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第112話 任命
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先日、俺はナダイの街中で自分の用事も兼ねた視察を行った。
エルン全域を平定した後は、エルン地方全体に安心感が広がった影響で街の雰囲気は日増しにぐんぐんと良くなってきているようだ。ゴドール軍も街や地域の治安回復や復旧復興に貢献したおかげですんなりと街の住民に受け入れられて頼られる存在になっている。
まだ住民の暮らしに必要な生活必需品の一部では足りてない物もあるが、カレルさんの働きによって毎日のようにこの街に輸送される定期便のおかげでそれも解消されつつあった。ようやく正常にエルン地方を統治出来る目処が立ってきたという感じだ。
そして俺はゴドールとエルンという二つの地方を自分の手に治める事になった現実に身が引き締まる思いだった。ゴドールだけならともかく、エルンを含めたこの二つの地方を合わせればかなりの規模になる。弱小勢力から中堅勢力に昇格したようなものだ。
エルン地方の復興が進めば大量の穀物や木綿と牧畜関連の生産が見込まれるし、革製品や綿織物などの金になる特産品があるのも財政的に心強い。ゴドールの金の産出も好調を維持してるので統治をしていく上で資金面では何も心配がないという恵まれた環境だ。
この二つの地方を統治するにあたって、俺は配下に領地を与えずに俺の直接統治という形式にした。配下には給金という形で年俸を支払うようにしたのだ。
これはなぜかというと、キルト王国が崩壊した理由の大きな一つに、王家は各地方に領地を持つ領主達に担がれているだけの飾りのような存在になっていたのが理由として大きい。つまり、各地方の領主が自分の領地では王家に遠慮せずに自分の思い通りに出来る仕組みだったのだ。
そういう訳で配下への報酬は土地や領地ではなく年俸制にして、配下が自分の領地で好き勝手に出来ないように中央で統制する仕組みに大胆に改革をした。同時に爵位ではなく武官も文官も等官制度を採用してみた。
「エリオ殿。軍の人事と編成ですが正式に決定致しました。後はエリオ殿からの任命を残すだけです」
ラモンさんが俺の意見に基づいた軍の編成に伴う人事案を作成してくれたので、俺はその案を正式に認めたのだ。その編成処理がようやく終わったという訳だ。
「うん、ありがとう。今日はその任命式だったね」
エルン地方も手中に収めたので軍を再編成したのだ。今までは第一軍から第三軍までしかなかったのだが、治める地域が拡大したので新たな軍の編成を設けたのだ。
新しく編成されて加わったのが数字付きでは第四軍と第五軍と第六軍。それだけでなく近衛軍なども新設した。今日はとりあえず今現在このナダイにいる者に新たな軍の役職を正式に任命する手筈になっている。
「そろそろ任命式の時間ですので広間へ行きましょう」
「わかった」
領主館の広間で新たな任命をする段取りになっているのでそちらへ向かわないとな。担当の者に辞令が書かれた任命書を持たせてラモンさんと一緒に広間へと足を運んでいく。
「エリオ様、ご到着!」
広間へ向けて歩いてくる俺の姿を確認した入り口にいた衛兵が皆へ俺の到着を告げる。入り口を抜けて広間に入っていくと、俺の姿を見て椅子に座って待っていた配下達が一斉に立ち上がり礼をした。
「皆、座って楽にしていいよ」
俺の言葉で椅子に座り直した配下達の横を通って前方に歩いていく。台が用意されていてその台を挟んで椅子に座る配下達と向き合う形だ。ラモンさんと任命書を持った者が俺の脇で控える位置に立つ。まずはラモンさんから任命式の説明だ。
