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1-4 シロップ
第22話 マスコットキャラクター
しおりを挟む緑色のシロップを作る為、果物屋でウーイを手に入れた俺は、宿に戻り厨房を借りることにした。
ダナさんに相談したいところだったが、今日はかき氷の販売日では無いらしく、ギルドの酒場には居なかった。
自宅の場所を知らないし、今日の所は自分で試してみるしかない。
俺が定宿としているカレン亭の主人セイブルは、宿泊客の食事も作っているので、相談相手に良いかと思い宿に戻ってきた。
しかし昼食時を過ぎたこのタイミング、セイブルは仮眠の時間らしく、代わりにシシリーが協力してくれると言うので、彼女に手伝ってもらうことにした。
「ジャムは私が作るよ。ヤマトさんはジャムを薄める砂糖水の準備をお願い」
「わかった」 「ホーホホ(タベモノ)」
アイテムBOXから用意してきた材料を取り出す。
ウーイの実、砂糖、水の入った皮袋、その他使えそうな野菜。
料理素人の俺が思いつく限りの食材をシシリーに確認してもらう。
「へぇ~、ウーイを使って緑色にすることにしたのね!」
「『リーフルと同じ色で可愛く見えるんじゃないか』って提案されてね」
「確かに! リーフルちゃんと同じ色で綺麗なかき氷になりそうね。でも折角私も手伝うんだし、何か私もアイデアを……」
シシリーが何やら考え込んでいる。
全くの素人の俺には詳しい事は分からないが、あまり余計な物は入れない方がいいと思うのだが。
「色は変えられないから……お菓子なんだし……」
「と、とりあえずウーイだけでジャムを作るのはどうかな?」
「そうね、とりあえず最初はウーイだけで作ってみるわ」
鍋にウーイを入れヘラで潰し、砂糖を追加し混ぜ合わせる。
それを火にかけて煮詰めていく。
「見て、いい感じじゃない? これに砂糖水を加えて……」
用意していた砂糖水を鍋に少しずつ加えながら調節していく。
「こんな感じかしら」
「おぉ~、いい具合にシロップっぽいね」
「……うん! 美味しい! こんな感じで良かった?」
「……うん、美味しいね。ありがとうシシリーちゃん」
二人で試食した結果、丁度いい粘度で甘さもあり、綺麗な緑色のシロップが完成した。
「でも普通ね~。折角リーフルちゃんをイメージして作るなら、何か別の要素もあった方がいいと思うの」
「そうかな? 俺はこれで満足だけどなぁ。色も綺麗だし美味しいし」
確かにシシリーの言う通り何か付加価値があった方が、売れ行きも違ってくるだろうとは思う。
かと言って余計に何かを追加して、味も色味も落ちてしまっては本末転倒なわけで……。
「かわいい……癒し……そう! 癒しよ!」
「癒し?」 「ホ?」
「ヒール草を追加するっていうのはどうかしら?」
「ヒール草? 一応持ってるけど」
アイテムBOXから束ねてあるヒール草を取り出す。
「それってクエスト用のヒール草よね、いいの?」
「大丈夫、ただの保険だから」
言うなれば貯金、実物資産だ。
異空間に収納された物は、時が止まっているのか劣化しない。
その特性を利用して、俺が何かの要因で仕事に行けない状態に陥った時に備えて、ヒール草を納品クエスト一回分に相当する量に束ねていくつか収納してある。
万が一があった時、これを納品すれば一時しのぎにはなるので、保険代わりという訳だ。
「ありがと。ちょっとかじってみよ……うっ、苦い……」
「俺も……むぅ、確かにこれは美味しくない」
二人して顔を歪め、失敗の予感が漂う。
このままでは当然使い物にならない、何か加工が必要だ。
「これ……このまま混ぜ込んだら厳しいと思う。ウーイだけじゃダメかな?」
