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第1章・婚約破棄は自由の翼。
ヒロインの行く末【another side】
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※※※※※※※※※※※※※※※※
【ご挨拶】
大晦日。皆さまどうお過ごしでしょうか?私は店番をしながら、コレ書いてました。夜に紅白なます作らなくちゃ。
お正月は多分三ヶ日は、更新お休みになると思います。少しでも更新したいとは思っています。皆さま良い年越しをお過ごし下さいませ。
どうぞ宜しくお願い致しますm(__)m
今回かなり自分的にはダークです。ヒロインの一応のラストになります。ハピエン好きな私的には、中々筆が進みませんでした。
※※※※※※※※※※※※※※※※
【とある地下牢にて】
(?&?の会話。)
薄暗く湿気のこもる階段を下る。鉄格子が見えて来た所で見張りにかち合う。牢内の者に暫し話を聞く故、他の見張りに回る様に伝えた。鉄格子を抜けると、牢獄には似合わない様な調度品。ここは貴族の政治犯等が入る監獄だ。耳を澄ますと、奥の方から女の嬌声が聞こえてくる。正直胸くそが悪くなる。しかしあの者はもっと嫌な筈だ。私が顔をしかめ詰る事では無い。
暫くすると己とみまごう男が、バスローブ1枚の姿で出てきた。
「待たせましたか?」
「否。良い。先に風呂へいけ。」
「ではお言葉に甘えますね。」
シャワールームヘ行く後ろ姿。この者は私が物心が付いた頃から側に居た。否。側と言うより影にいた。私の影武者だった。しかし自然に気付いた。この者は己の身内だと。だからこんなにも似ているのだ。そして解りあえる。近くても不自然ではない。しかしそれだけ罪悪感も募る…。
「お待たせしました。ローズマリーには薬を仕込んでます。朝までグッスリです。先ずは彼女の夢物語でも話しましょうか?」
「頼む。」
シャワーを浴び、色彩を元に戻した男が戻った。私達はソファーに腰をおろし話始めた。
***
ローズマリーは自身をある物語の主人公だと思い込んでいる。この世界はその物語の世界。その物語のヒロインであるローズマリー。彼女は全部で貴族学園に通う中、5人の男性に愛される。その中から好みの男性を選び、仲良くなり交際を始める。お相手は選択制。自分好みの男性と、必ず幸せになれる物語。
「仲良くなる際に邪魔をしてくるのが、男性達の婚約者達になります。」
勿論物語のヒロインたる己は、全ての結果を知っている。だから5人の男性達に愛されぬ訳が無い。仲良くなれず友達止まりの場合も有る。しかし私は愛されるヒロインだから、結果を知る私にはそれは有り得ないと言う。
「商会のロジャース様が既に居るので、5人には間違いなく愛されてるのだそうです。」
「その根拠は良く解らんな。」
「物語の主役がローズマリー。相手の男性が、侯爵子息、公爵子息、騎士団長の息子、魔術師団長の息子、そして皇太子様です。この5人全てと愛を交わすと、隠れていたロジャース様が出現するそうです。結婚式で花嫁の彼女を強奪するそうですよ。」
・・・・・。
「それは無いな。しかしロジャースか?何か知ってそうだな。アイツは後で絞めるか。まあ居場所は吐かんだろうがな。」
「私も吐きませんよ。あの方の信頼を失いたくないですからね。」
「まさか…。」
「いえ。そう言うつもりはございません。私は奔放なあの方の気質が好きなのです。あの方ならやがて王妃となっても、お飾りだけでは済まぬでしょう。それを楽しみにしてるのです。」
「・・・。王はお前を認めている。願えば彼女を娶り王にもなれる。」
・・・・・。
「ほう?それは魅力的ですね。」
・・・・・。
「しかし貴方はそれで良いのですか?それは私に対する憐憫ですか?そんな物は要りませんよ?私は王の器ではない。母と同じなのです。もし本当に欲しいなら奪いますよ。母も王妃の位は欲しくなかったのです。解りますか?私と母を侮辱しないで下さい。確かに人に下に見られる仕事では有ります。だが私達一族は、誇りを持ち働いています。」
「すまん。私のえごだな。これからも対等で居てくれ。そして叱ってくれ。グレイシー兄上…。」
「はい。エドワード。」
しかし、この年で頭を撫でられ安心する己が恥ずかしいな…。
*****
【翌朝の別の地下牢にて】
(エドワード&ローズマリー)
しかし寒い。まあ牢獄なのだ。当たり前だな。冷え冷えとした1人用の牢には、隅に簡易トイレが有るのみ。ベッドも無く床にマットがひかれ、寝具は毛布のみ。今は肌寒い位だが、先々寒くて眠れぬ位になるだろう。まあそれまでここに置くつもりは無いが。
牢の鉄格子に寄りかかり、転がる物体を見る。
マットの上に転がるのは、昨晩の内に通常の牢へ移されたローズマリーだ。流石に寒いのか、毛布を何度も引っ張り己にかけ直す。
しかし何時まで寝る気だ。
「いい加減に起きろ!このゲスが!」
「ムニャムニャ寒いわ…。エドワード様何処?離れないで寒いじゃない。」
・・・・・。
気持ち悪い。鳥肌が立つ。
「牢番!目覚めに水をかけてやれ。」
「解りました!」
「んぎゃぁー!なゃに?何よ!何事よ!」
「もう昼近いぞ。バカ者が!」
・・・・・。
「エドワード様?どうしたの?もしかして足りなかったの?いやん。なら遠慮なんてしないで。私はギヤラリーが居ても構わないわ。」
「悪いが貴様には欲情せんし、こんな所で盛る趣味も無い。」
・・・・・。
「エドワード様は変ね?どうしてそんなに怖い顔をしてるの?昨晩だって抱いてくれたじゃない。子を産み王妃になって欲しいと言ってくれたのに。」
「悪いが私は貴様に触れた事は無い。あれは私の影武者だ。しかも貴様が聞いたと言う睦言は、全て貴様の都合の良い言葉のみ。快楽と夢だけを与える魔術だそうだ。」
「魔術?まさかグレイシー様?なら私はグレイシー様でも良いわよ。だからここから出して!いきなり何故こんな牢なのよ!」
「まあ少しは頭が働いたか?全くのアホでは無かったのか。だが罪人に選択の余地は無い!しかもグレイシー兄上と貴様となど有り得ん!因みに貴様を愛すると言う5人の子息だが、私を含め正気に戻ったぞ。魅了が効いていた様だな。」
「うそ!魅了何て使ってない!それにまだロジャース様がいるじゃない!」
「貴様には残念だろうが、ロジャースはマリエンヌと婚約した。まだ決定事項では無いが、貴様のせいで取り潰しの侯爵家。ここに下から繰り上がり、ロジャースに爵位を与える話も出ている。魅了はそのペンダントだ。良く握りしめてるだろう。気付かなかったのか?」
・・・・・。
「知らない。このペンダントは幸運のアイテムで、本当の母の形見だって。お願いをすると叶えてくれるゲームでのアイテムよ!」
ローズマリーは市井で育った。男爵が若い頃お忍びで市井に行き、夜の繁華街で夜を共にした女から産まれた。女が死んだ後、形見のネックレスから、男爵が浮上した。ネックレスは、男爵が女に与えた物だった。
「ゲームとは夢物語の事か?男爵は普通のネックレスだと思っていた様だな。魔道具として使用されて無かったから魔力がもったのだろう。そろそろ限界だ。男爵は良い人だろ?キチンと貴様を引き取った。娘が居ないからと、義母だって可愛がってくれたんだろ?なのに何故なんだ?」
ローズマリーは口を開かなかった。悔しそうに拳を握りしめていた。
「貴方に何が解るの!恵まれた王子様に何て解らないわよ!エリザベートだってそう!何故貴族学園に通わないの?マリエンヌは何故引きこもりなんてしたのよ!そうよ!悪役令嬢達がキチンと悪役をしないからよ!だから私が不幸になるのよ!」
「救われんな…。貴様は貴族になり、何が努力をしたのか?何故彼女達が貴様の為に不幸にならねばならない?何故悪役をしなければならんのだ?」
「私はヒロインなの!そう決まってるのよ!」
「現実を見ろ!貴様の言う夢物語は、確かに色々と符合が合う。本人や身内しか知らぬ話で、相手を籠絡してたらしいからな。なのに何故貴様は牢にいる?それはこの世界が現実だからだ。夢物語の話は1つの仮定にしか過ぎんのだ!つまり別の話も有るんだ。その夢物語では同時に幾人もと付き合うのか?そうでは無いのだろ?私は愛する者とだけ添い遂げたい。同時に5人等有り得ん!」
確かに攻略する時には1人ずつだけど…。でもデータが残ってるから、ロジャースが出てくるのよね?ブツブツと呻きながら考えるローズマリー。
「理解できんか…。なら仕方無いな。因みにヒロインは市井で育ち、母が亡くなり男爵家に引き取られる。厳しいマナーレッスンやダンスレッスン。勉学にも励み、貴族学園での成績は常にトップ。しかし貴族に染まりきらない素直さに可憐さ。学園中の男が虜になるだったか?間違いないな?」
「そうよ!間違いないわ!」
・・・・・。
「良く言えるな。間違えだらけだ。マナーもダンスも教養もダメ。成績等は学園最下位だぞ!よくそれでのうのうと…。エリザベートや令嬢達が、トップに立つ為にどれ程の努力を重ねてると思うんだ!つまりヒロインとやらが違うんだよ。貴様はヒロインでは無い。だから夢物語の様にストーリーとやらも進まないんだ。己とヒロインを比べてみろ。共通点は境遇のみだ。」
そんな筈は…。私はヒロインなのに…。でも確かに私は己の事は何もしなこなかった。ヒロインだからやらなくても出来る筈だと思ってたから。成績は優秀なんだからやる必要はない。悪役は虐めてくれる筈。本当に小さな苛めはあった。だから話を大きくする為に自作自演までして、マリエンヌを婚約破棄させ断罪した。エリザベートをエドワード様から、早く引き離したかった。だからエドワード様をそそのかした。
「もしかして婚約破棄を進めた時に言い淀んでたのは、本気でエリザベートと破棄したく無かったからなの?」
「勿論だ!貴様の甘言に乗せられエリザベートに逃げられてしまった。まあ逃がすつもりは毛頭無い。補足したら2年後まで待たず、即既成事実に持ち込んでヤる。絶対に許さん!」
「・・・。そこはストーリー通りのヤンデレなのね。でもミイラ取りがミイラになる筈だった。それは多分このペンダントのせいなのね。」
「少しは理解できたか?」
「ええ。私はどうなるの?」
「通常なら不敬罪でとっくに首がとんどるわ!少しは情けをかけてやろう。公開処刑か獄中死を選べ。」
・・・・・。
「ねえ?私の話にはまだ続きが有るのよ。例えば3年前の大洪水。あれも知ってたの。あの洪水で飢饉がおこり、沢山の子供が死んだ筈。そんな未来予知も出来る。エリザベートの逃亡先も解るわよ。どう?私を解放して。次期王たる貴方には必要では無くて?」
・・・・・。
「はぁ。しかし本当に浅ましいな。大洪水で飢饉は起きなかった。マリエンヌが保存のきく堅パンや、日持ちのする乾燥食材等を考案してくれていたからな。またエリザベートが領地の視察中に、堤防の亀裂を発見し1年かけ修復した。1メートル上乗せしてな。だから多生の被害は出たが死人は出ていない。」
「それは!ならマリエンヌとエリザベートも転生者なの?」
「転生者とは夢物語の話か?まあ良い。つまり知り得てても、何もしなかった貴様の手など借りたくは無い。未来の王としても恥ずかしいわ!エリザベートも己で手に入れる。貴様の力など借りん!」
ローズマリーが憤怒の表情で、皇太子に掴みかかって来た。牢番が慌てて制止に入る。ローズマリーの胸元のネックレスが光る。魅了の魔道具が発動した。
・・・・・。
「残念だが私には効かん。これのお陰だ。しかし…。」
エリザベートからの魔道具を見せる。
・・・・・。
「牢番にはかかってしまった様だな。しかも魔力全開でだ。このままでは彼が可哀想だ。ローズマリーが責任を取ってやれ。どうせ貴様は獄中死だ。重罪人の入る男女同室部屋だ。中で女王になれれば、男にかしずかれ天国だそうだ。まあ女王でも下僕でもヤる事は一緒だ。今まで貴様に泣かされた婚約者達に侘びながら啼くが良い。」
牢番は嬉々としてローズマリーを拘束する。後ろ手に縛られ、もはや自由すら奪われてしまった。
「いやー!私はヒロインなの!こんな薄汚れた場所で死ぬのはいやー!止めて!汚い手で触らないで!痛い!いきなり止めて!触るな!いやぁ…ぁぁ…ぁん。やぁっ。あぅ…。」
本当に浅ましい。
「おい監視は他に居るか?」
バタバタと数人が集まって来た。
「これ等が収まったら、女だけを重罪人の牢へ入れろ。監視の男は魅了の魔道具の被害者だ。無罪放免だ。間違えるな。女は王族に魅了を使用した重罪人だ。」
監視の男達が、ジットリと2人を舐めつける様に見ている。
「何だ?ああそういう事か。こんな浅ましい女でも需要は有るんだな。重罪人の牢に入れるのは何時でも構わん。だが殺すな。また絶対に逃がすなよ。逃がしたら貴様らも同罪だ。牢に入れたら報告しろ。」
言い捨て牢を出る。背後で幾つもの足音が響き収まる。既に助けを呼ぶ声は無く、嬌声だけが牢内にこだましていた。
エリザベート…
浅はかな私を許してくれ。
必ずお前を手にいれて見せる。
*****
【ご挨拶】
大晦日。皆さまどうお過ごしでしょうか?私は店番をしながら、コレ書いてました。夜に紅白なます作らなくちゃ。
お正月は多分三ヶ日は、更新お休みになると思います。少しでも更新したいとは思っています。皆さま良い年越しをお過ごし下さいませ。
どうぞ宜しくお願い致しますm(__)m
今回かなり自分的にはダークです。ヒロインの一応のラストになります。ハピエン好きな私的には、中々筆が進みませんでした。
※※※※※※※※※※※※※※※※
【とある地下牢にて】
(?&?の会話。)
薄暗く湿気のこもる階段を下る。鉄格子が見えて来た所で見張りにかち合う。牢内の者に暫し話を聞く故、他の見張りに回る様に伝えた。鉄格子を抜けると、牢獄には似合わない様な調度品。ここは貴族の政治犯等が入る監獄だ。耳を澄ますと、奥の方から女の嬌声が聞こえてくる。正直胸くそが悪くなる。しかしあの者はもっと嫌な筈だ。私が顔をしかめ詰る事では無い。
暫くすると己とみまごう男が、バスローブ1枚の姿で出てきた。
「待たせましたか?」
「否。良い。先に風呂へいけ。」
「ではお言葉に甘えますね。」
シャワールームヘ行く後ろ姿。この者は私が物心が付いた頃から側に居た。否。側と言うより影にいた。私の影武者だった。しかし自然に気付いた。この者は己の身内だと。だからこんなにも似ているのだ。そして解りあえる。近くても不自然ではない。しかしそれだけ罪悪感も募る…。
「お待たせしました。ローズマリーには薬を仕込んでます。朝までグッスリです。先ずは彼女の夢物語でも話しましょうか?」
「頼む。」
シャワーを浴び、色彩を元に戻した男が戻った。私達はソファーに腰をおろし話始めた。
***
ローズマリーは自身をある物語の主人公だと思い込んでいる。この世界はその物語の世界。その物語のヒロインであるローズマリー。彼女は全部で貴族学園に通う中、5人の男性に愛される。その中から好みの男性を選び、仲良くなり交際を始める。お相手は選択制。自分好みの男性と、必ず幸せになれる物語。
「仲良くなる際に邪魔をしてくるのが、男性達の婚約者達になります。」
勿論物語のヒロインたる己は、全ての結果を知っている。だから5人の男性達に愛されぬ訳が無い。仲良くなれず友達止まりの場合も有る。しかし私は愛されるヒロインだから、結果を知る私にはそれは有り得ないと言う。
「商会のロジャース様が既に居るので、5人には間違いなく愛されてるのだそうです。」
「その根拠は良く解らんな。」
「物語の主役がローズマリー。相手の男性が、侯爵子息、公爵子息、騎士団長の息子、魔術師団長の息子、そして皇太子様です。この5人全てと愛を交わすと、隠れていたロジャース様が出現するそうです。結婚式で花嫁の彼女を強奪するそうですよ。」
・・・・・。
「それは無いな。しかしロジャースか?何か知ってそうだな。アイツは後で絞めるか。まあ居場所は吐かんだろうがな。」
「私も吐きませんよ。あの方の信頼を失いたくないですからね。」
「まさか…。」
「いえ。そう言うつもりはございません。私は奔放なあの方の気質が好きなのです。あの方ならやがて王妃となっても、お飾りだけでは済まぬでしょう。それを楽しみにしてるのです。」
「・・・。王はお前を認めている。願えば彼女を娶り王にもなれる。」
・・・・・。
「ほう?それは魅力的ですね。」
・・・・・。
「しかし貴方はそれで良いのですか?それは私に対する憐憫ですか?そんな物は要りませんよ?私は王の器ではない。母と同じなのです。もし本当に欲しいなら奪いますよ。母も王妃の位は欲しくなかったのです。解りますか?私と母を侮辱しないで下さい。確かに人に下に見られる仕事では有ります。だが私達一族は、誇りを持ち働いています。」
「すまん。私のえごだな。これからも対等で居てくれ。そして叱ってくれ。グレイシー兄上…。」
「はい。エドワード。」
しかし、この年で頭を撫でられ安心する己が恥ずかしいな…。
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【翌朝の別の地下牢にて】
(エドワード&ローズマリー)
しかし寒い。まあ牢獄なのだ。当たり前だな。冷え冷えとした1人用の牢には、隅に簡易トイレが有るのみ。ベッドも無く床にマットがひかれ、寝具は毛布のみ。今は肌寒い位だが、先々寒くて眠れぬ位になるだろう。まあそれまでここに置くつもりは無いが。
牢の鉄格子に寄りかかり、転がる物体を見る。
マットの上に転がるのは、昨晩の内に通常の牢へ移されたローズマリーだ。流石に寒いのか、毛布を何度も引っ張り己にかけ直す。
しかし何時まで寝る気だ。
「いい加減に起きろ!このゲスが!」
「ムニャムニャ寒いわ…。エドワード様何処?離れないで寒いじゃない。」
・・・・・。
気持ち悪い。鳥肌が立つ。
「牢番!目覚めに水をかけてやれ。」
「解りました!」
「んぎゃぁー!なゃに?何よ!何事よ!」
「もう昼近いぞ。バカ者が!」
・・・・・。
「エドワード様?どうしたの?もしかして足りなかったの?いやん。なら遠慮なんてしないで。私はギヤラリーが居ても構わないわ。」
「悪いが貴様には欲情せんし、こんな所で盛る趣味も無い。」
・・・・・。
「エドワード様は変ね?どうしてそんなに怖い顔をしてるの?昨晩だって抱いてくれたじゃない。子を産み王妃になって欲しいと言ってくれたのに。」
「悪いが私は貴様に触れた事は無い。あれは私の影武者だ。しかも貴様が聞いたと言う睦言は、全て貴様の都合の良い言葉のみ。快楽と夢だけを与える魔術だそうだ。」
「魔術?まさかグレイシー様?なら私はグレイシー様でも良いわよ。だからここから出して!いきなり何故こんな牢なのよ!」
「まあ少しは頭が働いたか?全くのアホでは無かったのか。だが罪人に選択の余地は無い!しかもグレイシー兄上と貴様となど有り得ん!因みに貴様を愛すると言う5人の子息だが、私を含め正気に戻ったぞ。魅了が効いていた様だな。」
「うそ!魅了何て使ってない!それにまだロジャース様がいるじゃない!」
「貴様には残念だろうが、ロジャースはマリエンヌと婚約した。まだ決定事項では無いが、貴様のせいで取り潰しの侯爵家。ここに下から繰り上がり、ロジャースに爵位を与える話も出ている。魅了はそのペンダントだ。良く握りしめてるだろう。気付かなかったのか?」
・・・・・。
「知らない。このペンダントは幸運のアイテムで、本当の母の形見だって。お願いをすると叶えてくれるゲームでのアイテムよ!」
ローズマリーは市井で育った。男爵が若い頃お忍びで市井に行き、夜の繁華街で夜を共にした女から産まれた。女が死んだ後、形見のネックレスから、男爵が浮上した。ネックレスは、男爵が女に与えた物だった。
「ゲームとは夢物語の事か?男爵は普通のネックレスだと思っていた様だな。魔道具として使用されて無かったから魔力がもったのだろう。そろそろ限界だ。男爵は良い人だろ?キチンと貴様を引き取った。娘が居ないからと、義母だって可愛がってくれたんだろ?なのに何故なんだ?」
ローズマリーは口を開かなかった。悔しそうに拳を握りしめていた。
「貴方に何が解るの!恵まれた王子様に何て解らないわよ!エリザベートだってそう!何故貴族学園に通わないの?マリエンヌは何故引きこもりなんてしたのよ!そうよ!悪役令嬢達がキチンと悪役をしないからよ!だから私が不幸になるのよ!」
「救われんな…。貴様は貴族になり、何が努力をしたのか?何故彼女達が貴様の為に不幸にならねばならない?何故悪役をしなければならんのだ?」
「私はヒロインなの!そう決まってるのよ!」
「現実を見ろ!貴様の言う夢物語は、確かに色々と符合が合う。本人や身内しか知らぬ話で、相手を籠絡してたらしいからな。なのに何故貴様は牢にいる?それはこの世界が現実だからだ。夢物語の話は1つの仮定にしか過ぎんのだ!つまり別の話も有るんだ。その夢物語では同時に幾人もと付き合うのか?そうでは無いのだろ?私は愛する者とだけ添い遂げたい。同時に5人等有り得ん!」
確かに攻略する時には1人ずつだけど…。でもデータが残ってるから、ロジャースが出てくるのよね?ブツブツと呻きながら考えるローズマリー。
「理解できんか…。なら仕方無いな。因みにヒロインは市井で育ち、母が亡くなり男爵家に引き取られる。厳しいマナーレッスンやダンスレッスン。勉学にも励み、貴族学園での成績は常にトップ。しかし貴族に染まりきらない素直さに可憐さ。学園中の男が虜になるだったか?間違いないな?」
「そうよ!間違いないわ!」
・・・・・。
「良く言えるな。間違えだらけだ。マナーもダンスも教養もダメ。成績等は学園最下位だぞ!よくそれでのうのうと…。エリザベートや令嬢達が、トップに立つ為にどれ程の努力を重ねてると思うんだ!つまりヒロインとやらが違うんだよ。貴様はヒロインでは無い。だから夢物語の様にストーリーとやらも進まないんだ。己とヒロインを比べてみろ。共通点は境遇のみだ。」
そんな筈は…。私はヒロインなのに…。でも確かに私は己の事は何もしなこなかった。ヒロインだからやらなくても出来る筈だと思ってたから。成績は優秀なんだからやる必要はない。悪役は虐めてくれる筈。本当に小さな苛めはあった。だから話を大きくする為に自作自演までして、マリエンヌを婚約破棄させ断罪した。エリザベートをエドワード様から、早く引き離したかった。だからエドワード様をそそのかした。
「もしかして婚約破棄を進めた時に言い淀んでたのは、本気でエリザベートと破棄したく無かったからなの?」
「勿論だ!貴様の甘言に乗せられエリザベートに逃げられてしまった。まあ逃がすつもりは毛頭無い。補足したら2年後まで待たず、即既成事実に持ち込んでヤる。絶対に許さん!」
「・・・。そこはストーリー通りのヤンデレなのね。でもミイラ取りがミイラになる筈だった。それは多分このペンダントのせいなのね。」
「少しは理解できたか?」
「ええ。私はどうなるの?」
「通常なら不敬罪でとっくに首がとんどるわ!少しは情けをかけてやろう。公開処刑か獄中死を選べ。」
・・・・・。
「ねえ?私の話にはまだ続きが有るのよ。例えば3年前の大洪水。あれも知ってたの。あの洪水で飢饉がおこり、沢山の子供が死んだ筈。そんな未来予知も出来る。エリザベートの逃亡先も解るわよ。どう?私を解放して。次期王たる貴方には必要では無くて?」
・・・・・。
「はぁ。しかし本当に浅ましいな。大洪水で飢饉は起きなかった。マリエンヌが保存のきく堅パンや、日持ちのする乾燥食材等を考案してくれていたからな。またエリザベートが領地の視察中に、堤防の亀裂を発見し1年かけ修復した。1メートル上乗せしてな。だから多生の被害は出たが死人は出ていない。」
「それは!ならマリエンヌとエリザベートも転生者なの?」
「転生者とは夢物語の話か?まあ良い。つまり知り得てても、何もしなかった貴様の手など借りたくは無い。未来の王としても恥ずかしいわ!エリザベートも己で手に入れる。貴様の力など借りん!」
ローズマリーが憤怒の表情で、皇太子に掴みかかって来た。牢番が慌てて制止に入る。ローズマリーの胸元のネックレスが光る。魅了の魔道具が発動した。
・・・・・。
「残念だが私には効かん。これのお陰だ。しかし…。」
エリザベートからの魔道具を見せる。
・・・・・。
「牢番にはかかってしまった様だな。しかも魔力全開でだ。このままでは彼が可哀想だ。ローズマリーが責任を取ってやれ。どうせ貴様は獄中死だ。重罪人の入る男女同室部屋だ。中で女王になれれば、男にかしずかれ天国だそうだ。まあ女王でも下僕でもヤる事は一緒だ。今まで貴様に泣かされた婚約者達に侘びながら啼くが良い。」
牢番は嬉々としてローズマリーを拘束する。後ろ手に縛られ、もはや自由すら奪われてしまった。
「いやー!私はヒロインなの!こんな薄汚れた場所で死ぬのはいやー!止めて!汚い手で触らないで!痛い!いきなり止めて!触るな!いやぁ…ぁぁ…ぁん。やぁっ。あぅ…。」
本当に浅ましい。
「おい監視は他に居るか?」
バタバタと数人が集まって来た。
「これ等が収まったら、女だけを重罪人の牢へ入れろ。監視の男は魅了の魔道具の被害者だ。無罪放免だ。間違えるな。女は王族に魅了を使用した重罪人だ。」
監視の男達が、ジットリと2人を舐めつける様に見ている。
「何だ?ああそういう事か。こんな浅ましい女でも需要は有るんだな。重罪人の牢に入れるのは何時でも構わん。だが殺すな。また絶対に逃がすなよ。逃がしたら貴様らも同罪だ。牢に入れたら報告しろ。」
言い捨て牢を出る。背後で幾つもの足音が響き収まる。既に助けを呼ぶ声は無く、嬌声だけが牢内にこだましていた。
エリザベート…
浅はかな私を許してくれ。
必ずお前を手にいれて見せる。
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