3 / 209
第3話 にゅうがく
しおりを挟む
校舎の入り口に新入生のクラス分けが掲示されていた。つばめは1年C組らしい。
家から近い高校なだけあって、同じ中学校出身の生徒もそれなりに多い。もっともC組の中に元から親しかった生徒は居なかった。
「A組によーちゃんとみっちゃんがいるけど、別のクラスの同中学出身者に縋るのも格好悪いしなぁ、ここは一から友達作ってみるかな!」
つばめは自身の前向きな決意に気合を入れ直す。『神は自らを助ける者を助ける』のだ。
新しい友人を作り、高校生活をより豊かなものとする。つばめの新生活最初の目標だ。
「まずはさっきのカッコイイ男の子と仲良くなりたいなぁ…」
いや、まずは色欲であった。
1年C組の教室の前には今まさに担任の教師が、教室に入るべく引き戸に手をかけようとしていた。
30代と思しき男性教師、外見はイケもせずブサでもなく、出会って5分後には顔も忘れているようなモブ顔であった。
「C組の生徒か? 遅刻ギリギリだぞ。早く入りなさい」
教師はそう言ってつばめを教室へ誘う。入学初日から担任と共に教室に入るという、転校生の様な扱いを受けてつばめは顔を赤らめていた。
廊下側から男女混合名簿順で仕切られた机の列、2列目の前から4番目につばめは自分の席を見つけ腰を掛ける。
廊下側の右斜め前の席は空席だ。入学早々欠席なのかな? 何の気なしにつばめは思索する。
「では改めて初めまして。私が君達の担任になった『 佐藤 三郎』だ。教科は世界史、独身で彼女いない歴3年だ。1年間宜しくな!」
佐藤教諭の渾身の自己紹介に散発的に拍手が上がるも、どこか白けた空気が漂う。やはり独身云々は言うべきでは無かった。
モブ顔、モブ声、モブネーム、『あまり気にしなくていいかな』とつばめは思う。自分だってアホ毛が無ければ限りなくモブ女生徒なのだが、つばめはそういった都合の悪い事は考えない事にしている女子なのだ。
佐藤教諭は続ける。
「あぁそう、出席番号2番の『沖田 彰馬』だが、ついさっき校門で事故を起こして負傷した、という事だが大事は無いそうだ。念の為今は保健室で休んでいるらしい」
校門で事故、とは先程の彼ではないのか? つばめの中で全ての謎は収束し、たった1つの答えを導き出した。
『彼、『おきたしょうま』くんっていうんだ、名前もカッコイイな… しかも同じクラスとかツイてる!』
もうすでに『沖田つばめ』と称して赤ん坊を抱いているレベルまで妄想に耽るつばめの頭には、もはや入学式に関する佐藤教諭の説明は全く入っていなかった。
とは言え入学式の様な練習の出来ない行事は極力シンプルな構成に作られている。実際体育館で行われた入学式は恙無く終了し、クラスに戻り出席番号順に各自の簡単な自己紹介が行われた。
1年C組は男女半々のの24人構成でつばめの出席番号は10番。1番から始まり、つばめの直前の9番まで来た。
「えー、出席番号9番、鈴木 音速。『音速』と書いて『まっは』です。こんな名前ですけど、ずっと将棋部です」
9番の自己紹介にクラス中が爆笑に包まれる。名前が変わっているだけで、顔も声も普通の男が美味しい所を攫っていった。結果的に次のつばめのハードルは急激に上がる事になる。
『何してくれてんのよこの男…』
つばめは初対面の男(いや、厳密には前の席に座っているので背中しか見えない)にも殺意を抱く事が出来るのだ、という事を学習した。
だがしかし、つばめも持ちネタが無い訳ではない。打率はあまり高くはないが、受ける人間には受ける、というネタがある。今が勝負の時だろう。クラス中の視線を浴びてつばめは立ち上がる。
「え、えと、出席番号10番、芹沢つばめでーす。得意技は『つばめブーメラン』です!」
そう言って頭のアホ毛を掴んで投げる仕草をした。実際には飛んでいないブーメランを、返ってきた様に見立てて迫真の演技で飛び上がってキャッチし頭に戻す。
それを見た男子の3割が笑い、女子の半分は苦笑した。スベリもしなければ受けもしない、まさに『受ける人間には受ける』との表現が相応しい渾身のネタ披露だった。
「11番、相馬 八重。趣味は読書です…」
つばめの次に何事も無かったかの様に地味目の長髪女子が立ち上がり挨拶をする。
