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第80話 出陣式
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「野郎ども! 戦の準備は整ったか?! 屍人の群れなんざ俺らにとっては案山子も同然よ! このゴルツ様と共に大掃除に向かうぞ!!」
冒険者匠合前の広場、全身を板金鎧で包み、背中に俺の身長と同じ位の戦斧を装備した重騎士が、100人近い冒険者達の前で演説を始める。
今回はランクに関係なく出動できる冒険者が全員集められている。いわゆる『緊急クエスト』ってやつだな。
当然俺達の一党も、俺以外にクロニア、ティリティア、モンモン、チャロアイトが参列している。
身重のティリティアには待機しておいて欲しかったのだが、本人の強い希望と大司教から『後方での治療行為のみ行わせ、最大限の安全を図る』という言質を取っているから、ひとまずは安心だろう。
総指揮を執る『将軍』は王様との謁見の際に会った、かつての王のパーティメンバーの1人である、鬼族族の戦士『ゴルツ』氏だ。
前回はずっと黙っていたのに、今回は妙に饒舌なのは、前回は王の前で気を遣っていただけで、こちらの豪放磊落なオッチャンこそが本性なのだろう。
ゴルツさんの隣に2人の男性。1人は昨日話した大司教のライクさん、もう1人はこれまた前回の謁見の時に同席していた痩せぎすで目つきの悪いオジサンだ。こちらは腕を組んだまま特に動きは無い。
この名前も分からないオッサンも大概謎だよな… 一般市民と変わらない服装をしているせいか、外見からはその素性を測れなくなっている。
「今回はこのバルジオンだけじゃねぇ、近隣国4国合同の軍事作戦だ。この事件の対応次第で国の足元が揺らぎかねねぇ。だから失敗は出来ねぇぞ!」
「「「「「おぉーっ!!」」」」」
ゴルツさんの檄に冒険者達が声を上げる。皆イイ感じに乗せられているみたいだ。『扇動』スキル的な物が働いているのかな…?
ゴルツさんの説明だと、とにかくゾンビの数が多く、大陸の中央にある『虚無』と呼ばれる魔境から次々と湧いて出てきており、バルジオン王国以外の国にも侵攻し始めているらしい。 まぁ大体聞いている話と同じだ。
その数は一国あたり数千… ざっくりすぎるが、まぁのんびり数えている暇は無いだろうから概算も仕方ない。とにかく合計数万という規模だそうだ。
前回に俺が危惧した通りに、ゾンビ軍団による王国への本格的な侵攻が始まった、と考えるのが妥当だろう。
「ご無沙汰しています。お元気でしたか?」
唐突に後ろの冒険者から声を掛けられた。聞き覚えのある若い男の声だ。
「あぁ… 確か『勇者』の…」
前回の『蛇』戦の時に共に闘った、教会から『勇者』の称号と聖剣を賜った、名前は確か… ショウ君だ。
彼の隣には、やはり前回も同席していた神官と、仮面を付けたチャロアイトが立っていた。
…って、あれ? チャロアイトは今俺のすぐ横に居るぞ? するとこの人は…?
俺が理解不能な事態に少し混乱していた所に、俺の目の前に半透明の文字盤が浮かび上がる。チャロアイトら魔道士の使う、お馴染み『念話』の魔法だ。
《お久しぶり~、『王国のアイドル』リーナちゃんで~す。ショウ君達にはこのローブ魔道士の中身が私だって言って無いから、『リーナ』って呼ぶのは禁止ね~》
誰かと思えば、チャロアイトの上司で王様の仲間である『大魔道士』リーナだった。相変わらず邪気が有るのか無いのかよく分からない言動をしてくる。
確か前回会った時は、チャロアイトを俺の側に付ける代わりにリーナがショウ達と合流すると言っていたはずだ。そこで仮面魔道士の中身が入れ替わったって事なのね。
ちなみに俺の前に現れた画面はチャロアイトにも見えていたらしく、チャロアイトは無言だったが、その死んだ目が何かを訴え掛けている様だった……。
「よっ! 久し振りだな。聞いたぞ、屍人退治の先鞭を切ってきたらしいじゃないか」
次はこれまた『蛇』戦で共闘した野伏のアンバーさんだ。
「…ええ、後で説明があると思うけど、『蛇』の時と同様に変な霧みたいなガスに注意して下さい」
「なるほど… 助かるぜ、ありがとうな!」
それだけ言うとアンバーさんは別のパーティの所へと声を掛けに行った。あまり親しくない人との雑談力が高くない俺としては、このあっさりした措置は結構助かっている。アンバーさんとか何を話して良いのかよく分からないし。
ショウとアンバーが居たと言う事は、聖女ホムラも居るかと思い見渡すと、ライク大司教と共に並んで立っていた。ちょっと距離があるから、こっちは挨拶するとしても後でだな……。
やがてゴルツ氏の勇ましい演説も終わり、装備も編成もバラバラな冒険者は、不揃いな隊列を組んで城門を出るべく歩き出した。
ゴルツ氏によると俺達の主任務は、編成に時間のかかる王国騎士団が到着するまでの防衛とゾンビの足止めだ。
ゴルツ氏は「ノロマの騎士団が到着する前に冒険者でゾンビを駆逐するぞ!」と息巻いていたが、俺もそれに賛成だ。後から着た奴にむざむざ手柄を渡してやる事は無い。
移動は街の外に国中の馬車を徴集しており、冒険者を詰め込み船団を組んで『虚無』へと向かうらしい。『送迎付きなんて贅沢だなぁ』とも思ったが、それだけ緊急事態って事なんだよな……。
「よぉ、ちょっと良いかい…?」
またいきなり背後から声を掛けられた。さっきのショウから少し警戒していたのに、そいつはあっさりと俺の背後を取ってきた。今まで背後に人の気配なんて無かったぞ…?
