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第1部 第9章
第2話 優しくて誠実な男性というのは褒め言葉か
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周囲の変化に戸惑いながらも、なにごともなく授業は進んでいった。
相変わらず視線を感じて落ち着かないけど、それ以上の実害があるわけじゃない。
でも、無言の圧力に気まずさを覚えて、針のむしろに座っている気分だった。
こんなに早く授業が終わってくれと願ったのは、学園に入学してから初めてかもしれない。
授業の内容なんて当然入って来ず、ようやく昼休みを迎えた頃には机の上で息絶えるように突伏していた。
「まだ見られてるし……」
時折、俺の名前が漏れ聞こえてくるたびに、体が重くなっている気がする。
早いところ教室を抜け出したいが、今日もユーリが迎えに来ることになっていた。
こんなことになるなら、俺が迎えに行けばよかった。
教室に1秒留まるごとに疲弊していくような心境でいると、「クルール様」と呼ばれてバッと顔を上げる。
来たかとユーリの到来を一瞬喜んだが、ユーリは『クルール様』とは俺を呼ばない。
そもそも、声が違った。
「ひゃっ!?」
声をかけてきたのは、朝、初めて挨拶をしてきたクラスメイトの女の子だった。
突然、俺が顔を上げたのに驚いて身を縮めている。
「あ、ごめん」と、謝るけど、待っていた相手じゃなくて少し落胆する。
「どうかした?」
「あの、ですね」
目を泳がせているクラスメイトの女の子。
挨拶もだけど、話しかけてくるのも初めてだ。
なにか戸惑っているけど、俺も十分困惑している。
頬が赤いのがその困惑に拍車をかけていた。
胸の前で手遊びをして、視線をあちらこちらに投げるクラスメイトの女の子を訝しんでいると、ぐっと手を握り込んで上目遣いで俺を窺ってくる。
その揺らめく瞳には、なにか期待のようなものが宿っていた。
「よろしければ、お昼をご一緒しませんか……?」
「え、お昼?」
こくり、と羞恥を堪えるように彼女は頷いた。
赤い頬に、恥ずかしがるような仕草。
まるで恋する乙女だ。
そういうこと……なのか?
同じクラスの俺に密かに恋心を抱いてた、とか?
そんな普段なら絶対にないと断言できる自意識過剰な妄想が頭の隅でチラついていると、
「ちょっとお待ちなさい!」
不意に声が上がってクラスメイトの女の子と一緒になってびくっと肩を跳ねさせる。
なにごと?
声のした方向を見れば、見るからにお嬢様然としたクラスメイトが立ち上がって、こっちにずんずんと歩み寄ってきた。
「クルール様とお昼を共にするのは、わたくしですわ!」
「わたしが誘っているんですけど?」
これまで控えめな雰囲気だった女の子は、むっと唇を結び気の強さを表に出してお嬢様を迎え撃つ。
火花を散らすクラスメイトの女の子たち。
そんな彼女たち2人が取り合っているのが、貧乏子爵の俺という事実がなんとも現実味を薄くしている。
そこに、状況を見守っていた他のクラスメイトたちが、「ならわたしが!」と次々に声と手を上げだして教室は混乱を極めた。
さながらオークション。
その中に男子まで加われば、俺に恋してるなんて都合のいい幻想は抱けなくなる。
「……どうなってんだ、これ?」
「――本当にね」
混沌とした教室についていけず他人事のようにぼやいていると、冬の風のように冷たい声が俺の耳を撫でた。
背筋が凍る声。
冷や汗が頬を流れる。
外が土砂降りなせいか、もともと寒くはあったが、今肌に感じているのは痛みすら覚える寒気だった。
錆びたように動かない首をどうにか回して声のした方向を見ると、それはもう見事な微笑みを浮かべたユーリが立っていた。
ただ、その目元には深い影がかかっていて、表情とは裏腹の彼女の心情をよく表していた。
