【完】相手が宜しくないヤツだから、とりあえず婚約破棄したい(切実)

桜 鴬

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第2章・婚約破棄は新たなる珍事を招く。

湖畔でランチはデートの定番の筈?

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うーん。青空の下でのお握り弁当。少し肌寒い風を時折感じるけど、温かいブートン汁が体内に染み渡る。ほっこり。まったり。中々楽しいわね。

「ねえ?デートならここで、さっと肩掛とか膝掛け位出てこない?」

「あちっ。しかしこれも旨いな。その唐揚げ。残すならくれよ。」

ベチリ! 

「痛てーな!」 

「この新作弁当は私もまだ初めて食べるの!足りないなら丸焼きを食べなさい。パンもキャベツのマリネも有るわよ。挟んで食べたら?」

・・・・・。

「デートならこう言う時、美味しい?ならお口に入れてあげる。はい、あーん。ニッコリ。位言えないか?」

・・・・・。

・・・・・。

「不毛な戦いね。」

「だな。さっさと食うべし。」

お昼を食べ、客間に通された。老婦人がお茶を淹れてくれる。私は皆に切り分けて欲しいと、マリエンヌの焼いてくれたチョコレートケーキとチーズスフレを1ホールのまま出す。

お兄ちゃんと妹は、興味津々で私達を見ている。しかしこれ以上は大人の話になる。お子さまに聞かせられる様なお話では無い。

私はマジックバックから袋に入ったおからクッキーの袋2つと、幾つかの玩具を取り出した。子供達が目を輝かせて見ている。

「これはね?お絵かきボードと言うの。ほら見て。左側に見本が出るでしょ。これを真似て書くの。見本はこのカードよ。差し込むと光って見易くなるわ。文字も有るからお勉強になるの。見本を外して大きく好きな絵を描いても大丈夫。これがペンでこれがけしゴム代わりよ。このボタンを押すと全部消えるから、最初から何度でも描ける。保存したいときはここを押すとストックされる。後で紙に印刷も出来るわ。後はオヤツのおからクッキーよ。これは子供用にアイシングで模様が書かれてるの。今から大人はパパとお話ししないとダメなの。暫く楽しんで食べて遊んでてくれるかな?」

子供達は喜んで、各自がお絵かきボードとクッキーの袋を抱えて出ていった。老婦人が飲み物を運びがてら見ていてくれるそうだ。では真面目な話といきましょうか?くるり。

・・・・・。

大の男2人と目があう。

こら!大人がクッキーを覗くな!ケーキだけで十分です!

全くもぅ…。

*****

先ずは伯爵に話を聞く。これをしなくちゃ始まらない。リーダーが話していた騙されたと言うのは、マーガレットブランドの詐欺に間違いは無いと思う。しかし前回の侯爵の騒動は、侯爵がローズマリーを、マーガレットブランド代表と勘違いしてしまった。完全なる思い込みによる詐欺事件だ。大商会が侯爵の注文を相手にせず、騙されたお客に説明をして再度新規に契約をさせた。つまりこの時の件は、侯爵が逮捕され決着が付いた筈。今回の事件は別口なのか?繋がりは有るのか?有るなら何処に伯爵が介入したのか?

「父さん。コイツに話したからどうなるかは解らんが、今より悪くなる事は無いだろう。大商会のロジャース様とも知己だ。藁にもすがるつもりで話してみろよ。」

ゴイン!

「痛てぇー!酷いな親父は!」

「エリザベート様に失礼を言うな!愚息が本当に申し訳ございません!」

「伯爵?今の私は平民のエリーです。だから頭をあげて話して下さいな。ドリル髪型で無い私をエリザベートと見破った。その貴方には解る筈。私はマーガレットブランドの代表です。もしブランドを詐欺に使われてるなら、それを阻止せねばなりません。ご協力を戴けませんか?」

「エリザベート様…。」

「なあ?ドリル髪型って何だ?それに何故皇太子様の婚約者が平民やってるんだ?婚約者はフローラ公爵家の長女エリザベート。今現在も変わらない。お前はエリザベートだろ?平民のエリーの振りは何故なんだ?」

