平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ

文字の大きさ
25 / 190
1-4 シロップ

第22話 マスコットキャラクター

しおりを挟む

 緑色のシロップを作る為、果物屋でウーイを手に入れた俺は、宿に戻り厨房を借りることにした。

 ダナさんに相談したいところだったが、今日はかき氷の販売日では無いらしく、ギルドの酒場には居なかった。

 自宅の場所を知らないし、今日の所は自分で試してみるしかない。

 俺が定宿としているカレン亭の主人セイブルは、宿泊客の食事も作っているので、相談相手に良いかと思い宿に戻ってきた。

 しかし昼食時を過ぎたこのタイミング、セイブルは仮眠の時間らしく、代わりにシシリーが協力してくれると言うので、彼女に手伝ってもらうことにした。

「ジャムは私が作るよ。ヤマトさんはジャムを薄める砂糖水の準備をお願い」

「わかった」 「ホーホホ(タベモノ)」

 アイテムBOXから用意してきた材料を取り出す。

 ウーイの実、砂糖、水の入った皮袋、その他使えそうな野菜。

 料理素人の俺が思いつく限りの食材をシシリーに確認してもらう。

「へぇ~、ウーイを使って緑色にすることにしたのね!」

「『リーフルと同じ色で可愛く見えるんじゃないか』って提案されてね」

「確かに! リーフルちゃんと同じ色で綺麗なかき氷になりそうね。でも折角私も手伝うんだし、何か私もアイデアを……」

 シシリーが何やら考え込んでいる。

 全くの素人の俺には詳しい事は分からないが、あまり余計な物は入れない方がいいと思うのだが。

「色は変えられないから……お菓子なんだし……」

「と、とりあえずウーイだけでジャムを作るのはどうかな?」

「そうね、とりあえず最初はウーイだけで作ってみるわ」

 鍋にウーイを入れヘラで潰し、砂糖を追加し混ぜ合わせる。

 それを火にかけて煮詰めていく。
 
「見て、いい感じじゃない? これに砂糖水を加えて……」

 用意していた砂糖水を鍋に少しずつ加えながら調節していく。

「こんな感じかしら」

「おぉ~、いい具合にシロップっぽいね」

「……うん! 美味しい! こんな感じで良かった?」

「……うん、美味しいね。ありがとうシシリーちゃん」

 二人で試食した結果、丁度いい粘度で甘さもあり、綺麗な緑色のシロップが完成した。

「でも普通ね~。折角リーフルちゃんをイメージして作るなら、何か別の要素もあった方がいいと思うの」

「そうかな? 俺はこれで満足だけどなぁ。色も綺麗だし美味しいし」

 確かにシシリーの言う通り何か付加価値があった方が、売れ行きも違ってくるだろうとは思う。

 かと言って余計に何かを追加して、味も色味も落ちてしまっては本末転倒なわけで……。

「かわいい……癒し……そう! 癒しよ!」

「癒し?」 「ホ?」

「ヒール草を追加するっていうのはどうかしら?」

「ヒール草? 一応持ってるけど」

 アイテムBOXから束ねてあるヒール草を取り出す。

「それってクエスト用のヒール草よね、いいの?」

「大丈夫、ただの保険だから」

 言うなれば貯金、実物資産だ。

 異空間に収納された物は、時が止まっているのか劣化しない。

 その特性を利用して、俺が何かの要因で仕事クエストに行けない状態に陥った時に備えて、ヒール草を納品クエスト一回分に相当する量に束ねていくつか収納してある。

 万が一があった時、これを納品すれば一時しのぎにはなるので、保険代わりという訳だ。

「ありがと。ちょっとかじってみよ……うっ、苦い……」

「俺も……むぅ、確かにこれは美味しくない」

 二人して顔を歪め、失敗の予感が漂う。

 このままでは当然使い物にならない、何か加工が必要だ。
 
「これ……このまま混ぜ込んだら厳しいと思う。ウーイだけじゃダメかな?」

「ダメよ! リーフルちゃんの愛らしい癒しを表現するのに、ヒール草は絶対入れるの! ちょっとメープルシロップで試してみる」

 シシリーがシンクの上にある棚から、メープルシロップの入った瓶を取り出し、すり潰したヒール草と混ぜ合わせる。

「……う~ん、ちょっとまだ苦いけど、煮詰めたウーイと合わせるとどうかな……」

 シシリーが率先して試行錯誤してくれている。

 俺は特にやる事がないし、正直ウーイだけのシロップで満足しているので、口は挟まない方がいいだろう。

「うん、これなら大丈夫かも」

 どうやら試し終わったようだ。

「俺も少し……うん、多少苦味は残るけど、悪くないかも」

「逆にちょっと苦味がある方が、『ヒール草入りで滋養強壮に効く』って宣伝文句になるんじゃない?」

「なるほど。シシリーちゃんは賢いね」

「えへへ……」

「それじゃあ完成したことだし、瓶に詰めて収納しておくよ。ありがとうシシリーちゃん」

「どういたしまして。お礼は晩御飯おごりね!」

「わかった。リーフルのエサやり体験もおまけに付けるよ」

「ホーホホ(タベモノ)」



 今日はダナさんがかき氷を販売しているので、昨日シシリーに手伝ってもらって完成した緑色のシロップを見てもらう。

「こんにちはダナさん」 「ホホーホ(ナカマ)」

「こんにちはヤマトさん、リーフルちゃん」

「新しいシロップを考えてみたので、試食していただけますか?」

 アイテムBOXから緑シロップを取り出しダナさんに差し出す。

「へぇ! 綺麗な緑色。リーフルちゃんみたいね」

「まさにそうなんです。リーフルをイメージしてウーイの実とヒール草を使って、健康にもいいシロップが出来ました」

「早速頂いてみようかしら」

 ダナさんがユニーク魔法で氷を作り出し、機械にかけかき氷を用意する。

 緑シロップを回し掛けると、氷に馴染んだ部分が想像していたよりもさらに綺麗な緑色となって、食欲を刺激する。

「はむ……ヒール草かしら、少し苦味があるのね」

「一応メープルシロップを使って苦味は抑えたんですが……」

「不味いわけじゃ無いわ、でも好き嫌いがはっきりと出るでしょうね。私は好きよ? 試しに販売させてもらってもいいかしら?」

 反応は微妙、ダナさんの言う通り不味いわけでは無いと俺も思う。

 ただ、としてはどうか、という所だろう。

 二人で相談していると、後ろから声をかけられた。

「あれ? ヤマトさんじゃない、リーフルちゃんもこんにちは。ヤマトさんもかき氷を買いに来たの?」
 未知の緑翼のネアもかき氷を買いに来たらしい。

「そんな所です。あ、丁度いい。ネアさんも、試食してもらえませんか? ヒール草入りで少し苦いですが、健康にいいんです」

「緑色なのね、リーフルちゃんをイメージした新作かしら。どれどれ……うん、確かに少し苦いけど、いいんじゃない? 私だったら次も買うわ」

「ほんとですか、良かった」

「ヤマトさん、このかき氷の名前はどうしましょうか。ウーイとヒール草ですよね……」
 
「名前なら自信があるわ!」

 ネアが大きめの声量でアピールしてくる。

 確かネアはネーミングセンスが……。

「……リーフルスペシャル!」

「リ、リーフルスペシャルですか……」

「中身をあれこれ説明する名前より、インパクトがあっていいと思わない?」

「ま、まぁそうですかね? ダナさんはどう思います?」

「いいんじゃないかしら! リーフルちゃんを象徴としたかき氷って感じがして、可愛いわ」
 
「ホ?」

 "ブルーハワイ"こそ食べることは叶わなかったが、相棒リーフルが商品になってこれからみんなに愛されると思うと、一連の出来事も無駄ではなかった気がする。

 リーフルには高めのお肉を買ってやろう。
しおりを挟む
感想 237

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

弱者の庭〜引きこもり最強種専用施設の管理人始めました〜

自来也
ファンタジー
人間が好きすぎて魔界を追放された元・魔王。 世界を救って燃え尽き気味の元・勇者。 派手に振られて落ち込んでいる精霊王。 逆セクハラが過ぎて追放された千年狐。 可愛すぎて人間が苦手になった真竜。 戦場のトラウマで休養中の傭兵――。 そんな“最強だけどちょっとズレてる”面々が集まる、 異世界のちょっと変わった施設《弱者の庭》。 異世界転生してきた平凡な青年・アルキは、 このゆる〜い最強たちの管理人に任命されてしまった。 日常はバタバタだけど、どこかあたたかい。 そして――住人が一人、また一人と“卒業”を迎えていく。 傷ついた彼らと過ごすのんびりスローライフ。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai
ファンタジー
不慮の事故で亡くなった中学生、朝霧詠無。 彼の魂はそのまま天国へ……行くことはなく、異世界の住人に転生。 ゲームや漫画といった娯楽はないが、それでも男であれば心が躍るファンタジーな世界。 転生した世界の詳細を知った詠無改め、バドムス・ディアラも例に漏れず、心が躍った。 しかし……彼が生まれた家系は、代々ある貴族に仕える歴史を持つ。 男であれば執事、女であればメイド。 「いや……ふざけんな!!! やってられるか!!!!!」 如何にして異世界を楽しむか。 バドムスは執事という敷かれた将来へのレールを蹴り飛ばし、生きたいように生きると決めた。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

処理中です...