驚いて振り向くと、例の『痩せぎすで目つきの悪いオジサン』が立っていた。繰り返すが背後に気を配っていなかった訳では無い。それなのに影の様に俺に悟らせずに忍び寄って来たこのオッサン、やはり只者じゃないんだな……。
「城で会った時に自己紹介が出来なかったから、挨拶をしておこうと思ってな。俺の名はディギール、『片目の興梠亭』っていう酒場の親父をやっている…」
絶対ウソだ! …いや今は酒場の親父なのかも知らんけど、昔はアンタが王様の冒険仲間だったってのは知ってんだぞ。
ていうか、今の身のこなしで分かった。このディギールとか言うオッサンは盗賊だ。あるいは暗殺者か……。
今俺の背後を取ったのだって、隙あらばそのまま俺の首を掻き切ろうという腹積もりだった可能性も高い。
俺が何か言い返そうと口を開いた所で、このディギールさんに差し止められた。
「いや良い、何も言うな。実は俺もお前さんが『魔の手先』だって話は眉唾に思っててな。それならこんな場面でアホ面晒してボーっと突っ立っている訳が無いもんなぁ…」
完全にバカにされているが、言われた事はその通りだし、これで少しでも俺に対する嫌疑が晴れてくれるのならば、俺の気持ちなんて安い代償だ。
「どもっす…」
俺もリアクションに困ってしまい、気の利いた言葉が出てこない。そしてそれがまたプラスに働いたらしい。ディギールさんはニヤリと笑って、
「ゴルツの事はあまり気にするな、あいつは疑うのが仕事みたいなもんだからな。この戦であいつの目を覚ます様な暴れっぷりを見せれば、逆に気に入られるかも知れんぞ? 頑張れよ、少年!」
そう言って俺の背中を叩いて送り出してくれた。
冒険者匠合前の広場、全身を板金鎧で包み、背中に俺の身長と同じ位の戦斧を装備した重騎士が、100人近い冒険者達の前で演説を始める。
今回はランクに関係なく出動できる冒険者が全員集められている。いわゆる『緊急クエスト』ってやつだな。
当然俺達の一党も、俺以外にクロニア、ティリティア、モンモン、チャロアイトが参列している。
身重のティリティアには待機しておいて欲しかったのだが、本人の強い希望と大司教から『後方での治療行為のみ行わせ、最大限の安全を図る』という言質を取っているから、ひとまずは安心だろう。
総指揮を執る『将軍』は王様との謁見の際に会った、かつての王のパーティメンバーの1人である、鬼族族の戦士『ゴルツ』氏だ。
前回はずっと黙っていたのに、今回は妙に饒舌なのは、前回は王の前で気を遣っていただけで、こちらの豪放磊落なオッチャンこそが本性なのだろう。
ゴルツさんの隣に2人の男性。1人は昨日話した大司教のライクさん、もう1人はこれまた前回の謁見の時に同席していた痩せぎすで目つきの悪いオジサンだ。こちらは腕を組んだまま特に動きは無い。
この名前も分からないオッサンも大概謎だよな… 一般市民と変わらない服装をしているせいか、外見からはその素性を測れなくなっている。
「今回はこのバルジオンだけじゃねぇ、近隣国4国合同の軍事作戦だ。この事件の対応次第で国の足元が揺らぎかねねぇ。だから失敗は出来ねぇぞ!」
「「「「「おぉーっ!!」」」」」
ゴルツさんの檄に冒険者達が声を上げる。皆イイ感じに乗せられているみたいだ。『扇動』スキル的な物が働いているのかな…?
ゴルツさんの説明だと、とにかくゾンビの数が多く、大陸の中央にある『虚無』と呼ばれる魔境から次々と湧いて出てきており、バルジオン王国以外の国にも侵攻し始めているらしい。 まぁ大体聞いている話と同じだ。
その数は一国あたり数千… ざっくりすぎるが、まぁのんびり数えている暇は無いだろうから概算も仕方ない。とにかく合計数万という規模だそうだ。
前回に俺が危惧した通りに、ゾンビ軍団による王国への本格的な侵攻が始まった、と考えるのが妥当だろう。
「ご無沙汰しています。お元気でしたか?」
唐突に後ろの冒険者から声を掛けられた。聞き覚えのある若い男の声だ。
「あぁ… 確か『勇者』の…」
前回の『蛇』戦の時に共に闘った、教会から『勇者』の称号と聖剣を賜った、名前は確か… ショウ君だ。
彼の隣には、やはり前回も同席していた神官と、仮面を付けたチャロアイトが立っていた。
…って、あれ? チャロアイトは今俺のすぐ横に居るぞ? するとこの人は…?
