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第2章・婚約破棄は新たなる珍事を招く。
まだまだ宜しくないヤツだけと、とりあえず結婚致しましょう。(決定)【本編完結】
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やはり私の弟のブライアンは、前世での私の息子だった。つまり姫とは前世で双子だったのね。
「そうなんだよ。姫と婚約破棄した時は思い出さなかったのに、姫とユリウス大神官の結婚式で思い出したんだ。それで納得出来たんだ。姫を好きでは有ったけど、婚約破棄はそんなにショックではなかった。更には結婚式で思った。今回は愛する人と結ばれて良かったとね」
ブライアンは姫を好きだった。結婚しても、良い関係を育めると感じていた。それは姫も同じだった。
「私も同じ気持ちだったのです。ブライアン様なら信頼できる。政略結婚でこんな方と婚約できるなら幸せだと」
二人ともに前世では、王家の者と政略結婚で結ばれた。しかし二人は納得していた。激しい恋愛ではなかったけれども、互いに相手を思いやり親愛の気持ちを育んだ。
「「幸せで悔いのない人生でした。だからこそきっと、前世を忘れていたのです」」
たしかにそうかもしれないわね。私もすべてを忘れている。夢で見たりはしているけれど、あれは夢であるとしっかり感じている。私は己の前世とやらを、未だに思い出してはいない。それはつまり……
「クリスティーネは満足して死んだのよね。新しい命を授かり育み産み出した。クリスは己の短い命を知っていた。だからこそ愛するユウに宝物を残したかった。もちろん己も死ぬ気なんてなかったのよ?」
だって……私は最後まで生きようと頑張ったもの……双子の成長が見たかったから……ユウが双子を抱いて、喜んでくれる姿が見たかったのだから……
「しかし死には抗えなかった。でもクリスは満足して死んだの!ユウの役に立てる。愛おしい我が子と共に、生きてほしい。己の命は尽きる運命だったから!だからユウに己が居なくなっても!守るべき双子がいる。生きる希望を与えられたと喜んでいたんじゃない………………私が死んでも、愛しい我が子たちと共に生きて欲しいと。寂しさを感じて欲しくないと……なのにユウは全てを放棄したのね。クリスの……私の思いは報われなかったわけよね? 」
そうよ。報われず!届きもしなかったのよ!
駄目ね……私も思考が混じっているわ。時々夢で見たことを、己の過去のように感じている。まあ正確には前世であり私の過去ではないけれど、気が高ぶるとクリスティーネの気持ちに同調してしまう。冷静にならなきゃダメ。これではエドワードと同じになってしまう……
私は私よ。クリスティーネでは無いの。エリザベートなのよ!
*****
さてと。とりあえず座りましょう。三人用のソファーの中心に私が一人で座り、姫と弟と皇太子様を対面の三人用に促す。皇太子様が何だか不服そうな顔をしている。反省しているのではないの?ならばふーん……私は扉の横に控えているリーダーを手招きし、己の隣をポンポンと叩く。思わずギョッとするリーダー。
「早く座りなさいよ。真ん中開けてあげるわ。これなら良いでしょう? 」
「…………触るな…………コロス……ぞ……」
「……………………!! 」
「あのねぇ……護衛が守るべき対象に触れられないのでは困るのよ。エドワードは威圧するな!リーダーは気にしない!これから一年間は同じ釜の飯を食べる仲間です。現場では私が隊長で貴方方はヒラです。魔物を実地でビシバシと倒して貰います! 」
皆さま口を開きポカーンとしていますね。特に姫と弟には寝耳に水でしょう。しかし私は決めたのです!
「既に王には計画書を提出しました。皇太子様育成強化計画です。皇太子様はかなりの魔力を成人まで封印しているとのこと。ならば体を鍛えましょう。筋肉量を増やせば、魔力を効率よく体内に巡回できます。いきなり封印をとくと、暴走してしまうこともあるのです。それを防ぐためにも!これは良いことづくめなのです! 」
私はリーダーを例に話を続ける。リーダーは、生まれながらの魔力量が少ない。なので簡単な魔法しか使えない。もちろん討伐隊では剣士として十分に働いていたし、魔法も役立てていた。
「リーダー。気配を消してみて」
途端にリーダーの気配が無くなる。
「そのまま動いて適当な所に止まって」
一息おき私は皆に問う。
「今、リーダーがどこにいるかわかるかしら? 」
姫と弟が頭を振る。皇太子様は部屋の中をくまなく検索しているようだが、やがて降参した。
「リーダー。もう良いわよ」
リーダーの姿が現れる。彼はそのままソファーに腰かけていた。
「リーダーってば凄いでしょ?ブライアンはリーダーより、魔力量があるはずなのに見つけられなかった。私がさりげなく鍛えたの。筋肉は魔力を吸収し蓄えることが出きる。また筋肉量を増やせば、体を魔力が効率良く巡回する。元々の魔力量だけでなく、自然な魔力も取り込めるようになるから、魔法がより沢山使えるようになるわよ 」
メンバーは、皇太子様にブライアン。元騎士団長の息子と元魔術師の息子も預かるわ。私が隊長でリーダーが副隊長よ。他はもちろんヒラです。
「リーダー?副隊長がヒラに威圧されるな!エドワード?ヒラが副隊長を威圧しない!討伐隊では信頼が大切です。おバカ二人のことも、温い目で見ること。もちろん節度は大切です」
「それは良いけどなんで僕も!僕は関係ないよね? 」
ブライアン?関係ないとは言わせませんよ?
「自力でローズマリーの魅縛を解いたのは認めましょう。しかし一時でも囚われたのは事実です。それに貴方は勿体ないわ。せっかく魔法を理解出来ているんですもの。リーダーみたいに悩筋でもこれだけ伸びるの。だから貴方の使える魔力が増えたら、将来公爵家の当主になっても助かるわよ」
リーダーってば睨み付けないでよ。例えばの話じゃない。
「お母様は……エリザベート様は……それで良いのですか? 」
「良いのよ。私は公爵令嬢のエリザベートなの。皇太子様の婚約者として生きてきたわ。正直ぶっちゃけたら、あの婚約破棄の後は万歳三唱したわよ。変態から逃げられるってね。でもね?クリスティーネの気持ちも解るの。許せないけど許したい。クリスはユウを愛してると思えたから許した。なら私にもそう思わせてくれる?皇太子様。ううん。エドワードが私を振り向かせてよ。私は貴方に口説かれたことが無いわよ?変態行為ばかりはされたけど、その訳も信じましょう。だから二人でその変態行為を抑えましょう。魔力を上手く扱えれば変わると思うの。私だって使いこなしているわ。昔のエドワードなら出きるはずよ」
俯くエドワード。返事はないのかしら?
「しかし……ユウはクリスを幸せに出来なかった……その贖罪が先だと……」
「このウスラトンカチ!クリスもユウも死んでるの!今の貴方はエドワードでしょ?なら貴方は私がクリスティーネじゃなければ好きではないの?そうよ。私はクリスではない。エリーだもの。だから贖罪なんて要らないわ。ましてや覚えていないのよ。満足して死んだクリスを叩き起こしたいの?それこそ自己満足じゃない!贖罪したいなら、前世を覚えている方々に土下座して一発殴られろ!特にユリウス様よ!リュウに謝罪しなさい!まあ今のユリウス様にはお邪魔でしょうけど」
「はい。正直邪魔です。我が家に来る必要はございません。前世と現在を混在し、己を失っている皇太子様には、あの人を会わせたくありません」
「わっ私は……では誰に謝罪すれば……」