「ダメよ! リーフルちゃんの愛らしい癒しを表現するのに、ヒール草は絶対入れるの! ちょっとメープルシロップで試してみる」
シシリーがシンクの上にある棚から、メープルシロップの入った瓶を取り出し、すり潰したヒール草と混ぜ合わせる。
「……う~ん、ちょっとまだ苦いけど、煮詰めたウーイと合わせるとどうかな……」
シシリーが率先して試行錯誤してくれている。
俺は特にやる事がないし、正直ウーイだけのシロップで満足しているので、口は挟まない方がいいだろう。
「うん、これなら大丈夫かも」
どうやら試し終わったようだ。
「俺も少し……うん、多少苦味は残るけど、悪くないかも」
「逆にちょっと苦味がある方が、『ヒール草入りで滋養強壮に効く』って宣伝文句になるんじゃない?」
「なるほど。シシリーちゃんは賢いね」
「えへへ……」
「それじゃあ完成したことだし、瓶に詰めて収納しておくよ。ありがとうシシリーちゃん」
「どういたしまして。お礼は晩御飯おごりね!」
「わかった。リーフルのエサやり体験もおまけに付けるよ」
「ホーホホ(タベモノ)」
◇
今日はダナさんがかき氷を販売しているので、昨日シシリーに手伝ってもらって完成した緑色のシロップを見てもらう。
「こんにちはダナさん」 「ホホーホ(ナカマ)」
「こんにちはヤマトさん、リーフルちゃん」
「新しいシロップを考えてみたので、試食していただけますか?」
アイテムBOXから緑シロップを取り出しダナさんに差し出す。
「へぇ! 綺麗な緑色。リーフルちゃんみたいね」
「まさにそうなんです。リーフルをイメージしてウーイの実とヒール草を使って、健康にもいいシロップが出来ました」
「早速頂いてみようかしら」
ダナさんがユニーク魔法で氷を作り出し、機械にかけかき氷を用意する。
緑シロップを回し掛けると、氷に馴染んだ部分が想像していたよりもさらに綺麗な緑色となって、食欲を刺激する。
「はむ……ヒール草かしら、少し苦味があるのね」
「一応メープルシロップを使って苦味は抑えたんですが……」
「不味いわけじゃ無いわ、でも好き嫌いがはっきりと出るでしょうね。私は好きよ? 試しに販売させてもらってもいいかしら?」
反応は微妙、ダナさんの言う通り不味いわけでは無いと俺も思う。
ただ、菓子としてはどうか、という所だろう。
二人で相談していると、後ろから声をかけられた。
「あれ? ヤマトさんじゃない、リーフルちゃんもこんにちは。ヤマトさんもかき氷を買いに来たの?」
未知の緑翼のネアもかき氷を買いに来たらしい。
「そんな所です。あ、丁度いい。ネアさんもこれ、試食してもらえませんか? ヒール草入りで少し苦いですが、健康にいいんです」
「緑色なのね、リーフルちゃんをイメージした新作かしら。どれどれ……うん、確かに少し苦いけど、いいんじゃない? 私だったら次も買うわ」
「ほんとですか、良かった」
「ヤマトさん、このかき氷の名前はどうしましょうか。ウーイとヒール草ですよね……」
「名前なら自信があるわ!」
ネアが大きめの声量でアピールしてくる。
確かネアはネーミングセンスが……。
「……リーフルスペシャル!」
「リ、リーフルスペシャルですか……」
「中身をあれこれ説明する名前より、インパクトがあっていいと思わない?」
「ま、まぁそうですかね? ダナさんはどう思います?」
「いいんじゃないかしら! リーフルちゃんを象徴としたかき氷って感じがして、可愛いわ」
「ホ?」
"ブルーハワイ"こそ食べることは叶わなかったが、相棒が商品になってこれからみんなに愛されると思うと、一連の出来事も無駄ではなかった気がする。
リーフルには高めのお肉を買ってやろう。
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