「これから新人事の任命式を執り行う。名前を呼ばれた者は立ち上がってこちらへ来てエリオ殿と向き合う形で任命書を受け取るように」
ラモンさんの説明を聞きながら椅子に座って待つ配下達の表情は真剣そのものだ。役職に就くという事はそれだけ肩にかかる責任も大きくなるからな。
「それではこれより任命式を始めます。まず最初にジゲル殿」
ラモンさんに名前を呼ばれたジゲル氏が俺の目の前に歩いてきてその場で跪く。俺は配下から任命書を受け取り正式に任命する。
「ジゲルよ。第四軍の将軍に任命する。これからも一層励むように」
「ハッ! このジゲル身を粉にしてエリオ様の為に働く所存です」
ジゲルを立ち上がらせて任命書を渡すと嬉しそうな顔をしながら回れ右をして自分の席へ戻っていった。彼は新参ではあるが、今までの実績は申し分ないし統率力も優れている。新しく創設した第四軍の将軍に相応しい。
さあ、次の配下の番だ。任命書を手渡す役の俺も今から楽しみにしている。
「それでは次にいきます。バルミロ殿こちらへ」
フッフッフ、次はバルミロさんの番だ。いつになく真剣な表情をしてるバルミロさんがこちらへ歩いてくるぞ。さっきと同じように配下から任命書を受け取り、跪くバルミロさんに言い渡す。
「バルミロよ。第五軍の将軍に任命する。これからも俺を助けてくれ」
「フッ、まさか俺が将軍になるなんてな。俺の方こそエリオには助けてもらってばかりだ。これからも全力を尽くしてエリオを助けるつもりだから任せておけ」
バルミロさんは相変わらずクールだけど頼もしいな。青巾賊の首領を討ち取ったのと、それまでの功績を加算して俺の推薦も後押しした結果第五軍の将軍に就任する事になった。バルミロさん頑張れよ。
「それでは次の者。ロドリゴ殿こちらへどうぞ」
次は我が義弟ロドリゴの番だ。ロドリゴは今まで親衛隊の隊長を務めていたが、今度新設された近衛軍の将軍に就任する事になったのだ。
「ロドリゴよ。新たに新設された近衛軍の将軍に任命する。頼むぞ」
「うっす。エリオ義兄さんの為に頑張るっす。任せてくださいっす」
ロドリゴは親衛隊隊長から近衛軍の将軍に昇格だ。近衛軍は信頼出来る身内に任せたかったのでな。文句は言わせないぞ。
さて、お次はロドリゴの昇格で空いた親衛隊隊長の任命だな。
「次の者。ルネ殿こちらへ」
ロドリゴの後任の親衛隊長はルネだ。武力に関しては文句のつけようのない強さだし、本人の希望でどうしても近場で俺を守れる場所に配属してくれと要望されていたので親衛隊の隊長を任せる事にした。普段は俺のそばに置いて武官系の秘書官みたいな役割りもさせるつもりだ。
「ルネよ。親衛隊の隊長に任命する。頑張ってくれ」
「エリオ様にはこの私の心と体の全てを捧げます。そして命に代えても生涯エリオ様のおそばで付き従う覚悟です!」
「うむ……よ、よろしく頼むぞ」
何だかやけに力が籠もった言葉だな。心と体の全てを捧げると宣言している時には顔が真っ赤だったけど、それだけ頑張るという気持ちが前面に出てるのだろうか。
そして最後になるが、ラモンさんの番だ。
「ラモンよ。執行長官に任命する。頼りにしてるぞ」
「ありがたき幸せ。謹んでお受けいたしますぞ」
執行長官の役割りは俺の代わりに方針や行動の決定や執行が出来る重要な役職だ。俺に準じる決定権があるので、病気で倒れたり負傷したりして俺に何かあった時はラモンさんが代理として重要な決定を下す事になっている。今のところ俺に子供が出来て跡継ぎが正式に決まるまではラモンさんが継承順位の一番上だ。ちなみに次はロドリゴだけどね。
さて、これでこの場に集った配下達への任命式は終了だ。第六軍の任命がまだじゃないかと言われるかもしれないが、その人物はこのナダイの街にはいないのだ。実は第六軍の将軍はゴドール金山駐屯隊の隊長のベルマンさんが昇格する予定なんだ。ベルマンさんも頑張ってくれよ。
