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Case.04【虚ろな影】
day8.2─反論─
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史桜は静かに両手を組み、まるで既に心の中で筋道を描いていたかのように話し始めた。
「ではまず、無人の放送室から音楽が鳴るトリックについて整理しよう」
彼はゆっくりと結城の方へ視線を向ける。
「放送機器のデスク下に仕込まれていた、あの“黒い箱”。色々調べたが、あれは市販の放送機器の部品ではない。十中八九、自作の一品でしょう。機能としては単純だ。スマートフォンと連動し、アンプの電源のオンオフを切り替え、スマホ内の音源を放送機器から流す──そういう役目を果たしていたはずだ」
史桜は静かに頷くように言葉を重ねる。
「つまり、放送室に誰も居なくても、外部から曲を流すことが出来る。先ほど結城教諭がスマホを操作していたのは、まさにそのためでしょう」
絢葉は息を詰めて俯き、史桜はすぐに話題を継いだ。
「次に、『動く人影』の正体についてだ。これは先程述べたとおり、眞鍋男子である可能性が高い。何をしていたのか、理由は想像の域を出ないが──結城教諭に“それ”に協力してもらっていた。人影の傍らに見えた小さな光は──結城教諭のスマホの画面の明かりに他ならない」
その説明を経て、史桜が静かに間を取ったところで、結城が声を荒げる。
「待ってくれよ。それだけじゃあ、僕と眞鍋くんの仕業とは言い切れないんじゃないか?」
史桜は平然とした表情のまま答えた。
「もちろん。ここからが重要だ」
再び話が始まる。
「まず“黒い箱”についてだが、放送機器と連動する装置を自作出来る者は、それ相応の知識と技術を持つ者に限られる。さらに、それを放送室に設置するためには、放送室にある程度の時間滞在することも必要だ。つまり──『物理や電気に詳しく、放送室に長時間滞在しても不審がられない者』が最も可能性が高い。結城教諭は物理を担当しているし、生徒より教師の方がこのトリックを仕掛けるのに不都合は無い。さらに“黒い箱”とスマホを連動させるには相応の範囲内に居ないといけないだろう。夜間に放送機器に干渉できるのは下校時間後に見回りで残っている者に限られる」
結城は反論の口を開く。
「いいや、放課後の見回りには僕以外にも物理の教師はいる。確かに機械いじりは昔から好きだが、何も僕にしか出来ないわけじゃないはずだ」
史桜は微笑をわずかに含めて返す。
「尤もだ。だが他の複数の要素が、貴方以外の可能性を徐々に排除していった。最初に違和感を覚えたのは、我々が最初に校庭の“動く人影”を調査した夜のことだ。その日、東雲君たちの元に貴方が現れて“放送室はまた無人だったそうだよ”と語った──しかし、記録と証言は示している。貴方が現れたその時点では、校内のスピーカーからはまだBGMが鳴っていた。BGMが止まったのは、その少し後だ」
史桜の声は静かだが論旨は明快だ。
「しかし他の日の調査や証言からは、BGMが止まるのは常に『誰かが放送室に入った瞬間』であった。つまり、貴方が“放送室は無人”と語ったタイミングは、不自然に早すぎる。ならば何故、そのような発言をしたのか?」
結城は眉間に皺を寄せ、言葉に詰まる。
「そ、それは……僕は他の教員からの報告をそのまま伝えただけだ! ……そもそも、『放送室に入った瞬間に音楽が止む』っていう事象はどう説明するんだ?」
史桜は一度、視線を結城の手元に落とし、再び彼の目を見つめる。
「校内は監視カメラで一定範囲が覆われている。放送室や校庭付近のカメラ映像をスマホで確認できるよう改造していたのでは? もしそうなら、放送室に誰かが入った瞬間を貴方は即座に知り得る。それによってBGMのオンオフも自在に可能だ。証拠は完璧ではないが、これらは十分に合理的な説明だ。貴方のスマホを確認させてもらえれば、すべてが早く済むのですがね」
