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強行突破リク
しおりを挟む「っ!」
全身を覆っている魔力を思いっきり放出し、抱き上げている子供達に火の粉や燃える炎が触れないようにしながら、壁だろうとなんだろうと構わず外へ向かってただ一直線に突き抜ける。
手は塞がっているので、肩で体当たりをするような形で走り抜け、何枚かの壁を突き破った。
俺が通り過ぎたあとの後ろの方から、炎が燃える音以外に何かが崩れるような音も響いてくる気がしたけど、振り返っているような余裕はない。
多少なら、俺は炎にまかれても服以外は平気だけど、目を閉じて体を固くしている腕の中の女の子、それとその子が抱いている力いっぱい泣く子供に、火が当たったら危険だから。
「っ! っ!」
魔力を放出して炎を退け、何度目かの壁らしき物を突き破った先で、ようやく冷たい空気に触れた。
「……もう大丈夫だよ。外に出たから」
「う、うぅ……?」
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
煙などは広がっているけど、燃える家の中より幾分かマシな外の空気を大きく吸い込み、腕の中の女の子に声をかける。
燃え盛る炎に囲まれていたのとは違って、外の空気に気付いたのか、ゆっくりと目を開ける女の子。
幼い子供……改めて見ると、赤ん坊とも言えるくらいの子だけど、その子はまだ泣き続けている。
その声に気付いたのか、外にいた人たちに幾人かがこちらに駆けよって来る……が。
「そこを離れろ! 倒れるぞー!!」
「おっと……! ちょっとやり過ぎちゃったかな?」
遠くで叫び声が聞こえ、慌ててその場を離れる。
どうやら、俺が壁を突き破って出て来た事で、家の倒壊が早まったらしい……まぁ、あれだけ燃えていない場所を探すのが大変なくらい燃えていたら時間の問題だったろうし、仕方ないか。
悠長にしていたら、壁を破壊しなくても中で倒壊に巻き込まれていたかもしれないし。
「あぁ、良かった!! ありがとうございます、ありがとうございます!」
ともあれ、救出した女の子と赤ん坊を助けを求めていた女性と引き合わせる。
女性は赤ん坊を抱き、涙を流しながら感謝をしている。
母親に抱かれて安心したんだろう、赤ん坊は女性に渡してすぐに泣き止み、何事もなかったように笑っている……あれだけの炎に包まれかけていたのになぁ、将来大物になるかも?
赤ん坊を守っていた女の子は他の人に保護されて別の場所で、緊張の糸が切れたのか泣きじゃくっていた。
ちなみに、女の子の方は女性の子供ではなく近所に住む子供だったらしい。
以前からよく赤ん坊と遊んでくれる女の子だったらしく、火事が起きる前の女性が出かける際、赤ん坊を連れて出るかどうか迷っていた時に、その女の子がお守りを買って出たとか。
それで、女性が帰ってくる前に爆発が起き、家が燃えて必死で任された赤ん坊を守っていたみたいだ。
今回の事は結構トラウマになったりするかもしれないけど、もしかしたら女の子の方も将来は強い子になりそうだなぁ。
泣きじゃくりながらも、お姉ちゃんだから弟を守るのは当然だから……なんて事も言っていたらしいし。
それからも、消火活動が進む中での救助活動を続け、別で二度程燃え盛る家に突入して逃げ遅れた人の救出をしたりした。
魔力の放出で炎を退ける事ができるのがわかったため、最初に女の子を助け出す時よりもスムーズに動けて良かった。
まぁその代わり、救助して脱出する時に壁を突き抜けるせいで、家の倒壊が早まったりもしたけど……。
それを見ていたからなのかなんなのか、手が空いている時は燃え移らないように建物の破壊を頼まれることも何度かあった。
こちらは、中に人はいないし燃えていない家なので、ちょっと気が咎めたけど。
「リク様!」
「アマリーラさん」
あらかた目に付く人の救助は終わり、おそらく逃げ遅れた人もいなくなった頃、一息吐いていた俺の元に駆け付けるアマリーラさん。
「さっきは助かりました。板を投げてくれてありがとうございます」
「やはりリク様は気付いておられましたか。ですが、本来であれば私も突入に随行するべきでした。申し訳ありません、あの時はあぁする以外になく……」
「いえ、いいんですよ」
女の子を助けるため燃える家に突入する際、ちょうどよく落ちて来た燃える板。
あれは、こちらはさすがに偶然だろうけど、近くにいたアマリーラさんが俺の動きに気付き、道具として使うために投げた物だった。
まぁ、半分くらい燃えている物だったから熱かったけど……でも、燃えていない箇所はギリギリ火傷しない程度だったからね、うん、熱かったけど。
「アマリーラさんだと、尻尾とかの毛が燃えてしまいそうですから……って、アマリーラさん!」
「ど、どうされました!?」
魔力を纏っている俺はまだしも、アマリーラさんやリネルトさんといった獣人の人達だと、耳や尻尾のモフモフがよく燃えそうだし、火に近付きすぎるのは危ないからなぁ。
と思って見たアマリーラさんの尻尾、多分表面だけだとは思うけど、モフモフで触り心地が良さそうだった毛がチリチリになっていた。
思わず大きな声を出して呼んでしまい、アマリーラさんが驚いて尻尾をピンと立てる。
「すみません、ちょっと取り乱しました。でも、その尻尾……耳も少し」
「あぁ、少々火に近付きすぎました。倒壊する直前の者を助ける際に……リク様のように上手くは行かないものですね」
そういえばさっき、倒壊に巻き込まれそうな人を駆け込んで助ける、なんて事もしたっけ。
真似、というわけじゃないだろうけど、アマリーラさんが救助活動をしていた所でもそんな事があったんだ。
「リネルトならば、もっと素早く上手くやったのかもしれませんが……精進が足りません」
そう言って少し恥ずかしそうにするアマリーラさん。
上手くできなかった事を見られ、恥ずかしいと感じているんだろうけど、救助活動なんだから恥ずかしい事なんて一つもない。
確かにリネルトさんは大柄ながらに、目にもとまらぬ速度で動くから、上手くできる可能性は高いけど……。
「はぁ……俺が頼んだからですね、すみません。それで助かった命があると考えると、こう言うのも間違っているかもしれませんけど……あまり無理はしないで下さいね? 今は、以前のように治癒魔法とかも使えないんですから」
「そんな! 私が未熟だっただけで、リク様が謝罪される事ではございません! もっと精進していれば、無理という事の程ではなかったはずです!」
「でも精進していればと言うなら、今は無理だったはずです……」
こんな言い方はよくないかもしれないけど、精進してできる事で無理や無茶ではなかったとしても、現状では無理をしないとできない事の裏返しでもあるわけだ。
だから、無理をさせてしまったのは、俺のせいとも言える。
救助できて助かった人もいるわけだけど、それでも無理をしないようにお願いした際にちゃんと言っていなかったからね。
「リク様……くっ! 私が未熟なばかりにリク様にいらぬ心配を! このアマリーラ、リク様程の高みには到底及びませんが、今以上に励みます!!」
声高に宣言するアマリーラさん。
そういう事じゃないんだけど……これは、何を言っても今は聞きそうにないかな――。
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