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六
しおりを挟むコンスタンスは何度も礼を言ってクオレと別れて駅にむかった。最寄りの駅で下りとぼとぼと通りを歩いていると、西日が射してコンスタンスの頬を優しく撫でていく。帽子を深くかぶりなおして家路を急いだ。
エマにも父親にも、停学処分になったことは告げていない。どのみち校長から連絡がいっていたらばれてしまうが、自分から告げる気はなかった。
大通りを過ぎ、住宅街にはいると、どこかの庭に植えられているアカシアの木が目に入った。ここまで来ると家はもう遠くない。そう思うと、逆に足が遅くなる。
(帰りたくない……)
そうは思ってもやがて家の小さな門の前にたどりついていた。父はまだ帰っていないかもしれないが、エマはいるだろうか。
「ああ、お嬢様、遅かったですね」
白エプロンをかけた中年の小太りの家政婦が、扉のところからコンスタンスを見るや声をかけてきた。焦っているようだ。
「奥様がお怒りですよ。今日はお客様が来られるというのに、いらっしゃらないから」
「あ、そうだったわ」
今日はたしか客が来るからもてなしの手伝いをするように言われていたのだ。本当にうっかり忘れていた。
「さ、はやく、はやく。奥様、お嬢様がお帰りですよ」
家政婦はよっぽどエマが怖いのだろう。コンスタンスの右腕を引っぱるようにして、居間へとつれていく。
「あら、やっと帰ってきたの?」
エマは相当怒っているようだ。化粧の濃い顔がゆがんでいる。また酒の臭いが漂っている。コンスタンスの背は緊張した。
「おや、こちらがお宅のお嬢さんかね」
中年の、恰幅の良い身なりの上等そうな男が、八の字に伸ばしている黒髭の片方を指でひっぱって、粘っこい目をコンスタンスに向けてきた。この男が客らしい。
「こちらは、ムッシュー・ニール。いろいろな会社を経営されているのよ。実はね、あんたの仕事のことで相談にのってもらおうと思っているのよ」
「え、仕事……ですか?」
秘書の仕事でも紹介してくれるのだろうか。
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