程なくして2番の沖田を除く全員が自己紹介を終え、更に担任による教科書やプリント類の配布、明日以降の注意事項の説明があり、本日は解散となった。
『帰りに保健室に寄って沖田くんに挨拶していこうかな? 同じクラスになったよって教えてあげようっと』
学校が捌けるが早いか男の事を考えてしまう思春期のつばめ、保健室の位置をいち早く確認する。
保健室はどうやら職員室の前を抜けた先にあるらしい。
職員室そのものには何の用も無いので通り過ぎ… ようとしたつばめの足が止まる。
職員室の壁には校内連絡用の掲示板が設置されており、様々な事が書かれているのだ。
入学したてのつばめにはそのほとんどは無関係なものであったが、ただ一点、つばめの目を引き込んで離さない掲示物があった。
『以下の生徒を退学処分とする』
近藤睦美
土方久子
それはつばめが今朝遭遇した2人組の魔法熟女と小柄なメガネ少女の名前だった……。
家から近い高校なだけあって、同じ中学校出身の生徒もそれなりに多い。もっともC組の中に元から親しかった生徒は居なかった。
「A組によーちゃんとみっちゃんがいるけど、別のクラスの同中学出身者に縋るのも格好悪いしなぁ、ここは一から友達作ってみるかな!」
つばめは自身の前向きな決意に気合を入れ直す。『神は自らを助ける者を助ける』のだ。
新しい友人を作り、高校生活をより豊かなものとする。つばめの新生活最初の目標だ。
「まずはさっきのカッコイイ男の子と仲良くなりたいなぁ…」
いや、まずは色欲であった。
1年C組の教室の前には今まさに担任の教師が、教室に入るべく引き戸に手をかけようとしていた。
30代と思しき男性教師、外見はイケもせずブサでもなく、出会って5分後には顔も忘れているようなモブ顔であった。
「C組の生徒か? 遅刻ギリギリだぞ。早く入りなさい」
教師はそう言ってつばめを教室へ誘う。入学初日から担任と共に教室に入るという、転校生の様な扱いを受けてつばめは顔を赤らめていた。
廊下側から男女混合名簿順で仕切られた机の列、2列目の前から4番目につばめは自分の席を見つけ腰を掛ける。
廊下側の右斜め前の席は空席だ。入学早々欠席なのかな? 何の気なしにつばめは思索する。
「では改めて初めまして。私が君達の担任になった『 佐藤 三郎』だ。教科は世界史、独身で彼女いない歴3年だ。1年間宜しくな!」
佐藤教諭の渾身の自己紹介に散発的に拍手が上がるも、どこか白けた空気が漂う。やはり独身云々は言うべきでは無かった。
モブ顔、モブ声、モブネーム、『あまり気にしなくていいかな』とつばめは思う。自分だってアホ毛が無ければ限りなくモブ女生徒なのだが、つばめはそういった都合の悪い事は考えない事にしている女子なのだ。
佐藤教諭は続ける。
「あぁそう、出席番号2番の『沖田 彰馬』だが、ついさっき校門で事故を起こして負傷した、という事だが大事は無いそうだ。念の為今は保健室で休んでいるらしい」
校門で事故、とは先程の彼ではないのか? つばめの中で全ての謎は収束し、たった1つの答えを導き出した。
『彼、『おきたしょうま』くんっていうんだ、名前もカッコイイな… しかも同じクラスとかツイてる!』
もうすでに『沖田つばめ』と称して赤ん坊を抱いているレベルまで妄想に耽るつばめの頭には、もはや入学式に関する佐藤教諭の説明は全く入っていなかった。
とは言え入学式の様な練習の出来ない行事は極力シンプルな構成に作られている。実際体育館で行われた入学式は恙無く終了し、クラスに戻り出席番号順に各自の簡単な自己紹介が行われた。
1年C組は男女半々のの24人構成でつばめの出席番号は10番。1番から始まり、つばめの直前の9番まで来た。
「えー、出席番号9番、鈴木 音速。『音速』と書いて『まっは』です。こんな名前ですけど、ずっと将棋部です」
9番の自己紹介にクラス中が爆笑に包まれる。名前が変わっているだけで、顔も声も普通の男が美味しい所を攫っていった。結果的に次のつばめのハードルは急激に上がる事になる。
『何してくれてんのよこの男…』
つばめは初対面の男(いや、厳密には前の席に座っているので背中しか見えない)にも殺意を抱く事が出来るのだ、という事を学習した。
