神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

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大柄な獣人さんの正体

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 俺がかってに命名したミュータント、黒い膨張する、異常としか言えない存在が完全に消滅した後、モニカさんと合流して軽く状況を報告しあった。
 モニカさんとレッタさんを肩に乗せた大柄な獣人さん……改めて見ると、筋骨隆々で人間としてはかなり大柄な部類のヴェンツェルさんやマックスさんよりも、さらに二回り以上大きい人だ。
 二メートル半くらいありそうな上背だね。
 堀が深く、かなり強面なその外見に不釣り合いな可愛らしい立ち耳と尻尾はネコ科を思わせる。

 人懐っこそうな笑顔を浮かべているが、ライオンの鬣(たてがみ)を彷彿とさせる髪が、獰猛な迫力を醸し出してもいる。
 合流してすぐに降ろされたけど、そんな獣人さんの肩にモニカさん達が乗っていたのは、その方がこちらに向かうのが速いからだろうとの事だ。
 確かに砂煙を上げながらこちらに爆走していたし、かなりの速度だった。
 ともあれ、モニカさん達の方の状況を聞くと、ユノとロジーナはまだ残っている魔物相手に暴れているらしいけど、モニカさん達の周囲にいた魔物はミュータントがとんでもない速度で膨張を始めた辺りで、かなりの数が消滅したらしい。

 確かに、目を向けてみるとミュータントに向かうまで俺がいただろう場所の辺りまで、魔物がいなくなっていた。
 残っていた魔物もいたけど、それは大柄な獣人さんが蹴散らしてくれたらしい。
 その向こうではユノ達の仕業だろう、魔物が空を飛んだりしてはいるからまだ残ってはいるんだけど……さらに向こうの門の方でも、同じように魔物が吹き飛んでいるのも見える。
 あっちは、アマリーラさん達かな? 獣人さん達も協力してくれていると思うけど。

 それはともかく、エルサはモニカさんのところに行ったらしい。
 その後、俺がミュータントを倒したのを見て驚いていたとかはまぁいいとして、全てではないけどかなり減った魔物への追撃を加えるために再び飛び立ったとか。
 まぁその直前に、俺がやった事に対して溜め息というか、呆れを残して行ったらしいけど……エルサに呆れられる程の事をやらかしていたみたいだ。
 獣王国の王都を守るために、必死でやっただけなんだけどなぁ、それで呆れられるのは大分心外だ……呆れているのがエルサだけのようだから、後でモフモフの刑にして自分を慰めよう。

「えっと……本当にいいんですか?」

 エルサの事などはともかくとして、今俺は何故か大柄な獣人さんに肩車をされている。
 とりあえずモニカさん達とミュータントの事を軽く話した後、とりあえずこの場を離れようとした時、疲れからか俺が少しだけふらついてしまったから、こうして運ばれているわけだけど……。
 最初は、四つん這いになった獣人さんから背中に乗ってと言われたのを、交渉の末に肩車で妥協してもらった形だ。
 歩けない程疲れているわけでもないんだけど、どうしてもと言われて肩車にしてもらった。

 おんぶでも良かったんだけど、それよりは肩車の方が……と強面が寂しそうになっていたので、仕方なくだ。
 ワイバーンたちのようにエムなあれな人なのかな? と思ったけど、とりあえず俺の頭の位置が高い方がいいという事らしい。
 獣人の文化、よくわからない事が多いなぁ。
 俺としては、意外と獣人さんの鬣っぽい髪が柔らかくてモフモフしているから、予想以上に癒されていたりはするんだけども。

「問題ありませんぞ! 得体の知れない黒い何かもそうですが、かなりの数の魔物を倒しているのはわかっております! それに、ワシとしましてもリク様に乗ってもらうのは、光栄の至りですからな、ガッハッハッハ!」

 絵に描いたように豪快に笑う獣人さん。
 その獣人さんの肩車をされて見える景色は、大柄なのもあってかなり高い場所からの視点になり、結構新鮮だ。
 もっと高い場所、空を飛ぶエルサの背中から色んな景色を見てはいるけど、これはこれでね。

「しかし、アマリエーレちゃんに聞いていた通り……いや、それ以上の方ですな、リク様は!」
「えっと、お知り合いなんですか? 随分と親しく呼んでいるみたいですけど」

 なんとなく、この獣人さんが誰なのか想像はついているんだけど、肩車をしてもらっているという現実から、頭に浮かぶその正体に目を逸らしつつも、はっきりさせておかないといけない、なんて意識が働いて聞いてしまう。
 レッタさんは特に気にしていない様子……というかレッタさんは姉さんの前に出ても特に変わらないし、ロジーナに意識が向いているからだろうけど。
 けどモニカさんは、何か気まずそうに顔を背けている。
 さっき、方に担がれていた事を思い出しているからかもしれない。

「ワシですか? そういえば、自己紹介がまだでしたな。失礼いたしました。ワシは、レオンハル・レーヴェ・ティアラティアと申します」
「レオンハルさんですか……」

 名乗ったレオンハルさんだけど、ティアラティアというのには聞き覚えがあった。
 というか、アマリーラさん……もといアマリエーレ王女の名乗りの際にも聞いていたし、そもそも獣王国の国名にもなっている。
 さすがにこれは、さっきから頭の中でもしかしてと思っていた内容が、確定した。

