13 / 190
1-2 冒険者
第11話 パートナー
しおりを挟む獣人族の村の調査を終えてから一週間。未知の緑翼が採集したモギの山と、道中で撃退した魔物を売却した結果、合計で金貨二十枚ほどの収入になった。
配分の話し合いの席では、当初は五人で均等に分けるという提案をされたものだが、実際の貢献度を考えるとさすがに気が引ける。なので俺は、総額を四等分した金額の三割程を受け取ると申し出た。
そして少しの議論の後、最終的にキリのいい金貨二枚を受け取るということで話がまとまったのだった。
正直なところ、現金よりも、彼らに荷物持ちとして再び声をかけてもらえる方が、長い目で見ればメリットは大きい。
それに、今回の調査クエストの報酬として、買取り代金とは別で銀貨五十枚も得ている。
思いがけず懐が潤ったのは都合が良かった。
なんせミミズクの面倒を見るためにそこそこ出費が嵩んだからだ。
この世界にはまだ動物を専門に診る獣医がいないので、ケガの治療のために手持ちのものと採集では足りない分のヒール草の購入費。
"止まり木"を用意するのに素材となる木は自分で取りに行ったが、加工する道具も技術も無いので、大工にイメージを伝えて作成してもらった、その製作加工費。
ペットを飼うにはやはり金がかかる。どうやらそれはこの世界でも同じのようだ。
うちに来て間もない頃は『テキ、ニゲル』と距離を取り俺を警戒していたものだが、今ではケガも癒え存外に懐いてくれているようで、外出時には肩に乗って付いてくるようになった。
だがまだ翼に違和感があるようで、飛んでも直ぐに舞い戻り、移動はもっぱら俺頼りだ。
逃げる様子も無いので何と無く一緒にいる感じだが、加護の意思疎通の精度の悪さがもどかしい。
「ホーホホ(タベモノ)」
「ん~? お前の分は宿に帰ってからな」
いつも通り野良達にエサをやっていると、リーフルが自分も欲しいと主張してくる。
一応は俺のペット(?)相棒(?)なので、野良達とは違って安く譲ってもらっている残飯ではなく、ラビトーの肉をあげるようにしている。
こういう場合、アイテムBOXの便利さは代えがたいものだ。
なにせ生肉の状態で収納しても、腐ることなく入れた時と同じ状態で取り出せるのからだ。
「エサやりも終わったし、帰ろうかリーフル」
「ホ(イク)」
(そういえば……いつも誘ってくれてるし、今日はシシリーに夕食ご馳走するか。ついでにマカロも土産に買って帰ろう)
◇
「お帰りヤマトさん、リーフルちゃん」
「ただいまシシリーちゃん、これお土産」 「ホ」
「わぁ、マカロじゃない! これ甘くて美味しいのよね。ありがとう!」
「それで、今日の夕食は?──また部屋? たまには一緒に……」
「うん、今日は付き合ってほしいかな、夕食」
「え⁉ 珍しいわね、ヤマトさんが食堂でご飯食べるなんて」
「いつも断ってばかりだし、リーフルも一緒に住む許可をくれたお礼もしたいしね。今日は俺のおごりで」
「じゃ──じゃあ十分ぐらい待ってて! 仕事切り上げてくるから!」
「わかった、食堂で待ってるよ」
◇
「ホ~?」──ツンツン
リーフルがメニュー表をつついている。
(シチュー、ステーキ……はは、リーフルも興味津々って感じだな)
食堂で席に着き何にしようか考えていると、この宿"カレン亭"の主人兼料理人。シシリーの叔父であるセイブルが問いかけてきた。
「どうする? ヤマト」
「そうですね、ビーフシチューにするか……ミドルラットの香草焼きもいいですね……」
「そうじゃない、シシリーの事だ」
「シシリーちゃん? どういうことです?」
「叔父として、あいつには幸せになって貰いたい」
「はい……そうですよね」
(いきなりなんの話だろう?)
