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He is ジャスティン
③
しおりを挟む木の実の部屋にある小さな丸い食卓に、二人は定位置に座った。そして、小さなテーブルの上には、今日、皆が作ったティラミスが所狭しと載っている。
「あ~、神様、何が起こるのか知りませんが、どうか最初の一個で当たりを出して下さい」
そう言うジャスティンを見て、木の実はやっと笑ってくれた。でも、たくさん並んでいるティラミスを見て、気の毒そうにジャスティンの手を握る。
「私が悪いんだ…
印をつけるのを忘れてて…
私の記憶では多分これだって思ったのをジャスに出したんだけど違ってて、他の人が食べたものにも入ってなかったから、絶対、この中にある…
ジャスティンが飲み込んだりしてなければ……」
ジャスティンはゾッとした。
何が入ってるのか知らないが、飲み込んだのか?と聞かれればあいまいな記憶しかない。
あ~、このティラミスの、それも3個目以内にその何かが入っていますように…
でも、神様は意地悪だった。
5個食べても6個食べても何も出てこない。もうジャスティンは涙目だ。今日を境に、俺はティラミスが苦手になる、間違いなく…
ジャスティンが木の実を見ると、心配と絶望の表情を浮かべながら、残っているティラミスを横から上から確認している。
頼むから、早く出てきてくれ…
ジャスティンは7個目を食べた。が、しかし、何も入っていない。
木の実は目は閉じて、手を合わせて天に祈っている。半ば諦めながら、でも、最後の一個に全ての希望を注いだ。
「じゃ、最後の一個を食べるよ」
「うん…」
カチッ…
「あ、痛ぇ、でも、何かあった」
木の実は満面の笑みを浮かべている。
「何だ? これ?」
ジャスティンは口の中で二回程転がしてみて、それが何かもう分かった。そっと口の中からそれを取り出しティッシュで綺麗にふき取ると、そこには青みがかったシルバーのリングがあった。
「これは?」
木の実は安堵感からか、もう涙が止まらない。ジャスティンが食べてなくて本当に良かった…
「ジャスティン、今日は何の日か分かる…?
去年の今日、ジャスティンがあのアバンクールヒルズTOKYOの地下駐車場で私を見つけてくれた日。
きっと、ジャスティンは、私達がつきあい始めたあの日に何かしようと考えていたのかもしれないけど、でも、その前に私からジャスティンにサプライズをしたかったの…」
ジャスティンは、その珍しい色のリングを光に照らしてずっと見ている。
「不思議な色をしてるでしょ?
ねえ、何かの色に似てない?」
ジャスティンは木の実の顔を見て柔らかい笑みを浮かべた。
「分かってるよ…
あのワンピースの色だろ?」
ジャスティンは、もう我慢できずに木の実を抱き寄せる。
「それだけじゃないよ…
ジャスティンの瞳の色とも一緒…」
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