きさらぎ駅

水野華奈

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記憶~駅編~

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この不規則な世界にも絶対的に変わらないルールがある。





此処は人の作り出した鏡のような世界。

私達が住む世界と異なるくせに常に互いに影響を及ぼしている。

気付いたのは”かんせん”という駅でのことだった。


八歳の私はいくつもの駅を通り過ぎ、そのたびに響き渡る断末魔に耳を鬱ぎ、気が触れそうな程に擦り切れそうな精神力で強く強く目をつぶっていた。

それしか成す術がなかった。


記憶を消したのは恐らく”かんせん駅”でのことだ。

かんせん……感染。

恐らく正しい漢字はこれだろう。


父親が言っていた本物に生きながら触れた感染者の成れの果てを私は見た。


人間が想像した全ての怪異がそこにあった。

ごちゃ混ぜに…なんの規則も持たず、ただ”還りたい”とそう口々に言っていた。


まるで壊れかけのモノを集めた玩具箱。


触れたらこうなるのだと瞬時に理解できた。


見てきた数々の駅の中でこの駅だけがその全てに置いて異常だった。

”生”の執着よりも”還りたい”と願う彼等。

それは生々しく、私の耳をくすぐる。


私は幼いからたまたま還ることを許された、だが意志があり行動できる、”かんせん駅”にいる彼等は恐らく皆そうだった。

私と何らかわらない。


だからこの異次元駅において彼等は異常なのだ。


意志があるから怖かった。

まだ生きてるのだとわかったから怖かった。


”還りたい”と口々に言う中で”どうやったら向こうに行けるの?”と問うて来る。


”向こう”とは恐らく現世。


行きたくても本物の話は極わずか……。

人がその話を口にするのを彼等は待つしかなかった。



私が何故そこまで知ってるのかと問われれば、私にひたすらこの世界の……


嫌、かんせん駅のルールを話す一人の同じ歳くらいの少年がいたからだ。


私の背後、窓越しのそこにぴったりくっついて私にぼそぼそと聞いてもないのに説明していた。


「例え噂話が口にされても、僕等はそれに縛られるんだ、自由に行動はできない」


「やめて」


「向こうに生きる人間てさ、残酷だよね」


僕等より。


そう付け加えて少年はケラケラ笑う。

もしかしたら一番の異常はこの少年だったのかも知れない。



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感想 1

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