「シシリーがお前に気があることに、気づいてないわけじゃないだろ?」
「まぁ……そこまで朴念仁ってわけでもないので」
「今日はまだいい。が、お前がどう思ってるのかを、その内はっきりしてやってくれ。あいつもそろそろ身を固める年だ」
「シシリーちゃん、確か十八歳ですもんね」
「俺の妹……シシリーの両親の事は聞いてるか?」
「いえ。師匠が同じパーティーを組んでいたって事ぐらいしか」
「そうか……ならビンスから聞いておけ」
「わかりました」
「ちょっと叔父さん! ヤマトさんに何吹き込んでるの!」
準備を終えたシシリーが、後ろから突然怒鳴り込んできた。
「いやいや、うちのシシリーは気立てが良くていい女だろ? ってヤマトに勧めてただけだ」
「もう! 叔父さん! 早く料理持ってきて!」
「はいはい、ごゆっくりどうぞ」
「ごめんねヤマトさん、変な事言われなかった?」
「ううん。うちの看板娘がいかに可愛いかって、自慢されてただけだよ」
「叔父さんったらほんとにもう……それより! 一緒に夕食なんて珍しいね? どうしたの?」
「他意はないよ。さっきも言ったけどリーフルのお礼と、せっかく誘ってくれてるのに、いつも断っちゃってる事への謝罪って感じかな」
「ふーん。他意は無いんだ。それはそれで……」
「ホーホホ(タベモノ)」
「リーフルちゃんなんて言ってるの?」
「早くご飯が食べたいってさ」
「ケガが治ってからはいつも一緒にいるわね~」
「なんか看病してる間に懐かれちゃって」
「綺麗な緑色の鳥さんだし、高く売れるんじゃない?」
いたずらっ子のような笑みを浮かべ、リーフルに目線を送るシシリー。
(確かに地球では全身が緑色のミミズクなんて存在しないし、向こうだったら高く売れただろうなぁ)
俺もそんな事を考えつつ、シシリーに釣られて悪い笑みを浮かべてしまった。
「ホ、ホー! (テキ)」
「……怒ってるみたい。ごめんリーフル」
「じょ、冗談よリーフルちゃん。そういえばヤマトさんは何で動物の言ってることがわかるの?」
「詳しくはわからないよ。何と無くこうかなってだけ。理由は俺にも分からないんだよね」
いつの日か本当の事を話す。
空想に耳を傾けてもらい、存在を受け入れてもらう。
そんな人がいつか俺にも現れるのだろうか。
249
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
弱者の庭〜引きこもり最強種専用施設の管理人始めました〜
自来也
ファンタジー
人間が好きすぎて魔界を追放された元・魔王。
世界を救って燃え尽き気味の元・勇者。
派手に振られて落ち込んでいる精霊王。
逆セクハラが過ぎて追放された千年狐。
可愛すぎて人間が苦手になった真竜。
戦場のトラウマで休養中の傭兵――。
そんな“最強だけどちょっとズレてる”面々が集まる、
異世界のちょっと変わった施設《弱者の庭》。
異世界転生してきた平凡な青年・アルキは、
このゆる〜い最強たちの管理人に任命されてしまった。
日常はバタバタだけど、どこかあたたかい。
そして――住人が一人、また一人と“卒業”を迎えていく。
傷ついた彼らと過ごすのんびりスローライフ。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?
Gai
ファンタジー
不慮の事故で亡くなった中学生、朝霧詠無。
彼の魂はそのまま天国へ……行くことはなく、異世界の住人に転生。
ゲームや漫画といった娯楽はないが、それでも男であれば心が躍るファンタジーな世界。
転生した世界の詳細を知った詠無改め、バドムス・ディアラも例に漏れず、心が躍った。
しかし……彼が生まれた家系は、代々ある貴族に仕える歴史を持つ。
男であれば執事、女であればメイド。
「いや……ふざけんな!!! やってられるか!!!!!」
如何にして異世界を楽しむか。
バドムスは執事という敷かれた将来へのレールを蹴り飛ばし、生きたいように生きると決めた。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる