【完】相手が宜しくないヤツだから、とりあえず婚約破棄したい(切実)

桜 鴬

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第2章・婚約破棄は新たなる珍事を招く。

護身術何て可愛い物じゃ無い。

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鬱蒼と繁る木々のすき間から、陽射しを差し込んむ太陽を探す。辺りはかなり薄暗いがまだ日は沈んでいない。考えた程の時間は経っていない様だ。帰りは一瞬。まだまだ時間的には大丈夫だろう。

魔物は暗くなる程、狂暴な種が出現する。また視界が悪くなる為、気を付けねばならない。本来ならばとっくに宿舎に到達している時間だ。余計なモノを見付けてしまったと言う後悔が強い。しかし何故ここで出てくるのかの興味も深い。こんな自分が怖い。

目標物が動きを止めて、そろそろ10分が経つ。建物のドアの前に居るんだけど、中に仲間が居るんじゃ無いの?何故入らないのかしら?

「ゼーゼー。ハーハー。ヒーヒー。」

「ハァ。ハァ。ハァ。ハァー。」

「ヴェェ…。ゲフ…。ヴゥゥ…。」

・・・・・。

うーん。悪いけど煩いわ。

「そろそろ落ち着いた?」

「ゼーゼー。ハーハー。ヒー、フー。ハァー…。」

もー。こりゃダメだね。顔が真っ赤。あ!彼方ももしかしたら動けないのかしら?仕方無い。頭から水をかけて温風で乾かしてあげよう。お?かなり良くなったみたい。

「クリーンもかけとく。回復もね。後はタオルとレモン水。」

「ゴクゴク、プハァー!」

勿論足りないよね。はい、お代わり。でも一々注ぐのが面倒臭いな。ポットごとどうぞ。冷え冷えの魔道具のポットをでんと置く。

大豆バーを頬張りながら、レモン水のがぶ飲み状態。だから待っててと言ったのに…。

「本当に大丈夫なの?だから無理するなと言ったじゃない。」

・・・・・。

「うっ煩いわ!うかうかと火を導火線に近寄らせられるか!お前はそろそろ、己を危険物なのを理解しろ!ここまでくるともう、王妃教育で施された護身術何て可愛い物じゃ無い!我が国は王妃を殺人兵器にしたいのか?」

全く失礼よね!私は好きでこうなったわけじゃ無い。文句は王家に言って欲しいわ。

「シー。静かにして。私だって流石に疲れてるの。2人分の身体強化と隠蔽と探知を同時展開してたのよ。更には元々の色彩変化も有るしね。取り敢えず目的は止まった。様子を調べて後の事を考えましょう。」

ブリーベリー味の魔力ポーションを取り出し一気のみする。うーん。さっぱりして美味しい。やはりポーションは魔法大国製よね。

「おい。動き出したぞ。」

男性が建物のドアを開き、女性の手を引き中へ歩き出す。男性は此処まで彼女を担いて来た。身体強化を使用し休み休みだとしても、かなりの猛者だろう。女性の回復待ちをしてたのね。

因みに私達は、たまたま帰りの討伐中に2人を見かけた。何故だか異常に発生しているウサギと女王狩りをしながら、ここまで2人を追跡してきた。

「そう言えば…。何故あんなにウサギばかり居たのかしら?繁殖期にはまだ早いんじゃ無い?」

「ハーフムーンが近いんじゃ無いのか?ハーフムーンの時は繁殖が増えるからな。魔物は直ぐにデカくなる。俺らには稼ぎ時だ。」

へー。ここって結構森の奥地だよね?マップで確認すると、もう魔の森の中心に近い。ギリギリ遺跡の端が点滅してる。魔の森は我が国と魔法大国。そして断崖絶壁な海ともう1ヶ国の隣国。3国に面している。国境線から10キロまでが各々の国の管理下となり、魔物の脅威を取り除いたりしなければならない。この管理下から外れた部分が緩衝地帯になる。緩衝地帯には3国は自由に出入り出来る。しかし魔物も強くなる為、冒険者もほぼ入らない。また争いはご法度。年に数回の合同討伐が有り、魔物の間引きをしている。これが今回の合同討伐にあたる。因みに魔法大国とは別の隣国は参加して居ない。

其方の隣国はほぼ海に接している為、自国に魔物は入って来ない。我が国は魔物を殺さない。また食べぬから襲われない。聖なる国=聖国だと主張している。つまり国から出なければ、魔物に生涯出会わずに済む。だから魔の森は必要なしと宣言している。

