神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
1,834 / 1,955

ダイナミック突撃

しおりを挟む


「リク、一つだけ助言しておくの」
「ん、ユノ?」

 エルサの背中を移動し、男の一部が震えあがって縮みそうな高さを実感しつつ、地上にいるオーガの様子見をしていると、後ろからユノに声をかけられた。

「魔力を意識するの」
「それは、前にゴブリンの集団と戦った時に、ロジーナから言われたから今回もするつもりだけど……」
「リクがリクの魔力を意識するのは、内側なの。だから今度は、外側の魔力を意識するの」
「外側?」
「リクは普段、分厚くて異常な魔力に覆われているから、無意識にも外側の魔力が感じづらいの。だけどそうする事で、今回の訓練も少しは簡単になるの」
「簡単にって事は、オーガの攻撃を避けやすくなるとかかな? うーん……まぁ、よくわからない部分も多いけどやってみるよ」
「頑張るのー」

 フリフリと手を振って、暢気な応援の声を出すユノ。
 これからオーガの集団に突撃する俺に対する応援としては、正しいとは思えなかったけど……まぁいくら制限があっても大丈夫、と思っている信頼の証だと思っておこう。
 あと、最近は言われ慣れて来ていて、さらに話が気になって聞き流したけど、またユノに異常な魔力って言われてしまった。
 創造神にまで異常と言われる魔力に関して、そろそろ諦めた方がいいのかもしれない。

 それはともかく、ユノの言葉の意味は分からない部分もあったけど、忘れないよう何度も頭の中で復唱しつつ、地上への効果のため体を傾ける。
 この後、俺が降下を開始したらエルサが移動して、オーガの集団近くに降りてモニカさん達を降ろす予定だ。
 エルサはその後、エアラハールさん達を乗せたまま空で俺達の戦いを観察、モニカさん達は救出作戦の開始ってわけだね。
 モニカさん達が来るまで耐えないといけないけど、ただ避けるだけじゃなくて俺もオーガを倒せるように頑張らないと。

「それじゃ、行ってくるよ」

 皆に手を振って、背中から倒れるように体を投げだす。
 特に降下する際の体勢はなんでもいいけど、ちょっとだけやってみたかっただけだ。
 風を切る音が、耳を刺激する。
 頭から真っ逆さまに地上へと向かい、速度がグングンと増していく。

「ん……と」

 降下しながら、水中を泳ぐように手足を動かして姿勢を変える。
 なんとか、頭から真っ逆さまではなくなったけど……大の字のようになっているから、このままだと痛いでは済まされない気もする、多分。
 水面に飛び込む時にお腹を打って痛い、という話があるけど俺が今落ちている先は、オーガひしめく土の地面だ。
 高さによっては、水面もコンクリート並みの硬さと同じになると言われるけど、そもそも水よりも当たり前に硬い土だと……子供にはお見せできない状況にだけはなりたくない。

「自分から飛び込んでおいて、見せられないよ! な事は勘弁だから……うーん、まぁやる事は一つかな」

 スカイダイビングが趣味だったりしないので、空中での姿勢制御なんて上手くできない。
 かろうじて、頭から落ちないようにするくらいで精いっぱいだ。
 できれば足からがいいんだけど……今度から、やりたいからと言って変な降り方はやめよう、最初に足から飛び込んでおけば多少はマシになるだろうし。
 ともかく、このままだとオーガに殴られるよりも痛い事になるだろうから、一計を案じる。

 なんて格好つけても、ただ単純に硬い土に激突する前にクッションを利用するというだけなんだけどね。
 クッション……木々があればそれが使えるけど、見晴らしのいい場所でちょうど良さそうな樹木なんてない。
 けどその代わりに、集団でひしめいているオーガ達がいるからね……。
 段々と近付くオーガの巨体と地面に、再び不格好ながら手足をバタバタさせて姿勢を変え、ついでに覚悟も決める。

