ひろいひろわれ こいこわれ【完結済み】

九條 連

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第6章

第3話(2)

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「知り合いとかではないです。ただ、あのときの犯人だったかというと、フードをかぶっていてマスクもしてましたし、目が合ったのもほんの一瞬で。ものすごく動転していたので、くわしいことはなにも憶えていなくて」
「そうですよね。背後から抱えこまれたっていう話でしたね。こう、抱えこまれた状態で、たまたま上から覗きこまれる感じで目が合った、と」
「そうです」
 すみませんと謝る莉音に、山岡は気にしないで大丈夫だと鷹揚おうように頷いた。

「あの、でも、僕よりずっと大柄だったので、体格的にはあのぐらいあったのかなって」
「一八八ありますからね。日本人男性の平均身長からすると、かなり大きい部類かと。ヴィンセントさんは、男を間近でご覧になったんでしたよね?」

 如何です?と意見を求められて、ヴィンセントもまた、取調室に目線を向けたまま、考えこむように口を開いた。

「たしかに、あのときの男も私と大差ない身長だったかと。とはいえ、やはりフードとマスクで顔が隠れていたので、同一人物かどうか断定することは難しい。目もとと骨格は、似ているようにも思いますが」


 その後もしばらく取り調べの様子を見たあとで、その日の面通しは終了となった。

「お忙しい中、ご足労いただいてありがとうございました。あとはこちらで引きつづき捜査を進めますのでお任せください。またなにか進展があればご連絡します」

 山岡に見送られて、莉音はヴィンセントとともに高井戸署をあとにした。

「莉音、緊張して疲れただろう。今日の夕食は外で食べるか? デリバリーでもいいし、なにか食べたいものがあれば買って帰ろう」
 車の中で気遣うように言われて、莉音は大丈夫だと笑顔で応じた。

「今日、天麩羅てんぷらにしようと思っていろいろ材料を買いそろえてあるんです。だから楽しみにしててください」
 莉音の言葉に、ヴィンセントは目もとをなごませた。
「わかった。なるべく早く帰ろう。だが、あまり頑張らなくていい。帰ったら、今日は家で少しゆっくりしていなさい」

 出かけたとき同様、マンションの入り口まで送ってもらい、ヴィンセントはそのまま会社に戻っていく。走り去る車を見送った莉音は、小さく息をついて踵を返した。その莉音のまえに、エントランスに差しかかったところで立ちはだかる人物があった。
 豪奢な黄金の髪が目にも眩しい、スラリとした長身の美女だった。

「あの……?」

 堂々と進路を妨げられて、莉音は当惑する。ヴィンセントより薄く、明るい色合いの碧眼が、なぜか真正面から莉音を睨み据えていた。
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