だがしかし、つばめも持ちネタが無い訳ではない。打率はあまり高くはないが、受ける人間には受ける、というネタがある。今が勝負の時だろう。クラス中の視線を浴びてつばめは立ち上がる。
「え、えと、出席番号10番、芹沢つばめでーす。得意技は『つばめブーメラン』です!」
そう言って頭のアホ毛を掴んで投げる仕草をした。実際には飛んでいないブーメランを、返ってきた様に見立てて迫真の演技で飛び上がってキャッチし頭に戻す。
それを見た男子の3割が笑い、女子の半分は苦笑した。スベリもしなければ受けもしない、まさに『受ける人間には受ける』との表現が相応しい渾身のネタ披露だった。
「11番、相馬 八重。趣味は読書です…」
つばめの次に何事も無かったかの様に地味目の長髪女子が立ち上がり挨拶をする。
程なくして2番の沖田を除く全員が自己紹介を終え、更に担任による教科書やプリント類の配布、明日以降の注意事項の説明があり、本日は解散となった。
『帰りに保健室に寄って沖田くんに挨拶していこうかな? 同じクラスになったよって教えてあげようっと』
学校が捌けるが早いか男の事を考えてしまう思春期のつばめ、保健室の位置をいち早く確認する。
保健室はどうやら職員室の前を抜けた先にあるらしい。
職員室そのものには何の用も無いので通り過ぎ… ようとしたつばめの足が止まる。
職員室の壁には校内連絡用の掲示板が設置されており、様々な事が書かれているのだ。
入学したてのつばめにはそのほとんどは無関係なものであったが、ただ一点、つばめの目を引き込んで離さない掲示物があった。
『以下の生徒を退学処分とする』
近藤睦美
土方久子
それはつばめが今朝遭遇した2人組の魔法熟女と小柄なメガネ少女の名前だった……。
0
あなたにおすすめの小説
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
悪役令嬢ですが、二度目は無能で通します……なので執事は黙っててください
放浪人
恋愛
社交界で“悪女”と呼ばれ、無実の罪で断罪された公爵令嬢リディア。
処刑の刃が落ちた瞬間、彼女は断罪される半年前の朝に時を遡っていた。
「二度目も殺されるなんて御免だわ。私は、何もできない無能な令嬢になって生き延びる!」
有能さが仇になったと悟ったリディアは、プライドも実績も捨てて「無能」を装い、北の辺境・白夜領へ引きこもる計画を立てる。
これで平和なスローライフが送れる……はずだった。
けれど、幼い頃から仕える専属執事・レージだけは誤魔化せない。
彼はリディアの嘘を最初から見抜いているくせに、涼しい顔で「無能な主人」を完璧に演じさせてくれないのだ。
「黙っててと言いましたよね?」
「ええ。ですから黙って、あなたが快適に過ごせるよう裏ですべて処理しておきました」
過保護すぎる執事に管理され、逃げ道を塞がれながらも、リディアは持ち前の正義感で領地の危機を次々と救ってしまう。
隠したいのに、有能さがダダ漏れ。
そうこうするうちに王都からは聖女と王太子の魔の手が迫り――?
「守られるだけはもう終わり。……レージ、私に力を貸しなさい」
これは、一度死んだ令嬢が「言葉」と「誇り」を取り戻し、過保護な執事の手を振りほどいて、対等なパートナーとして共に幸せを掴み取るまでの物語。
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー
びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。
理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。
今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。
ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』
計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る!
この物語はフィクションです。
※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる