「さすがねぇ、リク君は。英雄と呼ばれるだけあるかしら? 私のあれを受けても、平然と質問を返してくるなんてね? アメリちゃんや、カーリンちゃんだったかしら? あちらには向かないようにはしたんだけど、ね」
「平然と、とまでは自信を持って言えませんけど……なんとか」
これまでの経験、という意味ではアマリーラさん達の方が圧倒的に上だろうけど、俺には破壊神に殺意に近い何かを向けられた事があるからね。
あの圧倒的な破壊の力を持つロジーナを目の前にした時と比べれば、全然マシだ。
まぁ、寒気がして体が震える思いくらいはしたけども。
ちなみにアメリさんとカーリンさんは、ララさんの後ろ側にいるので、ドスの利いた声に驚いている以外特に変化はない。
戦うような人たちじゃないし、アマリーラさん達ですら怯えるくらいなんだから、まともに正面から受けなくて良かったと思う。
「昔ちょっとねぇ、色々とやって来たからあれくらいの事はできるのよ。――ち・な・み・に! 本当に私がそっちの子から剣で攻撃されていたら、簡単に捻り潰されるのは私の方だったわよぉ? ふー!」
「ひゃっ! ちょ、ちょっと変なところに息を吹きかけないで下さい!」
俺の質問に答えつつ、ついっと近付いてきたララさんが俺に耳打ちするついでに、息を吹き替えられた。
変な声出ちゃったじゃないか……。
「おほほほほ、敏感なのねぇ」
「誰でも耳は敏感だと思いますけど……はぁ」
笑っているララさんを見て、これ以上文句を言ってもあまり意味はなさそうだと諦める。
それはともかく、あのまま戦闘になっていたらやられていたのがララさんだ、というのはちょっと信じがたい。
アマリーラさん達が怯えた事もそうだけど、俺自身が感じたララさんの殺気はただ事じゃなかったし。
「昔って、何かやっていたんですかララさん……」
「んー、元々冒険者だったのよねぇ。ただ、あまり活躍できずに引退したけど」
「元冒険者……そうだったんですね」
冒険者だからって、簡単にあんな殺気を放つ事なんてできるとは思えないけど、ただの元鍛冶師で今は鞄屋の店主。
というのよりは説得力がある。
あまり活躍できなかった、というのは信じがたいけど。
「あ、その様子だと信じていないわねリク君? リク君も冒険者ならわかると思うけど、私はずっとCランクだったの。素行が悪かったわけじゃないわよ? むしろ、真面目な方だったわ。ただ実力が足りなかっただけ」
「Cランク……」
冒険者ギルドのランクは、昇格するのに実力がなければ不可能というのは当然の事ながら、それ以外にも普段の素行なども考慮される。
エアラハールさんが、素行が悪くて実力はあってもSランクになれなかったようにね。
まぁAランクからSランクと、CランクからBランクへの判断は差があるだろうけども。
「ただ、相手を威圧する事に関してだけは、ランク不相応と言われていたわ。まぁそこから色々あって、結局芽が出そうになかったから鍛冶師になったのよ。力には少しくらい自信があったしね」
その色々あって、というのが気になるけど……ともかく、腕を曲げて力こぶしを作るララさん。
大柄な見た目からだけでもよくわかるけど、多分単純な力比べだけなら、ヴェンツェルさんやマックスさんにも引けを取らないんじゃないだろうか? と思う。
もしかたら、アマリーラさんにも負けないくらいに。
「でも鍛冶師になった後もなんだかんだあって、結局ここで人気の鞄屋さんをやっているってわけ。さっきのあれは、鍛冶師をやっていた際に磨きがかかって、ちょっと便利なのよねぇ。今は役に立つ事が減ったけど。ほら、鍛冶師の所って荒くれの冒険者が良く来るでしょ?」
「はぁ、まぁ……多分?」
人気の鞄屋さんっていうのはちょっと疑問が残るけど……こうして店先で話ていてもお客さんが来る事はないし。
二度目だけど、ララさんのお店に俺達以外のお客さんが来るところを見た事がないからなぁ。
それはともかく……冒険者である以上、魔物との戦いは酒らあれない事が多いから、自分の武具のためにオーダーメイドなどで鍛冶師に直接頼む人っていうのはいるようだからね。
命を預ける道具なんだから、当然でもある。
「そう言った逞しい男達をわからせるのに、ちょうど良かったのよ」
わからせる、と言った瞬間にちょっとだけ頬を染めたのはなんだったのか……あまり気にしない方がいいような気がしたので、このままスルーしておこう――。
0
あなたにおすすめの小説
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
異世界に降り立った刀匠の孫─真打─
リゥル
ファンタジー
異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!
主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。
亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。
召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。
そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。
それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。
過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。
――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。
カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる