神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
1,815 / 1,955

魔法が使えないからこそ有利に進められる可能性

しおりを挟む


「もし魔法が使えても、向こうにも同じ条件の人物がいるわけですから、実際はあまり大きなアドバンテージにはなりません。えっと、こちらが絶対的な優位に立てない、という事ですね」
「同じ条件の人物、ですかな?」
「はい。帝国には……」

 同じ条件の人物、それはズバリクズ皇帝の事だ。
 ドラゴンと契約していると推測されるわけで、しかも魔力量も多いとくれば、向こうにも俺と同じような人がいると言って過言ではない。
 というか、この世界に来た当初の俺より魔力量は多いみたいだから、同じというよりそれ以上かもしれない。
 そして、俺が魔法を使って戦場で戦った場合、向こうもクズ皇帝が出て来る可能性が高いという事でもある。

 多分立場的にも、本人の性格的にも多くを率いて自分が前線に出るという事はしそうにないけど、魔法という派手な手段を取っていたら、目立つし向こうは出て来ざるを得ないだろう。
 どういう考えであれ、ドラゴンの魔法を大量の魔力で使う相手には、同じくドラゴンの魔法を大量の魔力で使える者しか、現状は相手にできないのだから。
 ただ、現状で俺は魔法が使えないため、魔法を使っての派手な活躍はできないので、勝敗はともかくクズ皇帝は前線に出て来る可能性が低い、と見ている。
 まぁこれは、レッタさんから話を聞いてそう判断しているだけなんだけど、レッタさん自身も、そしてロジーナもそういう評価だ。

 帝国の中央、皇都まで王国側が迫れば別だろうけど……自分達が不利だからといってそれを覆そうと、自ら戦うのではなく、むしろ不甲斐ない自陣側を責め立てるだろう、という見方だね。
 ただまぁ、皇都にまで王国軍が迫る状況になれば、怒り狂ってクズ皇帝が出て来るか、それとも完全に帝国が不利な状況になっているため、引きこもるかの二択でどちらになるかはわからないけど。
 これも、レッタさんやロジーナも同意見だったりする。
 ともかく、俺が魔法を使えないという状況は確実に悪い意味だけでもないってわけだ。

 クズ皇帝が出て来て、大規模で多くを巻き込む魔法を乱発するなんて事にならないし、その場合向こうがどんな事をしてくるのかわからない。
 それがないだけでも、こちらの被害は抑えられるうえそうするように、備えて行動する事もできるってわけだ。
 といった事を話し終えたうえで……。

「ですので、魔物の利用や何をしてくるかわからない部分もありますが、通常と言っていいかはわかりませんが、戦争の範囲を出ません」

 自分で言うのもなんだけど、俺とクズ皇帝が魔法を全力で使いながら戦ったら、怪獣大戦争の様相になってもおかしくない。
 場合によっては街数個分で済むか怪しいけど、かなりの広範囲が荒野になる事も予想できる。
 実際、俺一人でも高次元魔力……赤い光などを使わなくても森を一つ消したり、センテの周囲を氷で閉ざしてしまったりしているからね。

「その事から、俺が全力で戦う事だけでなく、この国の兵士さん達。それから参戦する冒険者さん達などには、精一杯頑張ってもらおうかと思っています。具体的に言うと、こちらが有利になる条件を揃えるように準備する、ですね」
「簡単に言うが、それが難しい事だというのもわかっているのか?」
「もちろんです。先程、俺が参戦するかどうかで兵士さん達の士気が変わるというような事を言われましたけど、それだけでなく……」

 要は、俺の決心や決意というのは、俺自身が参戦する事や全力で戦う事のみではなく、アテトリア王国が有利になるよう準備を整えるって事だ。
 それはつまり、戦争に多くの人を巻き込み、背中を押す行為にも等しいのでずっと迷っていた事でもあるんだけど……。
 参戦する事は決めていたし、冒険者さんなど多くの人をクランを作る過程ですでに巻き込み始めているから、今更ではある。
 でもやっぱり、自分からそう働きかけるのは躊躇している部分があった。