「とりあえず己に謝罪しなさいな。ユウの記憶にのまれて、エドワードの心を無視しているからね。後はおいおい強制しましょう。私がビシバシと鍛えてあげる。もちろん公務もするわよ。一年後が楽しみね。頑張ればご褒美デートもしてあげる。初めてのデートはリーダーとしちゃったけど、初めての遠出はエドワードとしましょう」
「エッエリー!お前余計なことを!」
「はい。エドは威圧ストップ。これからは私は貴方をエドと呼びます。エドも私をエリーと呼んで下さい。もちろん公式の場では今まで通りです」
こうして私たちは、一年間を魔の森で討伐隊として過ごした。エドはけじめだからと、先ずは姫とブライアンに殴られた。 その後ユリウス様に土下座をし、やはり殴られた。エドは両頬を殴ってくれと頼んでいた。それから公爵家の父親にコメコメのロジャース。迷惑をかけたと思う者たちに、誠心誠意謝罪して回った。
エドワードは私が眠っていた一年間に、かなりの調べものをし、己の前世と向き合っていたのだと言う。そして己の記憶が己に都合の良いものばかりであると気付いた。
その忘れた部分を知り、深い後悔に悩まされてしまう。己でも自分が誰を好きなのか?誰を幸せにしたいのか?何もかもが曖昧になり、前世と現在の区別がつかなくなっていたのだという。クリス!クリスと執拗になっていたのか、起きたら大人しくなっていた。これが理由だったのね。
毎日毎日クタクタになるまで体を動かす。公務としての書類仕事をこなし、親善として各国を訪問する。私も婚約者として一緒に出向き、皇太子様のサポートをしながら人脈を広げてゆく。
私も変態だからと、皇太子様を避けてばかりだった。よりそうつもりだったなら、もう少し側により中身をみて差し上げるべきだった。己の身では扱いきれない、魔力過多による弊害。多大な魔力を封印しているための苦しさ。それらを知らずに変態だと影で罵っていた。少しは婚約者らしく寄り添っていたならば、あそこまで変に拗れることはなかったのかもしれない。魔の森の討伐の帰りに、あの妖精たちの湖に二人で寄り道をする。清浄な魔力を作り出す魔道具作りはかなり進行している。やがてこの地は魔の森のオアシスとなるだろう。
他の仲間は今日と明日は休日。私とエドは、お城での公務のために移動中だ。その途中でよった湖の湖畔。相変わらずに美味なマリエンヌの手作り弁当を取りだし、エドに差し出す。私はカップでスープを作るだけ。周囲に結界を張り巡らし、さあお昼を戴きましょう。
お腹がいっぱいになり、エドがうとうとし始める。毎日倒れるくらいに体を動かしているからか、このうとうとは毎回のお約束ごと。私は膝を貸して、己もそのまま…………
まったくもう……
…………お尻の辺りがモゾモゾするのはなぜなの?
パシりと不埒な手を捕まえた。
「すっすまない……でっ出来心で……」
「エッエリー?許してくれないのか? 」
私は握った手を己に引き寄せ、近付く頬に軽くキスをした。
互いの顔が真っ赤になる。
「ボディタッチもキスも自然の流れだったでしょ?お互いに嫌じゃ無かったから良いわよ。でも完全に寝ているときは駄目よ。特に変な薬はしようきんしよ。もしかしてエドは嫌だったの? 」
「嫌な訳がないだろう!疑うならもっと先に進もう! 」
くっ苦しい!抱き締めすぎー!折れるー!背骨が折れるー!ヘルプミー!
「はぁ……はぁ……はぁ……」
身体強化をしたまま抱きついたわね……死ぬかと思ったわよ。
「さあそろそろお城へ向かいましょう。明日は朝一番で、隣国の先の国へ飛ばなくちゃ。親善大使のご夫婦が接待してくれるんですって! ご夫婦ともかなりの魔力もちだけど、奥さまには特に才能があるの! お友だちになったのよ! 」
「お友だちって……いつだ? 」
「女ともだちよ! ギルドの依頼で、何回かご一緒してるの。変な誤解はしないで! 正国への援助物資の輸送の際には、エドも一緒にいたわよね? 食事もご馳走になったじゃない! 」
まったくお代わりまでしていたくせに!
