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第65話 隠れ家を突き止める
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モリソン商会に脅迫を武器に金をゆすりに来た二人組。
まんまと大金をせしめて意気揚々と商会を出ていく。
その少し後に今度は二匹の従魔を引き連れた一人の男がモリソン商会からそっと外を窺いながら往来の道へ足を踏み出した。そう、我らがエリオである。
『主様、あっちです』
『エリオ様、二人組はあの角を曲がるところです』
従魔のコルとマナに教えられて確認すると確かにあの二人組が角を曲がろうとしているところだ。視覚や嗅覚に優れたうちの従魔達は難なく対象を補足したようだ。一応言っておくけど俺もすぐに気づいたからな。
『わかった、コルとマナはいつも優秀だな』
俺は可愛い従魔達をきっちり褒めておくのも忘れない。
『えへへ。主様、褒めてもらえて嬉しいです』
『エリオ様に褒められるなんて…嬉しい』
遮断スキルを発動しながら二人組の後をそっと尾行していく。仮に万が一存在を確認されたとしても、俺の着ている服はそこらへんにいるような一般的な住民の出で立ちと同じだから地味で目立たないはずだ。
尾行を開始した後はコルとマナには俺の後方に下がってもらっている。従魔達も素の能力で自分達の気配をほぼ完全に消せるが、これも万が一を考えて少し俺から距離を取って着いてきてもらう事にした。
道行く人の反応を見てみると、俺にも従魔たちにも気づく様子がまるでないので俺達の存在は空気のように思われているのだろう。すれ違う人もいるが俺の存在に気がつかないのかそのまま俺の体に当たってきそうになってるしな。相手に悪気がないので俺の方で避けるしかない。
二人組に酒場とかに寄り道されると面倒だなと思いながら尾行をしていたけど、幸いな事に酒場がある歓楽街の方向には行かずに違う方向に向かっているようだ。
二人組は時々立ち止まって後ろを振り返り後方を確認しているが、尾行している俺と従魔に気づく様子もなく街中を歩いて行く。何度か脇道に逸れながらも進む方角はさっきからほぼ変わっていない。この方向は部隊の駐屯所がある方向だ。だが、駐屯所も敷地が広い。俺の住んでいる借家とは駐屯所を挟んで反対側の地域に向かっているようだ。
向かっている先が駐屯所に近いという事はやはり部隊関係者なのだろうか?
駐屯所周辺はあまり一般の住民は住んでいない地区だったと聞いている。微かな希望として部隊員を語るゴロツキの仕業の可能性も考えていたが、この様子だとその可能性も低いかもしれない。
そろそろ目的の場所が近くなったのか、二人組は周囲への警戒を強く始めたので俺は念の為に少し距離を取りながら物陰に身を隠す。そして、二人組はとある建物の前で歩くのを止め、もう一度周囲を確認してから素早くその建物に入っていった。
おそらくこの建物があの二人組の隠れ家で間違いないだろう。
俺はコルとマナにその場で待機しろと命じ、何気ない足取りで近所の住民を装いながらその建物を横目に見つつ素通りする。そして、そのまま次の曲がり角で道を曲がり大回りをしながらコルとマナが待機している場所に戻ってきた。
パッと見た感じではどこにでもある普通の家で、むしろ地味で目立たなくて周りの風景に溶け込んでいる印象の建物だ。周辺の人もまさかこの家に商会から金を脅し取るような連中が出入りしてるとは思わないだろう。
俺は予め考えていた行動を開始する。このままここに留まって張り込みを続け、その間にこの場所の地図と状況を紙に書いて俺の知らせを待っているラモンさんやカウンさんに伝える事だ。従魔にこの場所に案内させるので地図はいらないかとも思ったが、本部付きの監察官にも場所を教えておいた方が良いと判断して念の為に書いておいた。知らせを受けた応援部隊が到着次第踏み込む予定になっている。
用意していた紙にペンで簡単な地図とこの建物の特徴、そして今の状況と他に知らせるべき人などを二枚の紙にそれぞれ書いて一つはラモンさん、もう一つはカウンさんに届ける手筈だ。
届ける役目は我が従魔であるコルとマナ。俺が一番信頼している優秀な仲間だ。
『コル、マナ。この指示書を一通ずつラモンさんとカウンさんに届けてくれ。ラモンさんは吠え声を聞けば出てくるように言ってある。カウンさんのいる第三部隊の官舎も俺の指示で従魔が来たらカウンさんにすぐに知らせるように手配済みだ。コルはラモンさん、そしてマナはカウンさんだ』
『はい、僕はラモンさんに知らせればいいんですね』
『私は官舎にいるカウンさんのお知らせすればよろしいのですね』
『そうだ、二匹とも頼んだぞ』
二匹の従魔の背中に俺が指示書を入れたバッグを括り付けて勢いよく走っても取れないようにベルトを締めて固定する。まあ、コルとマナは驚異的な平衡感覚を持っているので、仮に背中の上にバッグを置いただけでも簡単には地面に落とさないだろうけどね。
『よし、行け!』
俺の掛け声を聞くやいなや、コルとマナの二匹の従魔は疾風の如き勢いでこの場から駆け出していってあっという間にその姿は見えなくなった。恐るべし我が従魔達、あの速さならすぐに目標に到着するだろう。
物陰に隠れて応援部隊の到着を待つ。そして暫くすると、まず最初にコルに先導されたラモンさんが通りに姿を現した。俺は物陰から出てラモンさんに向けて小さく手を振ると向こうも俺に気がついたようだ。そして、役目を果たしたコルが俺に向かって駆けて来た。お役目ご苦労さん。
