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2-3 恋と出会いとお化け
第72話 お見合い 3
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「取り敢えずまずは乾杯ですね! おめどうございまーす!」
キャシーが音頭を取り、お見合い改め、"祝宴"が幕を開けた。
オーナーであるシャロンの粋な計らいで、急遽祝いのケーキが用意され、料理の方も仕切り直しという事で各々好きな物をメニューから注文し、俺達のテーブルの上は見るも華やかで贅沢な様相だ。
このレストラン・ドゥ・シャロンはサウドでは珍しく高級志向の戦術を取る人気店で、これだけの物を頼むとなると一体何枚の金貨が手元を去る事になるのか想像もつかない。
元々全ての支払いはロットが持つという事で会計の心配は無かったが、オーナー直々に『お詫びとして今回はサービスさせていただきます』とのお言葉も頂戴し、主にキャシーとリーフルの二人は遠慮──心置きなく料理を堪能できる事となった。
「いやいや、本当におめでとうございます。結果が"幸せ"なものになって、俺も本当に嬉しいです」
「ホント! ヤマトさんには感謝してもしきれないわ! リーフルちゃんもありがとう!」
──んぐんぐ「ホッ……ホ?」
「よっ! さすが"平凡ヤマト"! 任された仕事は完遂する男!」
キャシーが肉が刺さったままのフォークを振り上げ胸を張り、誇らしげに声を上げる。
「はは、今回の件でキャシーさんの元気の源がわかった気がします」
「折角のお見合いに当レストランをご指名頂いたというのに、本当にごめんなさいね皆様」
「いやぁ、むしろ逆だぜ。俺はあのおっさんのおかげで決心がついたんだからな」
「ふむ、それは何故かしら?」
「ルーティ、俺だけじゃなく俺達の事で怒ってくれてたんだ『あんたみたいな吞んだくれに何が分かるの! 未知の緑翼は素晴らしいチームで、街にも大いに貢献しているわ!』ってな」
「や、やだ……恥ずかしいわ……」
「知っての通り孤児院出身の俺達4人は兄妹みたいなもんだ。三人の事を褒められりゃ当然悪い気はしないだろ? それによ、お見合いをして、色々と話してみて分かったんだ」
「度胸っつうか包容力っつうか、この人と一緒なら安心感があって安らげるかなって。だから四の五の言う前に告っちまった」
珍しくロットが指で頬を掻きながら少し気恥ずかしい様子を見せる。
「なるほど~。さすが決断の早さはタンクのロットさんらしいですね……」
"命懸け"が本分の俺達冒険者にとって、仕事を終え家へ帰り、心安らげる相手が待っていてくれるというのは何よりも幸せな事だと思う。
俺には常にリーフルが一緒に居てくれるので未だはっきりとはしないが、やはりパートナーが居てくれるというのは日々の生活が変わって来るものなのだろうか。
その後も祝宴は盛り上がり、絶品料理を堪能しつつ和やかに時は過ぎていった。
ルーティは本当に幸せそうで、何度も何度も俺達に感謝の言葉を伝えてくれていた。
やはり人が心から喜んでいる様子は輝いて見える。
今回の結果に辿り着くまでの諸々の事象も決して無駄では無かったと、報われたような気がして、俺としても喜ばしい限りだ。
そしてロットのあの男らしくも鮮やかな"告白"には度肝を抜かれた。
慎重な性分の俺のような人間などは、何に対しても一拍置くのが癖になっているので、あの決断力には只々脱帽だった。
きっかけを作った酔っ払いに関してだが、シャロンから聞いた話によると、元夫は店の金を横領し浮気までしていたそうだ。
調停の場で統治官であるリーゼスから、シャロン本人及び店への接近禁止の判決が出たにも関わらず、あの醜態を晒したというのが真相らしい。
俺達の前では『おめでたい御席ですので……』と夫婦の詳細について語ろうとはしなかったが、元夫に関しては、命令違反を犯した事により何らかの罰が課せられるらしい。
何の偶然か、一度に陰陽両面を覗いた訳だが、どちらもはっきりとしているのは人の営みの結果だという事だ。
自分の心の赴く先にどのような結果が待つのか、そんな事が分かるのは神様ぐらいのものだろう。
だったらこの先々、"良い結果"がまっているはずと前向きに考え日々行動していけば、人生はより楽しいものになるかもしれない。
高級レストランの料理を無料で堪能でき、リーフルもこんなに喜んでいる。
幸せそうな二人の空気に当てられ、普段の自分では到達出来ない柔らかな気持ちを味わう事が出来た。
◇
お見合いから数日後の夕方、いつもの中央広場に野良達のエサを買いに来たついでに、ルーティに挨拶がてら様子を伺っていた。
「こんばんわルーティさん」 「ホホーホ(ナカマ)」
「お兄さん! 先日は本当にありがとうございました。"ローちゃん"も本当に感謝してました!」
