清朝の姫君:『川島芳子』は、ハッピーエンドです

あさのりんご

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第5章

お姫様トーク(48p)<エピソード>

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 芳子は、皇居の近くの山王ホテルの一室で、新聞を読んでいた。小方が、お茶を入れて、そっと差し出す。小方は、芳子のたった一人の使用人。秘書であり、雑用係でもある。
「ありがとう。ポップコーンも、欲しいな」

 小方は、ポップコーンを探すが見当たらない。芳子の好物で、先ほど買ってきたばかりである。ふと、椅子の下を見ると、ザルのデコとチビが、ポップコーンの袋を抱えて、仲良く食べていた。

「こいつ!」
小方が、取り上げようとすると、仔ザルは、歯をむき出して威嚇いかくした。

それを見ていた芳子は、「こら!」と、怒鳴りつけ、強引にポップコーンを取り上げた。そして、「勝手に、食べるな!」と二匹の頭を殴る。仔ザルは、頭を抱えて逃げ出し、親ザルの副ちゃんの後ろに隠れてしまった。

「小さいうちに、しつけたほうがいいんだ」

芳子は、小さな仔ザルを、殴ってしまったのを弁解するかのように、言った。

「芳子様は、親ザルの副ちゃん、もんちゃんのしつけも上手になさっておいでです。デコとチビもそのうちわかるでしょう」
と小方が、とりなした。

「こんなに行儀が悪いんじゃ、南京には連れていけない」
「そろそろ、あちらに?」
「ああ。ここにいてもしかたがない。憲兵の監視なんて、へいきさ。こっそり、抜け出して帰るつもりだ」
「では、サル達はどうするのですか?」
「君が、ここでめんどうをみてやってくれ」
「このホテルで?私が毎日暮らしていいのですか?」
「ああ。かまわん。料理が飽きたら、外食しなさい」
「ホテルぐらしなど、とんでもない。贅沢はできません」
「遠慮、しなくていいい」
「遠慮ではありません。芳子様、お金がないのです」
「又金の話か。指輪でも、売ればいいじゃないか」
「貴金属は、全部売り払っております。家もお土地も人手に渡ってしまいました」
「そうか……では、笹川の兄ちゃんに頼んで、貸してもらおう」
「もう、借金はおやめください。サルの世話なら、大丈夫です。私の親戚に、喜んで預かってくれる者がおります」
「では、そうしたまえ。それは、いい。君も、南京に来れるじゃないか」

芳子は嬉しそうに微笑んで、ポップコーンを一粒、上へと放り投げ、上手に口で受け止めた。芳子はこうして遊ぶのが、気晴らしになっていた。
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