エルン全域を平定した後は、エルン地方全体に安心感が広がった影響で街の雰囲気は日増しにぐんぐんと良くなってきているようだ。ゴドール軍も街や地域の治安回復や復旧復興に貢献したおかげですんなりと街の住民に受け入れられて頼られる存在になっている。
まだ住民の暮らしに必要な生活必需品の一部では足りてない物もあるが、カレルさんの働きによって毎日のようにこの街に輸送される定期便のおかげでそれも解消されつつあった。ようやく正常にエルン地方を統治出来る目処が立ってきたという感じだ。
そして俺はゴドールとエルンという二つの地方を自分の手に治める事になった現実に身が引き締まる思いだった。ゴドールだけならともかく、エルンを含めたこの二つの地方を合わせればかなりの規模になる。弱小勢力から中堅勢力に昇格したようなものだ。
エルン地方の復興が進めば大量の穀物や木綿と牧畜関連の生産が見込まれるし、革製品や綿織物などの金になる特産品があるのも財政的に心強い。ゴドールの金の産出も好調を維持してるので統治をしていく上で資金面では何も心配がないという恵まれた環境だ。
この二つの地方を統治するにあたって、俺は配下に領地を与えずに俺の直接統治という形式にした。配下には給金という形で年俸を支払うようにしたのだ。
これはなぜかというと、キルト王国が崩壊した理由の大きな一つに、王家は各地方に領地を持つ領主達に担がれているだけの飾りのような存在になっていたのが理由として大きい。つまり、各地方の領主が自分の領地では王家に遠慮せずに自分の思い通りに出来る仕組みだったのだ。
そういう訳で配下への報酬は土地や領地ではなく年俸制にして、配下が自分の領地で好き勝手に出来ないように中央で統制する仕組みに大胆に改革をした。同時に爵位ではなく武官も文官も等官制度を採用してみた。
「エリオ殿。軍の人事と編成ですが正式に決定致しました。後はエリオ殿からの任命を残すだけです」
ラモンさんが俺の意見に基づいた軍の編成に伴う人事案を作成してくれたので、俺はその案を正式に認めたのだ。その編成処理がようやく終わったという訳だ。
「うん、ありがとう。今日はその任命式だったね」
エルン地方も手中に収めたので軍を再編成したのだ。今までは第一軍から第三軍までしかなかったのだが、治める地域が拡大したので新たな軍の編成を設けたのだ。
新しく編成されて加わったのが数字付きでは第四軍と第五軍と第六軍。それだけでなく近衛軍なども新設した。今日はとりあえず今現在このナダイにいる者に新たな軍の役職を正式に任命する手筈になっている。
「そろそろ任命式の時間ですので広間へ行きましょう」
「わかった」
領主館の広間で新たな任命をする段取りになっているのでそちらへ向かわないとな。担当の者に辞令が書かれた任命書を持たせてラモンさんと一緒に広間へと足を運んでいく。
「エリオ様、ご到着!」
広間へ向けて歩いてくる俺の姿を確認した入り口にいた衛兵が皆へ俺の到着を告げる。入り口を抜けて広間に入っていくと、俺の姿を見て椅子に座って待っていた配下達が一斉に立ち上がり礼をした。
「皆、座って楽にしていいよ」
俺の言葉で椅子に座り直した配下達の横を通って前方に歩いていく。台が用意されていてその台を挟んで椅子に座る配下達と向き合う形だ。ラモンさんと任命書を持った者が俺の脇で控える位置に立つ。まずはラモンさんから任命式の説明だ。
「これから新人事の任命式を執り行う。名前を呼ばれた者は立ち上がってこちらへ来てエリオ殿と向き合う形で任命書を受け取るように」
ラモンさんの説明を聞きながら椅子に座って待つ配下達の表情は真剣そのものだ。役職に就くという事はそれだけ肩にかかる責任も大きくなるからな。