「ちょっと反則くさいけど……まずこれで一体……だっ!」

 万歳するように両手を上げ……頭が下だから、下げているとも言えるけど。
 その体勢のまま、オーガの集団に突っ込む。
 集団の中央付近、そこにいる一体のオーガに狙いを定めて……というか、隙間があまりないくらいだから、どちらにしてもオーガに激突するのは避けられそうにないし、反則でもないかな。
 なんて考えつつ、衝撃に備えて体を固くする。

「……つっ!!」

 手から伝わる衝撃と、ほんの少し柔らかいような肉の感触。
 あまり感じたい感触じゃないのを我慢しながら、ズドンッ! という衝撃と音。
 声を出す事なく、オーガの一体……落下する俺のクッションになったオーガが、地面に沈み弾ける。

「うへぇ……」

 オーガの肩くらいに両手を使って飛び込んだわけだけど……ある程度覚悟していたとはいえ、気持ちの悪い感触と飛び散ったオーガの残骸。
 まぁ、半分以上は原型をとどめているけど、まともに俺の落下を食らった部分は言葉にできない状況になっていた。
 当然ながら、俺の手も含めてオーガのあれこれがこびり付いてしまっていて、思わず嫌な声が出てしまう。

「GIGAY!?」
「GA!? GAGA?!」

 手を振りつつ、両手を上げた格好でオーガの残骸と共に、少し地面にめり込んで小さなクレーターになった場所に立ち上がる。
 ……ビチャ、なのかそれともヌチャなのか、とにかく不快な水音が足元というか、踏みしめた足から聞こえる。
 俺のせいだけど、足場がかなり悪いなぁ……というか、オーガの残骸の上でこのまま戦いたくはないから……。

「ちょっとくらいなら、エアラハールさんも許してくれるよね……」

 腰に下げている鞘から錆びた剣を……うぬ、錆びえているからか途中で引っかかって、中々抜けない……けど、なんとか抜いて構える。
 周囲のオーガは、突如空から降って来た俺に対して状況が呑み込めず、混乱しているようだ。
 その間に、抜いた剣に魔力を通していく……通りが悪いなぁ。
 剣は、表面の半分程度が錆びている状態で、ちょっと乱暴に扱おうものならあっさりと折れてしまいそうだ。

 エアラハールさんが手本を見せてくれた物より、まだマシだけど五十歩百歩みたいなものだろう。
 ちなみに、エアラハールさんが完全に錆び切ってしまている剣で最善の一手を使い、木剣を斬った後にその剣は自戒するように崩れて行ったりもしたけど、これは余談か。

「錆びている方が魔力の通りが悪いのかな。剣の状態とか、材質によって違うとかもあるかもしれないね。よし……今のうちに……」

 素早く視線を巡らせ、足場の悪いこの場からの移動先を定める。
 目測で大体だけど、距離五メートルってところかな……他のオーガが邪魔だけど、なんとか隙間からいけそうだ。
 そして、混乱しつつもとりあえずという形で俺に向かって腕を振り上げているオーガ数体を、視界の端に捕らえながら一気に狙った場所へと飛ぶ。

「GYA!?」

 飛び込んだ勢いのまま、オーガの体に剣を深く突き刺し……って、抜けない!?

「錆びているから、引っかかっているのか……っとぉ!」

 オーガの体に着地するように足を付け、全身で抜き去り、驚いた声を発した以外声を出せなくなったオーガの体を蹴り飛ばす。
 他のオーガを巻き込んで飛んでいくオーガを見つつ、ようやくまともな地面に立つ俺。
 ふぅ、これでようやく落ち着けたね……いや、落ち着いている状況じゃないけど――。


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」 高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。 だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや—— 「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」 「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」 剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める! 魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」 魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」 神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」 次々と編み出される新技術に、世界は驚愕! やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め—— 「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」 最強の頭脳戦が今、幕を開ける——! これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語! ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル
ファンタジー
 異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!  主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。  亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。  召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。  そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。  それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。  過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。 ――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。  カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・

Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・ 転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。 そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。 <script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>

処理中です...