「あの、……ユーリさん?」
「これはどういうことかな、旦那様?」
俺が知りたい。
でも、今のユーリにそんなことを言える勇気もなく、嘆くようにため息をつくのが精一杯だった。
◆◆◆
「で、浮気かな?」
「違うから」
首根っこを掴まれるように引きずられて、連れた来られたのは薔薇の庭園だった。
肌寒く、土の湿った匂いが鼻をつく。
雨が降りしきる中、ユーリから冷ややかな目を向けられ、薄暗さもあってか雰囲気に呑まれて萎縮してしまう。
「ずいぶんとおモテになるんだね、旦那様は。婚約者として鼻が高いよ」
「表情と台詞が一致してないんだよ」
誇らしいどころか、その顔は不機嫌以外のなにものでもない。
「俺だってなにがなんだかわからないんだよ。今日、教室に行ったら最初からあんな調子だったんだぞ?」
「誰彼構わず、女性と見れば口説いていたんじゃないのかい?」
「どこのナンパ野郎だよ」
貴族にはそうした輩も珍しくないし、女性を口説くのは礼儀なんて言うなんちゃって紳士もいるが、俺はそこまで軽薄ではないつもりだ。
そもそも、異性に構ってる暇も余裕もなかったからなぁ。
「デートをしたのだってユーリが初めてだったのに、女性に粉をかける度胸なんてあるかよ。男しては情けない話だけどな」
「私が初めて……」
なぜそこで引っかかる。
噛みしめるような沈黙を挟み、「ふーん」と鼻を鳴らすユーリの声はどことなく高くなったように聞こえた。
「そうなのかい?」
「なに嗤ってるんだよ」
「笑ったんだよ」
張り詰めた空気を解きほぐすように、ユーリがふっと口元を緩める。
今の会話のどこが彼女の琴線に触れたのかは知らないけど、機嫌は直ったらしい。
冷めきっているだろうカップの紅茶も気にせず口にして、「美味しいね」と小さく零している。
ただ、今度は俺の方がへそを曲げたくなる。
「なに? 俺が女性に声をかけられないのが、そんなに面白いのか?」
「誤解だよ。むしろ、私はいいと思うよ。うん、素晴らしいことだ。やはり、男性は誠実なのが1番だ。どうか旦那様は、そのまま健やかに成長してほしい」
「皮肉にしか聞こえないんだが」
「褒めているんだよ」
そう言うけど、意気地なしと言われているようで素直に受け取れない。
誠実って褒め言葉に聞こえるけど、相手のいい部分が見つからないときに女の子が使うお世辞じゃなかったか。
優しいと同義。
俺だって少しはモテ……てはいないけど、ナンパくらいやろうとも思えばできるはずだ。
ただ、その暇と余裕がないだけで。
……こういうのがモテない男の思考なんだろうなぁ。
なんだか自分で考えていて悲しくなる。
ただ、ユーリの機嫌は冬から春くらいには移り変わったようで、穏やかな微笑む彼女を見れば、俺の非モテを晒した価値はあったんだろう。
釈然としないけど。
「そうなると、優しくて誠実な旦那様の魅力に皆が気づいた、ということかな?」
「ねぇそれわざと言ってる?」
「……? なにがだい?」
惚けるようなその顔からは、本音かからかいか窺い知れない。
皮肉めいた意味はないんだろうけど、どうにも穿った受け取り方をしてしまうのは、ユーリもまた貴族だからだろうか。
迂遠で言葉を飾った嫌味が大好きだからなぁ、貴族ってやつは。
「いいけど、そんなわけないだろ? わざわざ俺を媚びを売るような真似をする理由がなんかあったんだろ」
「それはなんだい?」
「……知らないけど」
わかっていたら、こんなに悩んでないし困ってもないわけで、偽装婚約者に笑顔で詰め寄られるなんて尋問を受ける苦労もなかった。
「なにか心当たりはないのかい? 私という婚約者がいながら、浅慮な女たちがメス顔で旦那様に媚びへつらうような心当たりは?」
「…………まだ怒ってる?」
「私はいつだって冷静で沈着だよ」
それにしては最近、機嫌の上がり下がりが顕著な気がするんだけど。
最初に出会った頃は、貴族らしい傲慢さはあれど落ち着いたご令嬢だったのに、どこでどう間違ってこんな情緒不安定になってしまったのか。
「はぁ」
「私を見てどうしてため息を吐くんだい?」
「どうしてだろうなー」
ん? と笑顔で圧をかけてくるユーリから目を逸らしつつ、心当たりといってもなぁと首を捻る。
なにか、なにか……と脳を絞って、あ、となる。
「そういえば、寮母さんが手紙がどうとか言ってたな」
ついでに、命を狙われてないかみたいなことも。
俺の生死をついでとするのはどうかと思うが、重要なのは手紙だ。
「先週、実家から手紙が来てたんだ」
「内容は?」
「開けてない」
「なにをしているんだい」
呆れるユーリをジト目で睨む。
「なにかな?」
「別にぃ?」
ユーリの様子が変で開けるタイミングを逃した、とか。
朝、なにか事情を知っていそうな寮母さんから話を訊こうとしたけど、ユーリに無理やり引っ張っていかれた、とか。
物申したいことは山程あるが、手紙を1通開ける暇もなかったの? と聞き返されると返答に窮するので黙っておく。
なので、目で不満を訴えるが、ユーリにその程度の嫌味が通じるはずもなかった。
わかってたけど。
「まずは手紙か」
「では、私はここで待っているよ」
「……昼休みの残りは少なくて、雨、すっごい降ってるんだけど?」
「私の傘を持っていくといい」
一緒に見るのが当然という態度のユーリに、手紙は俺1人で確認するなんて言えなくなる。
往復するのか、この雨の中を。
激しく地面を叩く雨を見て、がっくり肩を落とす。
「…………行ってくる」
「いってらっしゃい」
微笑んで小さく手を振るユーリ。
彼女に見送られながら、可愛らしい白い傘を差して男子寮との間を往復。
「ご苦労さま」と形だけの労いをしてくれるユーリと一緒に手紙を見て――言葉を失う。
代わりに横から手紙を覗いていたユーリが「そういうことか」と零した。
「新たな金脈の発見、か。媚を売りたくなるのもわからないでもないな」
言葉にされても実感が湧かない。
新たな金脈……起きながらにして見る夢もあるらしい。
相変わらず視線を感じて落ち着かないけど、それ以上の実害があるわけじゃない。
でも、無言の圧力に気まずさを覚えて、針のむしろに座っている気分だった。
こんなに早く授業が終わってくれと願ったのは、学園に入学してから初めてかもしれない。
授業の内容なんて当然入って来ず、ようやく昼休みを迎えた頃には机の上で息絶えるように突伏していた。
「まだ見られてるし……」
時折、俺の名前が漏れ聞こえてくるたびに、体が重くなっている気がする。
早いところ教室を抜け出したいが、今日もユーリが迎えに来ることになっていた。
こんなことになるなら、俺が迎えに行けばよかった。
教室に1秒留まるごとに疲弊していくような心境でいると、「クルール様」と呼ばれてバッと顔を上げる。
来たかとユーリの到来を一瞬喜んだが、ユーリは『クルール様』とは俺を呼ばない。
そもそも、声が違った。
「ひゃっ!?」
声をかけてきたのは、朝、初めて挨拶をしてきたクラスメイトの女の子だった。
突然、俺が顔を上げたのに驚いて身を縮めている。
「あ、ごめん」と、謝るけど、待っていた相手じゃなくて少し落胆する。
「どうかした?」
「あの、ですね」
目を泳がせているクラスメイトの女の子。
挨拶もだけど、話しかけてくるのも初めてだ。
なにか戸惑っているけど、俺も十分困惑している。
頬が赤いのがその困惑に拍車をかけていた。
胸の前で手遊びをして、視線をあちらこちらに投げるクラスメイトの女の子を訝しんでいると、ぐっと手を握り込んで上目遣いで俺を窺ってくる。
その揺らめく瞳には、なにか期待のようなものが宿っていた。
「よろしければ、お昼をご一緒しませんか……?」
「え、お昼?」
こくり、と羞恥を堪えるように彼女は頷いた。
赤い頬に、恥ずかしがるような仕草。
まるで恋する乙女だ。
そういうこと……なのか?