・・・・・。

王家は私の出奔を隠蔽したの?まあ確かにあの時点で、皇太子の魅了は解けた。つまりローズマリーとの婚約は無い。あの後関係者は断罪され、詐欺事件も未遂で終了した。でもあれだけの人のいるパーティーで、皇太子様は私と公爵家を貶めた。なのに何故隠蔽を…。

「伯爵もあのパーティーにはいらっしゃいましたよね?私が婚約破棄をされた経緯もご存知の筈。私は公衆の面前で恥をかかされた。皇太子様は、私と公爵家を貶めた。」

「はい。私も確かに確認しました。」

「ドリル髪型と言うのは、縦ロールに巻き垂らす髪型よ。かなり昔流行ったの。今は顔がキツく見えるからと、私位しかしてなかった。あれは手入れも大変なのよ。でもね?私のあの髪型には意味が有ったの。公爵家長女で皇太子様の婚約者。高位貴族令嬢としての責任と義務。私の進退に一族郎党の首と領民の生活がかかってる。それらをこなすための戦闘服。己があの変態から逃走したらどうなるか?5才の時に父に諭されたわ。だから私はずっとあの髪型にしてきたの。言わば戦う為の鎧ね。リーダー?貴方にはその意味が理解できるかしら?」

・・・・・。

「簡単に魅了にかかる。その魅了を解いてあげたにも関わらず、物事を良く考えもせずに安易に婚約を破棄する人間。そんな人と国を守り闘って何て行ける訳がない。今までだって散々良い所を見ようと探してきた。でももう無理。だから私は平民になった。だって婚約破棄をしたのは彼方じゃない。もうドリル髪型は封印よ。マーガレットブランド代表の時には違う髪型になる。平民のエリーでも同じ。」

ふう。私はひと息置き続けた。

「つまりドリル髪型のエリザベートは、貴族社会へは2度と戻らない。」

・・・・・。

・・・・・。

「エリザベート様…。」

「エリーお前は…。」

伯爵は詳しい話を話してくれた。パーティーの後、出入り口で箝口令がしかれた。皇太子様の婚約者は変わらない。公爵家のエリザベートのまま。異議申し立ては認めない。更には伯爵家以上の参加者は個々に呼び出された。そこで改めて王より、私を逃がすな!との報せが出た。私を発見したら、王家への報告義務が有るそうだ。

「何でそんなにしつこいのよ。変態皇太子のお好きなボンキュッボンなら、私以外にも沢山いるじゃない。」

「皇太子様は幼き頃からエリザベート様がお好きでした。何でもエリザベート様が5才の頃に起こった、大切な思い出が有るとか?」

えー?何それ?私全く覚えて無いんですけど?うーん。気付いた時には婚約者だったけど、幼い頃に皇太子様と面と向かって話をした事は無い。5才の頃何て、多分顔位しか知らなかったんじゃ無いかしら?うーん。ん?

「そう言えば、あれが5才位かしら?侍女と中庭でかくれんぼをしてたのよ。私が鬼だったんだけど、知らない子を見付けちゃったの。その子と5日程、毎日遊んだわ。でもあれは皇太子様じゃ無いわよね?」

「公爵家の中庭に居る知らない子何て、皇太子位だろ?違うなら不審者だろうが!」

「えー。でも侍女は何も言わずに一緒にかくれんぼや木登りをしたわよ。その子は木登りが得意で、お猿の様に木から果物を取ってくれたりした。そうだ最後の日に…。ポッ。」

・・・・・。

「何だよ?その顔は?何か有ったのか?気色悪いわー。」

「煩い!これ以上はプライバシー保護の為に言わぬ。しかし思い出して見れば、確かにあの子は皇太子様に似ていた。ん?違うな。グレイシー様に似てるんだ!皇太子様には魔力が無い。だからやはりあの子が皇太子様の筈が無い。もしかしてあの初恋の君はグレイシー様なのでは?」

・・・・・。

・・・・・。

あらやだ。白けちゃったかしら?

「はいはい。すみません。何だか脱線してしまいましたね。婚約は今だに破棄はされていない。取り敢えず了承はしました。しかし了解はしておりません。なので伯爵?発見報告は無しで願います。私だと気付かなかった事にしてください。」

それは困ると駄々をこねる伯爵。ならはマーガレットブランドの件について話さないぞー。とつついてみた。途端に青くなる伯爵。

「エリザベート=マーガレットブランド代表の件は既に王家も知ってる。だから伯爵には迷惑をかけないわ。私の進退は己で何とかする。だから今は詐欺事件にだけ集中して欲しいの。エリザベートが発見されたら動けなくなる。だからリーダーも良い?」

2人は渋々頷いた。再度伯爵の話を促す。

*****

・・・・・。

うわぁ。こりゃまた複雑だね。所謂ねずみ講って奴ね。侯爵が大元のねずみ。大元のねずみに詐欺にあった予約者は、正規の予約に振り替えられ助かった。しかし大元のネズミには、魔術師団長と言う子ネズミがいた。この子ネズミにまで断罪が届かなかった為、伯爵は金策に喘ぐ羽目になった。

つまり既に予約金として全額支払いを済ませていた方に、伯爵が自腹を切り定価で購入し納品したと。しかも通常は商品引き換え払いなのに、魔術師団長がアフターケアも万全だ!何時でも呼び出せると、誇大宣伝をして先払いをさせた。その為魔力を補充してくれと来る客が多く、己だけでは当然足りずを人を雇っているそうだ。勿論それも損益となる。

つまり既に予約金として全額支払いを済ませていた方に、伯爵が自腹を切り定価で購入し納品したと。しかも通常は商品引き換え払いなのに、魔術師団長がアフターケアも万全だ!何時でも呼び出せると、誇大宣伝をして先払いをさせた。その為魔力を補充してくれと来る客が多く、己だけでは足りず人を雇っているそうだ。勿論それも損益となる。

しかし私には良く解らない。伯爵にも魔力が有るからアフターが出来る。だから話に乗らないか?と、唆されたのも理解できる。しかし何故に伯爵は魔術師団長の尻拭いをしてるの?己が注文を取ったお客様以外の我儘を聞く必要はない。

「伯爵は魔術師団長に何か弱味でも有るの?伯爵は商品引き換え払いにしてる。発売前なら、大商会で予約の振り替えが出来た。発売後でも自腹で定額購入しても、お金を貰えばマイナスにはならない。アフターケアにしても先払いにしても、どちらも魔術師団長の責任よ。何故貴方が肩代わりしてるの?」

伯爵は苦虫を噛み潰した顔をしいる。リーダーが詳しく教えてくれた。

「親父と母親と魔術師団長は、所謂幼馴染みだ。まあそれで良く有るパターンだよ。爵位の釣り合いも良く仲の良い父と母は婚約し結婚した。魔術師団長は母に懸想してた。だから気に食わない。父はこの通り人が良すぎる。そこに漬け込み嫌がらせをする。今回の事も彼方の仕込みだ。騒いでるのは全てが魔術師のの小飼だ。嫌がらせがしたいだけだ。」

成る程。伯爵が受注した予約は、魔術師団長が纏めて侯爵に渡していた。大元のネズミの侯爵は、大商会からお金が戻ると信じてたから前払いはさせていない。魔術師団長だけが前払いをさせた。そしてその損益を全て伯爵に被せてきた。しかし幼馴染みウンネンだけで、これだけの損益の出る嫌がらせを素直に聞く?嫌がらせを聞かねばならぬ様な事が、多分伯爵にはあるのね。それは多分、息子には聞かれたくない事なのだろう。

肩を落としたままの伯爵を見る。

「ロジャースいる?」

「ああ。中々興味深い話だな。」

「どこから聞いてた?」

「あ?今日は書類仕事だから、BGM代わりに最初から聞いてるぞ。記録もさせてる。マリエンヌのお握り弁当は最高だろ。特に唐揚げ!あれで肉じゃ無いんだ。魔術師団長も我が商会のダイエット食品を食べると良い。少しは奥方にも…。否。無理だ。どちらも同族だわ。」

まんま最初からじゃない!

