平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ

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1-5 交流

第27話 成果の確認

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 充分な数のラークピラニーを討伐し終えたと判断した俺達は、空腹という事もあり仕事クエストを切り上げ遅れて昼食を取る事にした。

 せっかく湖の景色が綺麗なのだから、ここで腹を満たせば戦闘を終え──もう随分慣れたとは言え──ささくれだった心も癒せるはずだ。

「よかったらこれどうぞ」

 急遽の出発になり昼食の用意をしていなかった二人に、アイテムBOXからサンドイッチを取り出し手渡す。

「おおーハムサンドかい、ありがとうヤマト、いただくよ」

「さすがヤマトさんのアイテムBOXっす!」
 
 腐らないのは本当に便利で、冒険者になって以来出先で食に困ったことは無い。

 食べ物の用意は怠らない癖に、商売道具の矢の用意をしていないとは、師匠に聞かれたら叱責ものだな。
 
「ホーホホ! (タベモノ!)」

「リーフルにもあげるからちょっと待っ──」

「──ああ! あたしがあげるよ! いいだろう? ヤマト~」

 ビビットが両手を前に組み腰をクネクネ動かしながらお願いしてくる。

 動物を前にすると口調が変わったり、性格が柔和になったりするのはあるあるの事で、実際俺もはたから見ればそう見えているだろう。

「じゃ、じゃあこれどうぞ」

 いつもあげている、事前に食べやすく切り分けたラビトーの肉を取り出しビビットに手渡す。

「ありがと! リーフルちゃ~ん、アーンですよ~」

 リーフルが肩から飛び降り、ビビットさんの前にトコトコ近付いて行く。

 ──んぐんぐ「ホッ……」

 肉を飲み込み満足そうに余韻に浸っている。

「お利口だねぇ~。その顔! ほんっとかわいいねぇ……」

「ビビットさん、リーフルちゃんを前にすると人が変わるっす」

「結構大きく変わるね……」

 ひそひそと、俺とロングはビビットの変わりように感想を同じくする。

 見た目が屈強な戦士然として大盾を装備している分、そのギャップがどうも可笑しく思えるが、大先輩を前に口には出来ない。

「ありがとねヤマト、ロング。 金も稼げてリーフルちゃんとも触れ合えて、いいクエストだったよ!」

「こちらこそ勉強になりました。ロング共々いい経験を積ませていただきました」

「ありがとうございます! 自分なんて盾も無いのに超危険な役回りを押し付けられる所だったっす、ヤマトさん、ビビットさん、感謝感激っす!」

 その後も俺達は雑談に花を咲かせながら昼食を平らげた。

 今回の仕事クエストはあまり気分のいい出発では無かったが、学ぶ事も多く討伐数も稼げたので結果としては重畳だろう。

 矢の刺さりが悪かった件に関しては、今回はパーティーを組んでいたからカバーして貰えた。

 しかしいつものソロで同じ事になれば、取り返しがつかない。

 多少出費はかさむが常用するわけでは無いので、街に帰ったらすぐに補充しなければ。

 俺達は成果の確認と分配をする為、冒険者ギルドへと帰った。



 ギルドへの報告とラークピラニーの売却金を受け取り、併設されている酒場で各々好きな物を飲みながら今日の事について話し合っていた。

「──締めて金貨二枚相当ですね。どう分けましょうか」

 今回は討伐した数が十二匹と多く、基本報酬を二割増しにして貰えた事もあり、三人で割っても中々の稼ぎとなった。

「あたしは銀貨六十枚でいいよ。残りの二十枚は二人で分けな」

 ビビットが手を突き出し遠慮すると言っている。

「え? 一番活躍したのビビットさんっす。それはおかしいっす!」

「あたしはさして金に困っちゃいないんだ、矢が必要なヤマト、まだ新人で何かと入用なロング。ベテランとしてあんたら二人に譲るさ」

「でも──」

「──ロング、大人しく貰っておこう。ベテランの面子を立てるんだ。その代わりタンクを頼む時はビビットさんに。ですよね?」

「よく分かってるじゃないか。もちろん自分を売り込む意味もある、でもそれ以上にあたしを頼ってほしいんだよ」

「ビビットさんは頼りになるっす! これらからもよろしくお願いしますっす!」

「ロング、そうじゃないよ。今日一緒に行って分かったけど、あんた達──特にヤマトなんかは良い意味で"平凡"なんだよ」

「よく噂されてます」 「っすか?」

「あんた達みたいなタイプはとして是非長く生き残ってほしい。この稼業の連中は寿命が短い。何たって魔物を相手にするんだ、消極的じゃあ戦闘は出来ないからねえ」

 ビビットの言う寿命とは、"命"の事だけではないのだろう。

 完治しない怪我を負えば満足に動けなくなり、向こう見ず過ぎて関係各位からの信用を失ってもダメだ。

としての寿命か……)

 俺はこの世界に"転移"という形でやってきた。

 加護のおかげか身体的には補助を受けているが、二十七歳と若々しいとは言えない年頃だ。

 現状に不満など無いが、死ぬまでこの仕事が出来るかと言うと難しいだろうとは思う。

「自分は平凡っすけど、ヤマトさんは普通じゃないっすよ?」

「それこそ逆だよ。ロングは"獣人"だし若い、今から伸びしろがたくさんある。うかうかしてたら俺なんてそのうち『ヤマトさんは自分のクエストに付いて来れないっす』なんて事言われるかもね」

 後悔は宿に帰ってからにした方がいいのだが、ほんの数時間前に起こった失態を思い出し、ネガティブな思考に陥ってしまった。

「そ、そんな事ありえないっす! 自分がヤマトさんを邪険にするなんて!」

「ははは! あんた達、所さ。だから長生きする。これからもレンタルしておくれよ? ヤマト、ロング」

 傍らに置いた大盾をポンポンと軽く叩きながら話す様子に、ベテランの風格を感じる。

「そういう事ならっす。今後ともよろしくお願いしますっす!」

 イスから立ち上がりビビットに深々とお辞儀をする。

「俺も。頼りにさせていただきます!」 「ホホーホ(ナカマ)」

「それじゃあ帰ろうかね、お疲れさん!」 

「今日はいっぱい戦闘したっすからクタクタっす……失礼しますっす……」

 疲れで眠気がきているのか、ロングの足取りは少しふらついている。

「はは、気を付けて帰んなよ」

「それじゃあ俺もお先に失礼します──」

「──おっとヤマト、あんたにはまだ話があるんだ」

 なんだろうか、先程にも増して真剣な表情のビビットさんがこちらを見据えて俺を呼び止めた。
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