君の中で世界は廻る

便葉

文字の大きさ
38 / 47

みぞれの頃 …9

しおりを挟む


その日の夜は、きゆと流人はきゆの実家で夕食を取り、その後、流人の自宅へ向かった。
久しぶりにこの家へ入った二人は、リビングに飾れているクリスマスツリーに驚いた。


「なんかすごい豪華…」


きゆがそう呟いてしまうほどに、そのツリーはきゆの背と同じくらいに大きく装飾品も色鮮やかでバランスよくギッシリと飾られている。


「俺だけのためにしては本当に大き過ぎるよな。
俺にはきゆみたいな彼女がいるからいいけどさ、本当に独り者で彼女もいない奴だったら、なんか、毎日これ見て凹みそう」


二人はソファに座り目の前にあるツリーを見ながら、シャンパンで乾杯した。
今日、きゆは流人の家に泊まる事になっている。
きゆの両親がそうすすめてくれた。


「流ちゃん、私からのクリスマスプレゼント…」


きゆはきれいにラッピングした小さな箱を流人に渡した。


「何だろう?」


「流ちゃんはもう何でも持ってるから、プレゼントするものが全然思い浮かばなくて、でも、こうやってこの島で生活している事をいつか思い出してほしいなって考えて、これにしたの」


流人が箱を開けてみると、そこにはシルバーの鎖のついた小さな透明の小瓶が見えた。
流人はそれを手に取り指にぶら下げてじっくり見てみる。


「その小瓶の中の砂をよく見てみて」


流人は目を細めてジッと見たが、ただの白い砂にしか見えない。


「何だろう…?
ごめん、きゆ、全然分からない」


きゆはその小瓶を流人から預かり、軽く振って見せた。


「昔、この島のある海岸では、星の砂がたまに取れたりしたの。
今はもう見れなくなっちゃったけど、私が子供の頃はまだかろうじて取れる場所があって、目の細かいざるを持って家族でよく海に行った。

1㎏の砂にあって一粒か二粒…
私はこの星の砂を集めるのが大好きで、いつも父につき合ってもらって海にへ行って、ざるを振るのに一日かけても構わない変わった子だったんだ」


流人は目を凝らしてもう一度その瓶の中を覗きこむと、丸い砂粒の中に混ざって星形の白い砂粒が何個か入っているのが見えた。


「本当だ、星形の砂を見つけた」


流人は初めて目にする星の砂に目を奪われている。


「でも、これは、きゆの宝物なんじゃないの?
これだけの星の砂を見つけるのに、どれだけの時間を費やしたんだ?」


「こういう田舎に住んでればたくさんの時間がある。
特に子供の頃なんて、休みになっても映画館があるわけでもないし遊園地があるわけでもなくて、でも、こうやって美しい自然が周りにたくさんあった。

こんな事をして楽しんでたの…
だから、どれくらいの時間をって言われても分からない。
好きでやってた事だから」


流人はまだその小瓶を見ている。
幼いきゆの姿を思い浮かべながら…


「でも、こんな貴重な物を俺がもらっていいの?」


「流ちゃんだからあげたいの…
この島を愛してくれて、それだけで私は本当に嬉しいんだから」


流人は小さく頷き、そのチェーンを外し自分の首に回してつけた。


「一生、大事にするよ。
きゆを一生大事にするのと同じように…

永遠に……」


流人は星の砂の入った小瓶を胸元で優しく握りしめ、そしてきゆの方を見て微笑んだ。


「今度は俺からのプレゼントだな」


ソファに座ってシャンパンを味わっていたきゆは、驚いて流人を見る。


「え~、クリスマスはもういいからねって言ったのに?」


「誕生日は誕生日、クリスマスはクリスマス、そこはちゃんと区別をつけなきゃ」


流人はでも少しだけ躊躇していた。
きゆの反応次第で、心がぽきっと折れてしまうかもしれない。
でも、急ぎ過ぎだとか焦り過ぎだとかそんな風に言われたとしても、流人には全く関係ない。
人の意見で左右されるような、そんな人間じゃないから。
でも、きゆの反応は別だ。


「はい、これ…」


流人はきゆに封筒を渡した。
きゆは渡された封筒が、役場の封筒だということに目を丸くした。
いつの間にか隣に座っている流人が、ウキウキなのかドキドキなのかよく分からない表情できゆを見ている。
きゆは封筒の中から一枚の紙切れを取り出した。


「流ちゃん…… これって……」


流人の目から見えるきゆは、決して喜んだ顔はしていない。
きゆの困惑の中に垣間見える憧れの眼差しに、まだ流人を気付いていなかった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

ワケあり公子は諦めない

豊口楽々亭
ファンタジー
精霊の加護により平和が守られている、エスメラルダ公国。 この国の公爵家の娘、ローゼリンド公女がある日行方不明になった。 大公子であるヘリオスとの婚約式を控えた妹のために、双子で瓜二つの兄である公子ジークヴァルトが身代わりになることに!? 妹になり代わったまま、幼馴染みのフロレンスと過ごすうち、彼女に惹かれていくジークヴァルト。 そんなある日、ローゼリンドが亡骸となって発見されて……───最愛の妹の死から始まる、死に戻りの物語!! ※なろう、カクヨムでも掲載しております。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

「四半世紀の恋に、今夜決着を」

星井 悠里
ライト文芸
赤ちゃんからの幼馴染との初恋が、ずっと、心の端っこにある。 高校三年のある時から離れて、もうすぐ25歳なのに。 そんな時、同窓会の知らせが届いた。 吹っ切らなきゃ。 同窓会は三か月後。 私史上、いちばん綺麗になって、けじめをつけよう。

私が生きていたことは秘密にしてください

月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。 見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。 「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」

処理中です...