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暗闇の中の建物
五
しおりを挟む通路は洋館でこの廊下だけでもかなり広いのがわかる。
絵や花瓶は所々飾られているし、それら一つ一つが高そうに見える。
床や絨毯は汚れ一つ見当たらない。
先程までの異常は全くない。
「誰かの家だよね?」
「恐らく…………」
通路を歩く私達、その左右には沢山の扉が存在している。
開けるべきか……。
どちらにしても、いつまでも此処にいる訳にはいかない。
その扉に統一性はなくて、どれも木製のような作りだがデザインはそれぞれ全く違うものだった。
「………………不思議な場所」
ポツリと呟いた言葉に匠の返事はなかった。
ただ返事の代わりにコクリと頷かれる。
「どこか開けてみよう」
意を決したように匠が言った。
瞬間………………
___カチャ____
背後で聞えた小さな澄んだ音は紛れもなく扉を開ける音で、私と匠は飛び跳ねて瞬時に振り返った。
「…………あれ?君達……」
おっとりした口調の若い男の声。
姿は遠くて姿形はハッキリしないが、声の様子からして若い男だと思う。
匠は私の手を引いてすぐに走りだした。
「沙耶_____」
微かに聞こえた声に無意識に振り向いた。
知らない男だ…………。
魅入ってしまったその時だ、より一層強く腕を引かれた。
「沙耶、こっちだ!」
適当に扉を開けて私を中に引き入れ、勢いよく扉を閉めた。
そこは部屋ではなくて、また長い廊下が真っ直ぐ続いていた。
それを気にする余裕もなく、匠は私の腕を引いてひたすらに走った。
私はというと匠の後に続きながらも、後ろ髪を引かれるように名前を呼んだ男が気になった。
こんな場所に私を知ってる人がいるはずない。
そう思い走りながら顔をこわばらせた。
………………頭が痛い。
ズキズキと頭の遥か奥が痛む。
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チラリと走ってきたほうを振り返る。
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彼はなぜ私の名前を呼んだの??
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