「気軽に、ハル、またはレオンとお呼び頂ければと」
「え、えっと……その、レオンハルさんはもしかしてですが、アマリーラさん……じゃない、アマリエーレさんの御父上なのではないです、か? というか、間違っていたら申し訳ありませんが、国王様とかって役職だったり?」

 間違いない、とはわかっていてもシュレディンガーの猫よろしく、はっきりと聞いて認識するまでは本当の意味で確定していない! と自分に言い聞かせつつ、問いかける。
 いやもう、悪あがきというか答えはわかりきっているんだけどね。
 それでも抵抗しないといけない気持ちは、肩車されている現状から湧き出ている気がしなくもない。
 だってそんな、一国の最高権力者が、さっきまで四つん這いになって背中に乗ってとか言っていたし、今は肩車をしてもらっていて……信じたくない俺の気持ちもわかって欲しい。

「ハル、またはレオンです。リク様」

 俺の問いかけには答えず、呼称を強調するレオンハルさん。
 ほぼ確定したレオンハルさんの地位を考えると、そんな気やすく呼べないというのが本音なのだけど、なんとなく呼ばないと許してくれそうにない。
 ……くっ! なぜ俺は肩車されているのか! 隣を歩いているとかだったらまだ、もう少しは呼びやすかったかもしれないのに!
 いやまぁ、妥協とはいえ俺が断り切れなかったからだし、どちらにしても気安く呼べるわけじゃないんだけども……。

「……じゃ、じゃあハル……様で……」
「様などいりませぬ! リク様に様などを付けて呼ばれてしまえば、ワシは全ての獣王国国民に示しが付きませぬのでな!」
「い、いや、むしろ様を付けない方が示しが付かないような……?」

 あー、もう確定したよー! 国民なんて呼び方もそうだけど、その人達に示しが付くかどうかなんて気にするとか、国王様しかいないじゃないかー!
 わかってた事だけどー!
 なんて、俺の心の中の葛藤も構わず、レオンハル……ハル様は気持ち肩を落とした。

「ワシを、獣王の座から引き摺り下ろそうと、そうお考えなのですか、リク様。いえ、リク様がそうお考えになるのであれば、力の掟を持つ獣人である私、そして全獣王国国民は従うまでです! わかりました……ワシは、今日この日をもって――」
「あー! あー! わかりました! わかりましたから! えっと、ハルさん、ハルさんでお願いします!」

 どうして、突然王座から引き摺り下ろすなんて話になったのか!
 しかも自分で獣王の座って言っているから、わかってたけど決定したじゃないかー!
 ともかく、このままじゃまずいので「さん」を付けて呼ぶ事でお願いする。

「さん、も不要なのですが……」
「これだけは譲れません!」

 一国の王様を愛称のうえ呼び捨てなんて、俺の心臓が持たないからね!
 姉さんはかろうじて、見た目は全然変わっちゃったけど話し方や性格などが日本での頃と同じだから、なんとか以前のように接しているけど……あと、そうしないと姉さんが拗ねるのもあるけど。
 初対面の人、しかも俺より随分年上に見えるうえ国王様なんだから、そんな人相手に呼び捨てなんてできない。

「むぅ、承知いたしました」
「はぁ……」
「リクさんは、頑張ったと思うわよ。えぇ」

 モニカさんの慰めの言葉が、ミュータントと戦った時以上に消耗した精神に沁みる。
 実はあの存在に嫌悪感すら覚えるようなミュータントより、ハルさんの方が俺にとって手強い相手なのかもしれない。
 敵ってわけではないのはわかるけど。

「おっとそうでした。ワシは第十四代獣王国の国王、つまり獣王をさせて頂いております。つまり、先程リク様から聞かれたように、アマリエーレちゃんの父です。リク様と比べれば、取るに足らない身分ではありますが」

 シュレディンガーの猫、認識しちゃった……今更か。
 というか、俺と比べて獣王という地位が取るに足らないってどういう事か、よくわからない。
 もしかしたら、アマリーラさんの父という部分がという事なのかもしれないけど。
 
「え、えっと……ハルさん、はどうしてこちらに? いえ、来てくれて助かりましたけど。あ、お礼もまだでした。ありがとうございます。おかげでミュータント……さっきの魔物? に集中して対処できました」
「リ、リク様がお礼を言われる事など!」

 俺にお礼を言われて慌てるハルさん。
 獣王様が人間の一般人である俺に対して慌てるって……と思うが、話が進まないのでとりあえずスルーしておく。
 言っても、多分アマリーラさん達のように、俺の力が云々という話にしかならない気がするしね。

「実は、魔物と戦っていた場に乱入してきたアマリエーレちゃんから聞きましてな。魔物と共に獣兵を吹き飛ばしながら、リク様が助力して下さる説明と共に、いかにリク様が素晴らしい力をお持ちかを……」
「アマリーラさん……はぁ……」

 獣王国側に説明するのに、適役だと思われたアマリーラさんだけど、そうじゃなかったのかな?
 獣兵、おそらく獣人の兵士さん達の事だろうけど、その人達を魔物と一緒に吹き飛ばす理由がよくわからない。
 獣王国での儀式、とかではないよね?

