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He is 完全無欠??
②
しおりを挟む「いいよ……
俺は、友達として心配してる…
それで、いいだろ…?」
ジャスティンは黙っている。
シュウは、電話越しに小さくため息をついた。
「シュウ、ごめんな…
今は、何も考えられないんだ…
でもさ……
そう考えると、凪は凄い奴だと思うよ。
あんなに舞衣に惚れてさ、あんな短期間で自分の物にしたんだから。ほんと凄いわ… あいつ…」
ジャスティンはそう言うと、電話を切った。 この谷底のような日々は死ぬまで続くのかもしれない。 木の実が戻ってこなければ、きっとそういうことだろう…
ジャスティンはいつの間にか眠っていた。眠っている夢の中でも、木の実の姿を求めている。
青いワンピースを着た後ろ姿の木の実をずっと目で追う自分は、決して、木の実を捕まえたりはしない。 木の実が自分の意思でこちらを振り返る事を、ただひたすら待っている。
ジャスティンは、携帯の音で目を覚ました。 また、誰かからの着信だ。
本当に面倒くさい…
しばらく無視していたが、何度も何度もかかってくる。ジャスティンが携帯を覗くと、非通知番号の表示が出ていた。
木の実か…?
「もしもし、今、どこにいる?」
ジャスティンは木の実からの電話だと信じ切っていた。
「バ~~カ、ニューヨークだよ」
ジャスティンは、まだ夢の続きだと思った。 こんな突拍子もない現実があるはずない。
でも? ニューヨーク??
「は? 凪か??」
ジャスティンは、また違った意味で夢かと思った。 凪から電話がくるなんて、地球がひっくり返ってもあり得ないことだから。
「どうした? 舞衣に何かあったのか?」
電話の先で鼻を鳴らして笑っているのが分かる。
「どうした?はこっちの話だよ。
朝っぱらから、シュウから電話がきて、シュウからだぞ?
東京にいる時だってきたことなにのに、マジでビックリしたよ」
ジャスティンは、ガックリと頭を垂れた。 頼むから余計な事すんなよ…
「大体、話は聞いたよ。
あ~、マジで面白かった~
シュウからの電話で目覚め最悪だったけど、お前のラブロマンスの話でパチッて目が覚めた」
「冷やかしの電話だったら、もう切るぞ」
ジャスティンは凪の性格をよく知っている。 凪は自分に正直すぎて、何もかもオブラートに包まずにはっきりと言い過ぎる。 それで、たくさんの人を傷つけてきた事も誰よりも知っていた。
「俺だって、シュウにジャスの相談に乗ってくれって言われても、そんなの知らねえよって感じなんですけど」
「いいよ、だったら、もう切るから…」
すると、電話の向こうで凪が咳払いをするのが聞こえた。
「じゃ、俺に聞きたい事があれば答えるよ。 役に立つかは知らないけど」
ジャスティンは凪には見えないが、少しだけ微笑んだ。
「凪……
お前はどうやって舞衣の気持ちを自分のものにしたんだ…?」
「それは…
ごめん、全然分からない」
ジャスティンは目を細めて笑った。
「舞衣がどこで俺に惚れたのかは全然分からないけど、なんか、物やお金でめちゃくちゃ迫ったのは確か。
俺はそうしたくてした事なんだけど、世間一般から見たら相当ずれてるかもな」
「全然参考にならない…」
「だろ…?
シュウも考えりゃ分かる事なのに。
俺に聞くより、舞衣に聞いた方が参考になるかもよ。 呼んでこようか?」
ジャスティンはゾッとした。
こんな無様な姿を舞衣には知られたくない。
「いいよ、止めてくれ」
凪は何も言わない。 きっと真っ黒いジョークだったに違いない。
「じゃ、最後に一つだけ教えて。
舞衣が、もし、凪の前からいなくなったら?」
凪はしばらく何も言わなかった。縁起でもない事を聞いて、きっと怒ってるのかもしれない。
「ジャス……
舞衣がいなくなったら…?
そのお前が惚れてる子が、俺が舞衣を想ってるのと同じ位なのなら…
死ぬぞ……
俺は、多分死ぬ…
死にたくなかったら、その子を手離さないことだな」
そんなの言われなくても分かってるよ…
「ジャス……
次に会うのが、葬式じゃない事を祈るよ」
凪はそんな不吉な言葉を残して切りやがった。 でも、なんだか凪と話して、重たい鎖のような何かが外れた気がした。
木の実、三日間だけしか俺は待たない。
三日待っても何もなかったら、俺は会いに行くから。
モナンジュに迎えに行く…
もう、そう決めたから…
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