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幼馴染
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「あれ、陽向くんは?」
その日の俺は寝坊して、学校に着いたのは朝のHRが始まる直前だった。
当然陽向くんはもう来ていると思ったのに、その姿は教室の中になかった。
「水沢なら、なんか高等部の生徒会の人に呼ばれて出てったきり戻ってねえよ」
そう言ったのは、後ろの席の武田だった。
「え・・・京さん?」
「違う違う。会長じゃなくて、女の人。髪の長い、きれいな人」
武田の言葉に俺は首を傾げた。
高等部の生徒会に、京さん以外に陽向くんの知り合いがいるなんて聞いたことない。
それとも・・・・
京さんに頼まれた生徒会の人が呼びに来た、とか・・・?
『ガラッ』
扉の音に、俺は反射的に教室の入り口に目を向けた。
「あ・・・よかった、まだ先生来てない?」
「陽向くん、どこ行ってたの?」
息を切らせながら教室に入ってきた陽向くんは、自分の席に着くと袖で額の汗を拭った。
「ん・・・・ちょっとね。雄介、今日遅かったね」
「ちょっと寝坊しちゃって・・・・あれ、陽向くん、ほっぺどうしたの?」
陽向くんの、左の頬が赤くなっていた。
俺の言葉に陽向くんははっとして、手で頬を隠すように抑えた。
「な・・・何でもないよ」
「陽向くん・・・・?ねぇ、誰に呼び出されてたの?それって、もしかしてぶたれたんじゃ―――」
「おはよ~」
その時ちょうど島田先生が入って来て、俺の言葉はかき消されてしまった。
俺はずっと陽向くんを見ていたけれど、陽向くんは俺の視線を避けるように前を向いていた。
頬杖をつくように手を頬に当て俯き加減になっていたため、島田先生からは見えないだろう。
だけど、他に考えられない。
あれはきっと、誰かにぶたれたんだ。
でも誰に?
京さんが陽向くんに手を上げるなんて考えられない。
じゃあやっぱり、陽向くんを呼びに来た生徒会の女の人が・・・?
「は・・・・?生徒会の女生徒の名前・・・?」
昼休み、俺は高等部の京さんのクラスへ行った。
その前の休憩時間などに陽向くんにその人のことを聞こうと思ったけれど、陽向くんは『なんでもないよ。ちょっと話してただけ』というだけで、その人の名前も『知らない』と言っていた。
他のクラスメイトに聞いても、高等部の生徒会の人間の名前まではわからなかった。
会長の京さんは有名でも、その他の生徒のことまでは中等部の生徒は知らないのだ。
武田も、たまたまその女生徒が京さんと一緒に生徒会の仕事をしているのを見ていて覚えていただけだった。
「なんでそんなこと、お前が聞きたがるんだ?」
京さんがいぶかしげに首を傾げた。
「・・・陽向くんに関することです」
俺の言葉に、京さんの顔色が変わる。
「―――陽向に?それ、どういうことだ?」
「聞きたいですか?」
「おい、ふざけんなよ?お前―――」
「京ちゃん京ちゃん!相手中学生だから!」
京さんが俺の胸倉を掴み低い声で迫ってくると、慌てて龍太さんが間に入ってきた。
京さんは、黙って俺を離した。
「・・・陽向くんが、心配なんです。だから・・・」
「心配って・・・・ちゃんと説明しろよ」
「・・・今朝、陽向くん、高等部の生徒会の女の人に呼び出されたんです。戻ってきたとき・・・・ほっぺが、赤かった」
「頬が・・・・赤い?」
「・・・たぶん、ぶたれたんだと思います」
京さんの表情が、一気に険しくなる。
聞いていた龍太さんもぎょっとして俺を見る。
「その・・・生徒会の女が、陽向をぶったって言うのか?」
「わかりません。陽向くんは、何も言ってくれないから。でも・・・もしぶたれたんなら理由があると思うんです」
「・・・・・まさか・・・・・」
京さんの低い呟きは、傍にいた俺と龍太さんがやっと聞きとれるくらいのものだった。
「京ちゃん?何か心当たりあるの?」
「・・・雄介、ちょっと来て」
京さんが教室を出て歩き出す。
俺は、そのあとを着いて行った。
ちらりと後ろを振り返ると、龍太さんが心配そうに俺たちを見つめていた・・・・
着いた先は、高等部の1年生の教室が並ぶ3階を見渡せる渡り廊下。
そこから京さんは、ある教室をじっと見つめていた。
「・・・・どんな女だったか、わかるのか?」
「俺は見てないんです。見たやつの話だと、髪が長くてきれいな人だったって・・・・」
その言葉に、京さんが溜息をつく。
「・・・・・今、B組から出てきたあの女、わかるか?」
少し遠めだったけれど、その教室から出てきた人の顔ははっきりとわかった。
艶のある長い黒髪が印象的な、とてもきれいな人だった。
「あれは・・・・」
「生徒会の会計をやってる、山下まどか。俺の・・・・・幼馴染だ」
「幼馴染・・・・?」
「生徒会の女子は1年と2年を合わせて4人いる。その中で・・・髪の長いのは2人。だけどたぶん、陽向を呼び出したのは、まどかだと思う」
「どうしてそう思うんですか?」
「・・・・俺が、まどかを振ったからだよ」
その日の俺は寝坊して、学校に着いたのは朝のHRが始まる直前だった。
当然陽向くんはもう来ていると思ったのに、その姿は教室の中になかった。
「水沢なら、なんか高等部の生徒会の人に呼ばれて出てったきり戻ってねえよ」
そう言ったのは、後ろの席の武田だった。
「え・・・京さん?」
「違う違う。会長じゃなくて、女の人。髪の長い、きれいな人」
武田の言葉に俺は首を傾げた。
高等部の生徒会に、京さん以外に陽向くんの知り合いがいるなんて聞いたことない。
それとも・・・・
京さんに頼まれた生徒会の人が呼びに来た、とか・・・?
『ガラッ』
扉の音に、俺は反射的に教室の入り口に目を向けた。
「あ・・・よかった、まだ先生来てない?」
「陽向くん、どこ行ってたの?」
息を切らせながら教室に入ってきた陽向くんは、自分の席に着くと袖で額の汗を拭った。
「ん・・・・ちょっとね。雄介、今日遅かったね」
「ちょっと寝坊しちゃって・・・・あれ、陽向くん、ほっぺどうしたの?」
陽向くんの、左の頬が赤くなっていた。
俺の言葉に陽向くんははっとして、手で頬を隠すように抑えた。
「な・・・何でもないよ」
「陽向くん・・・・?ねぇ、誰に呼び出されてたの?それって、もしかしてぶたれたんじゃ―――」
「おはよ~」
その時ちょうど島田先生が入って来て、俺の言葉はかき消されてしまった。
俺はずっと陽向くんを見ていたけれど、陽向くんは俺の視線を避けるように前を向いていた。
頬杖をつくように手を頬に当て俯き加減になっていたため、島田先生からは見えないだろう。
だけど、他に考えられない。
あれはきっと、誰かにぶたれたんだ。
でも誰に?
京さんが陽向くんに手を上げるなんて考えられない。
じゃあやっぱり、陽向くんを呼びに来た生徒会の女の人が・・・?
「は・・・・?生徒会の女生徒の名前・・・?」
昼休み、俺は高等部の京さんのクラスへ行った。
その前の休憩時間などに陽向くんにその人のことを聞こうと思ったけれど、陽向くんは『なんでもないよ。ちょっと話してただけ』というだけで、その人の名前も『知らない』と言っていた。
他のクラスメイトに聞いても、高等部の生徒会の人間の名前まではわからなかった。
会長の京さんは有名でも、その他の生徒のことまでは中等部の生徒は知らないのだ。
武田も、たまたまその女生徒が京さんと一緒に生徒会の仕事をしているのを見ていて覚えていただけだった。
「なんでそんなこと、お前が聞きたがるんだ?」
京さんがいぶかしげに首を傾げた。
「・・・陽向くんに関することです」
俺の言葉に、京さんの顔色が変わる。
「―――陽向に?それ、どういうことだ?」
「聞きたいですか?」
「おい、ふざけんなよ?お前―――」
「京ちゃん京ちゃん!相手中学生だから!」
京さんが俺の胸倉を掴み低い声で迫ってくると、慌てて龍太さんが間に入ってきた。
京さんは、黙って俺を離した。
「・・・陽向くんが、心配なんです。だから・・・」
「心配って・・・・ちゃんと説明しろよ」
「・・・今朝、陽向くん、高等部の生徒会の女の人に呼び出されたんです。戻ってきたとき・・・・ほっぺが、赤かった」
「頬が・・・・赤い?」
「・・・たぶん、ぶたれたんだと思います」
京さんの表情が、一気に険しくなる。
聞いていた龍太さんもぎょっとして俺を見る。
「その・・・生徒会の女が、陽向をぶったって言うのか?」
「わかりません。陽向くんは、何も言ってくれないから。でも・・・もしぶたれたんなら理由があると思うんです」
「・・・・・まさか・・・・・」
京さんの低い呟きは、傍にいた俺と龍太さんがやっと聞きとれるくらいのものだった。
「京ちゃん?何か心当たりあるの?」
「・・・雄介、ちょっと来て」
京さんが教室を出て歩き出す。
俺は、そのあとを着いて行った。
ちらりと後ろを振り返ると、龍太さんが心配そうに俺たちを見つめていた・・・・
着いた先は、高等部の1年生の教室が並ぶ3階を見渡せる渡り廊下。
そこから京さんは、ある教室をじっと見つめていた。
「・・・・どんな女だったか、わかるのか?」
「俺は見てないんです。見たやつの話だと、髪が長くてきれいな人だったって・・・・」
その言葉に、京さんが溜息をつく。
「・・・・・今、B組から出てきたあの女、わかるか?」
少し遠めだったけれど、その教室から出てきた人の顔ははっきりとわかった。
艶のある長い黒髪が印象的な、とてもきれいな人だった。
「あれは・・・・」
「生徒会の会計をやってる、山下まどか。俺の・・・・・幼馴染だ」
「幼馴染・・・・?」
「生徒会の女子は1年と2年を合わせて4人いる。その中で・・・髪の長いのは2人。だけどたぶん、陽向を呼び出したのは、まどかだと思う」
「どうしてそう思うんですか?」
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