俺が理解不能な事態に少し混乱していた所に、俺の目の前に半透明の文字盤が浮かび上がる。チャロアイトら魔道士の使う、お馴染み『念話』の魔法だ。
《お久しぶり~、『王国のアイドル』リーナちゃんで~す。ショウ君達にはこのローブ魔道士の中身が私だって言って無いから、『リーナ』って呼ぶのは禁止ね~》
誰かと思えば、チャロアイトの上司で王様の仲間である『大魔道士』リーナだった。相変わらず邪気が有るのか無いのかよく分からない言動をしてくる。
確か前回会った時は、チャロアイトを俺の側に付ける代わりにリーナがショウ達と合流すると言っていたはずだ。そこで仮面魔道士の中身が入れ替わったって事なのね。
ちなみに俺の前に現れた画面はチャロアイトにも見えていたらしく、チャロアイトは無言だったが、その死んだ目が何かを訴え掛けている様だった……。
「よっ! 久し振りだな。聞いたぞ、屍人退治の先鞭を切ってきたらしいじゃないか」
次はこれまた『蛇』戦で共闘した野伏のアンバーさんだ。
「…ええ、後で説明があると思うけど、『蛇』の時と同様に変な霧みたいなガスに注意して下さい」
「なるほど… 助かるぜ、ありがとうな!」
それだけ言うとアンバーさんは別のパーティの所へと声を掛けに行った。あまり親しくない人との雑談力が高くない俺としては、このあっさりした措置は結構助かっている。アンバーさんとか何を話して良いのかよく分からないし。
ショウとアンバーが居たと言う事は、聖女ホムラも居るかと思い見渡すと、ライク大司教と共に並んで立っていた。ちょっと距離があるから、こっちは挨拶するとしても後でだな……。
やがてゴルツ氏の勇ましい演説も終わり、装備も編成もバラバラな冒険者は、不揃いな隊列を組んで城門を出るべく歩き出した。
ゴルツ氏によると俺達の主任務は、編成に時間のかかる王国騎士団が到着するまでの防衛とゾンビの足止めだ。
ゴルツ氏は「ノロマの騎士団が到着する前に冒険者でゾンビを駆逐するぞ!」と息巻いていたが、俺もそれに賛成だ。後から着た奴にむざむざ手柄を渡してやる事は無い。
移動は街の外に国中の馬車を徴集しており、冒険者を詰め込み船団を組んで『虚無』へと向かうらしい。『送迎付きなんて贅沢だなぁ』とも思ったが、それだけ緊急事態って事なんだよな……。
「よぉ、ちょっと良いかい…?」
またいきなり背後から声を掛けられた。さっきのショウから少し警戒していたのに、そいつはあっさりと俺の背後を取ってきた。今まで背後に人の気配なんて無かったぞ…?
驚いて振り向くと、例の『痩せぎすで目つきの悪いオジサン』が立っていた。繰り返すが背後に気を配っていなかった訳では無い。それなのに影の様に俺に悟らせずに忍び寄って来たこのオッサン、やはり只者じゃないんだな……。
「城で会った時に自己紹介が出来なかったから、挨拶をしておこうと思ってな。俺の名はディギール、『片目の興梠亭』っていう酒場の親父をやっている…」
絶対ウソだ! …いや今は酒場の親父なのかも知らんけど、昔はアンタが王様の冒険仲間だったってのは知ってんだぞ。
ていうか、今の身のこなしで分かった。このディギールとか言うオッサンは盗賊だ。あるいは暗殺者か……。
今俺の背後を取ったのだって、隙あらばそのまま俺の首を掻き切ろうという腹積もりだった可能性も高い。
俺が何か言い返そうと口を開いた所で、このディギールさんに差し止められた。
「いや良い、何も言うな。実は俺もお前さんが『魔の手先』だって話は眉唾に思っててな。それならこんな場面でアホ面晒してボーっと突っ立っている訳が無いもんなぁ…」
完全にバカにされているが、言われた事はその通りだし、これで少しでも俺に対する嫌疑が晴れてくれるのならば、俺の気持ちなんて安い代償だ。
「どもっす…」
俺もリアクションに困ってしまい、気の利いた言葉が出てこない。そしてそれがまたプラスに働いたらしい。ディギールさんはニヤリと笑って、
「ゴルツの事はあまり気にするな、あいつは疑うのが仕事みたいなもんだからな。この戦であいつの目を覚ます様な暴れっぷりを見せれば、逆に気に入られるかも知れんぞ? 頑張れよ、少年!」
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