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成功?
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「…え」
まず聞こえたのは、成功だー!!といういくつもの歓声。それ以降は幾人もの声が混じりあい、何を言っているのか分からなかった。
私、白井瑠璃は、いつものように、出勤するために自宅のドアを開けただけだった。
いつものように、起床し、準備して、仕事が終われば帰宅し、そうした普通の、変わりない毎日を過ごすはずだった。
過去形になったこの日を、きっと忘れることはない。
軽く視線をめぐらす。実際に目にしたことはないが、例えるならば、写真やメディアで見たことのある、中世ヨーロッパに作られた城の中ような内装。加えて、瑠璃を取り囲むように存在している周囲の人間の服装も鑑みるに、日本ではないのでは? いや下手したら、”地球”ですらない可能性も…。
「……」
嫌な可能性にたどり着いてしまったが、それにしても誰も話しかけてすらこないのはどういうことか。あまりに周りが盛り上がっていて、逆に取り残されたこちらは冷静になるというものだ。仕事でもトラブルはつきものであったし。営業職というものは人間相手なだけに、それはもう様々なアレコレが…いや今は悠長に過去の出来事に逃避している場合ではない。
日本ではなさそうなのに、言葉が通じないわけではないのも不可解であるが好都合と、次は話のできそうな人に目星をつける。
「お話し中、失礼いたします。現状について説明できる方に、お時間とっていただきたいのですが」
ただ喜び合う周囲の中で、1人だけ別格な、服装的に身分が高そうというか、権力ありそうというか、まあそんな感じの美形がいたのだ。その美形と話している男性に話しかけると、彼は一瞬だけ驚いた顔を見せ、柔和に笑みを作った。
「…なぜ、私に?」
何故も何も。
「この中で、一番状況を把握していそうに思いましたので」
この2人以外は意味もなく騒いでいるだけに見え、普通に話しかけても耳を傾けてくれるかどうか。
それに。
「この場の責任者、もしくは準じる方ではないかと」
「…なるほど」
しかし、この男性に話しかけた途端、隣の美形が殺気を飛ばしてきた。何なのだ。この男性はあなたの伴侶かベターハーフか。知らんけど。
「おい、」
「申し遅れました。私は、この国の宰相、ウリエル=クラフトと申します。番様」
つがいさま? …番様だと?
「我の番に先に話しかけられ、あまつさえ、先に名乗るとはどういうことだ!」
「陛下、では番様を無視しろとでもおっしゃいますか」
「我が相手をすればいいだろう!」
いやあなたはまったくお呼びではない。むしろ邪魔になりそう。面倒なことになりそうだから言わないが。
がなり立てる美形は、宰相に一喝して一転、蕩けるような顔でこちらを見てきた。初対面で熱の籠った視線を向けられると、相手が美形でも気持ち悪いなと思ってしまった。新発見。
「それで、何が知りたいのだ、我が番よ」
「…いえ。ウリエルさん、と言われましたか。別室でお話を伺えますでしょうか?」
「なぜ我を無視するのだ!」
「……あなたが何者か存じ上げませんが、冷静に話を聞ける方を希望しておりますので」
ぐぬぬ…と怒気を隠さず唸っているが、先ほどの”陛下”が聞き間違いでなければ、この美形は一国の主ということになる。どんな国かはまだ分からないが、こんなんが治めてて大丈夫?
まあ、王制(たぶん)って基本世襲だろうし(そりゃそうだ)、どこの国も大変だな…と遠い目をするなどした。
─────*─────*─────*─────*─────*─────
こちらも番ものですが、異世界からの召喚で。
異世界召喚って未成年が多いけど、それなりに社会に出て年数経った成人済が召喚されたらどうかなという試み。
ちなみに以前書いていたもので、気が向いたらの更新になる予定。
まず聞こえたのは、成功だー!!といういくつもの歓声。それ以降は幾人もの声が混じりあい、何を言っているのか分からなかった。
私、白井瑠璃は、いつものように、出勤するために自宅のドアを開けただけだった。
いつものように、起床し、準備して、仕事が終われば帰宅し、そうした普通の、変わりない毎日を過ごすはずだった。
過去形になったこの日を、きっと忘れることはない。
軽く視線をめぐらす。実際に目にしたことはないが、例えるならば、写真やメディアで見たことのある、中世ヨーロッパに作られた城の中ような内装。加えて、瑠璃を取り囲むように存在している周囲の人間の服装も鑑みるに、日本ではないのでは? いや下手したら、”地球”ですらない可能性も…。
「……」
嫌な可能性にたどり着いてしまったが、それにしても誰も話しかけてすらこないのはどういうことか。あまりに周りが盛り上がっていて、逆に取り残されたこちらは冷静になるというものだ。仕事でもトラブルはつきものであったし。営業職というものは人間相手なだけに、それはもう様々なアレコレが…いや今は悠長に過去の出来事に逃避している場合ではない。
日本ではなさそうなのに、言葉が通じないわけではないのも不可解であるが好都合と、次は話のできそうな人に目星をつける。
「お話し中、失礼いたします。現状について説明できる方に、お時間とっていただきたいのですが」
ただ喜び合う周囲の中で、1人だけ別格な、服装的に身分が高そうというか、権力ありそうというか、まあそんな感じの美形がいたのだ。その美形と話している男性に話しかけると、彼は一瞬だけ驚いた顔を見せ、柔和に笑みを作った。
「…なぜ、私に?」
何故も何も。
「この中で、一番状況を把握していそうに思いましたので」
この2人以外は意味もなく騒いでいるだけに見え、普通に話しかけても耳を傾けてくれるかどうか。
それに。
「この場の責任者、もしくは準じる方ではないかと」
「…なるほど」
しかし、この男性に話しかけた途端、隣の美形が殺気を飛ばしてきた。何なのだ。この男性はあなたの伴侶かベターハーフか。知らんけど。
「おい、」
「申し遅れました。私は、この国の宰相、ウリエル=クラフトと申します。番様」
つがいさま? …番様だと?
「我の番に先に話しかけられ、あまつさえ、先に名乗るとはどういうことだ!」
「陛下、では番様を無視しろとでもおっしゃいますか」
「我が相手をすればいいだろう!」
いやあなたはまったくお呼びではない。むしろ邪魔になりそう。面倒なことになりそうだから言わないが。
がなり立てる美形は、宰相に一喝して一転、蕩けるような顔でこちらを見てきた。初対面で熱の籠った視線を向けられると、相手が美形でも気持ち悪いなと思ってしまった。新発見。
「それで、何が知りたいのだ、我が番よ」
「…いえ。ウリエルさん、と言われましたか。別室でお話を伺えますでしょうか?」
「なぜ我を無視するのだ!」
「……あなたが何者か存じ上げませんが、冷静に話を聞ける方を希望しておりますので」
ぐぬぬ…と怒気を隠さず唸っているが、先ほどの”陛下”が聞き間違いでなければ、この美形は一国の主ということになる。どんな国かはまだ分からないが、こんなんが治めてて大丈夫?
まあ、王制(たぶん)って基本世襲だろうし(そりゃそうだ)、どこの国も大変だな…と遠い目をするなどした。
─────*─────*─────*─────*─────*─────
こちらも番ものですが、異世界からの召喚で。
異世界召喚って未成年が多いけど、それなりに社会に出て年数経った成人済が召喚されたらどうかなという試み。
ちなみに以前書いていたもので、気が向いたらの更新になる予定。
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