(ローちゃん……早速かましてきてる……)
十中八九ロットの愛称の事だろうが、付き合いたてのカップルがやりそうな事を、ご多分に漏れずルーティは惜しげも無く披露している訳だ。
「順調に行ってます? まぁお二人は商売と冒険者でお忙しいですから、中々時間も取れないでしょうけど」
「そうなのよぉ~、会えるのは夜に少しだけって感じなんですけど、仕方ありませんよね。私なんかはローちゃんの予定に合わせられますけど、未知の緑翼は頼りにされてますから」
「それでねお兄さん! ローちゃんったら早速次の日に花束を持って……」
溢れ出る幸福を抑えきれないと言わんばかりに、ルーティが惚気話を連発する。
二人が幸せに交際を始めた事は本当に満足しているが、歯が沁みるような甘いだけの話題は俺にとっては唯の毒だ。
会話中、恐らく俺は無表情の能面をかけていた事だろう。
「──そうそう、今日もとびきりの物をより分けてますから。リーフルちゃん、遠慮せず食べてね!」
「ホホーホ(ナカマ)」
「あ、いやぁ……今日はまだストックがあるのでいいかなぁと……」
「ホーホ? (ヤマト)」
遠慮しようとしている俺の言動の意味がわからないといった様子。
「だってほら、まだあるよ」──ボワン
「ホーホホ! (タベモノ!)」
「リスでもあるまいし、蓄えはそんなにいらないだろ~……じゃあ、ベリとウーイを一盛ずつ頂きます」
「毎度ありがとうございます!」
仲人役の成功報酬についてなのだが、当初は今後購入する分のアプルを半額にするという内容だった。
しかし有難い事に、彼女が出来た事が余程嬉しかったのか『もう半額を俺が負担する』とロットが言い出し、俺は実質タダでアプルを購入出来る事となった。
リーフルのデザート代に頭を悩ませる心配が無くなった事は非常に幸運だが、一つ難点がある。
"タダ"の物だけを貰いにルーティの下へ通えるほど俺のメンタルは強くないのだ。
すなわちアプルを貰いに来るという事は、ついでに他の果物も購入せざるを得ないという事。
もしかすると差引勘定では以前よりマイナスになったような気がする……。
「リーフルちゃ~んこれどうぞ、あーん──」
んぐんぐ──「ホッ……」
リーフルがルーティに試食を貰っている。
結果としてデザート代が浮いたわけでは無いが、用意できる果物の種類を増やせたという事で、リーフルにとっては嬉しい報酬だろう。
幸せそうなルーティと満足そうなリーフルの姿を確認し、俺はいつも通り野良達のエサやりに向かったのであった。
キャシーが音頭を取り、お見合い改め、"祝宴"が幕を開けた。
オーナーであるシャロンの粋な計らいで、急遽祝いのケーキが用意され、料理の方も仕切り直しという事で各々好きな物をメニューから注文し、俺達のテーブルの上は見るも華やかで贅沢な様相だ。
このレストラン・ドゥ・シャロンはサウドでは珍しく高級志向の戦術を取る人気店で、これだけの物を頼むとなると一体何枚の金貨が手元を去る事になるのか想像もつかない。
元々全ての支払いはロットが持つという事で会計の心配は無かったが、オーナー直々に『お詫びとして今回はサービスさせていただきます』とのお言葉も頂戴し、主にキャシーとリーフルの二人は遠慮──心置きなく料理を堪能できる事となった。
「いやいや、本当におめでとうございます。結果が"幸せ"なものになって、俺も本当に嬉しいです」
「ホント! ヤマトさんには感謝してもしきれないわ! リーフルちゃんもありがとう!」
──んぐんぐ「ホッ……ホ?」
「よっ! さすが"平凡ヤマト"! 任された仕事は完遂する男!」
キャシーが肉が刺さったままのフォークを振り上げ胸を張り、誇らしげに声を上げる。
「はは、今回の件でキャシーさんの元気の源がわかった気がします」
「折角のお見合いに当レストランをご指名頂いたというのに、本当にごめんなさいね皆様」
「いやぁ、むしろ逆だぜ。俺はあのおっさんのおかげで決心がついたんだからな」
「ふむ、それは何故かしら?」
「ルーティ、俺だけじゃなく俺達の事で怒ってくれてたんだ『あんたみたいな吞んだくれに何が分かるの! 未知の緑翼は素晴らしいチームで、街にも大いに貢献しているわ!』ってな」
「や、やだ……恥ずかしいわ……」
「知っての通り孤児院出身の俺達4人は兄妹みたいなもんだ。三人の事を褒められりゃ当然悪い気はしないだろ? それによ、お見合いをして、色々と話してみて分かったんだ」
「度胸っつうか包容力っつうか、この人と一緒なら安心感があって安らげるかなって。だから四の五の言う前に告っちまった」
珍しくロットが指で頬を掻きながら少し気恥ずかしい様子を見せる。
「なるほど~。さすが決断の早さはタンクのロットさんらしいですね……」
"命懸け"が本分の俺達冒険者にとって、仕事を終え家へ帰り、心安らげる相手が待っていてくれるというのは何よりも幸せな事だと思う。
