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終章 ぜんぶわたしが
しおりを挟む「そこの窓からロイスが来るの見てたよー。かっこよかったなー」
ミシュアが言う。
「とりあえず松明を降ろせ」
ロイスはミシュアを睨みつけて言った。
「そんな怖い顔しないでよ」
ミシュアは松明を壁に戻した。
「レイ、ソイメル兵士長の手当てを頼む」
「分かりました」
レイがソイメル兵士長の傍に駆け寄る。
「ミシュア。説明してくれ」
「え、なにをー」
「全部だ!」
ロイスは叫んだ。
「怒らないでよ、もう。説明するのは良いけど、もう一人聞き手が欲しいなあ」
ミシュアは階段に目を移す。
「エアリーもいるんでしょー。ロイスの背中にべったりくっついてたもんねー。あーやだやだ」
ミシュアは一度言葉を切った。続く言葉は腹に響くおぞましい声だった。
「さっさと出て来いよ!」
エアリーが一歩一歩ゆっくりと階段を上り、姿を見せる。
「さてと。じゃあどこから話そうかな~まずは指輪の事かな」
ミシュアは自分の手にある指輪を撫でながら話し始める。
「ロイスにも話したけど、王家の指輪には特別な力があるの。真の花嫁を選ぶ事。もう一つは災いをもたらす力。本来なら、ロイスは私と結婚する運命だったの。昔からそう決まってるの。なのにロイスはエアリーを選んだ」
ミシュアはエアリーを睨む。
「だからね、ちょっと意地悪しようと思って、エアリーに手紙を送ったの。そうしたらエアリーは単純だから、城からいなくなってくれた。私は嬉しかったけど、そのあとすぐにロイスがエアリーを探すと言い出した。そのとき指輪が光った。指輪は私を選ばなかった」
「エアリーを追っかけていくロイスの背中を見てたらね、エアリーが許せなくなった。私の、私だけのロイスなのに。そう思いながらエアリーが置いていった指輪に私の気持ちを伝えていたら指輪が答えてくれた。ロイスを取り戻そうって」
ロイスは呆然とミシュアを見つめていた。夢の中にいるように話すミシュアの言葉が上手く頭に入ってこない。
「やっぱり指輪が選んだのは私なんだよ。だけど、城の中で『私がロイスのお嫁さん』って言っても誰も聞いてくれない。エアリーを探してばかりいる。だから、指輪に言ったの。私の言う事を聞くようにって。そうしたらみんな、私がロイスの妻だって言ってくれたよ。凄く嬉しかった」
ミシュアは無邪気に笑っている。
「城の兵士たちが動かなくなってしまったのもミシュアの仕業なのか?」
ロイスが尋ねる。
「知らなかった。もしかしたら、指輪の意志が変わったからかもね。自分の手を見てごらん。ロイスの指輪の光が私に向いてる。指輪が真の花嫁をきちんと選び直したから、災いの力が弱まっちゃったのかも。でももうそんなことどうでもいい。ロイスが私のところに来てくれたんだから」
ミシュアはロイスに抱き着こうとした。ロイスは腕を掴んでそれを阻止する。
「ソイメル兵士長に危害を加えたのはなぜだ」
ロイスの問いかけにミシュアは顔を伏せ、悪戯を注意された子供のように話し出す。
「ソイメル兵士長には指輪の力の効き目が悪くてね、私に文句を言ってくるの。こんなことはもうやめなさいって。うるさいから、ちょっとお仕置きしただけだよ」
「ふざけるな!」
ロイスはミシュアの腕を振り払う。
「何が指輪の力だ。ミシュアがやっているのはただのわがままだよ。俺はエアリーを選んだ。エアリーと共に生きていく」
ロイスはエアリーを引き寄せた。
「なによ……」
ミシュアが下を向いたまま呟く。
「ミシュア。あなたの気持ちも知らずにごめんなさい。自分の気持ちを隠して、私と仲良くしてくれたことには感謝してる。だけど、私はロイスが好き。ロイスを悲しませるあなたを、ロイスが大切にしているこの国を踏みにじったあなたを私は許せない」
エアリーが静かに言う。
「うるさい!」
ミシュアが顔を上げた。その目からは大粒の涙が零れている。
「もういい。わかった。ぜんぶわたしがわるいんだ」
ミシュアは壁に駆け寄り松明を手に取った。
「どうしたら、ロイスと楽しく遊んでたころにもどれるかな。ねえ指輪さん」
そう言うとミシュアは松明を自分の体に近付けた。炎が激しく燃え上がる。炎はあっという間に大きくなり、部屋中に広がり始める。
「駄目だ、ひとまず逃げるしかない!」
ロイスが叫び、エアリーと共に階段を駆け下りる。降り切ったところで、ソイメル兵士長の傍にいるレイを見かけた。
「レイ、今すぐ逃げるぞ!」
「どうなったんですか」
「ミシュアが尖塔の小部屋に火を放った。どこまで燃え広がるか分からない」
「分かりました」
レイと二人でソイメル兵士長の両肩を支え、城の出口を目指す。なんとか城を出たところで尖塔に目をやると、頂上から灯台のように眩い光が発せられていた。やがて光は消えた。ロイスは自分の手に小さな刺激を感じた。見ると、指輪が割れて手に傷を作っている。そこから一筋の血が地面にこぼれ落ちた。
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