同じクラスの俺に密かに恋心を抱いてた、とか?
そんな普段なら絶対にないと断言できる自意識過剰な妄想が頭の隅でチラついていると、
「ちょっとお待ちなさい!」
不意に声が上がってクラスメイトの女の子と一緒になってびくっと肩を跳ねさせる。
なにごと?
声のした方向を見れば、見るからにお嬢様然としたクラスメイトが立ち上がって、こっちにずんずんと歩み寄ってきた。
「クルール様とお昼を共にするのは、わたくしですわ!」
「わたしが誘っているんですけど?」
これまで控えめな雰囲気だった女の子は、むっと唇を結び気の強さを表に出してお嬢様を迎え撃つ。
火花を散らすクラスメイトの女の子たち。
そんな彼女たち2人が取り合っているのが、貧乏子爵の俺という事実がなんとも現実味を薄くしている。
そこに、状況を見守っていた他のクラスメイトたちが、「ならわたしが!」と次々に声と手を上げだして教室は混乱を極めた。
さながらオークション。
その中に男子まで加われば、俺に恋してるなんて都合のいい幻想は抱けなくなる。
「……どうなってんだ、これ?」
「――本当にね」
混沌とした教室についていけず他人事のようにぼやいていると、冬の風のように冷たい声が俺の耳を撫でた。
背筋が凍る声。
冷や汗が頬を流れる。
外が土砂降りなせいか、もともと寒くはあったが、今肌に感じているのは痛みすら覚える寒気だった。
錆びたように動かない首をどうにか回して声のした方向を見ると、それはもう見事な微笑みを浮かべたユーリが立っていた。
ただ、その目元には深い影がかかっていて、表情とは裏腹の彼女の心情をよく表していた。
「あの、……ユーリさん?」
「これはどういうことかな、旦那様?」
俺が知りたい。
でも、今のユーリにそんなことを言える勇気もなく、嘆くようにため息をつくのが精一杯だった。
◆◆◆
「で、浮気かな?」
「違うから」
首根っこを掴まれるように引きずられて、連れた来られたのは薔薇の庭園だった。
肌寒く、土の湿った匂いが鼻をつく。
雨が降りしきる中、ユーリから冷ややかな目を向けられ、薄暗さもあってか雰囲気に呑まれて萎縮してしまう。
「ずいぶんとおモテになるんだね、旦那様は。婚約者として鼻が高いよ」
「表情と台詞が一致してないんだよ」
誇らしいどころか、その顔は不機嫌以外のなにものでもない。
「俺だってなにがなんだかわからないんだよ。今日、教室に行ったら最初からあんな調子だったんだぞ?」
「誰彼構わず、女性と見れば口説いていたんじゃないのかい?」
「どこのナンパ野郎だよ」
貴族にはそうした輩も珍しくないし、女性を口説くのは礼儀なんて言うなんちゃって紳士もいるが、俺はそこまで軽薄ではないつもりだ。
そもそも、異性に構ってる暇も余裕もなかったからなぁ。
「デートをしたのだってユーリが初めてだったのに、女性に粉をかける度胸なんてあるかよ。男しては情けない話だけどな」
「私が初めて……」
なぜそこで引っかかる。
噛みしめるような沈黙を挟み、「ふーん」と鼻を鳴らすユーリの声はどことなく高くなったように聞こえた。
「そうなのかい?」
「なに嗤ってるんだよ」
「笑ったんだよ」
張り詰めた空気を解きほぐすように、ユーリがふっと口元を緩める。
今の会話のどこが彼女の琴線に触れたのかは知らないけど、機嫌は直ったらしい。
冷めきっているだろうカップの紅茶も気にせず口にして、「美味しいね」と小さく零している。
ただ、今度は俺の方がへそを曲げたくなる。
「なに? 俺が女性に声をかけられないのが、そんなに面白いのか?」
「誤解だよ。むしろ、私はいいと思うよ。うん、素晴らしいことだ。やはり、男性は誠実なのが1番だ。どうか旦那様は、そのまま健やかに成長してほしい」
「皮肉にしか聞こえないんだが」