「それではこれより任命式を始めます。まず最初にジゲル殿」
ラモンさんに名前を呼ばれたジゲル氏が俺の目の前に歩いてきてその場で跪く。俺は配下から任命書を受け取り正式に任命する。
「ジゲルよ。第四軍の将軍に任命する。これからも一層励むように」
「ハッ! このジゲル身を粉にしてエリオ様の為に働く所存です」
ジゲルを立ち上がらせて任命書を渡すと嬉しそうな顔をしながら回れ右をして自分の席へ戻っていった。彼は新参ではあるが、今までの実績は申し分ないし統率力も優れている。新しく創設した第四軍の将軍に相応しい。
さあ、次の配下の番だ。任命書を手渡す役の俺も今から楽しみにしている。
「それでは次にいきます。バルミロ殿こちらへ」
フッフッフ、次はバルミロさんの番だ。いつになく真剣な表情をしてるバルミロさんがこちらへ歩いてくるぞ。さっきと同じように配下から任命書を受け取り、跪くバルミロさんに言い渡す。
「バルミロよ。第五軍の将軍に任命する。これからも俺を助けてくれ」
「フッ、まさか俺が将軍になるなんてな。俺の方こそエリオには助けてもらってばかりだ。これからも全力を尽くしてエリオを助けるつもりだから任せておけ」
バルミロさんは相変わらずクールだけど頼もしいな。青巾賊の首領を討ち取ったのと、それまでの功績を加算して俺の推薦も後押しした結果第五軍の将軍に就任する事になった。バルミロさん頑張れよ。
「それでは次の者。ロドリゴ殿こちらへどうぞ」
次は我が義弟ロドリゴの番だ。ロドリゴは今まで親衛隊の隊長を務めていたが、今度新設された近衛軍の将軍に就任する事になったのだ。
「ロドリゴよ。新たに新設された近衛軍の将軍に任命する。頼むぞ」
「うっす。エリオ義兄さんの為に頑張るっす。任せてくださいっす」
ロドリゴは親衛隊隊長から近衛軍の将軍に昇格だ。近衛軍は信頼出来る身内に任せたかったのでな。文句は言わせないぞ。
さて、お次はロドリゴの昇格で空いた親衛隊隊長の任命だな。
「次の者。ルネ殿こちらへ」
ロドリゴの後任の親衛隊長はルネだ。武力に関しては文句のつけようのない強さだし、本人の希望でどうしても近場で俺を守れる場所に配属してくれと要望されていたので親衛隊の隊長を任せる事にした。普段は俺のそばに置いて武官系の秘書官みたいな役割りもさせるつもりだ。
「ルネよ。親衛隊の隊長に任命する。頑張ってくれ」
「エリオ様にはこの私の心と体の全てを捧げます。そして命に代えても生涯エリオ様のおそばで付き従う覚悟です!」
「うむ……よ、よろしく頼むぞ」
何だかやけに力が籠もった言葉だな。心と体の全てを捧げると宣言している時には顔が真っ赤だったけど、それだけ頑張るという気持ちが前面に出てるのだろうか。
そして最後になるが、ラモンさんの番だ。
「ラモンよ。執行長官に任命する。頼りにしてるぞ」
「ありがたき幸せ。謹んでお受けいたしますぞ」
執行長官の役割りは俺の代わりに方針や行動の決定や執行が出来る重要な役職だ。俺に準じる決定権があるので、病気で倒れたり負傷したりして俺に何かあった時はラモンさんが代理として重要な決定を下す事になっている。今のところ俺に子供が出来て跡継ぎが正式に決まるまではラモンさんが継承順位の一番上だ。ちなみに次はロドリゴだけどね。
さて、これでこの場に集った配下達への任命式は終了だ。第六軍の任命がまだじゃないかと言われるかもしれないが、その人物はこのナダイの街にはいないのだ。実は第六軍の将軍はゴドール金山駐屯隊の隊長のベルマンさんが昇格する予定なんだ。ベルマンさんも頑張ってくれよ。
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