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落ち込みアマリーラさん
しおりを挟む「わかりました。余裕がある時にまた、顔を出してみます」
「はい。では私は、新しい調理道具を試して来ます!」
そう言って、先程の浮かれていたのを見られたのは忘れたのか、それとも考えないようにしているのか、意気込み新たに去っていくカーリンさん。
おそらく、というか間違いなく厨房へと一直線なんだろうな。
何はともあれ、魔物の素材で作られた新しい調理道具によって作られる料理、楽しみだ……これから育てて行くって事は、だんだんと美味しく作れるようになるのかな?
それにしても、ララさんは名工と言われるくらいの人だったの……等々、面白い事を聞けて色々と考えつつ、王城を出た。
「お待たせしました、アマリーラさん」
「リ、リク様……うぅ……」
「はいはい、リク様が来られたのですから、もう落ち込むのは止めて下さいねぇ」
先に王城から出ていたアマリーラさんとリネルトさんを、ワイバーン専用になりつつある運動場で発見し、声をかける。
だけど、なんだかアマリーラさんが尻尾と耳だけでなく肩も項垂れさせて、落ち込んでいる様子だ。
リネルトさんがぞんざいな感じて慰めている? ようだけど、何かあったのかな。
「この場合は、どうしたんですか? と声をかけた方がいいんですかね……」
ついさっきのカーリンさんの例もあるから、見て見ぬふりをした方がいいのかも、なんてちょっと思いつつも一応声をかけてみる。
「気を引くために見せかけで落ち込んでいるわけではありませんのでぇ、面倒だとは思いますけど、一応リク様からも声をかけて頂ければと思いますよぉ」
「そ、そうですか。――アマリーラさん、落ち込んでいるようですけどどうしたんですか?」
リネルトさんに言われて、改めてアマリーラさんに聞いてみる。
というかリネルトさん……初めて会った時はアマリーラさんに忠実というか、のんびりした雰囲気は変わらないながらも、仕えている風に見えていたのに今では見る影もないね。
嫌っているとかそういうわけではなく、親しいからこそなんだろうけど、まぁアマリーラさんの方も王女様とその護衛という関係よりは気安く話しやすいようだから、それでいいのかもしれない。
「き、聞いてくださいリク様! 先程、この国の宰相殿が来られて、私がしたためた父への手紙の内容を、特に魂を込めて書いたリク様に関する部分の修正を求められたんです!」
「あー……な、成る程……」
声をかけた俺に待ってました! と言わんばかりのアマリーラさんだけど……落ち込んでいた理由はあの手紙の修正だったのか。
宰相さん、俺と相談してからすぐアマリーラさんと話に行ったんだろうね、仕事が早い。
「えっとその……あの内容はさすがにちょっと。宰相さんも困っていましたし」
「も、もしかしてリク様も読まれたのですか……?」
「まぁ、はい。宰相さんからどうしようと相談されまして……」
とりあえず、運動場で何事かとこちらを見ている竜騎隊の皆さんには会釈で挨拶をしておき、手紙? と首を傾げているモニカさん達に簡単に事情を話しつつ、宰相さんと相談して修正するよう考えた事などを伝える。
すると何故か、アマリーラさんは先程までの落ち込みようから、自分の尻尾を持って指先で毛をいじりながら、耳をパタパタと動かして顔を赤らめていた。
「リ、リク様に読まれるのは、なんだか恥ずかしい、ですね……」
と、何やらもじもじとしている。
横からリネルトさんが、「そんな恋文ってわけでもないんですからぁ」なんて半分呆れ混じりのつぶやきが聞こえてきた。
「色々と獣王国との交渉というか、伝えるべき内容が人間の国に対するのとは違うという事は宰相さんから聞いていますけど、さすがにあれは大袈裟すぎましたので。もう少し穏便にと言いますか、誇張せず伝わるようにお願いしたいです。まぁ、宰相さんと修正内容は考えたので、そちらを参考に……」
俺はここはどうなんだろう? という部分を指摘したくらいで、やんわりと伝わるように文章の修正などはほとんど宰相さんが考えたんだけどね。
「は、はい……リク様がそう仰るのなら、わかりました。正しく、私の所見と言いますか、私ごときが烏滸がましいですが獣人から見たリク様の評価を綴ったつもりなのですけど」
一国の王女であるアマリーラさんをして、ごときとは一切思わないけど……俺が全ての頂点だとかは誇張が過ぎて正しいとは言えないんじゃないかと思う。
他にも俺が精霊、スピリット達を召喚した事に対して獣人の神、獣神以上の存在であり、つまるところ神! みたいな部分もあったからね、俺は神様じゃなくて人間だから、一応。
今は魔法が使えないから、個性豊かなスピリット達を召喚できないし……フレイちゃんとか、寂しがってそうだなぁ。
「私と宰相殿が止めても、中々納得しませんでしたけどぉ、やっぱりリク様のお言葉はアマリーラさんに絶大な効果がありますねぇ」
「当たり前だリネルト。リク様の言葉は絶対だ。私はそれに従うしかなく、そういう摂理なのだ」
「いやいや、俺の言葉が絶対だとか摂理だとかなんて事はありませんから。結構間違った事も言っていますよ?」
さすがに俺自身、考えや口に出す事が全て正しいなんて事はないからね。
というか、むしろ間違っている事の方がおおいんじゃないだろうか?
なんて思いながら、アマリーラさんにツッコんでいると、後ろからレッタさんの「あのゴミカスは、力のある自分は何をしても許される、全てが正しい事だと思っているけれどね」なんて呟きが聞こえてきた。
間違いなく帝国のクズ皇帝の事だろうけど、話しに聞く印象通り自分本位どころか自分が絶対という考えの人物みたいだね。
さすがに、いくら魔力量が多いからといって、そこまで傲慢になる事はできないしある意味凄い……悪い意味で。
「うむむ、最初に綴った際には女王陛下からは絶賛されたのですが……宰相殿とリネルトに随分と修正されました。ですがそれでもさらに修正を求められるとは……むぅ」
「女王陛下は、リク様をとにかく称賛する内容をいたく気に入ったようでしたねぇ。宰相殿にほとんど全て遮断されていましたけどぉ」
「ね……陛下……はぁ、まったく……」
俺のいない所で何をやっているんだろう、姉さんは。
時折、よくわからない事をしでかす人だから、溜め息は吐くし呆れも混じるけど……まぁ仕方ないかなぁ。
姉さんからしたら、俺こそこの世界で色々とわけのわからないことをしでかしている、ともいえるだろうし、多分お互い様という事なんだろう。
つり合いが取れているのかはわからないけど。
「とりあえず、アマリーラさんは手紙の修正について考えるという事で……」
宰相さんが考えてくれているから、ほぼそれに従うだけでもあるんだけど、何かしらアマリーラさんからも修正とか自分なりの納得みたいなのも考えておいた方がいいと思い、そう言った。
それから、騎竜隊の人達やリーバー、ワイバーンとも少しだけ話して、今日も今日とて魔物の集団の討伐へ出発だ――。
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