聖白薔薇少女 

平坂 静音

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「遺体はどうなるの? 親が引き取りに来たら、やっぱりあれこれ言うでしょう?」

 つい美波はそんな仮定の話を真に受けて言っていた。

「ここはもとは教会だったから、おあつらえ向きに裏には墓地もあるのよ。学院のなかで亡くなった子で、引き取り人が誰もいないと、そこに葬られることになるの。以前にも食中毒かなんかで亡くなった子がいて、その子も親がいなくて引き取る人がいないから、裏の墓地に葬られたわよ」

 美波も雪葉も無言になってしまった。それでも数秒後、雪葉はぽつりと返す。

「随分、力説するわね」

「ここだけの話じゃないのよ。……五歳ぐらいのころある町に住んでいたとき、やっぱり養護施設にあずけられたことがあるの」

「え? そうなの?」

 雪葉が驚いた顔になるが、そんな反応には慣れているのか、晃子は話しつづける。

「施設の職員とかが厳しくて、言うこと聞かない子は冬でも外に出されたりしたのよ。ある冬の夜、男の子が職員にさからって外に追い出されちゃって、何時間も入れてもらえなくて、それからその子死んじゃったのよ。その子には両親がいないから施設でお葬式出したわ」

 美波も雪葉も呆気にとられた。

 ――それからその子は死んじゃったのよ。

 あまりにも軽い言い方に二人とも驚いてしまったのだ。

「そんなことってあるの?」

 美波は自分の声がふるえていることを自覚した。雪葉は呆然としている。

 木漏こもれ日が不気味なほどおだやかに三人のうえに降ってくる。晃子は苦笑してみせた。

「人が死んで、あれこれ問題になったり取沙汰されたり、その死をめぐって裁判が起こったりするのは、死んだ人に遺族がいるからよ。家族の死に納得ができない、怒りがおさまらないって、泣く人がいるからこそ警察も念入りに調べたりするのよ。泣く人が誰もいないと……人の命なんて軽いものなのよ」

 大人びた言い方だが、少しも生意気に思えないのは、晃子の老成した雰囲気のせいだろう。

 一呼吸おいて、尚も晃子の言葉はつづく。

「もし、もしもよ、ここで妊娠している生徒が流産したって、死産になってしまって、泣いても恨んでも……、十六、七の女の子、大人でもない世間知らずの子どもがどれほど言っても、どうしょうもないのよ。その生徒の親だって、十代で妊娠して生まれた子どもなんて、いくら孫だといっても、やっぱり厄介なものじゃない? むしろ流れてしまった方が助かると思っているわよ。神の思し召しですんでしまうのよ」

「……見たように言うわね」

 そういうのが雪葉にとっては精一杯だったのだろう。だが、つぎの晃子の言葉はまたも雪葉から言葉をうばってしまった。
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