「しかし魔力流しっぱなしだろ?流石の魔力量だな。変装して魔術師団長に会うなら気を付けろよ。」

「あ!魔力持ちには見破られちゃう奴?別にバレても大丈夫。魔術師団長は先のパーティーに来てないから、ドリルじゃ無い私には気付かないんじゃ無い?」

「否。気付かぬ方が厄介なんだ。奴は魔力史上主義だ。魔力量は遺伝しやすい。だから魔力持ちには異様に食らい付く。まあお前なら大丈夫だろうが、襲われぬ様に気を付けろよ。」

伯爵の体が微妙に揺れてる。やはり何か有るのね。しかもやはり息子には聞かれたくない様な事。多分ロジャースは知ってるのね。

「リーダー。伯爵を少し借りるわね。マカロンと果物を置いてくから、弟妹を見ていてくれるかしら?」

リーダーが頷いた。

「ロジャース。そこに直接飛んで平気かしら?」

「伯爵とか?構わんぞ。」

私は伯爵の肩に手を乗せた。視界が反転する。

「お見事!ジャストミートだな。」

「流石に何度も来てるからね。でも転移は結構怖いのよ。飛んだ先に障害物が有ったり、海のど真中だったら大変!」

「どうせ対策済みなんだろ?」

「つまんないわね!そう。そんな時にはこれ!ボタンを押すだけで、指定場所に転移出来ます。緊急避難所固定瞬間移動具よ!」

己にとって1番安全な場所に、瞬間移動できる魔道具なの。例えば私が瞬間移動で海中に移動したりする。あるいは空気の無い密室内だったりしたら?そんな時はこれ!ボタンを押せば、安全な場所!自身に危険が迫る時に、次の移動先の陣を敷くのは大変よ。

「緊急先ここに指定しとくから宜しくね!後、兵器としては販売しないわよ。自衛の為ならOKね。」

・・・・・。

「兵器に流用したら流石に恐ろしいな。いきなり大軍が出現したり、諜報しほうだいだ。」

「だから気を付けるの!でも殺そうとした人間が、いきなり目前から消えたら驚くでしょうね。ただ自分1人しか転移出来ないからね。仲間を見捨てる場合もキツいかも。まだまだ改良の余地ありよ。」

「あの…。すみません。ここは?そちらの方は大商会のロジャース様ですよね?・・・!!本当に申し訳ございません!!」

うおー。頭が床にくっつくよ。大丈夫かな?ほらやっぱりつんのめった。

ロジャースが話し込んで申し訳ないと、伯爵をソファーに案内する。

「ねえ?私は案内してくれないの?」

「かって知ったるだろ?人払いの為に秘書も外した。唯一出来るお茶を淹れてくれよ。お茶請けに、フルーツ大福が有るぞ。マリエンヌが昼間に差し入れてくれたんだ。苺とパインが絶品だな。甘さと酸味の加減が堪らない。」

食べます!それは是非に!しかし唯一出来るは余計だ!お茶は淹れられる。妃教育で何度もダメ出しを食らったわよ!お茶会では主催者がサーブする事も多いからね。あ!ここのお茶は確かあの希少なお茶じゃない。楽しみだわ。

・・・・・。

ちょっと!お茶が違うじゃ無い。まあこれも美味しいけど、知らないお茶だわ。

「気付いたか?その茶葉は緑茶と言うんだ。渋味が有るが小豆に良くあう。紅茶と茶葉は同じだが、発酵の進行度と製造過程に違いが有る。缶に淹れ方の説明も有る。マリエンヌの知識だ。」

マリエンヌも頑張ってるのね。

「解ったわ。美味しく淹れてくわ。」

「ああ。頼む。」

あれ?今日はデートの筈では?

何故私は変な事に頭を突っ込んでいるのだろう?

姉さんのバカー!どうせなら僕も呼んでよー!助けてー!!

*****
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