メゾン・クローズ 光と闇のはざまで

平坂 静音

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 事を複雑にさせているのは、コンスタンスが上の下、中の上の階級に生まれ育ったことだろう。いっそ、もうすこし下流の家に生まれ育っていたのなら、物事は簡単だったかもしれない。

(わたし……これから、どうなるんだろう?)

 コンスタンスはついまた溜息を吐きそうになるのをこらえた。

「あら、コンスタンスじゃない?」

 その声にコンスタンスは背を固くした。

 庭にむかって歩いてくるのはペリーヌだ。青い氷のような瞳が青白い冷気を放っている。近づいてくるにつれて、彼女のつけている香水がきつく匂ってくる。

「ねぇ、あなたも今度のパーティー行くの?」
 
 ひどく意地悪げににやにやと笑っている。両隣には彼女のとりまきが二人、やはり性悪そうな笑みを見せている。アガットが怯えた鼠のようにコンスタスの背にかくれる。アガットはこの三人にさんざん苛められた経験があるのだ。

「……さあ。もしかしたら行けないかも」

「あら、残念」

 すこしも残念そうに見えない顔でペリーヌは言う。

 木漏こもれ日は、こんなときでもおだやかに乙女の園に降りそそぎ、五人の少女たちの頭上にこぼれてくる。はたから見れば光のもとにつどう少女たちの姿は美しくのどかなものかもしれないが、現実はちがっていた。

「そうよね、聞いた話じゃ、おうちが大変そうだものね」

 内心コンスタンスはひやりとした。

 ペリーヌの父親は銀行の頭取なのだ。もしかしたらコンスタンスの父の仕事がうまくいっていないことや、そのためにコンスタンスが学院を辞めなければならないかもしれない事実が耳に入っているのかもしれない。

「あら、そうなの?」

 聞こえよがしにとりまきのアンナが口をはさんだ。

「ええ、お父様のお仕事がうまくいってないうえに、なんでもモンマルトルの売春婦が家に住み込んでいるとか……。お気の毒だわぁ」

 コンスタンスは屈辱に頬が燃えるのを感じた。

 たしかにエマはそういう女だとコンスタンス自身、内心で彼女を軽蔑していたが、今それを大嫌いなペリーヌの口から言われると、はげしい怒りを感じる。なんといっても、エマは形のうえではコンスタンスにとって母親ということになるのだ。
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