血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら

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僕の野望

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「陽向くん、今日家に来る?」

給食を隣同士で食べながら、俺は陽向くんの様子を伺った。
そんなにおいしいとも思えない給食を、黙々と食べる陽向くんはすごく可愛い。

「え、今日?」
「うん。何か用事ある?」
「ううん、ないけど・・・でも一応きょおくんに聞いてみなくちゃ。これ食べ終わったら、高等部に行ってくる。雄介も一緒に行く?」
「うん」

俺は笑顔で頷いたけれど。

―――また『きょおくん』か。

陽向くんの、血の繋がらないお兄さんの京さん。
まだ一緒に暮らし始めて間もないっていう話なのに、陽向くんは京さんのことが大好きだ。
確かにかっこいいし爽やかでおまけに生徒会長。
中等部でも彼に憧れてる生徒はたくさんいる。
あんなに何でも出来て人望もあるなんて出来過ぎだ。
きっとあの人には裏の顔があるに違いないと思うのは、俺がひねくれてるからだろうか。

陽向くんが同じクラスに転入してきた日から、モノクロだった俺の学校生活が突然キラキラと輝きだしたのだ。
一目惚れなんて、本当にあるんだってびっくりした。
しかも相手は自分と同じ男なのに。
そんなことが一切気にならないほど陽向くんは誰よりも可愛くて、きれいだった。

「お、どこ行くんだ?」

廊下に出ると、ちょうどこちらへ歩いてきた島田先生と会った。

「高等部。ちょっと、きょおくんに用事があるの」

陽向くんが応えると、島田先生の眉間に微かにしわが寄ったのを俺は見逃さなかった。

「―――そっか。次の授業に遅れるなよ?」
「はーい。雄介、早くいこう」
「うん」

すれ違ってからそっと後ろを振り返ると、島田先生が立ち止まって陽向くんの方を振り返りじっと見つめていた。
その目はいつも見ているのんきで穏やかな島田先生とは全く違う人みたいだった。
熱っぽくて・・・・なんだかせつなくなるような、そんな目をしてた・・・・。


「あれ、ひなちゃんと雄介じゃん!なに、どうしたの?」

京さんのクラスに行くと、すぐに龍太さんが気付いて出て来てくれた。

「きょおくんは?」
「今、先生に呼ばれて職員室行ってるよ。もうすぐ帰ってくるんじゃないかな」

そう応える龍太さんの後ろで、クラスメイト達がざわざわしている。

「え、なに?中等部の子?かっわいいね~」

数人の女の子たちが寄って来て俺たちをじろじろと見る。

「京ちゃんの弟と、俺の友達。可愛いでしょ?」
「え、水沢くんに弟さんなんていたの?初耳!超可愛い!女の子みたいね~。名前なんて言うの?」

1人の女の子が陽向くんに顔を近づけそう聞いた時―――

「―――陽向」

後ろから聞こえてきた低い声に、女の子たちの表情が強張る。

「あ、きょおくん!」
「どうした?」

京さんの、陽向くんに向ける笑顔は相変わらず優しいものだったけど。

「あのね、今日雄介の家に遊びに行ってもいいかな」
「あー・・・ゲームしに行きたいんだっけ・・・。雄介くん、いいの?」
「僕は、全然大丈夫です。うちの家族も全然大丈夫ですよ」
「そっか。じゃあいいよ。でもあんまり遅くなっちゃダメだぞ。あ~・・・帰る頃、電話しろよ。迎えに行くから」
「あ・・・それなら、僕が駅まで送っていきますから」
「え、いいの?雄介」
「うん」
「・・・・じゃあ、うちの方の駅まで俺が迎えに行く」

陽向くんの家の近くの駅と、俺の家の近くの駅は2駅離れていた。
自転車なら20分くらいだけど、歩くと結構かかってしまう。

「わかった。じゃあ、もう行くね、きょおくん」
「ああ、気をつけてな」
「うん!」

笑顔で手を振り、京さんに背を向ける陽向くん。
俺はまた、ちらりと振り返ってみた。
その時の京さんの顔は思わず震えるほど怖かった。
さっきだって、陽向くんは気付かなかったみたいだけど陽向くんに顔を近づけた女子を睨む顔は無表情ですげえ怖かったんだから。
あんな顔で睨まれて、あんな低い声出されたら絶対怖いよ。
俺のことだって陽向くんが『行きたい』って言うからいいって言ってくれたけど、本当は絶対に面白くないと思ってるんだ。
だけど、俺もそこは気付かない振りをする。
だって陽向くんが好きだもん。
今はただの友達だけど、そのうちきっと陽向くんの『特別』になってやる。

そんな野望を胸に、俺は少し前を歩く陽向くんをじっと見つめたのだった・・・・・。
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