まんまと大金をせしめて意気揚々と商会を出ていく。
その少し後に今度は二匹の従魔を引き連れた一人の男がモリソン商会からそっと外を窺いながら往来の道へ足を踏み出した。そう、我らがエリオである。
『主様、あっちです』
『エリオ様、二人組はあの角を曲がるところです』
従魔のコルとマナに教えられて確認すると確かにあの二人組が角を曲がろうとしているところだ。視覚や嗅覚に優れたうちの従魔達は難なく対象を補足したようだ。一応言っておくけど俺もすぐに気づいたからな。
『わかった、コルとマナはいつも優秀だな』
俺は可愛い従魔達をきっちり褒めておくのも忘れない。
『えへへ。主様、褒めてもらえて嬉しいです』
『エリオ様に褒められるなんて…嬉しい』
遮断スキルを発動しながら二人組の後をそっと尾行していく。仮に万が一存在を確認されたとしても、俺の着ている服はそこらへんにいるような一般的な住民の出で立ちと同じだから地味で目立たないはずだ。
尾行を開始した後はコルとマナには俺の後方に下がってもらっている。従魔達も素の能力で自分達の気配をほぼ完全に消せるが、これも万が一を考えて少し俺から距離を取って着いてきてもらう事にした。
道行く人の反応を見てみると、俺にも従魔たちにも気づく様子がまるでないので俺達の存在は空気のように思われているのだろう。すれ違う人もいるが俺の存在に気がつかないのかそのまま俺の体に当たってきそうになってるしな。相手に悪気がないので俺の方で避けるしかない。
二人組に酒場とかに寄り道されると面倒だなと思いながら尾行をしていたけど、幸いな事に酒場がある歓楽街の方向には行かずに違う方向に向かっているようだ。
二人組は時々立ち止まって後ろを振り返り後方を確認しているが、尾行している俺と従魔に気づく様子もなく街中を歩いて行く。何度か脇道に逸れながらも進む方角はさっきからほぼ変わっていない。この方向は部隊の駐屯所がある方向だ。だが、駐屯所も敷地が広い。俺の住んでいる借家とは駐屯所を挟んで反対側の地域に向かっているようだ。
向かっている先が駐屯所に近いという事はやはり部隊関係者なのだろうか?
駐屯所周辺はあまり一般の住民は住んでいない地区だったと聞いている。微かな希望として部隊員を語るゴロツキの仕業の可能性も考えていたが、この様子だとその可能性も低いかもしれない。
そろそろ目的の場所が近くなったのか、二人組は周囲への警戒を強く始めたので俺は念の為に少し距離を取りながら物陰に身を隠す。そして、二人組はとある建物の前で歩くのを止め、もう一度周囲を確認してから素早くその建物に入っていった。
おそらくこの建物があの二人組の隠れ家で間違いないだろう。
俺はコルとマナにその場で待機しろと命じ、何気ない足取りで近所の住民を装いながらその建物を横目に見つつ素通りする。そして、そのまま次の曲がり角で道を曲がり大回りをしながらコルとマナが待機している場所に戻ってきた。
パッと見た感じではどこにでもある普通の家で、むしろ地味で目立たなくて周りの風景に溶け込んでいる印象の建物だ。周辺の人もまさかこの家に商会から金を脅し取るような連中が出入りしてるとは思わないだろう。
俺は予め考えていた行動を開始する。このままここに留まって張り込みを続け、その間にこの場所の地図と状況を紙に書いて俺の知らせを待っているラモンさんやカウンさんに伝える事だ。従魔にこの場所に案内させるので地図はいらないかとも思ったが、本部付きの監察官にも場所を教えておいた方が良いと判断して念の為に書いておいた。知らせを受けた応援部隊が到着次第踏み込む予定になっている。
用意していた紙にペンで簡単な地図とこの建物の特徴、そして今の状況と他に知らせるべき人などを二枚の紙にそれぞれ書いて一つはラモンさん、もう一つはカウンさんに届ける手筈だ。
届ける役目は我が従魔であるコルとマナ。俺が一番信頼している優秀な仲間だ。
『コル、マナ。この指示書を一通ずつラモンさんとカウンさんに届けてくれ。ラモンさんは吠え声を聞けば出てくるように言ってある。カウンさんのいる第三部隊の官舎も俺の指示で従魔が来たらカウンさんにすぐに知らせるように手配済みだ。コルはラモンさん、そしてマナはカウンさんだ』
『はい、僕はラモンさんに知らせればいいんですね』
『私は官舎にいるカウンさんのお知らせすればよろしいのですね』
『そうだ、二匹とも頼んだぞ』
二匹の従魔の背中に俺が指示書を入れたバッグを括り付けて勢いよく走っても取れないようにベルトを締めて固定する。まあ、コルとマナは驚異的な平衡感覚を持っているので、仮に背中の上にバッグを置いただけでも簡単には地面に落とさないだろうけどね。
『よし、行け!』
俺の掛け声を聞くやいなや、コルとマナの二匹の従魔は疾風の如き勢いでこの場から駆け出していってあっという間にその姿は見えなくなった。恐るべし我が従魔達、あの速さならすぐに目標に到着するだろう。
物陰に隠れて応援部隊の到着を待つ。そして暫くすると、まず最初にコルに先導されたラモンさんが通りに姿を現した。俺は物陰から出てラモンさんに向けて小さく手を振ると向こうも俺に気がついたようだ。そして、役目を果たしたコルが俺に向かって駆けて来た。お役目ご苦労さん。
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