言葉が終わると、結城の喉がひくりと動いた。額からは汗が流れ、視線は落ち着かず、足先が僅かに揺れている。
「ではまず、無人の放送室から音楽が鳴るトリックについて整理しよう」
彼はゆっくりと結城の方へ視線を向ける。
「放送機器のデスク下に仕込まれていた、あの“黒い箱”。色々調べたが、あれは市販の放送機器の部品ではない。十中八九、自作の一品でしょう。機能としては単純だ。スマートフォンと連動し、アンプの電源のオンオフを切り替え、スマホ内の音源を放送機器から流す──そういう役目を果たしていたはずだ」
史桜は静かに頷くように言葉を重ねる。
「つまり、放送室に誰も居なくても、外部から曲を流すことが出来る。先ほど結城教諭がスマホを操作していたのは、まさにそのためでしょう」
絢葉は息を詰めて俯き、史桜はすぐに話題を継いだ。
「次に、『動く人影』の正体についてだ。これは先程述べたとおり、眞鍋男子である可能性が高い。何をしていたのか、理由は想像の域を出ないが──結城教諭に“それ”に協力してもらっていた。人影の傍らに見えた小さな光は──結城教諭のスマホの画面の明かりに他ならない」
その説明を経て、史桜が静かに間を取ったところで、結城が声を荒げる。
「待ってくれよ。それだけじゃあ、僕と眞鍋くんの仕業とは言い切れないんじゃないか?」
史桜は平然とした表情のまま答えた。
「もちろん。ここからが重要だ」
再び話が始まる。
「まず“黒い箱”についてだが、放送機器と連動する装置を自作出来る者は、それ相応の知識と技術を持つ者に限られる。さらに、それを放送室に設置するためには、放送室にある程度の時間滞在することも必要だ。つまり──『物理や電気に詳しく、放送室に長時間滞在しても不審がられない者』が最も可能性が高い。結城教諭は物理を担当しているし、生徒より教師の方がこのトリックを仕掛けるのに不都合は無い。さらに“黒い箱”とスマホを連動させるには相応の範囲内に居ないといけないだろう。夜間に放送機器に干渉できるのは下校時間後に見回りで残っている者に限られる」
結城は反論の口を開く。
「いいや、放課後の見回りには僕以外にも物理の教師はいる。確かに機械いじりは昔から好きだが、何も僕にしか出来ないわけじゃないはずだ」
史桜は微笑をわずかに含めて返す。
「尤もだ。だが他の複数の要素が、貴方以外の可能性を徐々に排除していった。最初に違和感を覚えたのは、我々が最初に校庭の“動く人影”を調査した夜のことだ。その日、東雲君たちの元に貴方が現れて“放送室はまた無人だったそうだよ”と語った──しかし、記録と証言は示している。貴方が現れたその時点では、校内のスピーカーからはまだBGMが鳴っていた。BGMが止まったのは、その少し後だ」
史桜の声は静かだが論旨は明快だ。
「しかし他の日の調査や証言からは、BGMが止まるのは常に『誰かが放送室に入った瞬間』であった。つまり、貴方が“放送室は無人”と語ったタイミングは、不自然に早すぎる。ならば何故、そのような発言をしたのか?」
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「そ、それは……僕は他の教員からの報告をそのまま伝えただけだ! ……そもそも、『放送室に入った瞬間に音楽が止む』っていう事象はどう説明するんだ?」
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「校内は監視カメラで一定範囲が覆われている。放送室や校庭付近のカメラ映像をスマホで確認できるよう改造していたのでは? もしそうなら、放送室に誰かが入った瞬間を貴方は即座に知り得る。それによってBGMのオンオフも自在に可能だ。証拠は完璧ではないが、これらは十分に合理的な説明だ。貴方のスマホを確認させてもらえれば、すべてが早く済むのですがね」
言葉が終わると、結城の喉がひくりと動いた。額からは汗が流れ、視線は落ち着かず、足先が僅かに揺れている。
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