メゾン・クローズ 光と闇のはざまで

平坂 静音

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「久しぶりですね、ワール記者。相変わらず今日も見事な男装で。しかもそのズボン、俺のよりも上等そうで」

「ふふふふ。そういう君は今日も冴えないね。もっと身なりに気をつけたら、もてるだろうに」

「大きなお世話ですよ」

 とはいうものの、刑事は決して見栄えは悪くない。

 長身、と形容するにはやや身長は足りないが、それでも女性にしては長身のクレオよりも頭ひとつ分背は高く、身につけている灰色の背広は安物ではあっても清潔感があり、異性にあたえる印象は決して悪くはないだろう。もし出会ったのがこんな状況ではなく、刑事と容疑者という立場でなければ、十六歳のコンスタンスは彼にもう少し好意を抱いたかもしれない。

 だが、初対面で自分を殺人者呼ばわりし、自分の家の事情も触れられたくない秘密もすべて知り尽くしている相手である。心に置いたへだては簡単には取り払うことはできない。

「それにしても、コンスタンス、お母さんのことは本当に残念だったね。事件を聞いて、被害者の名前からもしやと思ったけれど……やっぱり君がいたんでびっくりした。義理とはいえ、お母さんなんだから、辛かったろうね」

「ええ……」

 コンスタンスはうなずくことで刑事と目を合わせないようにした。義理ではない、実の母だったのだと言うべきだろうが、やはりその言葉を口からこぼすことなくコンスタンスはクレオの哀悼を受けた。

「それにして、コンスタンス、これからどうするんだい?」

 クレオの問いにコンスタンスが口をひらくより先に割り込んだのはフィオー刑事だ。

「そのまえに、裁判に出席してもらうことになるよ」

「え? どういうことさ?」

 呆然としているコンスタンスの代わりにクレオが訊く。

「明日、マダム・オベールの裁判がある。コンスタンスには証人として出てもらうことになる」

「でも、わたしは売春なんかしていません」

 叫びたいのをこらえてコンスタンスは低く告げた。クレオがびっくりした目をする。
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