「褒めているんだよ」
そう言うけど、意気地なしと言われているようで素直に受け取れない。
誠実って褒め言葉に聞こえるけど、相手のいい部分が見つからないときに女の子が使うお世辞じゃなかったか。
優しいと同義。
俺だって少しはモテ……てはいないけど、ナンパくらいやろうとも思えばできるはずだ。
ただ、その暇と余裕がないだけで。
……こういうのがモテない男の思考なんだろうなぁ。
なんだか自分で考えていて悲しくなる。
ただ、ユーリの機嫌は冬から春くらいには移り変わったようで、穏やかな微笑む彼女を見れば、俺の非モテを晒した価値はあったんだろう。
釈然としないけど。
「そうなると、優しくて誠実な旦那様の魅力に皆が気づいた、ということかな?」
「ねぇそれわざと言ってる?」
「……? なにがだい?」
惚けるようなその顔からは、本音かからかいか窺い知れない。
皮肉めいた意味はないんだろうけど、どうにも穿った受け取り方をしてしまうのは、ユーリもまた貴族だからだろうか。
迂遠で言葉を飾った嫌味が大好きだからなぁ、貴族ってやつは。
「いいけど、そんなわけないだろ? わざわざ俺を媚びを売るような真似をする理由がなんかあったんだろ」
「それはなんだい?」
「……知らないけど」
わかっていたら、こんなに悩んでないし困ってもないわけで、偽装婚約者に笑顔で詰め寄られるなんて尋問を受ける苦労もなかった。
「なにか心当たりはないのかい? 私という婚約者がいながら、浅慮な女たちがメス顔で旦那様に媚びへつらうような心当たりは?」
「…………まだ怒ってる?」
「私はいつだって冷静で沈着だよ」
それにしては最近、機嫌の上がり下がりが顕著な気がするんだけど。
最初に出会った頃は、貴族らしい傲慢さはあれど落ち着いたご令嬢だったのに、どこでどう間違ってこんな情緒不安定になってしまったのか。
「はぁ」
「私を見てどうしてため息を吐くんだい?」
「どうしてだろうなー」
ん? と笑顔で圧をかけてくるユーリから目を逸らしつつ、心当たりといってもなぁと首を捻る。
なにか、なにか……と脳を絞って、あ、となる。
「そういえば、寮母さんが手紙がどうとか言ってたな」
ついでに、命を狙われてないかみたいなことも。
俺の生死をついでとするのはどうかと思うが、重要なのは手紙だ。
「先週、実家から手紙が来てたんだ」
「内容は?」
「開けてない」
「なにをしているんだい」
呆れるユーリをジト目で睨む。
「なにかな?」
「別にぃ?」
ユーリの様子が変で開けるタイミングを逃した、とか。
朝、なにか事情を知っていそうな寮母さんから話を訊こうとしたけど、ユーリに無理やり引っ張っていかれた、とか。
物申したいことは山程あるが、手紙を1通開ける暇もなかったの? と聞き返されると返答に窮するので黙っておく。
なので、目で不満を訴えるが、ユーリにその程度の嫌味が通じるはずもなかった。
わかってたけど。
「まずは手紙か」
「では、私はここで待っているよ」
「……昼休みの残りは少なくて、雨、すっごい降ってるんだけど?」
「私の傘を持っていくといい」
一緒に見るのが当然という態度のユーリに、手紙は俺1人で確認するなんて言えなくなる。
往復するのか、この雨の中を。
激しく地面を叩く雨を見て、がっくり肩を落とす。
「…………行ってくる」
「いってらっしゃい」
微笑んで小さく手を振るユーリ。
彼女に見送られながら、可愛らしい白い傘を差して男子寮との間を往復。
「ご苦労さま」と形だけの労いをしてくれるユーリと一緒に手紙を見て――言葉を失う。
代わりに横から手紙を覗いていたユーリが「そういうことか」と零した。
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