103 / 108
記憶~駅編~
六
しおりを挟むこの不規則な世界にも絶対的に変わらないルールがある。
此処は人の作り出した鏡のような世界。
私達が住む世界と異なるくせに常に互いに影響を及ぼしている。
気付いたのは”かんせん”という駅でのことだった。
八歳の私はいくつもの駅を通り過ぎ、そのたびに響き渡る断末魔に耳を鬱ぎ、気が触れそうな程に擦り切れそうな精神力で強く強く目をつぶっていた。
それしか成す術がなかった。
記憶を消したのは恐らく”かんせん駅”でのことだ。
かんせん……感染。
恐らく正しい漢字はこれだろう。
父親が言っていた本物に生きながら触れた感染者の成れの果てを私は見た。
人間が想像した全ての怪異がそこにあった。
ごちゃ混ぜに…なんの規則も持たず、ただ”還りたい”とそう口々に言っていた。
まるで壊れかけのモノを集めた玩具箱。
触れたらこうなるのだと瞬時に理解できた。
見てきた数々の駅の中でこの駅だけがその全てに置いて異常だった。
”生”の執着よりも”還りたい”と願う彼等。
それは生々しく、私の耳をくすぐる。
私は幼いからたまたま還ることを許された、だが意志があり行動できる、”かんせん駅”にいる彼等は恐らく皆そうだった。
私と何らかわらない。
だからこの異次元駅において彼等は異常なのだ。
意志があるから怖かった。
まだ生きてるのだとわかったから怖かった。
”還りたい”と口々に言う中で”どうやったら向こうに行けるの?”と問うて来る。
”向こう”とは恐らく現世。
行きたくても本物の話は極わずか……。
人がその話を口にするのを彼等は待つしかなかった。
私が何故そこまで知ってるのかと問われれば、私にひたすらこの世界の……
嫌、かんせん駅のルールを話す一人の同じ歳くらいの少年がいたからだ。
私の背後、窓越しのそこにぴったりくっついて私にぼそぼそと聞いてもないのに説明していた。
「例え噂話が口にされても、僕等はそれに縛られるんだ、自由に行動はできない」
「やめて」
「向こうに生きる人間てさ、残酷だよね」
僕等より。
そう付け加えて少年はケラケラ笑う。
もしかしたら一番の異常はこの少年だったのかも知れない。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末
松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰
第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。
本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。
2025年11月28書籍刊行。
なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。
酒と肴と剣と闇
江戸情緒を添えて
江戸は本所にある居酒屋『草間』。
美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。
自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。
多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。
その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。
店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/2/24:『ぬかるみ』の章を追加。2026/3/3の朝頃より公開開始予定。
2026/2/23:『かぜ』の章を追加。2026/3/2の朝頃より公開開始予定。
2026/2/22:『まどのそと』の章を追加。2026/3/1の朝頃より公開開始予定。
2026/2/21:『おとどけもの』の章を追加。2026/2/28の朝頃より公開開始予定。
2026/2/20:『くりかえし』の章を追加。2026/2/27の朝頃より公開開始予定。
2026/2/19:『おとしもの』の章を追加。2026/2/26の朝頃より公開開始予定。
2026/2/18:『ひざ』の章を追加。2026/2/25の朝頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
洒落にならない怖い話【短編集】
鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。
意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。
隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる