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Case.04【虚ろな影】
day8.3─アリバイ─
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史桜は一度だけ夜の校庭を見渡し、再び結城へと向き直った。
「次に──『動く人影』のトリックについて説明しよう。なぜ、校庭を調べに来る者が現れると、人影は決まって姿を消したのか」
淡々と、しかし断定的な口調で続ける。
「答えは単純だ。先ほど言ったように校庭付近にも監視カメラは設置されている。貴方はそれをスマホで確認し、誰かが校庭へ近づくのを察知すると、すぐに身を隠していた。──茂みの裏、先ほど眞鍋男子が現れた、あの古い倉庫だ」
結城はすぐさま反論する。
「……僕はともかく、眞鍋くんはそれだと苦しいんじゃないかな。知っているだろう? 校門には守衛がいる。一時的に身を隠したところで、その後に生徒が校門を通って帰るのは、かなり厳しいはずだ。まさかあんな古い倉庫の中で一晩過ごしていたとでも?」
史桜は首を横に振る。
「それも説明はつく。我々は調査の過程で、あの倉庫脇のフェンスに“外へ通じる穴”が空いていることを確認している。毎夜事が済んだ後、貴方はそこから眞鍋男子をこっそり帰していた」
結城の表情が、明確に強張った。
「過去には、笠松翔らが下校時刻後に校内へ侵入していたという話もある。彼らもその穴を使ったのか、あるいは別の手段があったのかは分からない。だが少なくとも──校内の警備は、決して絶対ではない」
結城は一歩引き、焦ったように声を荒げた。
「……ま、待ってくれ! 例の怪異が現れ始めてから、君たちが調査を始めた後も、怪異は毎晩現れていただろう? でも眞鍋くんは、先週体調を崩して一日休んでいるんだ。僕もその日は居残り担当じゃなかったから、下校時刻前には帰宅している。──その日は、二人ともアリバイがあるはずだ」
その言葉に、絢葉も思わず頷いた。
「た、確かに……。調査に向かう途中で、笠松先輩が、眞鍋先輩が休んでいるって言っていました。その日は……結城先生も丁度帰るところに会っています」
史桜は一瞬だけ目を伏せ、すぐに肯定する。
「うむ。確かに、君の証言も聞いている。つまり──その日に限って、眞鍋男子は“動く人影”ではなかった」
「だったら、僕だって……!」
結城の声を、史桜は静かに遮る。
「いいや。貴方は帰っていない。正確には、一度校門から“帰ったふり”をした後、守衛に見つからないフェンスの穴を使って再び校内へ侵入した」
結城は言葉を失った。
「フェンスの外は住宅地の路地裏だ。車を使って現場に近づけば目立つかもしれないが、貴方は徒歩通勤。身一つなら、誰にも見られず侵入することは難しくない。そうして貴方は、その日も校庭に現れ、スマホで放送の操作を行った。つまり──この怪異のトリックは、最初から“一人でも成立する”」
史桜は隣の絢葉に視線を移す。
「東雲くんには、二種類の“動く人影”の映像を見せただろう。一つは、人影とスマホの光がやや離れていた日。そしてもう一つは──光が人影のすぐ傍にあった日」
絢葉が、はっと息を呑む。
「た、確かに……! それって……その日は、結城先生が眞鍋先輩の代わりに、人影になって……自分でスマホを操作していたから……!」
「いかにも」
史桜は小さく頷いた。
「理解が早くなったね」
「え、えへへ……。でも、トリック自体は全然分かりませんでした……」
結城は後ずさりし、声を震わせる。
「ま、待ってくれ……僕は……」
その言葉を遮るように、静かな声が夜気を裂いた。
「──もう、いいですよ。先生」
沈黙していた眞鍋が、目を伏せたまま結城の一歩前へ出ていた。
「次に──『動く人影』のトリックについて説明しよう。なぜ、校庭を調べに来る者が現れると、人影は決まって姿を消したのか」
淡々と、しかし断定的な口調で続ける。
「答えは単純だ。先ほど言ったように校庭付近にも監視カメラは設置されている。貴方はそれをスマホで確認し、誰かが校庭へ近づくのを察知すると、すぐに身を隠していた。──茂みの裏、先ほど眞鍋男子が現れた、あの古い倉庫だ」
結城はすぐさま反論する。
「……僕はともかく、眞鍋くんはそれだと苦しいんじゃないかな。知っているだろう? 校門には守衛がいる。一時的に身を隠したところで、その後に生徒が校門を通って帰るのは、かなり厳しいはずだ。まさかあんな古い倉庫の中で一晩過ごしていたとでも?」
史桜は首を横に振る。
「それも説明はつく。我々は調査の過程で、あの倉庫脇のフェンスに“外へ通じる穴”が空いていることを確認している。毎夜事が済んだ後、貴方はそこから眞鍋男子をこっそり帰していた」
結城の表情が、明確に強張った。
「過去には、笠松翔らが下校時刻後に校内へ侵入していたという話もある。彼らもその穴を使ったのか、あるいは別の手段があったのかは分からない。だが少なくとも──校内の警備は、決して絶対ではない」
結城は一歩引き、焦ったように声を荒げた。
「……ま、待ってくれ! 例の怪異が現れ始めてから、君たちが調査を始めた後も、怪異は毎晩現れていただろう? でも眞鍋くんは、先週体調を崩して一日休んでいるんだ。僕もその日は居残り担当じゃなかったから、下校時刻前には帰宅している。──その日は、二人ともアリバイがあるはずだ」
その言葉に、絢葉も思わず頷いた。
「た、確かに……。調査に向かう途中で、笠松先輩が、眞鍋先輩が休んでいるって言っていました。その日は……結城先生も丁度帰るところに会っています」
史桜は一瞬だけ目を伏せ、すぐに肯定する。
「うむ。確かに、君の証言も聞いている。つまり──その日に限って、眞鍋男子は“動く人影”ではなかった」
「だったら、僕だって……!」
結城の声を、史桜は静かに遮る。
「いいや。貴方は帰っていない。正確には、一度校門から“帰ったふり”をした後、守衛に見つからないフェンスの穴を使って再び校内へ侵入した」
結城は言葉を失った。
「フェンスの外は住宅地の路地裏だ。車を使って現場に近づけば目立つかもしれないが、貴方は徒歩通勤。身一つなら、誰にも見られず侵入することは難しくない。そうして貴方は、その日も校庭に現れ、スマホで放送の操作を行った。つまり──この怪異のトリックは、最初から“一人でも成立する”」
史桜は隣の絢葉に視線を移す。
「東雲くんには、二種類の“動く人影”の映像を見せただろう。一つは、人影とスマホの光がやや離れていた日。そしてもう一つは──光が人影のすぐ傍にあった日」
絢葉が、はっと息を呑む。
「た、確かに……! それって……その日は、結城先生が眞鍋先輩の代わりに、人影になって……自分でスマホを操作していたから……!」
「いかにも」
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「理解が早くなったね」
「え、えへへ……。でも、トリック自体は全然分かりませんでした……」
結城は後ずさりし、声を震わせる。
「ま、待ってくれ……僕は……」
その言葉を遮るように、静かな声が夜気を裂いた。
「──もう、いいですよ。先生」
沈黙していた眞鍋が、目を伏せたまま結城の一歩前へ出ていた。
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