「そう言えば旦那様が奥様にベタ惚れで、一年かけて口説き落としたらしいわよ。しかも彼は婚約破棄ならぬ、冒険者パーティーから追放したんですって。しかもダンジョンの最下層に女性一人を置き去りよ!いくら人間不信で女性に不信感を感じていたとしても、その無関心さが信じられない!しかしそれ程のマイナスからのスタートで凄いわよ。同じくマイナスからのエドも、素敵なデートとかを教えて貰ったらどう? 変態は二度とゴメンよ」
「……」
*****
約束の一年後、二人は無事に結婚式を挙げた。エリザベートの等身大の人形は、とある国の親善大使夫妻の活躍で、以降更新されることは無かったという。
二人は希に見る魔力の持ち主で、その多大なる魔力を民のために役立て、ますます国を発展させていった。子宝にも沢山恵まれたそうな。
*****
「そうなんだよ。姫と婚約破棄した時は思い出さなかったのに、姫とユリウス大神官の結婚式で思い出したんだ。それで納得出来たんだ。姫を好きでは有ったけど、婚約破棄はそんなにショックではなかった。更には結婚式で思った。今回は愛する人と結ばれて良かったとね」
ブライアンは姫を好きだった。結婚しても、良い関係を育めると感じていた。それは姫も同じだった。
「私も同じ気持ちだったのです。ブライアン様なら信頼できる。政略結婚でこんな方と婚約できるなら幸せだと」
二人ともに前世では、王家の者と政略結婚で結ばれた。しかし二人は納得していた。激しい恋愛ではなかったけれども、互いに相手を思いやり親愛の気持ちを育んだ。
「「幸せで悔いのない人生でした。だからこそきっと、前世を忘れていたのです」」
たしかにそうかもしれないわね。私もすべてを忘れている。夢で見たりはしているけれど、あれは夢であるとしっかり感じている。私は己の前世とやらを、未だに思い出してはいない。それはつまり……
「クリスティーネは満足して死んだのよね。新しい命を授かり育み産み出した。クリスは己の短い命を知っていた。だからこそ愛するユウに宝物を残したかった。もちろん己も死ぬ気なんてなかったのよ?」
だって……私は最後まで生きようと頑張ったもの……双子の成長が見たかったから……ユウが双子を抱いて、喜んでくれる姿が見たかったのだから……
「しかし死には抗えなかった。でもクリスは満足して死んだの!ユウの役に立てる。愛おしい我が子と共に、生きてほしい。己の命は尽きる運命だったから!だからユウに己が居なくなっても!守るべき双子がいる。生きる希望を与えられたと喜んでいたんじゃない………………私が死んでも、愛しい我が子たちと共に生きて欲しいと。寂しさを感じて欲しくないと……なのにユウは全てを放棄したのね。クリスの……私の思いは報われなかったわけよね? 」
そうよ。報われず!届きもしなかったのよ!
駄目ね……私も思考が混じっているわ。時々夢で見たことを、己の過去のように感じている。まあ正確には前世であり私の過去ではないけれど、気が高ぶるとクリスティーネの気持ちに同調してしまう。冷静にならなきゃダメ。これではエドワードと同じになってしまう……
私は私よ。クリスティーネでは無いの。エリザベートなのよ!
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さてと。とりあえず座りましょう。三人用のソファーの中心に私が一人で座り、姫と弟と皇太子様を対面の三人用に促す。皇太子様が何だか不服そうな顔をしている。反省しているのではないの?ならばふーん……私は扉の横に控えているリーダーを手招きし、己の隣をポンポンと叩く。思わずギョッとするリーダー。
「早く座りなさいよ。真ん中開けてあげるわ。これなら良いでしょう? 」
「…………触るな…………コロス……ぞ……」
「……………………!! 」
「あのねぇ……護衛が守るべき対象に触れられないのでは困るのよ。エドワードは威圧するな!リーダーは気にしない!これから一年間は同じ釜の飯を食べる仲間です。現場では私が隊長で貴方方はヒラです。魔物を実地でビシバシと倒して貰います! 」
皆さま口を開きポカーンとしていますね。特に姫と弟には寝耳に水でしょう。しかし私は決めたのです!
