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目指せ北領!
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スキルをたくさん使って疲れたのか、昨夜少しお酒を飲んだからか、レオがきれいにしてくれた部屋でぐっすり眠ることができた。
エルンストとレオはふたりで隣の部屋を使っている。私だけひとりで寝て悪い気はするが、さすがに男女一緒には寝れないもんね、うん。
二階の部屋は、一階と同じように壁にパッチワークがかけてあり、敷いてあるじゅうたんは複雑な模様で、カーテンも可愛らしい柄だった。
ギルって、カラフルで可愛いものが好きなのかな。今度聞いてみよう。
身だしなみを整えて下へ降りる。リビングへ行くと、ちょうどギルが起きてきたところだった。
……寝起きのギルの神々しさがすごい。
街で買い込んでいたパンと野菜スープ、大量のカリカリベーコンを食べながら、四人で今日の予定をたてていく。
「サキ、疲れはない? 気持ち悪いとか、少しでもいつもと違うのなら休まなくちゃいけない」
「ありがとう、ギル。昨日も今日も、体調に変わりはないよ。ずっと同じ姿勢だったから肩が凝ったくらいかな」
「それはいけません。マッサージしましょう。結局、昨日は断られてしまいましたから」
「マッサージされるのはエルンストさんですよ。まだ本調子じゃないんだから、無理しちゃ駄目です」
「じゃあ、俺がふたりをマッサージするぜ!」
「遠慮します。余計に疲れそうです」
「うん、ごめんねレオ」
「え?」
ショックを受けているレオには悪いが、イケメンにマッサージされるなんて余計に疲れそうなので遠慮したい。
「……昨日あれだけスキルを使って、体の不調がないとは。サキは、魔力が非常に多いのかもしれない」
「温泉がたくさん出せるってこと?」
「サキの場合はそうなる。今日は一日中スキルの確認をする予定だ。適度な運動、マッサージをしながら、少しでも違和感を覚えたらすぐに言ってくれ」
「うん。今日もよろしくお願いします!」
それからスキルの確認をして、新たなことが判明した。
私の温泉は、動物や植物、おそらく魔物にも効くこともわかった。動物や植物に効くように願うので、人間には効果がなくなってしまったけれど、人間以外にも効果があるのは朗報だ。
試しに庭の枯れかけた花を元気にする温泉を出して与えると、みるみるうちに元気になった。これにはギルがすごく喜んでいた。
貴重な花で、枯らしたくなかったらしい。よかったよかった、と喜んでいると、エルンストが少しばかり顔を引きつらせていた。どうしたのか聞いたけれど、答えてくれなかったのが気になる。
午後には、美肌温泉を生み出すことができた。その名の通り美肌に慣れる温泉で、シミしわニキビ肌荒れ毛穴などが消え、美髪にもなれる。この時、私はもう一度、心底思った。
温泉スキルはやっぱり最高! ありがとう女神様!
違う効果の温泉に入ったら、効果が上書きされることが判明している。疲れは感じないので、今日の夜さっそく美肌温泉に入ってみよう。
うきうきと今日の予定をたてていると、レオの入れたお茶を飲んだギルが言った。
「サキの事情を聞いて考えていた。この先行くのであれば、北領がいいと思う。この国の地図は見たか?」
「ちょっとだけ」
「花弁が四つある花のような形になっている。真ん中が王都、四つの花びらがそれぞれ東領、西領、南領、北領と呼ばれている。それぞれ特徴はあるが、今は北領のことだけを話す。まず、サキは召喚の時に王都にいた貴族とは会いたくない。そうだな?」
「うん」
私は異世界で権力がほしかったわけでも、かしずかれたかったわけでもない。
ただ、人として尊重してほしかった。そうしてくれたら、召喚することで命を救ってくれたお礼に出来ることをしたと思う。
「私はいいスキルを持っていなかったから、いたぶってもいい存在として扱われた。ストレスや負の感情のはけ口にされた。さすがにこれ以上我慢することはないかなと思ってお城を出てきたの。リラやエルンストさんに嫌なこと言ったことは絶対に許せないから、もう会いたくない」
「……そうか、わかった。召喚の時、北領以外にいる貴族は、王都にいたはずだ。聖女の夫となるために」
「北領の貴族はいなかったの?」
「ああ。北領は魔物が少ないが、非常に強い個体がいる。北領に貴族は少なく、魔物と戦うのに必死だ。王都に行けず、招かれず、王族や貴族との関わりが薄れていく一方だ。王や貴族に手紙を送っているようだが、かんばしくないようだな」
ギルが教えてくれた情報を、ゆっくりと咀嚼する。
この話だと、北領は見下されたり、見捨てられているように感じる。聖女召喚があったのに王都に呼ばれないなんて、よっぽどなんじゃないだろうか。
「北領は砂糖が主な財源で、砂糖と引き換えに国や貴族から援助を受けているが、今の王になってから援助が減った」
「北領が壊滅状態になったら、魔物が王都に攻め込んでくるんじゃないの?」
「おそらく、結界や予知の聖女に頼るんだろう。北領との境を結界で覆ってしまえば、王都や他の領に被害はない」
「そんな……北領も結界で覆えばいいのに!」
なぜ北領を見捨てるような真似ができるんだろう。そこまで考えて思い出したのは、お城で私を嬉しそうに罵倒する貴族たちの姿だ。
……ああ、そうか。そういう人たちだから、残虐なことが出来るんだ。
「北領は強い魔物によって戦いが絶えず、寒く、支援をしても僅かな砂糖しか得られない。だが、唯一信頼できる貴族がいる領だ」
「ギル、ありがとう。そこなら私の温泉スキルが活かせると思う。北領に行くよ」
この世界に来てよかったと思えるように、私がのんびりしても罪悪感を感じないように、周囲の人たちが幸せになるように全力を尽くそう!
そこで王都にいる貴族とは関わらずにスローライフを送るんだ!
エルンストとレオはふたりで隣の部屋を使っている。私だけひとりで寝て悪い気はするが、さすがに男女一緒には寝れないもんね、うん。
二階の部屋は、一階と同じように壁にパッチワークがかけてあり、敷いてあるじゅうたんは複雑な模様で、カーテンも可愛らしい柄だった。
ギルって、カラフルで可愛いものが好きなのかな。今度聞いてみよう。
身だしなみを整えて下へ降りる。リビングへ行くと、ちょうどギルが起きてきたところだった。
……寝起きのギルの神々しさがすごい。
街で買い込んでいたパンと野菜スープ、大量のカリカリベーコンを食べながら、四人で今日の予定をたてていく。
「サキ、疲れはない? 気持ち悪いとか、少しでもいつもと違うのなら休まなくちゃいけない」
「ありがとう、ギル。昨日も今日も、体調に変わりはないよ。ずっと同じ姿勢だったから肩が凝ったくらいかな」
「それはいけません。マッサージしましょう。結局、昨日は断られてしまいましたから」
「マッサージされるのはエルンストさんですよ。まだ本調子じゃないんだから、無理しちゃ駄目です」
「じゃあ、俺がふたりをマッサージするぜ!」
「遠慮します。余計に疲れそうです」
「うん、ごめんねレオ」
「え?」
ショックを受けているレオには悪いが、イケメンにマッサージされるなんて余計に疲れそうなので遠慮したい。
「……昨日あれだけスキルを使って、体の不調がないとは。サキは、魔力が非常に多いのかもしれない」
「温泉がたくさん出せるってこと?」
「サキの場合はそうなる。今日は一日中スキルの確認をする予定だ。適度な運動、マッサージをしながら、少しでも違和感を覚えたらすぐに言ってくれ」
「うん。今日もよろしくお願いします!」
それからスキルの確認をして、新たなことが判明した。
私の温泉は、動物や植物、おそらく魔物にも効くこともわかった。動物や植物に効くように願うので、人間には効果がなくなってしまったけれど、人間以外にも効果があるのは朗報だ。
試しに庭の枯れかけた花を元気にする温泉を出して与えると、みるみるうちに元気になった。これにはギルがすごく喜んでいた。
貴重な花で、枯らしたくなかったらしい。よかったよかった、と喜んでいると、エルンストが少しばかり顔を引きつらせていた。どうしたのか聞いたけれど、答えてくれなかったのが気になる。
午後には、美肌温泉を生み出すことができた。その名の通り美肌に慣れる温泉で、シミしわニキビ肌荒れ毛穴などが消え、美髪にもなれる。この時、私はもう一度、心底思った。
温泉スキルはやっぱり最高! ありがとう女神様!
違う効果の温泉に入ったら、効果が上書きされることが判明している。疲れは感じないので、今日の夜さっそく美肌温泉に入ってみよう。
うきうきと今日の予定をたてていると、レオの入れたお茶を飲んだギルが言った。
「サキの事情を聞いて考えていた。この先行くのであれば、北領がいいと思う。この国の地図は見たか?」
「ちょっとだけ」
「花弁が四つある花のような形になっている。真ん中が王都、四つの花びらがそれぞれ東領、西領、南領、北領と呼ばれている。それぞれ特徴はあるが、今は北領のことだけを話す。まず、サキは召喚の時に王都にいた貴族とは会いたくない。そうだな?」
「うん」
私は異世界で権力がほしかったわけでも、かしずかれたかったわけでもない。
ただ、人として尊重してほしかった。そうしてくれたら、召喚することで命を救ってくれたお礼に出来ることをしたと思う。
「私はいいスキルを持っていなかったから、いたぶってもいい存在として扱われた。ストレスや負の感情のはけ口にされた。さすがにこれ以上我慢することはないかなと思ってお城を出てきたの。リラやエルンストさんに嫌なこと言ったことは絶対に許せないから、もう会いたくない」
「……そうか、わかった。召喚の時、北領以外にいる貴族は、王都にいたはずだ。聖女の夫となるために」
「北領の貴族はいなかったの?」
「ああ。北領は魔物が少ないが、非常に強い個体がいる。北領に貴族は少なく、魔物と戦うのに必死だ。王都に行けず、招かれず、王族や貴族との関わりが薄れていく一方だ。王や貴族に手紙を送っているようだが、かんばしくないようだな」
ギルが教えてくれた情報を、ゆっくりと咀嚼する。
この話だと、北領は見下されたり、見捨てられているように感じる。聖女召喚があったのに王都に呼ばれないなんて、よっぽどなんじゃないだろうか。
「北領は砂糖が主な財源で、砂糖と引き換えに国や貴族から援助を受けているが、今の王になってから援助が減った」
「北領が壊滅状態になったら、魔物が王都に攻め込んでくるんじゃないの?」
「おそらく、結界や予知の聖女に頼るんだろう。北領との境を結界で覆ってしまえば、王都や他の領に被害はない」
「そんな……北領も結界で覆えばいいのに!」
なぜ北領を見捨てるような真似ができるんだろう。そこまで考えて思い出したのは、お城で私を嬉しそうに罵倒する貴族たちの姿だ。
……ああ、そうか。そういう人たちだから、残虐なことが出来るんだ。
「北領は強い魔物によって戦いが絶えず、寒く、支援をしても僅かな砂糖しか得られない。だが、唯一信頼できる貴族がいる領だ」
「ギル、ありがとう。そこなら私の温泉スキルが活かせると思う。北領に行くよ」
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