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第11章
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「……っ…ぁ……、っん……っ………」
室内に、甘い喘ぎが絶え間なく響く。薄闇の中、淫靡な吐息が空間を満たし、ひろびろとした寝台の上で絡み合う、ふたつの影が浮かび上がっていた。
バスローブの紐を解かれ、まえをはだけられて露わになった素肌を掌と口唇でくまなく愛撫され、恋人から与えられる刺激に莉音は身悶えた。
掌で脇腹や胸を撫でられながら、首筋を這う口唇の感触に翻弄される。泣きどころ熟知している唯一の存在によって理性と羞恥は瞬く間に剥ぎ取られ、快楽の沼へと落としこまれていった。
「んぁ…っ!」
首筋から滑り降りた口唇が、左胸の突起へとたどり着く。きつく吸われた瞬間、莉音の躰がビクンと撥ねた。自分で触れてもなんということもない場所が、恋人の手にかかるとたちどころに性感帯へと変えられてしまう。舌先で先端をくすぐられた直後に吸われ、莉音はたまらず全身を突っ張らせた。
気持ちがよすぎて、なにをどうしたらいいのかわからない。はじめて結ばれてから幾度となく躰を繋げてきたが、キスと愛撫だけで、意識が飛びそうなほどの悦楽をおぼえたことはこれまでなかった。
きっと、さまざまな問題を乗り越えて、あらたな関係の一歩を踏み出したという意識の変化が影響しているのだろう。
出逢ってから、まだ半年にも満たない。
自分がこんなにも強くだれかと惹かれ合い、求める日がくるなど、夢にも思わなかった。
恋愛に興味がなかったわけではないが、これまでちょっと好意を持ったり持たれたり、ということはあっても、そこから関係を進展させるまでには至らなかった。
自分からガツガツ行くほうではなかったし、見た目も母親譲りの色白でぱっちりとした目鼻立ちをしている。そんな容姿に加えて、のんびりおっとりした性格のせいで、周りの女子たちからは、『異性』というより弟扱いされることのほうが多かった。
年頃の同級生たちのあからさまな猥談にもついていけなかったし、どちらかといえば苦手で、意識的に避けていたふしもあった。
ほんのりとした憧れを抱きつつ遠巻きに眺めて、それ以上踏みこもうとしなかった領域。莉音にとっての『恋愛』はそういった位置づけで、母のことがあってからは、精神的にも経済的にも、そんなことにかまけている余裕は微塵もなくなった。
さまざまな手続きや対応に追われ、明日をどう生きればいいのかさえもわからない日々。深い喪失感と悲しみ、絶望したくなるような将来への不安。
それでも頑張らなければ、まえに進まなければと懸命に歯をくいしばって、その日その日をなんとか過ごしていた。
天国の母を安心させられるように。いつか胸を張って頑張った自分を両親と祖母に報告できるように。
頭にあるのはそれだけで、押し潰されそうな不安と戦いながら必死に足掻いていた。
立ち止まってしまったら、もう二度と動けなくなる。現実を直視してしまえば、きっと立ち上がることさえできなくなる。
――母さん、ばあちゃん、僕もそっちへ行きたい。
いまにも溢れ出しそうになる弱音を呑みこんで、まえを向きつづけようと己を鼓舞していた数か月まえの自分。そんなさなかの出逢いだった。
ヴィンセントが現れたことによって、莉音の人生は一変した。
突然母を喪ってしまったことへの悲哀と淋しさは、当然、いまも消えることはない。だがいつのまにか、打ちひしがれるばかりだった日々は遠ざかっていた。
重石のようにのしかかっていた不安も消え去り、自分がなにをしたいのか、なにをすべきなのかを落ち着いて考えられるようになった。彼の庇護下に置かれたことで、当面の生活の心配がなくなったというのが大きいかもしれない。
はじめは社会的地位や立場の違いから、緊張したり萎縮することも多かった。けれどもその人柄に触れるうち、そういった隔意はすぐに薄れ、全面的な信頼と好意を抱くようになっていった。
