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しおりを挟む「囲い込み……?」
「ーーつまり、これからはラッフィナート商会のためだけに力を使ってもらいたい……ってことですかね?」
気まずそうに鼻をいじりながら言ったゼクスだったが、その表情はどこかスッキリしたものになっていた。
「ーーお嬢様になにをさせるおつもりか……?」
「いや、そんな怖い顔しないでくださいよ! うちこれでも健全な経営方針掲げてるんで、犯罪まがいの商売なんかしないですよ」
その言葉にヴァルムの顔が歪む。
(どの口で……!)
その視線の先には、犯罪まがいの方法で手に入れたであろう婚姻承諾書があった。
ゼクスもすぐにその視線の先に気がついていたが、あいにく自分の不利益となるようなことを口にするつもりは無いようだった。
「そんなに難しく考えないで下さい。 リアーヌ嬢が昔やっていたバイトの延長みたいなものですよ」
(ーーいまだに私がそこかしこでバイトを掛け持っているとは、夢にも思うまい……)
「ーーただし今後はラッフィナート商会を通してもらいたい……ーーこちらの望みはその程度ですかね?」
(……え、私がバイトするときはゼクスの許可を取る……? それだけの話なのにコイツ婚姻承諾書なんてものを偽造したの⁉︎ ーーなんで?)
そんなリアーヌの困惑はその顔に全て出ていて、その顔をチラリと確認したゼクスはプッ……と小さく噴き出すと、肩をすくめながらさらに説明を付け加えた。
「俺としてはリアーヌ嬢をよそに引き抜かれないための一手を打ちたかっただけなんだけど……ーー家族がリアーヌ嬢なら俺の嫁にピッタリだって言い出してね……?」
ゼクスはそう言いながら少し照れ臭そうに肩をすくめた。
十中八九わざとだと信じているリアーヌだったが、その仕草に胸は高鳴ってしまうのだったーー
「ーーどんな話がどういう伝わり方をしたらそんなことになるんだよ……?」
クッキーを片手にいきなり話しかけてきたのは弟のザームで、こちらも先ほどのリアーヌそっくりの表情でその困惑を全てその顔に貼り付けていた。
「どういう意味よ……?」
「そのまんまの意味だろ。 姉ちゃんのどこにあのラッフィナート商会の嫁になれる要素があるんだよ?」
「ーー……確かに⁇」
失礼な弟の物言いに食ってかかったリアーヌだったが、当然のように言い返されて、それに対する反論の言葉が見つからなかった。
(え、本気でなんで……?)と、しきりに首を傾げている。
「あー……その辺りはまぁ、おいおい?」
流石に子爵家の当主夫妻、嫡男、執事が揃っている中で「そこそこのネームバリューと資金力でうちに劣ってて、娘の性格が扱いやすいこと」とは説明できなかったゼクスは、口の中で言葉を転がすようにモゴモゴと答えることしか出来なかった。
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