「既に王には計画書を提出しました。皇太子様育成強化計画です。皇太子様はかなりの魔力を成人まで封印しているとのこと。ならば体を鍛えましょう。筋肉量を増やせば、魔力を効率よく体内に巡回できます。いきなり封印をとくと、暴走してしまうこともあるのです。それを防ぐためにも!これは良いことづくめなのです! 」
私はリーダーを例に話を続ける。リーダーは、生まれながらの魔力量が少ない。なので簡単な魔法しか使えない。もちろん討伐隊では剣士として十分に働いていたし、魔法も役立てていた。
「リーダー。気配を消してみて」
途端にリーダーの気配が無くなる。
「そのまま動いて適当な所に止まって」
一息おき私は皆に問う。
「今、リーダーがどこにいるかわかるかしら? 」
姫と弟が頭を振る。皇太子様は部屋の中をくまなく検索しているようだが、やがて降参した。
「リーダー。もう良いわよ」
リーダーの姿が現れる。彼はそのままソファーに腰かけていた。
「リーダーってば凄いでしょ?ブライアンはリーダーより、魔力量があるはずなのに見つけられなかった。私がさりげなく鍛えたの。筋肉は魔力を吸収し蓄えることが出きる。また筋肉量を増やせば、体を魔力が効率良く巡回する。元々の魔力量だけでなく、自然な魔力も取り込めるようになるから、魔法がより沢山使えるようになるわよ 」
メンバーは、皇太子様にブライアン。元騎士団長の息子と元魔術師の息子も預かるわ。私が隊長でリーダーが副隊長よ。他はもちろんヒラです。
「リーダー?副隊長がヒラに威圧されるな!エドワード?ヒラが副隊長を威圧しない!討伐隊では信頼が大切です。おバカ二人のことも、温い目で見ること。もちろん節度は大切です」
「それは良いけどなんで僕も!僕は関係ないよね? 」
ブライアン?関係ないとは言わせませんよ?
「自力でローズマリーの魅縛を解いたのは認めましょう。しかし一時でも囚われたのは事実です。それに貴方は勿体ないわ。せっかく魔法を理解出来ているんですもの。リーダーみたいに悩筋でもこれだけ伸びるの。だから貴方の使える魔力が増えたら、将来公爵家の当主になっても助かるわよ」
リーダーってば睨み付けないでよ。例えばの話じゃない。
「お母様は……エリザベート様は……それで良いのですか? 」
「良いのよ。私は公爵令嬢のエリザベートなの。皇太子様の婚約者として生きてきたわ。正直ぶっちゃけたら、あの婚約破棄の後は万歳三唱したわよ。変態から逃げられるってね。でもね?クリスティーネの気持ちも解るの。許せないけど許したい。クリスはユウを愛してると思えたから許した。なら私にもそう思わせてくれる?皇太子様。ううん。エドワードが私を振り向かせてよ。私は貴方に口説かれたことが無いわよ?変態行為ばかりはされたけど、その訳も信じましょう。だから二人でその変態行為を抑えましょう。魔力を上手く扱えれば変わると思うの。私だって使いこなしているわ。昔のエドワードなら出きるはずよ」
俯くエドワード。返事はないのかしら?
「しかし……ユウはクリスを幸せに出来なかった……その贖罪が先だと……」
「このウスラトンカチ!クリスもユウも死んでるの!今の貴方はエドワードでしょ?なら貴方は私がクリスティーネじゃなければ好きではないの?そうよ。私はクリスではない。エリーだもの。だから贖罪なんて要らないわ。ましてや覚えていないのよ。満足して死んだクリスを叩き起こしたいの?それこそ自己満足じゃない!贖罪したいなら、前世を覚えている方々に土下座して一発殴られろ!特にユリウス様よ!リュウに謝罪しなさい!まあ今のユリウス様にはお邪魔でしょうけど」
「はい。正直邪魔です。我が家に来る必要はございません。前世と現在を混在し、己を失っている皇太子様には、あの人を会わせたくありません」
「わっ私は……では誰に謝罪すれば……」
「とりあえず己に謝罪しなさいな。ユウの記憶にのまれて、エドワードの心を無視しているからね。後はおいおい強制しましょう。私がビシバシと鍛えてあげる。もちろん公務もするわよ。一年後が楽しみね。頑張ればご褒美デートもしてあげる。初めてのデートはリーダーとしちゃったけど、初めての遠出はエドワードとしましょう」
「エッエリー!お前余計なことを!」
「はい。エドは威圧ストップ。これからは私は貴方をエドと呼びます。エドも私をエリーと呼んで下さい。もちろん公式の場では今まで通りです」
こうして私たちは、一年間を魔の森で討伐隊として過ごした。エドはけじめだからと、先ずは姫とブライアンに殴られた。 その後ユリウス様に土下座をし、やはり殴られた。エドは両頬を殴ってくれと頼んでいた。それから公爵家の父親にコメコメのロジャース。迷惑をかけたと思う者たちに、誠心誠意謝罪して回った。
エドワードは私が眠っていた一年間に、かなりの調べものをし、己の前世と向き合っていたのだと言う。そして己の記憶が己に都合の良いものばかりであると気付いた。
その忘れた部分を知り、深い後悔に悩まされてしまう。己でも自分が誰を好きなのか?誰を幸せにしたいのか?何もかもが曖昧になり、前世と現在の区別がつかなくなっていたのだという。クリス!クリスと執拗になっていたのか、起きたら大人しくなっていた。これが理由だったのね。
毎日毎日クタクタになるまで体を動かす。公務としての書類仕事をこなし、親善として各国を訪問する。私も婚約者として一緒に出向き、皇太子様のサポートをしながら人脈を広げてゆく。
私も変態だからと、皇太子様を避けてばかりだった。よりそうつもりだったなら、もう少し側により中身をみて差し上げるべきだった。己の身では扱いきれない、魔力過多による弊害。多大な魔力を封印しているための苦しさ。それらを知らずに変態だと影で罵っていた。少しは婚約者らしく寄り添っていたならば、あそこまで変に拗れることはなかったのかもしれない。魔の森の討伐の帰りに、あの妖精たちの湖に二人で寄り道をする。清浄な魔力を作り出す魔道具作りはかなり進行している。やがてこの地は魔の森のオアシスとなるだろう。
他の仲間は今日と明日は休日。私とエドは、お城での公務のために移動中だ。その途中でよった湖の湖畔。相変わらずに美味なマリエンヌの手作り弁当を取りだし、エドに差し出す。私はカップでスープを作るだけ。周囲に結界を張り巡らし、さあお昼を戴きましょう。
お腹がいっぱいになり、エドがうとうとし始める。毎日倒れるくらいに体を動かしているからか、このうとうとは毎回のお約束ごと。私は膝を貸して、己もそのまま…………
まったくもう……
…………お尻の辺りがモゾモゾするのはなぜなの?
パシりと不埒な手を捕まえた。
「すっすまない……でっ出来心で……」
「エッエリー?許してくれないのか? 」
私は握った手を己に引き寄せ、近付く頬に軽くキスをした。
互いの顔が真っ赤になる。
「ボディタッチもキスも自然の流れだったでしょ?お互いに嫌じゃ無かったから良いわよ。でも完全に寝ているときは駄目よ。特に変な薬はしようきんしよ。もしかしてエドは嫌だったの? 」
「嫌な訳がないだろう!疑うならもっと先に進もう! 」
くっ苦しい!抱き締めすぎー!折れるー!背骨が折れるー!ヘルプミー!
「はぁ……はぁ……はぁ……」
身体強化をしたまま抱きついたわね……死ぬかと思ったわよ。
「さあそろそろお城へ向かいましょう。明日は朝一番で、隣国の先の国へ飛ばなくちゃ。親善大使のご夫婦が接待してくれるんですって! ご夫婦ともかなりの魔力もちだけど、奥さまには特に才能があるの! お友だちになったのよ! 」
「お友だちって……いつだ? 」
「女ともだちよ! ギルドの依頼で、何回かご一緒してるの。変な誤解はしないで! 正国への援助物資の輸送の際には、エドも一緒にいたわよね? 食事もご馳走になったじゃない! 」
まったくお代わりまでしていたくせに!
「そう言えば旦那様が奥様にベタ惚れで、一年かけて口説き落としたらしいわよ。しかも彼は婚約破棄ならぬ、冒険者パーティーから追放したんですって。しかもダンジョンの最下層に女性一人を置き去りよ!いくら人間不信で女性に不信感を感じていたとしても、その無関心さが信じられない!しかしそれ程のマイナスからのスタートで凄いわよ。同じくマイナスからのエドも、素敵なデートとかを教えて貰ったらどう? 変態は二度とゴメンよ」
「……」
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約束の一年後、二人は無事に結婚式を挙げた。エリザベートの等身大の人形は、とある国の親善大使夫妻の活躍で、以降更新されることは無かったという。
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