室内に、甘い喘ぎが絶え間なく響く。薄闇の中、淫靡な吐息が空間を満たし、ひろびろとした寝台の上で絡み合う、ふたつの影が浮かび上がっていた。
バスローブの紐を解かれ、まえをはだけられて露わになった素肌を掌と口唇でくまなく愛撫され、恋人から与えられる刺激に莉音は身悶えた。
掌で脇腹や胸を撫でられながら、首筋を這う口唇の感触に翻弄される。泣きどころ熟知している唯一の存在によって理性と羞恥は瞬く間に剥ぎ取られ、快楽の沼へと落としこまれていった。
「んぁ…っ!」
首筋から滑り降りた口唇が、左胸の突起へとたどり着く。きつく吸われた瞬間、莉音の躰がビクンと撥ねた。自分で触れてもなんということもない場所が、恋人の手にかかるとたちどころに性感帯へと変えられてしまう。舌先で先端をくすぐられた直後に吸われ、莉音はたまらず全身を突っ張らせた。
気持ちがよすぎて、なにをどうしたらいいのかわからない。はじめて結ばれてから幾度となく躰を繋げてきたが、キスと愛撫だけで、意識が飛びそうなほどの悦楽をおぼえたことはこれまでなかった。
きっと、さまざまな問題を乗り越えて、あらたな関係の一歩を踏み出したという意識の変化が影響しているのだろう。
出逢ってから、まだ半年にも満たない。
自分がこんなにも強くだれかと惹かれ合い、求める日がくるなど、夢にも思わなかった。
恋愛に興味がなかったわけではないが、これまでちょっと好意を持ったり持たれたり、ということはあっても、そこから関係を進展させるまでには至らなかった。
自分からガツガツ行くほうではなかったし、見た目も母親譲りの色白でぱっちりとした目鼻立ちをしている。そんな容姿に加えて、のんびりおっとりした性格のせいで、周りの女子たちからは、『異性』というより弟扱いされることのほうが多かった。
年頃の同級生たちのあからさまな猥談にもついていけなかったし、どちらかといえば苦手で、意識的に避けていたふしもあった。
ほんのりとした憧れを抱きつつ遠巻きに眺めて、それ以上踏みこもうとしなかった領域。莉音にとっての『恋愛』はそういった位置づけで、母のことがあってからは、精神的にも経済的にも、そんなことにかまけている余裕は微塵もなくなった。
さまざまな手続きや対応に追われ、明日をどう生きればいいのかさえもわからない日々。深い喪失感と悲しみ、絶望したくなるような将来への不安。
それでも頑張らなければ、まえに進まなければと懸命に歯をくいしばって、その日その日をなんとか過ごしていた。
天国の母を安心させられるように。いつか胸を張って頑張った自分を両親と祖母に報告できるように。
頭にあるのはそれだけで、押し潰されそうな不安と戦いながら必死に足掻いていた。
立ち止まってしまったら、もう二度と動けなくなる。現実を直視してしまえば、きっと立ち上がることさえできなくなる。
――母さん、ばあちゃん、僕もそっちへ行きたい。
いまにも溢れ出しそうになる弱音を呑みこんで、まえを向きつづけようと己を鼓舞していた数か月まえの自分。そんなさなかの出逢いだった。
ヴィンセントが現れたことによって、莉音の人生は一変した。
突然母を喪ってしまったことへの悲哀と淋しさは、当然、いまも消えることはない。だがいつのまにか、打ちひしがれるばかりだった日々は遠ざかっていた。
重石のようにのしかかっていた不安も消え去り、自分がなにをしたいのか、なにをすべきなのかを落ち着いて考えられるようになった。彼の庇護下に置かれたことで、当面の生活の心配がなくなったというのが大きいかもしれない。
はじめは社会的地位や立場の違いから、緊張したり萎縮することも多かった。けれどもその人柄に触れるうち、そういった隔意はすぐに薄れ、全面的な信頼と好意を抱くようになっていった。
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