俺には常にリーフルが一緒に居てくれるので未だはっきりとはしないが、やはりパートナーが居てくれるというのは日々の生活が変わって来るものなのだろうか。
その後も祝宴は盛り上がり、絶品料理を堪能しつつ和やかに時は過ぎていった。
ルーティは本当に幸せそうで、何度も何度も俺達に感謝の言葉を伝えてくれていた。
やはり人が心から喜んでいる様子は輝いて見える。
今回の結果に辿り着くまでの諸々の事象も決して無駄では無かったと、報われたような気がして、俺としても喜ばしい限りだ。
そしてロットのあの男らしくも鮮やかな"告白"には度肝を抜かれた。
慎重な性分の俺のような人間などは、何に対しても一拍置くのが癖になっているので、あの決断力には只々脱帽だった。
きっかけを作った酔っ払いに関してだが、シャロンから聞いた話によると、元夫は店の金を横領し浮気までしていたそうだ。
調停の場で統治官であるリーゼスから、シャロン本人及び店への接近禁止の判決が出たにも関わらず、あの醜態を晒したというのが真相らしい。
俺達の前では『おめでたい御席ですので……』と夫婦の詳細について語ろうとはしなかったが、元夫に関しては、命令違反を犯した事により何らかの罰が課せられるらしい。
何の偶然か、一度に陰陽両面を覗いた訳だが、どちらもはっきりとしているのは人の営みの結果だという事だ。
自分の心の赴く先にどのような結果が待つのか、そんな事が分かるのは神様ぐらいのものだろう。
だったらこの先々、"良い結果"がまっているはずと前向きに考え日々行動していけば、人生はより楽しいものになるかもしれない。
高級レストランの料理を無料で堪能でき、リーフルもこんなに喜んでいる。
幸せそうな二人の空気に当てられ、普段の自分では到達出来ない柔らかな気持ちを味わう事が出来た。
◇
お見合いから数日後の夕方、いつもの中央広場に野良達のエサを買いに来たついでに、ルーティに挨拶がてら様子を伺っていた。
「こんばんわルーティさん」 「ホホーホ(ナカマ)」
「お兄さん! 先日は本当にありがとうございました。"ローちゃん"も本当に感謝してました!」
(ローちゃん……早速かましてきてる……)
十中八九ロットの愛称の事だろうが、付き合いたてのカップルがやりそうな事を、ご多分に漏れずルーティは惜しげも無く披露している訳だ。
「順調に行ってます? まぁお二人は商売と冒険者でお忙しいですから、中々時間も取れないでしょうけど」
「そうなのよぉ~、会えるのは夜に少しだけって感じなんですけど、仕方ありませんよね。私なんかはローちゃんの予定に合わせられますけど、未知の緑翼は頼りにされてますから」
「それでねお兄さん! ローちゃんったら早速次の日に花束を持って……」
溢れ出る幸福を抑えきれないと言わんばかりに、ルーティが惚気話を連発する。
二人が幸せに交際を始めた事は本当に満足しているが、歯が沁みるような甘いだけの話題は俺にとっては唯の毒だ。
会話中、恐らく俺は無表情の能面をかけていた事だろう。
「──そうそう、今日もとびきりの物をより分けてますから。リーフルちゃん、遠慮せず食べてね!」
「ホホーホ(ナカマ)」
「あ、いやぁ……今日はまだストックがあるのでいいかなぁと……」
「ホーホ? (ヤマト)」
遠慮しようとしている俺の言動の意味がわからないといった様子。
「だってほら、まだあるよ」──ボワン
「ホーホホ! (タベモノ!)」
「リスでもあるまいし、蓄えはそんなにいらないだろ~……じゃあ、ベリとウーイを一盛ずつ頂きます」
「毎度ありがとうございます!」
仲人役の成功報酬についてなのだが、当初は今後購入する分のアプルを半額にするという内容だった。
しかし有難い事に、彼女が出来た事が余程嬉しかったのか『もう半額を俺が負担する』とロットが言い出し、俺は実質タダでアプルを購入出来る事となった。
リーフルのデザート代に頭を悩ませる心配が無くなった事は非常に幸運だが、一つ難点がある。
"タダ"の物だけを貰いにルーティの下へ通えるほど俺のメンタルは強くないのだ。
すなわちアプルを貰いに来るという事は、ついでに他の果物も購入せざるを得ないという事。
もしかすると差引勘定では以前よりマイナスになったような気がする……。
「リーフルちゃ~んこれどうぞ、あーん──」
んぐんぐ──「ホッ……」
リーフルがルーティに試食を貰っている。
結果としてデザート代が浮いたわけでは無いが、用意できる果物の種類を増やせたという事で、リーフルにとっては嬉しい報酬だろう。
幸せそうなルーティと満足そうなリーフルの姿を確認し、俺はいつも通り野良達のエサやりに向かったのであった。
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