メゾン・クローズ 光と闇のはざまで

平坂 静音

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「本当のことよ! それでもあんたの母親は、運が良かったのよ。以前だったら懲役刑で刑務所に送られたかもしれないけれど、ちょうどそのころ法律が変わったおかげで二週間の禁固刑ですんだんですってさ。良かったわねぇ」
 
 ペリーヌの青い目には、とても十代の娘が持ちえるとは思えないほどの邪悪さがこもっていた。もともときつい性格の少女だったが、自分が想いを寄せていた男が、敵意を向けていたコンスタンスと抱擁を交わしている現場を見て、さらにそのはげしい気性が爆発したようだ。

「下手したら、あんた前科者の母親をもつことになっていたのかもしれないのよ。いいえ、あんたはやっぱり犯罪者の娘よ! 娼婦、売女、淫乱!」

「やめなさい、ペリーヌ!」

 ペリーヌの口をおさえようとして揉みあいになっている二人を尻目にコンスタンスは教室を出た。

 だが、最後の意地で、駆けだすことはなく、ゆったりと、優雅な動きで。背後でフーリエがなにか叫んだが、どうでも良かった。




「……それで、その記事を載せた新聞社をさがしてたんだね?」

 二人はカフェのテーブルをはさんで向かいあっていた。テーブルにはコーヒーとカフェオレのカップがあるが、二人とも口をつけていない。

「はい。図書館で三日かけて探してみたんです。そしたら……」

 信じたくないが、たしかにその記事はあった。内容は、「昼下がりの人妻の情事」といういかにも三流新聞らしいありふれた煽情的なタイトルで、良家の妻が若い男と密会しているところを警察に事情徴収されたというものだった。しかも――さらに信じられない話だが、男は職業的なジゴロ、つまり男娼のような存在で、金のありそうな人妻を狙ってカモにしていたという。

 この点だけは、どうしてもコンスタンスには信じられなかった。

(嘘よ……。ママンが、そんな男と会っていたなんて、絶対になにかの間違いよ。わたしのママンが……)

 コンスタンスはこみあげてくる涙を必死にこらえた。カフェオレが冷めていくのが目に見えるようにわかる。
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