「リク様の事は、アマリエーレちゃんからの手紙にも書かれていましたが、それだけの方ならばと、ワシ自ら様子見に来たというわけですな。門に近づいておられたようですし、あの程度の距離ならば魔物に囲まれても問題ないと判断しましたので」
「そ、そうですか……」

 今こうして、肩車をしてくれているのだから、ハルさんのお眼鏡にはかなったという事だろう。
 相変らず、一国の王様に敬語で話されている事は居心地悪く感じるけど、そこを指摘するとまた変な方向に話が行きそうなので、我慢しておく。
 とりあえず、アマリーラさん達はちゃんと門で事情説明とかはしてくれていたみたいだ。
 それはともかくとして、俺を見に来たという理由もそうだけど、獣王様……つまりこの国で一番偉い人が一人で最前線にいていいのだろうか?

 実際にそうだというのは、ミュータントに向かう前に見たし、見るからに強そうだからそんじょそこらの魔物なんて相手にならないんだろうけど。
 力が物を言う獣人だからこそ、なのかもしれない。
 ちなみに、アマリーラさんと再会したハルさんは感動して涙で前がほとんど見えなくなったらしいけど、事情などは別の獣人さんが聞いたらしい。
 リネルトさんが言っていた通り、本当にアマリーラさんを溺愛しているようだ。

 それから、再開に感動する程長い間離れていたのか、と思ったけど実際にはそうではなく一年くらいの事らしい。
 まぁ溺愛している娘と一年離れるだけでも、父親としては辛いものなのかもしれないけど、かなり大袈裟な人だという人はわかった。
 激情家なんだろう、アマリーラさんもそうなのは父親譲りだからか。

 そんな風にちょっとした話をしながら、獣王国の王都の門へと向かう。
 ミュータントが膨張する際に、方向に構わず逃げたから結構距離が離れていて、途中から少し速足というか駆け足になったけど。

「お~、派手に飛び交ってるなぁ」
「ふむぅ。魔物で遊んでいるように見えますな。危険な魔物も構わず、オルトスまでも……あそこまでは私にもできません。さすが、リク様と肩を並べるお二方です」
「ユノちゃんとロジーナちゃんはなんというか、あまり見て比べない方でいいと思います。リクさんもですけど」
「俺は……って、あまり反論できる余地がなかったよ」
「でしょ?」

 破壊された門の近くでは、宙を舞ったり逆に地面に叩きつけられたりと、魔物が縦横無尽……で合っているのかわからないけど、とにかくユノとロジーナの遊び場になっていた。
 ミュータントの影響で、あれだけひしめき合っていた魔物がほとんど消滅し、さらにユノやロジーナが数を減らし、エルサやフラッドさん達冒険者さんも頑張ってくれた影響だろう。
 だからか、ユノとロジーナは笑っている声や表情が見えるくらい近付いても、魔物を使って遊んでいるようだった。
 馬よりはよっぽど大きく、かなりの重量があるように見えるオルトスですら、二人の遊びに巻き込まれ、宙を舞っている。

 ユノとロジーナが同時に左右から蹴って高々と空に吹っ飛んだオルトスに対し、ジャンプして追いついた挙句、二つの頭を同時に二人で空中で蹴り落としで地面に突き刺していた。
 ツインシュートからのダブルオーバーヘッドキック……というところか。
 この世界には俺と記憶が流れているエルサ以外に、わかる人はいないだろうけど。
 ちなみにツインオーバーヘッドではなく、ダブルオーバーヘッドなのは、別々の頭を蹴り落としているからだ、どうでもいいか。

 というかさすがに俺でも、あそこまでの事はしないのに……できないとは言わない。
 やろうと思えば多分できるんだろうし、やる気はないけど。

「周りの獣人さんが引いていますけど……というか、地面が穴ぼこだらけになってますね。すみません」

 魔物との戦い、いや遊びでそこらの地面がデコボコになってしまっている。
 ここに来るまででもそうだったけど、モニカさんと後退しながら戦っている時はそうでもなかったのに、魔物の数が減って遊びが楽しくなっちゃったんだろうな。
 何故か鼻を押さえて、鼻血を我慢しているようなレッタさんは放っておくとしよう。

「はっはっは! 元々、門を破壊される前から似たようなものでしたからな。どうせ門も作り直しでしょうし、その際に整備すれば問題ないでしょう」
「そう言ってもらえると……」

 俺も結構、地形を破壊するような戦い方をする事があるけど、さすがに門の前はなぁ。
 王都の出入り口だし、そこを破壊するようなのはと代わりに謝る俺に、笑い飛ばすようなハルさん。
 見た目通り、豪気な性格みたいだ。

「それにしても、門は徹底的に破壊されていますね」
「まぁ、王都に侵入するにはそれが一番だったのでしょう。外壁は強固ですし、門が集中的に狙われたのだと。ほとんどがフレイムフォグの仕業ですが」

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