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七
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コンスタンスはエマの迫力に押されるようにして無言で聞くしかない。本当は聞きたくはないが、どうも話に妙に気を引かれてきたのだ。
「あいつはあたしに優しくしてくれたんだよ。時々会うようになり、その度にリボンやお菓子をくれたんだ。安いもんだったろうよ、田舎出の貧しい女中を手なずけるなんてさ。そうこうしているうちにあたしは腹ぼてになっちまったんだよ」
当時のことを思い出してか、エマは恨みと無念をこめて、どぎつく塗った唇を噛んでいる。
「そ、その赤ちゃんは……?」
堕ろしたのだろうか。中絶は違法のはずだが、それでも影で行われているという話は、コンスタンスでもかすかにたまに読む新聞記事などで知っていた。
いきなり、エマは怪鳥のようにすさまじい笑い声をあげた。
気が狂ったのでは、とコンスタンスが本気で心配するほどに異様な笑い方だった。
「ひーっ、ひっ、ひっ。どうしたと思う? ……あんた本当にわからないのかい?」
エマはドレスの腰に片手を添えると、のけぞるようにしてもう片手を振り、人差し指をコンスタンスにむけた。
「その赤ん坊があんたなんだよ」
世界が崩壊する瞬間があるというのなら、今まさにコンスタンスにとってはそうだった。
視界が真っ暗になり、やがてその暗闇のなかにほのかな光がもどってきたが、それは希望ではなく地獄の迎え火だった。
「嘘よ! でたらめ言わないでよ!」
コンスタンスは悲鳴のような声をあげていた。
「ふん、なにが嘘なもんか。あんたは……嫌でたまらないだろうけれど、あたしの産んだ娘なんだよ。あいつはね、あたしに娼館へ行って金を稼ぐ代わりにお腹のなかの子を引き取ると約束したんだよ」
「嘘、嘘、でたらめよ! わたしにはちゃんとママンがいるんだから! マリーというれっきとした母親が」
ふん、とエマは鼻を鳴らした。
「マリーは子どもを産めなかったんだよ。……一度流産して、以来子どものできない身体になったんだ。それであたしの生んだあんたを引き取ることを納得してくれたんだけれど、考えてみれば馬鹿な話だよ」
「あいつはあたしに優しくしてくれたんだよ。時々会うようになり、その度にリボンやお菓子をくれたんだ。安いもんだったろうよ、田舎出の貧しい女中を手なずけるなんてさ。そうこうしているうちにあたしは腹ぼてになっちまったんだよ」
当時のことを思い出してか、エマは恨みと無念をこめて、どぎつく塗った唇を噛んでいる。
「そ、その赤ちゃんは……?」
堕ろしたのだろうか。中絶は違法のはずだが、それでも影で行われているという話は、コンスタンスでもかすかにたまに読む新聞記事などで知っていた。
いきなり、エマは怪鳥のようにすさまじい笑い声をあげた。
気が狂ったのでは、とコンスタンスが本気で心配するほどに異様な笑い方だった。
「ひーっ、ひっ、ひっ。どうしたと思う? ……あんた本当にわからないのかい?」
エマはドレスの腰に片手を添えると、のけぞるようにしてもう片手を振り、人差し指をコンスタンスにむけた。
「その赤ん坊があんたなんだよ」
世界が崩壊する瞬間があるというのなら、今まさにコンスタンスにとってはそうだった。
視界が真っ暗になり、やがてその暗闇のなかにほのかな光がもどってきたが、それは希望ではなく地獄の迎え火だった。
「嘘よ! でたらめ言わないでよ!」
コンスタンスは悲鳴のような声をあげていた。
「ふん、なにが嘘なもんか。あんたは……嫌でたまらないだろうけれど、あたしの産んだ娘なんだよ。あいつはね、あたしに娼館へ行って金を稼ぐ代わりにお腹のなかの子を引き取ると約束したんだよ」
「嘘、嘘、でたらめよ! わたしにはちゃんとママンがいるんだから! マリーというれっきとした母親が」
ふん、とエマは鼻を鳴らした。
「マリーは子どもを産めなかったんだよ。……一度流産して、以来子どものできない身体になったんだ。それであたしの生んだあんたを引き取ることを納得してくれたんだけれど、考えてみれば馬鹿な話だよ」
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