 やっぱり、戦争というはっきりとした殺し合いに、どこかで気が向かない、忌避する気持ちがあったんだろうと思う。
 けど今回、人間を爆発させる破壊工作を帝国が仕掛けている事、爆発する瞬間には遭遇していないけど、その直後の現場を見た事。
 そして、爆発させられる人間の状態を見た事で、決心が固まった。
 帝国は、特にクズ皇帝だけはこのまま放っておく事は絶対にできないし、アテトリア王国は負けてはならないし、被害もできるだけ少なくしたい。

 半分以上、俺の願望というか希望も混ざってはいるんだけどね。
 そうするための行動をする、決意もしたわけだ。
 この戦争を、アテトリア王国の有利にするための手段は、これまででその種のようなものは蒔かれているのだから。
 あとは、俺が決意して行動するだけで動き出すはず……。

「正直、この戦争を圧倒的有利のまま、アテトリア王国が勝利を収めたとして、その後どうなるのかはわかりません」

 あくまで、侵略を企んでいるのは帝国で、王国が防衛側ではあるけど……完全に終わらせるためには、帝国の皇都にいるクズ皇帝をどうにかしないといけないだろうから。
 それはつまり、現皇帝を引きずり下ろさなければならないわけで、ただ守って帝国軍を退けるだけでは終わらないし、達成できないからね。
 皇帝を引きずり下ろした後、帝国の国土をアテトリア王国が占領するのか、代わりの皇帝などをすげるのかなど、政治的な事はわからない。
 無責任だろうけど、あまり興味がないと言った方が正しいかな? もちろん、多くの国民が平穏に暮らせるような国にできる人が望ましいとは思うけど。

「あくまで話を聞いた限りですけど、帝国の皇帝は傲慢で自分が負けるとは絶対に考えていないと思うんです」
「それは……そうだろうな。直接話した回数は少ないが、それでもわかるくらい自分に自信を持って、他者を見下していた」

 そういえば、姉さんは会った事があるんだったっけ。

「はい。そんな皇帝を、人として許されない範囲にまで踏み出した相手を、圧倒的有利に叩き潰して、本人に突き付けたいんですよ。俺自身が正義で、正しいとは一切考えていませんが、それでも絶対に間違っているって」

 魔物だからとはいえ、命を弄ぶ研究。
 さらには、人を人とは思わない研究により作られた人間爆弾。
 そのうえ、レッタさんから聞いた他人の扱い等々……レッタさんがひたすらにこき下ろし、ゴミにも劣ると言っていたくらいのだ。
 その人間性が最悪なのは、簡単にわかる。

「……な、成る程な。傲慢な皇帝の鼻っ柱をへし折るというわけか……中々、痛快な様子が見られそうだ」
「そうかもしれませんね」

 痛快と言いつつも、姉さんは少しだけ暗い表情になっている気がする。
 他の人達も、どこか体を震わせているように見えるし……何かに怯えているようでもある。
 どうしたんだろう?

「しかし、リクが参戦してくれるのはもちろん我が国としても助かる。むしろ、リクが加わるだけでもこちらにとってかなり有利になるはずだ。だが、それ以外にどうするのだ? 当然だが、我々は予想される戦争に備えて、できる限りの準備をしているのだぞ? これ以上どうやって有利にすると言うのだ?」

 それは俺も知っている。
 姉さん達が、宰相さんや大臣だけでなく多くの兵士さんや役職に就く人達が、戦争に備えて頑張って準備している事を。
 ただそれだけじゃなく、俺にできる範囲で有利になるようにするんだけどね――。


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。  主に5大国家から成り立つ大陸である。  この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。  この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。 かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。 ※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!) ※1話当たり、1200~2000文字前後です。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」 高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。 だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや—— 「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」 「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」 剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める! 魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」 魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」 神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」 次々と編み出される新技術に、世界は驚愕! やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め—— 「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」 最強の頭脳戦が今、幕を開ける——! これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語! ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・

Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・ 転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。 そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。 <script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...