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おまけ
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「燃やします」
「何をだ!?」
夫が真っ青な顔で言うので、私は首をかしげる。
「元婚約者からもらった手紙をです」
「な、なんだ。そっちか」
どっちだと思ったのだろう。
まあいいか、と私は手紙の束を暖炉に持っていく。当然のように夫も後ろからついてきた。
「でもいいのか。あれだけ好きだった相手だろう?」
グレイは無理に自分を好きにならなくてもいいと結婚当初事あるごとに言っていた。徐々に自分を好いてくれればいいと。
あれほど結婚して欲しいとせがんでおきながら今さら互いの気持ちは後回しでも構わないとは一体どういうことだと、なんだか無性に腹が立ったものだ。
どうしてそこだけ許すのだ。そこは絶対に俺を好きにさせてみせると、豪語するところではないか。
変なところで気弱なのだから。私だって……彼が好きだから結婚すると決めたのだ。手紙だって本当は捨てるのが遅すぎたくらいだ。もっと早く捨てればよかった。
「今まで捨てなかったということは、まだ未練があるんじゃないか」
私が後悔で胸を痛ませている間、頓珍漢なことを後ろから言い出す夫に思わずため息が出そうになる。いや、この場合は私が悪いのだけれど。
そうだ。私が悪い。彼が同じことをしていたら、きっと私も彼のように疑ったはずだ。想像とはいえ、嫌な気持ちになった。ここはしっかりと否定しなくては。
「違います。結婚式や何やらで存在自体をすっかり忘れていたんです」
なにせ急なことだった……というわけでもないか。お父様たちや使用人たちは私がグレイと結婚することになっても驚きはしなかった。
私にプロポーズする前に、すでに両親から許可を得ていたくらいだ。むしろようやくまとまってくれたかと、安堵の表情を浮かべていた。彼らが妙にグレイに肩入れしているのはいまだ納得できない部分もあるけれど、まあ仕方ないか。
とにかく、ようやく時間に余裕ができて、実家からまとめて持ってきた荷物を整理していたところ、この手紙が束になって出てきたわけだ。
「でもこれでようやく捨てることができます。あなたがこの手紙を見るたびに苦虫を噛み潰したような表情をするので、一刻も早く捨てなければならないと思っていたんです」
「当たり前だ! 今でもムカムカしてくる」
じとっとした目で手紙を睨みつけてくる夫。
「だからこうして燃やすんです。私ももう彼のことは何とも思っていませんから」
しっかり伝えなくては。一番大事なところよ、スカーレット。
「私はあなたがその……好きですから」
「ん? すまん。よく聞こえなかった」
スカーレットの声は小さいからな、とずけずけと言ってくる夫。結婚してからもこういうところはちっとも変わらない。
「で、なんと言ったんだ?」
「……あなたの声が大きすぎるんです」
もういいです、と無心で手紙を暖炉に放り投げていく。黒い塵となっていく様子に、こんなものかと呆気なく思う。過ぎてしまえば、なぜあんな男を好きになって、あれだけ泣いたのだろうと不思議でたまらない。
それとも涙を流したからこそ、今これだけ落ち着いていられるのだろうか。
「うむ。爽快だな!」
隣で同じく様子を見ていたグレイがはっはっはと豪快に笑う。
「スカーレット、お前もそう思うだろう?」
「……ええ。そうね」
ひょっとしたら、この男がそばにいてくれたおかげかもしれない。悲しみを吹き飛ばすほど大きな声でいつも私のことを好きだと言ってくれたから。
「あなたも今度、手紙でも書いて下さい」
それとも私が書こうか。手紙ならきっと素直に伝えられる。あなたが大好きですって。
「何をだ!?」
夫が真っ青な顔で言うので、私は首をかしげる。
「元婚約者からもらった手紙をです」
「な、なんだ。そっちか」
どっちだと思ったのだろう。
まあいいか、と私は手紙の束を暖炉に持っていく。当然のように夫も後ろからついてきた。
「でもいいのか。あれだけ好きだった相手だろう?」
グレイは無理に自分を好きにならなくてもいいと結婚当初事あるごとに言っていた。徐々に自分を好いてくれればいいと。
あれほど結婚して欲しいとせがんでおきながら今さら互いの気持ちは後回しでも構わないとは一体どういうことだと、なんだか無性に腹が立ったものだ。
どうしてそこだけ許すのだ。そこは絶対に俺を好きにさせてみせると、豪語するところではないか。
変なところで気弱なのだから。私だって……彼が好きだから結婚すると決めたのだ。手紙だって本当は捨てるのが遅すぎたくらいだ。もっと早く捨てればよかった。
「今まで捨てなかったということは、まだ未練があるんじゃないか」
私が後悔で胸を痛ませている間、頓珍漢なことを後ろから言い出す夫に思わずため息が出そうになる。いや、この場合は私が悪いのだけれど。
そうだ。私が悪い。彼が同じことをしていたら、きっと私も彼のように疑ったはずだ。想像とはいえ、嫌な気持ちになった。ここはしっかりと否定しなくては。
「違います。結婚式や何やらで存在自体をすっかり忘れていたんです」
なにせ急なことだった……というわけでもないか。お父様たちや使用人たちは私がグレイと結婚することになっても驚きはしなかった。
私にプロポーズする前に、すでに両親から許可を得ていたくらいだ。むしろようやくまとまってくれたかと、安堵の表情を浮かべていた。彼らが妙にグレイに肩入れしているのはいまだ納得できない部分もあるけれど、まあ仕方ないか。
とにかく、ようやく時間に余裕ができて、実家からまとめて持ってきた荷物を整理していたところ、この手紙が束になって出てきたわけだ。
「でもこれでようやく捨てることができます。あなたがこの手紙を見るたびに苦虫を噛み潰したような表情をするので、一刻も早く捨てなければならないと思っていたんです」
「当たり前だ! 今でもムカムカしてくる」
じとっとした目で手紙を睨みつけてくる夫。
「だからこうして燃やすんです。私ももう彼のことは何とも思っていませんから」
しっかり伝えなくては。一番大事なところよ、スカーレット。
「私はあなたがその……好きですから」
「ん? すまん。よく聞こえなかった」
スカーレットの声は小さいからな、とずけずけと言ってくる夫。結婚してからもこういうところはちっとも変わらない。
「で、なんと言ったんだ?」
「……あなたの声が大きすぎるんです」
もういいです、と無心で手紙を暖炉に放り投げていく。黒い塵となっていく様子に、こんなものかと呆気なく思う。過ぎてしまえば、なぜあんな男を好きになって、あれだけ泣いたのだろうと不思議でたまらない。
それとも涙を流したからこそ、今これだけ落ち着いていられるのだろうか。
「うむ。爽快だな!」
隣で同じく様子を見ていたグレイがはっはっはと豪快に笑う。
「スカーレット、お前もそう思うだろう?」
「……ええ。そうね」
ひょっとしたら、この男がそばにいてくれたおかげかもしれない。悲しみを吹き飛ばすほど大きな声でいつも私のことを好きだと言ってくれたから。
「あなたも今度、手紙でも書いて下さい」
それとも私が書こうか。手紙ならきっと素直に伝えられる。あなたが大好きですって。
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