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嵐の頃 …5
しおりを挟むきゆは顔を覆い、声を上げて泣いた。
きゆがこの島に急いで帰ってきた理由は、自分や流人の両親を守るためでもあった。
どうせ傷つくのなら、少しでも傷が浅い方がいい。
大切な跡取り息子を私が奪ってしまうわけにはいかない…
「きゆがどんなに泣こうがわめこうが、俺と結婚することには変わりはないから。
親が反対しても、俺達さえ愛し合ってれば関係ない。
きゆは、俺の事を愛してるんだろ?」
きゆはジッと下を向いたままだ。
「きゆ?」
「分かんないの…
あの誕生日の日から、自分の気持ちが分からなくなってる…
流ちゃんを諦めようとする気持ちが大き過ぎて、何もかも投げ出せるほど流ちゃんを愛してるのか?って聞かれれば、何も答えられない…
愛してたのは間違いない… でも……
きっと、自分の気持ちに蓋をして鍵をかけてしまったのかも…」
流人は立ち上がり、きゆの隣にまた腰かけた。
「じゃ、俺が、きゆのその心の鍵を壊してその蓋を取っ払ってやるよ。
きゆの不安の元になってる色々な問題にもちゃんと向き合う。
だから、これからの俺をちゃんと見て。
一年の期間限定だけど、もう一度、きゆの心を取り戻すから」
きゆは流人の愛情に満ちた優しい言葉に、逆に息苦しくなった。
今のきゆは、心と、身体と、頭が、それぞれバラバラに主張してくる不安定な状態だったから。
心は愛していると叫びたがって、頭はダメだとつき離す、そして、身体は流人の温もりをいつまでたっても忘れらずにいる…
「でも、俺は、誰にも何に対しても遠慮はしないから…
それはきゆに対してもそうだし、俺の親に対しても、もちろん、遠慮はしない。
何度も言うけど、俺にとって誰がどうのなんか全く関係ない。
俺にとって一番大切なのはきゆの気持ちだけで、きゆが俺の事を好きでいてくれないと、俺自身どうしていいのか分からなくなる。
俺の世界はきゆで廻ってるんだ。
だから、きゆの世界も俺が廻す。
俺がいないと死んでしまうくらいにさせてやる」
流人は今までの重い話と暗い空気をもう忘れたかのように、普段通りに当たり前にきゆを抱きしめる。
きゆは、強引で俺様で、でも寂しがりな流人の性格を誰よりも分かっていた。
「流ちゃん……
この一年は、この島で楽しく過ごそう…
そして、一年が過ぎる頃に、もう一回ちゃんと話そう。
その時に、二人の気持ちがどうなのか、もう一回、ちゃんと、ね?」
流人は不満そうに、でも大げさに頷いた。
今はこれ以上、きゆを苦しめたくなかったから。
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