魔物の素材は食材だけでは無い。薬や武器や防具の原料になる。魔の森は奥に行かなくとも、貴重な薬草等の宝庫だ。人間ならば必ずその恩恵を受けている筈。しかも森は国と地続きだ。今現在魔物の脅威を感じなくとも、溢れだしたりしたらどうするのだろう。隣国は塩を多く含む土壌の為、作物が育ちにくい。また断崖絶壁な海に囲まれなだらかな海岸線に面していない。また海には魔物が存在している。中々苦労しているそうだ。なら尚更魔の森に入るべきでは?10キロラインでも、お肉や素材の確保が出来るのだから…。

まあ。私には、お偉いさんの思考は解りません。

「ねぇ?この建物は違法じゃ無いの?」

「緩衝地帯を占拠するつもりでなく、出る時に壊すなら違法じゃない。男の服装からして隣国のヤツだろ?隣国が魔の森に入る何てビックリだな。魔物肉は穢れている。食べる位なら餓えて死ぬと騒ぐ国だ。宗教なのか?自国に閉じ籠り毒にも薬にもならない国だ。内向的でネクラだよな。」

・・・・・。

「そう思う?」

「そう思うも何もそうじゃ無いのか?それを少しでも改善しようと、姫を我が国に降嫁させるんだろ?」

「そうね。その本人とおバカたちにぶち壊されそうになったけどね。あのね?さっき王妃を殺人兵器にでもするのかと言ったわよね?王家は流石にそんなつもりは無かったと思う。私が魔法が使えたからの副産物よ。だから私はエリザベートの時は魔法を使わない。王家の為に殺人兵器になるつもりは無いの。私はまだ王家をそこまで大切には思えないから。  でも今の私はエリーよ。エリーが大切な者をまもる為には魔法も使うわ。」

・・・・・。

「悪い。言い過ぎたな。女性にここまでの護身術を叩き込む方が可笑しいわ!王妃が魔物を倒す必要が有るのか?しかも対人まで仕込んでる。まさか皇太子を護らせるつもりか?なら皇太子はとんだヘタレだな。」

・・・・・。

「リーダーって意外に鋭いね。大正解!王妃教育で対人まで仕込む何て変だよね。解る人には解るんだ。ちょっと安心したよ。あのね?皇太子を護らせるのも有るけど、自分を守る為でも有ったんだよ。多分ね。」

隣国は兎に角貧乏だ。我が国の皇太子に正妃を宛がい、援助を引き出そうと画策していた。しかし皇太子には既に私と言う婚約者が居た。我が国では側室は認められて居ない。私は隣国にとって目の上のタンコブだった。私は幼き頃から、隣国に命を狙われていた。次々に送られてくる刺客。父が気付き強固な守りを付けてはくれた。しかしどうしても綻びは出る。私を守り死んだ護衛。毒見で死んだ侍女。私は哀しくて悔しくて仕方無かった。だから自身で身を守れる護身術は有り難かった。

「兎に角頑張ったの。私の為に誰かに死んで欲しく無かったから。それを筋が良いからと、調子に乗って教え込んだ師匠が憎いわ。そして死ぬ気で頑張る私に、変態的な態度しか見せなかった皇太子様が憎かった。だって私にこんな業を与えたのはエドワード様よ。私を選んだ責任が有る筈。少しは労って貰いたかった。優しい言葉が欲しかった。そうすれば!」

「私はこんなバケモノにならなくて済んだ筈。魔法を覚える必要が無くなったもの。王妃だけなら魔法何て要らなかったのに…。」

「エリー…。」

・・・・・。

「なーんてね!使えるものは使わなきゃ損よ!もう今更魔法は要らない何て言えないじゃない。便利に慣れすぎてるしね。隣国は毒にも薬にもならないなんて可愛らしくないわ。ビシバシ野心ありよ。しかし隣国もバカにしてるのよねー。正妃の座を求め援助を引き出すつもりなら、正妃腹の姫を我が国に嫁がせるべきよ。なのに降嫁させるのは、数居る側室腹の5番目だかの姫よ。公爵家嫡子の嫁としてだって厚待遇過ぎる位なのに、今だに刺客寄越すからなー。まあ姫は控え目で良い子なんだけどね。でも刺客控えてくれないと、高笑いの意地悪小姑になりそうよ。」

「全くお前ってヤツは…。」

*****

建物の中には男女と仲間の男が2人。男の1人は、報告だと国に戻った。残りの3人は明日の昼過ぎに隣国へ行くそうだ。

「ねえ?ローズマリーは牢屋に居たの?本当は私が牢屋に居て、ここに連れて来られるのはエリザベートだった?ローズマリーは間違い?どうするか聞いてくるから待ってろ?意味が良く解らないんだけど?」

私が何故牢屋に居るのよ?

「俺に解るわけ無いだろ。やはり妹さんの、ゲームとか言う話が関わってるんじゃ無いのか?」

うーん。

やはりマリエンヌに話を聞きに行こう。何故かここに居る、ローズマリーの処分がどうなったのかも知りたいからね。

通信機のボタンをポチと押す。

「誰か居るー?」

・・・。・・!・・・。

「お姉さま?マリエンヌです。側にロジャースも居ますわ。」

「あっ。もしかしてお邪魔しちゃった?ゴメンね。明日少し話を聞きたいんだけど、午前中にお邪魔してよい?」

「・・・。本当に邪魔だ!明日だな。商会の方に飛んでこい。」

「了解ー。何時も有難う。」

クルリと振り返る。

「ではでは。これから手土産を採取に行きます。リーダー護衛宜しく。」

・・・・・。

「何で!俺は帰りたい!」

「ハイハイ。行きますよー。」

・・・・・。

*****

ではこれから妖精の花びらを探採取に行こう。間違いなくあの遺跡だろう。それを手土産にマリエンヌに会いに行こう。

全く気にして無かったんだけど、ローズマリーの処分はどうなったのだろう?処分だけならロジャースでも解るだろうけど、やはりマリエンヌに色々と聞いてみるべきよね。

(冒険者から聞いたとある言伝)

【闇の底に沈む命失われた巨大なモノ達。水の妖精の悪戯によりその身をさらされ、ハーフムーンの光に癒される。その身には光輝く妖精達が舞いおり、一時の復活を喜び舞い踊る。己の衣服たる花びらが舞い散るのにも気付かず厭わない。何故ならその命失われたモノ達は、かつて妖精達の守り神だったのだから。】

これが言伝として残されてるお話。普通に考えたら、水が関与し隠されてた巨大な何かが現れるって感じ?ハーフムーンの光と何かが掛け合わされ、この言い伝えの様な幻想的な雰囲気になるのだろう。

実は以前たまたま、遺跡に行ったと言う冒険者に話を聞いたの。遺跡の一部が湖に沈んでいる。徐々に湖に浸食されているので、その内に全てが沈んでしまうかもしれないとね。地形の変化は、魔物の生態にも影響する。王妃教育には、この様な話から起こり得る未来像を考察する授業も有った。

遺跡には石で作られたゴーレムが沢山有ったそう。つまり巨大なモノとは、動かなくなったゴーレム達。水の妖精の悪戯と言うのは湖の水の満ち引き。ハーフムーンの夜は、海や川や湖の水位が下がると言われているからね。

つまり湖に沈んだゴーレムが、ハーフムーンによる水位の減少で湖から姿を現す。そのゴーレムをハーフムーンの光が照らす。ここまでが導き出せる私の考察。

そして…。

ここからは私の想像ね。多分沈んでいるゴーレムの体に、発光性の植物が生えてるのだと思う。有力なのが、ホワイトムーンフラワーね。この植物は水草何だけど普通に水中で生育してる場合は、発光する小さな白い花を沢山咲かすのみ。但し水際等で生育し大きく育つと、夜間にのみ一夜限りの大輪の花を咲かす事が有る。

別名がプリズムムーンフラワー。大輪の花がまるでドレスを纏う妖精の様だと言われている。白い花の中でも貴重なのが、7色に輝く花とのお話ね。

ホワイトムーンフラワーは実在している。しかし水中深くに自生している為、一夜限りの大輪の花うんねんは、実際には確認されていない。勿論現在、7色の花も未確認である。

この妖精の花びらは、ドレスやアクセサリーの素材に使用出来るそう。しかしどの様に使用出来るかも、全く知られていない。真珠よりも光沢が有り、美しく高価な品としてのみ伝わっている。

花びら何て、装飾品には弱すぎる気もするけどね。遺跡には魔物も居るし、無駄足にはならないわね。

*****

・・・・・。

・・・・・。

「凄いの一言ね。」

「間に合って良かったな。」

「「でも違うヤツと見たかった…。」」

「エリーがそれを言うな!」

「リーダーもね!」

*****
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